月別アーカイブ: 2016年9月

ロングモーン 21年 1964-1986 R.W.ダッシー

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Longmorn 21yo 1964-1986 (R.W.Duthie, 86 U.S. Proof)

香りはおしろい、腐る直前の過熟気味なオレンジやリンゴ、桃などのフルーツ感、しみじみとした麦の甘さと旨味、こってりとしたバターのオイリーさ、腐葉土、じっとりと広がるピートのニュアンス。

味わいは溶けて透明感のあるバター、水ようかん、小豆、ややもっさりしたリンゴ、メロン、スイカ、ミドルから麦の旨味、土のニュアンス、じんわりと植物感が広がる、フィニッシュは麦のコクとリンゴに草のニュアンスが残る。

【Very Good】

ダッシーのロングモーン、1964年蒸留の21年熟成。このシンプルなラベルは、シンプルさ故に逆に凄みを感じてしまいます。

香り、味ともに複雑で多彩、様々な方面の要素が多くノージング・テイスティングともに時間をかけてゆっくりと楽しむことができました。ダッシーはあまり変化球なものは好まず、それぞれの蒸留所や樽の良さをストレートに現す傾向にあるということでしたが、このロングモーンも格別華やかさがあるわけではなく、むしろどちらかと言うと朴訥とした印象もあります。

しかし、懐の深さを感じさせる複雑さと、奥に潜むフルーティさはその他60年代のロングモーンに期待するような華やかな要素が感じられました。話によると、同銘柄の別ボトルでは本当に素晴らしいフルーツ感満載のロングモーンだったそうですが、このボトルにはそれが無いようです。この日が口開けだったため、これから開くのかそれともボトル差か……、悩ましいところですが、暫くは経過を見守る必要がありそうですね。

Gさん、感謝です!

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ロングモーン 35年 1968-2004 DL Old&Rare プラチナム

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Longmorn 35yo 1968-2004 (Douglas Laing “The Old & Rare Platinum Selection”, 61.9%)
香りはやんわりとバニラ、ライチ、白ブドウ、栗や上新粉のようなニュアンス、徐々に革製品、ポリッシュ、高貴さも感じるアンティーク家具、シナモンやクローブのようなスパイスのニュアンスがバランス良く広がる。

味わいは穏やかな立ち上がりのバニラ&蜂蜜、サクランボ、ライチ、ミドルからレザー、イグサや畳、柿のような渋みは落ち着いていてじんわり広がる、白桃のニュアンスが混じり複雑だがまとまっている、フィニッシュにかけてアンティーク家具のニュアンスと栗の控えめな甘さ、落ち着いた渋みが長く残る。

【Excellent】

ダグラスレインの Old & Rare プラチナムのラインナップからロングモーンの35年です。このダンピーのシリーズは本当に素晴らしいボトルが多いイメージがありましたが、このボトルも文句なく素晴らしいボトルでした。

白いフルーツを連想させるフレーバーに多彩なニュアンスが複雑に絡み合い、スワリングする度に様々な香りが押し寄せてきます。飲んでもその多様さにまず圧倒され、改めて様々なニュアンスを拾おうとすると、なんとも言葉では表しにくい要素が沢山あります。芯の強さはあるものの、刺々しくないのに輪郭のはっきりした味わい。個々の要素はそれぞれ主張するものの、決して喧嘩しない。まさに円熟、という言葉が相応しい。

口に含んでから飲み込むまで、一本のストーリーがあるかのようなそんな感覚を味わいました。「起承転結がある」とは同席したメンバの談ですが、まさにそのとおりだと思いました。

 

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このモルトはグラスを幾つか変えて試させて頂きましたが、左のザルトが一番フレーバーをしっかりと感じられて良かったですね。チューリップ型では少しぼやけた感覚になり、味わうときにも舌への流れ方が違うためか、ややもったりした感じになりました。それにしても、これはなんとも贅沢な比較でした……。
素晴らしい体験でした。ありがとうございました!

