ニューポット感の不思議

ウイスキーのテイスティングに関して、「ニューポット感ってどんなの?」という質問がありました。

ニューポットとひと言で書いても、どのあたりをニューポット感と取るかは人それぞれなので何とも難しいところで、また、香味を文字で表現するのはとても難しく、実際にそれを食べたり飲んだりするのが一番理解が早いわけですが……。

というエクスキューズをした上で、強いていえば焼酎のような、といったところでしょうか。樽などで寝かせていない、普通の麦焼酎あたりを試してもらえれば分かるかと思います。蒸留所に見学に行ったことがあれば、蒸留器(ポットスチル)の部屋に充満している、穀物やフルーツのニュアンスが詰まった甘い香り、あれがニューポッティな香りという風に考えています。

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実際、ウイスキーのニューポットというのは焼酎みたいなものです。ウイスキーはそれを何年間も樽で寝かせることによって、樽の風味やその他諸々の化学反応であの複雑な味や香りが出来上がるわけです。

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アベラワーのニューポット。一番左のフォアショッツは不純な成分が多く飲めない。

と、ここまで書いていてふと思ったのですが、ニューポット感が消える、というのはいったいどういうことだろう。そもそも、なぜニューポット感は(どちらかといえば)マイナスなニュアンスとして捉えられるのでしょうか。

 

ニューポット感が消える理由とは

ニューポット感は樽で寝かせている間、時間とともに消えていくようですが、そもそもなぜ消えるのでしょうか。このあたりの詳細は「ウイスキーの科学 -知るほどに飲みたくなる「熟成」の神秘- / 古賀邦正」を参照されたいのですが、

樽熟成中の空気との化学反応により未熟感が消えていく

というのが答えになるようです。

熟成によって起こるニューポット由来成分の化学反応には、

  • 酸化反応
  • アセタール化反応
  • エステル化反応

の3つがあることが知られている。

 

樽熟成による「呼吸」によって空気と触れ合っていくなかで、ニューポットな香味が変化していって消えていくわけですね。変化していった結果として現れてくるのが他の香味、特にエステリーな香味というのは華やかさ、フルーティさ、熟成感のある香りとして認識されやすいものです。

  • カプリル酸エチル……発酵を想起させる甘いアプリコット・パイナップル様
  • カプロン酸エチル……ややフローラルなアップル、バナナ、パイナップル
  • イソアミルアセテート……バナナやメロンのような甘い香り
  • フェネチルアセテート……バラやカーネーションなどの快い花の香り
  • β-ダマセノン……リンゴやバラにも含まれる、華やかな熟成香にも感じられる成分

同時に、未熟成香はどんどん反応で消滅していき、アルコールとともに樽の外へ蒸散、ニューポット感が薄れていくわけですね。これが樽熟成の力、時間をかけて寝かせる理由の大たるところでしょう。しかも空気と反応させていかなければならない。瓶に入れているだけでは変化していかない理由でもあります。

 

ニューポット感がマイナス要素な理由

(先におことりしておくと、もちろん人によってはニューポット感を好ましく思う方もいらっしゃるでしょう。嗜好は人それぞれですので、どちらが優れているか、プラス要素なのかマイナス要素なのか、ということも本来は論じる必要はないのですが。)

これは、我々がウイスキーに求めるところは何かということになるかもしれません。ウイスキーは樽で何年も寝かせることよって、円熟したまろやかさ、複雑な香り、多種多様な味わいが生まれてきます。求める香味は、これら「熟成を経ることによって手に入るもの」であって、そうでなく未熟な要素は不必要なもの、と認識しているのかもしれません。

ニューポットはその名の通り若さや未熟感を代表するニュアンスです。ウイスキーには熟成感を求めるのが基本であるならば、未熟感はその対極であり、それはマイナス要素としてとらえられることになる。これが理由ではないでしょうか。
またはもっと単純に、ニューポット感はまろやかさが無くとげとげしい、刺激が強いことから不快な部分があるのかもしれません。しかし(あくまで個人的な感想ですが)、ニューポットもしっかりと加水調整をしてやると、そんなにとげとげしさは無いですね。むしろ穀物由来のまったりとした甘さを感じられます。特に良い原酒をつくっている蒸留所では。このため、この理由は少し弱いような気もします。

 

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ハイランドパークのニューメイクスピリッツ。流石に焼酎のような味で熟成感の欠片もないが、麦感とバナナなどのフルーツ感はしっかりで原酒の良さが伺えた。

 

熟成の不思議

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結局、熟成のプロセスをつぶさに解明していかないかぎりすべてが明らかにはならないわけですが、熟成によってニューポット感が消えていくのは本当に不思議なものです。ウイスキーの味わいとその表現の幅を広げるにあたっては、一度ニューポットを飲んでみるというのも良い経験になると思います。「これが若さか……」ということをしっかりと認識することによって、他のウイスキーでも、若いニュアンスを拾う時の助けになるでしょう。

 

 

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