月別アーカイブ: 2017年8月

スコッチウイスキー税率引き下げの動き

いささか旧聞となりますが、イギリス議会にスコッチウイスキーの酒税を引き下げるよう要請する動きがあります。

End the Scotch ‘Supertax’ of nearly 80% via SWA

これ自体はもう2年くらい前からロビー活動などをしているようですが、Brexitのタイミングに合わせてなら推進しやすいからというのもあるでしょう、また最近は活発化してきているようです。

 

スコッチウイスキーの税率は、ややこしい話を割愛して簡単に表すと次のようになります。

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Image via WHISKY IMPRESSIONS.com

特に、£13程度の普及帯ボトルの場合は税率が80%程度にもなります。買ったボトルの8割が税金かと思うと、ちょっとやってられませんね。高額ボトルの場合はもっと割合が下がります。これは、酒税はアルコール分にかかるため、ボトルそのものの値段にかかってくるような消費税やVAT(付加価値税)とは異なる性質によるからです。

UKやアイルランドでは、他の西欧諸国と比べても酒税が高い。次の表が分かりやすくまとめられていました。

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Image via Telegraph

確かに、ここまで高いとなると、どうにかして欲しいと思うのは必然ともいえますね。税率の引き下げは、まずは2%程度を目標に進められているようです。スコッチウイスキーの税率が低くなることで、最終的には我々海外のエンドユーザにどれほどの恩恵にあずかれるかは本当に些細なものかもしれませんが、少しでも安く手に入るなら嬉しいというのが本音です。

 

さて一方で、日本の酒税についてはどうでしょうか。一般的に「1杯」と考える量で酒税額を計算してみました。

ビール                  350ml・・・ 77.0円
日本酒                 180ml・・・ 21.6円
ワイン                180ml・・・ 14.4円
ウイスキー(40%)    35ml・・・ 14.0円
ウイスキー(48%)    35ml・・・ 16.8円

こうして見ると、ビールの酒税が恐ろしく高いことがわかりますね……。ウイスキーの税率はまだ低めに見えます。先の表にあるとおり、UK国内でのウイスキー1杯は54p(£1=140円で 約75.6円)ですから、それを考えても、やはり日本のウイスキーの税率はやや低いと考えても差し支えないかと。

なお、昨年2016年にニュースにもなったとおり、日本の酒税は改正されてこれから変化していくことになっていますので、上記の金額も変わっていきます。2017年6月には一部改正されてビールの税金が変わってきています。あくまでもご参考までに。

 

税収は国にとっては重要で、そのお金で様々な事業が進められていくわけですから何でもかんでも税金が~~とは言いたくはないですが、それにしても、ここまで税金として取られなければならない理由っていうのもなんだか釈然としなくて、いち消費者からみると税金高い、と言いたくなってきてしまいます。酒に限らず、煙草、ガソリン、自動車、土地、家、しまいには温泉に入っても税金がかかる始末(正確にはちょっと違いますが)。なんでもかんでも消費したり持っていたりすると税金がかかる、とれるところからとってしまえ的な発想が見えてしまうからでしょうかね、嫌になるのは。せめて適切に使ってもらって、ちゃんと良い事業で国を支えていってもらいたいものです。

 

ずいぶん小難しい話になってしまいました。飲む時くらいは税金のことなんか気にしないで愉しみましょう。

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アードベッグの新商品 Ardbeg An Oa (アン・オー)

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アードベッグから、新しく定番商品としてリリースされる “Ardbeg An Oa” の情報が出てきました。UKでは9/1から発売されるということで、徐々に日本にも入ってくることと思います。

定番商品ですのでそこまで冒険した味わいではないと思いますが、new charred oak、PXシェリー樽、ファーストフィルバーボン樽で熟成させた原酒のヴァッティングということで、Ardbeg TEN よりはややスパイシーかつシェリー樽の甘やかな方向に振れているかな、と想像しています。アードベッグファンはマストバイなボトルでしょう。

 

個人的に気に入っているのは、An Oa (「アン・オー」もしくは「アノー」)というネーミングで、これはアイラ島南西部にある Mull of Oa (オー半島)が由来となったものです。この Oa は、初めてアイラ島を訪れたときにレンタサイクルで1時間以上かけて走っていったのですが、アイラ島で蒸留所以外の観光場所としては個人的にイチオシの場所です。

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ヨーロッパ的な荒涼とした風景、というイメージそのものが体験できる場所で、駐車場からモニュメントがある半島の先までの小一時間ほどのフットパスは、ちょっとしたファンタジー世界の冒険者気分が味わえます。例えるなら、少し古いですがゲームの「ICO」や「ワンダと巨像」の世界。もしここを馬に乗りながら歩けたら、まさにワンダの世界でしょうね。モニュメント以外に何もないですが、その何もないところが逆にオススメな場所です。

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そんなわけで Oa の名前を冠したこちらのアードベッグ、個人的にちょっと気になっているところです。まあ、Mull of Oaの名前と味わいにどんな共通点があるのかは定かではありませんが。

もしアイラ島に行かれることがあれば、是非 Mull of Oa にも脚を運んでみて下さい。車でなら、ポートエレンから一時間弱で到着できます。レンタサイクルですと、アップダウンが激しいのでちょっとした覚悟が必要です。あと、ポートエレンの町で水を買っていくのを忘れずに!