グレンドロナック 18年 1976年蒸留

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GlenDronach 18yo 1976-1994 (OB, 43%)

香りは高貴なシェリー感、枝付きレーズン、カカオマス、レザーオイル、なめし革、ポリッシュ、蝋燭、クローブ。

味わいはカカオ、とてもビターなチョコレート 無骨な麦感、奥にほんのりと和三盆の甘さ、濃いめのオレンジ、ミドルから刺激的ではなく柔らかだが強めのタンニン、ココナッツオイル、アーシーなニュアンス強めのカカオ、オレンジの甘さも少し感じられる長いフィニッシュ。

【Very Good】

グレンドロナックのオフィシャル18年、裏ラベルに1976年蒸留と記載されているボトルでした。

近年のシェリー樽とは明らかにことなる良質なシェリー樽のニュアンスが香り、ノージングの段階から期待が高まります。飲んでみると意外と華やかさは控えめでどちらかというと無骨、骨太、しかし奥の方にはしっかりと甘さやフルーツ感もあり、芯の強さを感じます。タンニンの収斂味は強めの方ですが、刺々しさやクレヨンや硫黄感は無く、割りとスッキリとしたまとまり方をしているのは、恐らく昔のシェリー樽と43%という度数が良い方向に働いているからだと推測します。

70年代後半になると、良質なシェリー樽が払い出されなくなりどこの蒸留所も方向性を切り替え始めた時期ではないかと思いますが、グレンドロナックはシェリー樽にこだわっていたと聞いていますので、なんとか良い樽を確保するのに尽力していたのかもしれません。同時期の15年あたりも良いシェリー樽が効いたものが多いと聞いています。今度どこかで飲んでみたいですね。

Tさん、ありがとうございました!

ニューポット感の不思議

ウイスキーのテイスティングに関して、「ニューポット感ってどんなの?」という質問がありました。

ニューポットとひと言で書いても、どのあたりをニューポット感と取るかは人それぞれなので何とも難しいところで、また、香味を文字で表現するのはとても難しく、実際にそれを食べたり飲んだりするのが一番理解が早いわけですが……。

というエクスキューズをした上で、強いていえば焼酎のような、といったところでしょうか。樽などで寝かせていない、普通の麦焼酎あたりを試してもらえれば分かるかと思います。蒸留所に見学に行ったことがあれば、蒸留器(ポットスチル)の部屋に充満している、穀物やフルーツのニュアンスが詰まった甘い香り、あれがニューポッティな香りという風に考えています。

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実際、ウイスキーのニューポットというのは焼酎みたいなものです。ウイスキーはそれを何年間も樽で寝かせることによって、樽の風味やその他諸々の化学反応であの複雑な味や香りが出来上がるわけです。

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アベラワーのニューポット。一番左のフォアショッツは不純な成分が多く飲めない。

と、ここまで書いていてふと思ったのですが、ニューポット感が消える、というのはいったいどういうことだろう。そもそも、なぜニューポット感は(どちらかといえば)マイナスなニュアンスとして捉えられるのでしょうか。

 

ニューポット感が消える理由とは

ニューポット感は樽で寝かせている間、時間とともに消えていくようですが、そもそもなぜ消えるのでしょうか。このあたりの詳細は「ウイスキーの科学 -知るほどに飲みたくなる「熟成」の神秘- / 古賀邦正」を参照されたいのですが、

樽熟成中の空気との化学反応により未熟感が消えていく

というのが答えになるようです。

熟成によって起こるニューポット由来成分の化学反応には、

  • 酸化反応
  • アセタール化反応
  • エステル化反応

の3つがあることが知られている。

 

樽熟成による「呼吸」によって空気と触れ合っていくなかで、ニューポットな香味が変化していって消えていくわけですね。変化していった結果として現れてくるのが他の香味、特にエステリーな香味というのは華やかさ、フルーティさ、熟成感のある香りとして認識されやすいものです。

  • カプリル酸エチル……発酵を想起させる甘いアプリコット・パイナップル様
  • カプロン酸エチル……ややフローラルなアップル、バナナ、パイナップル
  • イソアミルアセテート……バナナやメロンのような甘い香り
  • フェネチルアセテート……バラやカーネーションなどの快い花の香り
  • β-ダマセノン……リンゴやバラにも含まれる、華やかな熟成香にも感じられる成分

