ウイスキーの技術進歩と伝統と 

技術の進歩は最先端の分野だけではなく、一次産業や二次産業の伝統的な部分にもその効果が波及していくもの。酒造りの現場にも、情報産業の技術が応用されていくのは現代としては既に当たり前、でしょうか。

この記事を見て、そんな印象がよぎりました。

もろみの品温を管理する「IoT酒造品温モニタリングシステム」 from @IT

こちらはウイスキーではなく日本酒の分野の話ですが、酒造りに重要な温度管理にIoTを利用しようというもの。大手ではこういったコンピュータによる管理手法は既にとられていることと思いますが、昨今はやりのIoTを用いた、従来よりも小まわりの利くシステムは、やや規模の小さめな酒蔵にも恩恵を与えていくことになるでしょう。いやはや、酒造りも進歩が激しいですね。

 

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ウイスキー造りの現場でも、大手系列などでは随分昔からコンピュータによる管理が主流となっていて、蒸留所の全行程のオペレーションが2名でもできるという状態になっています(実際には何かあったときのバックアップということで1名でも実行可能だそう)。これらのシステムは、さすがにやや旧式なこともあるでしょうからクラウドやIoTへの対応はまだかもしれませんが、コンピュータ制御による安定化は大量生産と均質なクオリティを容易にしてきました。

その結果でしょうか、90年ころからのヴィンテージではどの蒸留所も全体的にレベルが上がっていて、以前よりもあからさまな外れやオフフレーバー満載のものは少なくなったように思えます。80年代がいろいろと酷すぎた、ともいえるかもしれませんが……。

 

でも、本当にこれで良かったのでしょうか? 確かに全体的に品質は上がり、どの蒸留所も美味しいモルトが出て来るようになりました。でも何となく、どこの蒸留所も似たような味わいになってきていませんか? 優等生的に美味しいようには思いますが、ハウススタイルと言われるような個性は、なりを潜めてきてはいませんか? 自分にはどうもそんな感覚があります。

 

現場でウイスキーを作っている方々の中にも、そのようなことを思っている人がいるのでしょう。ここ最近、旧来の作り方に戻してきている蒸留所があります。麦を古代種のベア・バーレイに変えたり、フロアモルティング100%にしたり、といったようにです。

これらにどんな効果があるかといえば、ベア・バーレイはデンプン質が少なくアルコール収量が低い、逆に言えば雑味が多くなる。フロアモルティングは、モルトスターでの製造に比べれば発芽がどうしても不均一で、絶対的な安定度でいえばかなり落ちるでしょう。

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スプリングバンク蒸留所のフロアモルティング。通常ラインナップのボトルでは、これらのモルトはごく一部のみ使われている模様。

 

先日紹介されていた、1947年の蒸留所の様子を収めた動画。1:30頃にフロアモルティングの様子が映っています。これだけの量を均等にモルティングするなんて、とても無理ではないでしょうか。

 

こうした不安定、不均質なものが、逆に個性的だったり芯の太い味わいになるのではないでしょうか。コンピュータ管理された均質なものは、どうしても突き抜ける要素が少ないように思えるのです。

もちろん、必要なところには様々なコンピュータの恩恵を使うべきだと思います。が、どうしても効率を犠牲にした部分が必要になるとも思うのです。将来、複雑さを残したモルトがどれだけ味わえるのかを考えると、古典的なやりかたを伝統という形でうまく残していって欲しいですね。

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