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メーカーズマーク プライベートセレクト 萌木の村 ポールラッシュ生誕120周年記念

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Maker’s Mark Private Select (OB, “Paul Rusch’s 120th Birthday”, 55.5%)

香りは典型的なバーボンらしさ、メロン、糖蜜、酸味のあるリンゴ、清涼感のある樹木の香り、焦がしたトーストにハチミツがけ、メンソール様の爽やかさ。

味わいはとろりと甘い、青リンゴ、杉のようなやや刺激的な樹木感、徐々にピリピリとブラックペッパー、少しミント系のハーブ感、鼻抜けに焦げた木材、カラメル、青いハーブ感とブラックペッパーが続くフィニッシュ

【Good/Very Good】

清里は萌木の里のオリジナルボトル。同地の発展に貢献したポール・ラッシュ氏の生誕120周年を記念したボトルです。こちらはくりりんさんとバーボンを小瓶で交換する機会があり、その折に頂いたものです。くりりんさん、ありがとうございます。

詳細についてはくりりんさんの記事がとても詳しいため、そちらをご参照下さい。

香り味ともに典型的なバーボン、といっても差し支えないと思いますが、総じて高いレベルのバーボンです。アタックはさすがにハイプルーフらしく強めではあるものの、ややトロっとした口当たりがそれを緩和し、ボディも軽めでさらっと流れてくれます。度数からマッチョなラガーマンをイメージしましたが、なるほど、そこは牧師様の記念ボトル、温和で整ったところを感じさせてくれます。

リンゴ感や独特の胡椒のようなピリピリとしたところが際立っている感じ。このバーボンは単体でストレートでも良いですが、肉料理なんかとも相性が良さそうです。そういえば以前、フォアローゼスの試飲会では果実のリンゴと合わせて飲むととても良くマッチしたのを思い出しました。おそらくは新樽によるバーボン独特の香味が、リンゴなどと相性が良いのかな、などと考えています。

カリラ 18年 1997-2016 ウイスキーファインド 山海經シリーズ “精衛填海”

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Caol Ila 18yo 1997-2016 (WhiskyFind, “山海經/精衛填海”, Sherry Butt Cask#2, 40%)

香りは白い海岸を思わせる塩とヨード、爽やかなヨーグルト感、バニラ、レモンの皮、ビターオレンジ、とてもバランスが良い。

味わいは柔らかめのタッチで、塩たらこ、素朴な麦感、控えめなオレンジなどの柑橘系フルーツ、ミドルからミネラル感、再び塩気とバターが現れ、ピート感と合わさっていくフィニッシュ。

【Good/Very Good】

台湾の新興ボトラーズ、ウイスキーファインドが詰めたカリラ18年。

90年代後半のカリラ、というかいつの時代でもカリラは安定した品質を提供してくれますが、こちらもとても良いカリラでしたあ。派手さはなく、落ち着いているけれどもアイラモルトの良いところを凝縮したような味わいで、バランスも良く飲みやすいボトルでした。

加水ではない度数落ちの40%ということなのですが、さすがに18年でそこまで落ちるのかはちょっと不思議な気もしますが……。ちなみにシェリーバットなのですが、あまりシェリー樽のニュアンスが取れませんでした。この日はマッカランやストラスアイラなど良質のシェリーカスクものが多かったためか、軽めのシェリーのニュアンスが拾えなかったようにも思えます。

ダルユーイン 1980-1999 マキロップチョイス

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Dailuaine 1980-1999 (Mackillop’s Choice, Cask#1236, 55.2%)

香りはメロン、青い草、バニラ、プレーンなオーク樽、少しメンソールのニュアンス。

味わいはややパワフルなアタックで、バニラアイスのような甘さと柑橘類や梅のような酸味、少しオイリーな乳製品、素朴なオートビスケット、ホワイトペッパーが刺激的に残るフィニッシュ。

【Good/Very Good】

ダルユーインはどういったところがハウススタイルなのか、今ひとつ明確に理解できていないところ。香りにメロンや青い瓜的なニュアンスが特徴的ですが、一方で味にはあまりメロンっぽさは無く、プレーンなバーボン樽の良い部分が出てきている印象でした。20年弱という長熟ではない熟成が樽感の強さを回避しているのでしょう。

80年頃のモルトとなると近年では30年オーバーになるわけで、どうしても過熟による樽の強さにつながってしまいがちです。そう考えると、中熟の飲み頃のモルトは過去のリリースでないと味わえないわけで、こういったボトルで往年の味わいを勉強するのも難しくなってきてしまいました。貴重な経験をありがとうございます。