同時に、未熟成香はどんどん反応で消滅していき、アルコールとともに樽の外へ蒸散、ニューポット感が薄れていくわけですね。これが樽熟成の力、時間をかけて寝かせる理由の大たるところでしょう。しかも空気と反応させていかなければならない。瓶に入れているだけでは変化していかない理由でもあります。

 

ニューポット感がマイナス要素な理由

(先におことりしておくと、もちろん人によってはニューポット感を好ましく思う方もいらっしゃるでしょう。嗜好は人それぞれですので、どちらが優れているか、プラス要素なのかマイナス要素なのか、ということも本来は論じる必要はないのですが。)

これは、我々がウイスキーに求めるところは何かということになるかもしれません。ウイスキーは樽で何年も寝かせることよって、円熟したまろやかさ、複雑な香り、多種多様な味わいが生まれてきます。求める香味は、これら「熟成を経ることによって手に入るもの」であって、そうでなく未熟な要素は不必要なもの、と認識しているのかもしれません。

ニューポットはその名の通り若さや未熟感を代表するニュアンスです。ウイスキーには熟成感を求めるのが基本であるならば、未熟感はその対極であり、それはマイナス要素としてとらえられることになる。これが理由ではないでしょうか。
またはもっと単純に、ニューポット感はまろやかさが無くとげとげしい、刺激が強いことから不快な部分があるのかもしれません。しかし(あくまで個人的な感想ですが)、ニューポットもしっかりと加水調整をしてやると、そんなにとげとげしさは無いですね。むしろ穀物由来のまったりとした甘さを感じられます。特に良い原酒をつくっている蒸留所では。このため、この理由は少し弱いような気もします。

 

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ハイランドパークのニューメイクスピリッツ。流石に焼酎のような味で熟成感の欠片もないが、麦感とバナナなどのフルーツ感はしっかりで原酒の良さが伺えた。

 

熟成の不思議

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結局、熟成のプロセスをつぶさに解明していかないかぎりすべてが明らかにはならないわけですが、熟成によってニューポット感が消えていくのは本当に不思議なものです。ウイスキーの味わいとその表現の幅を広げるにあたっては、一度ニューポットを飲んでみるというのも良い経験になると思います。「これが若さか……」ということをしっかりと認識することによって、他のウイスキーでも、若いニュアンスを拾う時の助けになるでしょう。

 

 

[読書感想] スコットランド酔夢紀行 / 佐々木幹郎

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2015年の本。著者のスコットランド旅行記をメインに、蒸留所の説明やシングルモルトの魅力についていろいろと書かれている。単なる旅行記でもなく、ウイスキーの入門書でもない。著者の体験を元に書かれたエッセイのようなものだが、思いの外読みやすく、面白かった。

蒸留所や歴史の説明が半分、個人的な体験記録や考えなどが半分、といったところだが、どちらも堅苦しさがなくてとても読みやすい。著者は詩人らしいが、そのあたりは流石といったところだと思う。そしてこれだけの文章を書ききることができるというのも、また凄い。読みごたえのある旅行記には時間も忘れて没入してしまった。

この人の体験を通じて、スコットランドの、シングルモルトの魅力に触れるのはなかなかに面白い。自分もスコットランドに行き同じものを見てきたはずだが、感じるものが違っていたり同じであったり。違う視点を取り入れることで、また新しい魅力に気づくことができる。それはスコットランドに行ったことが無くても同じだと思う。別の視点というのは面白いものだな、と感じた。

日本のウイスキー業界的に著名な人が何名か出てくるが、その人たちのことを改めて知って、ウイスキー界隈もまた、たくさんの人によって造られてきたものなんだな、と。
そしてこれからは、ネットを使ってもっともっと広がりが生まれていくことでしょう。今は我々消費者もリードしていける時代ですから。

オールドプルトニー 24年 1989-2014 蒸留所限定

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Old Pulteney 24yo 1989-2014 (OB, Hand Bottling at the Distillery, Bourbon Cask#4146 53.5%)

香りは酸味のあるプラム、イチゴジャム、ラズベリー、アロエや苔のニュアンス、過熟気味のバナナ、微かにセメダイン系の溶剤、ショートブレッド、こなれた麦感。

味わいはややオイリーなアタックから蜂蜜やトフィー、噛みごたえのあるイチジクのジャム、イチゴやラズベリーもしっかり、ミドルから塩気の強いショートブレッド、やや強めの植物感、コクのある麦の旨味、フィニッシュにかけてはショートブレッドとじわりと染みこむ植物の苦味が続く。

【Good/Very Good】

プルトニー蒸留所で樽から直接ボトリングできる、いわゆるヴァリンチです。先日紹介したの14年熟成ボトルとともに、2014年のスコットランド旅行の際に現地で購入してきました。開封は2014年9月でしたので、2年ほど経過しています。

3ヶ月ほど前に久しぶりに飲んでみたところ、当初よりもフルーツ感が多彩で強くなっていたため、これはいよいよ開いてきたぞ、と喜んで飲んでいたらもうあと1,2杯のところまで来てしまいました。90年台のプルトニーに良くある、バーボン樽の良い部分をうまく抽出したような綺麗めな方向ですが、若さ由来のパワーも落ち着いてきて結構しみじみ飲めるタイプです。どちらが良いかは好みによりますね。

どうもこの日は体調的に植物のエグみのようなニュアンスを強く拾ってしまう傾向にあったようで、このときもテイスティングが引っ張られてしまいましたが、やはりフルーツ感と塩気の強い麦の甘さは良く主張していていい塩梅になっています。

 

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ハンドボトリング用の樽。珍しく2種類用意されていた。

 

プルトニーのハンドボトリングは、このように樽がビジターセンター内に置かれていて、希望者は樽から直接ボトリングすることができます。(実際には一度フラスコのようなものに移して700mlを計量します)。ボトリング後はラベルを書き、購入台帳に記入し、フタの部分をロウ付けしてようやく1本出来上がり。これ、意外と時間がかかります。慣れてくれば別ですが、1本あたり10分弱かかったりもします。他の購入者も居たり、スタッフもそこまで慣れていなかったりすると、2本買うだけでも結構な時間をとられる事になりますので、蒸留所訪問の際には時間に余裕を見て行くと良いでしょう。

オールドプルトニー 14年 2000-2014 蒸留所限定

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Old Pulteney 14yo 2000-2014 (OB, Hand Bottling at the Distillery, Bourbon Cask#649 61.1%)

香りはバニラ、生クリーム、アプリコットジャム、サクランボ、少し白桃のニュアンス、軽めの紅茶、ややオイリーなクリーム感、微かに昆布出汁のニュアンス。

味わいは強くプラム、トフィーやファッジのような甘さ、プラム、ネーブルオレンジ、ミドルには噛みごたえのあるアプリコットジャム、薄い紅茶のニュアンス、煮詰めた蜂蜜の甘さ、かき氷のメロンシロップ、フィニッシュにかけては軽くヒリヒリとスパイシー、軽い樽感とともにフルーツ感も残る。

【Very Good】

プルトニー蒸留所で樽から直接ボトリングできる、いわゆるヴァリンチです。こちらは2014年のスコットランド旅行の際に現地で購入してきました。開封は2014年9月でしたので、2年ほど経過しています。

個人的にプルトニーらしさとも感じている酸味のあるフルーツ感は以前からありましたが、開栓当初は梅ジャムのようなニュアンスが、時間経過で変化がありコクの強いアプリコットからサクランボなどになってきました。また、このボトルはバーボン樽なのですが、少し紅茶のようなシェリー樽にみられるようなニュアンスも出始めてきて中々に不思議なものです。

14年で61%とまだまだパワフルなところはありますが、かなり開いてきたのか口当たりもそこまでキツくなく、かなり仕上がった樽だと思います。思い出補正が若干入っていますが、90年代以降のバーボン樽モルトとしてはとても良く出来た味わいだと言えるでしょう。

プルトニー蒸留所はかなり以前からこのような蒸留所限定のボトルがありましたが、いずれも高いクオリティのものばかりです。スコットランドの北の果までわざわざ訪れるのは結構大変なのですが、風景も良いですし、スコットランド旅行の際には是非訪れてみることをおすすめします。

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