ところで、マキロップチョイスというとどうしても思い出してしまうのが、某酒屋で投げ売りされてしまっていた時期があったこと。確かにその頃は他にもっともっと素晴らしいモルトがひしめき合っていたため、マキロップチョイスはそこまで注目されることがあまり無かったように思います。結果的にその投げ売りの印象から「安かろう悪かろう」のイメージが付いてしまったように思います。しかし、このボトルは良い香味で素晴らしいものでした。飲まないで印象だけで語ってはいけませんね。

 

グレンモーレンジ 10年 1981-1991 ネイティブロスシャー

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GlenMorangie 10yo 1981.02.05-1991.04.17 (OB, The Native ROSS-SHIRE, Cask#978, 59.6%)

香りはツンとくるアルコールの刺激、レモン、カスタードやバターの風味がケーキのよう、奥に紫蘇のニュアンス。

味わいはプラムジャム、薄めた塩バター、乾いたオーク感がしっかり、ミドルからレモンバームとカスタードクリーム、ピリピリとホワイトペッパーの刺激、やや軽めのタッチで柑橘系とオーク香が続くフィニッシュ。

【Good/Very Good】

グレンモーレンジのネイティブ・ロスシャー10年。オフィシャルのシングルカスクでカスクストレングスというのは、当時としては相当な意欲作だったことでしょう。時期的には魔の80年代を過ごし、90年代で少し上向き始めるかどうか、といったところ。もしかしたら、売り手側も「何か変わらないといけない」と思ったのかもしれません。

このあたりは1991年に詰められた余市のシングルカスクと似たような経緯があるように思えます。

ボトリング後25年を経てなお荒々しくパワフルなところがあり、当時はもっと強く個性的だったのかもしれません。一方で少しボディにかけて軽めなのは、経年によるものか短熟によるものか、どちらかだけでなくそれぞれのミックスと言う感じ。紫蘇やレモンバームのような独特のニュアンスがありつつも、飲んだ瞬間に「あ、モーレンジらしい」と思わされたところに、近年のモーレンジとも共通するハウススタイルがあるのだなと気付かされました。

そういえば1981年ということでマイヴィンテージでした。最近はめっきり見かけなくなってしまった年代ですが、こうしてまたひとつ味わえたことに感謝です。Kさん、ありがとうございました。

 

ストラスアイラ 1953-2010 G&M 蒸留所ラベル

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Strathisla 1953-2010 (G&M, Distillery Label, 43%)

香りはカラメル、高貴さは無いが往年のシェリー感、ダークチョコ、プルーン、アーシー、ニガヨモキなどのハーブ、タバコの葉、少しタール感がありオイリーなニュアンス。

味わいは柔らかいタッチで、カラメルの甘さ、カカオチョコレート、種有りのプルーン、ミドルから少し粒状感があり、砂糖なしのココア、土気やミネラル感、タール、燻した肉にブーケガルニが添えられているよう、とても複雑なフィニッシュ。

【Very Good】

GMの蒸留所ラベルのストラスアイラは様々なヴィンテージのものがリリースされていますが、1953年蒸留の2010年ボトリングということで、50年オーバーの熟成ということになります。当然自分よりも先に生まれているわけで、そう考えると本当にめまいがしてしまいそうでした。

度数的にも実際の飲み口もかなり軽めではあるのですが、内容は重々しく複雑。全体的にシェリー感が支配的、と思いきやその中でも様々な要素が複雑に絡み合い、とてもすべてを拾うことができませんでした。やや野暮ったさも含まれているところがマッカランとは別の方向性で、複雑さはマッカラン以上でした。本当に凄いモルトです。

 

G&Mのこのシリーズは、同一ヴィンテージの複数樽ヴァッティングなのでしょうか。シングルカスクであればそのように明記しそうですし。いずれにしても、これまでのリリースから考えて同系統のシェリーカスクがかなりの数、G&Mには存在していたことになります。そして、これらのストラスアイラは2005年頃~2012年頃に結構な数がボトリングされリリースされていたように記憶しています。

そこで気になるのが、これらを払い出した後の空樽はどうなったのか、ということです。流石にかなりの長期間熟成に使われてきたこともあって、そのままリフィルで使うことが難しいものもあったかもしれませんが、きっと他の原酒に使われたものもあると思うのです。

そうなると、20年後くらいには良質なシェリーカスクのリフィルがリリースされるかもしれませんね。樽のポテンシャルがどの程度残っているのか、親が良くてもその子供が良いとは必ずしも言えませんが、将来にちょっと期待してみても良いんじゃないかな、なんて思うわけです。

近年のシェリーカスクのマネジメントも凄い進歩ですが、往年のシェリーカスクの再利用もありえるのでは、ということで将来のモルトに期待してみたいと思います。