月別アーカイブ: 2018年5月

パラフィルム実験続報

先日はじめたパラフィルムの実験の続報です。

15日ほど経っていますが、今の所は水量の変化はほとんどど見られません。水は放っておけば蒸発するわけですが、それにしてもボトルの口があまり大きくないので空気と触れる部分が小さく、蒸発しにくい状態ではあります。まあ当然といえば当然ですね。洗面器のように空気に触れる部分が広ければもっと蒸発しやすいと思います。

それはさておき、気になったのはパラフィルムの内側に水滴がついていることです。

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外部と内部の温度や湿度の差などで内部の水蒸気が外側に出ようとしているようですが、パラフィルムがこれを止めていることが分かります。となると、パラフィルムは水分を通さない、という結論にしても良いのでしょうか。

これは少々難しいところです。「完全に通さない」ことと「ほとんど通さない」ことの差は結構大きいからです。水蒸気を「ほとんど通さない」ところに水蒸気があつまって水滴になる程度の大きさに結合しているだけかもしれません。

よくよく考えてみれば、もう1セットフタをしないものを比較用に準備しておくべきだったかもしれません。蒸発量の比較をとれば、どの程度蒸発を防げるのかが分かるはずですから。今から実験をし直すべきでしょうか。

ちなみに、この状態で逆さまにしても水はこぼれません。しっかりと蓋ができていることが分かります。短期的な観点では水分は通さないのは明らかでしょう。様々な実験などでもその防水性が用いられているわけですから。しかし、長期的な観点ではなかなか判断は難しいようです。

定期的に新しいものに交換して巻き直した方が良いのかもしれませんね。

スプリングバンク10年 オフィシャル 2017年新ラベル

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Springbank 10yo (OB, +/- 2018, 46%)

香りは透明感のあるハチミツ、マスカット、薄めのオレンジ、ユーカリ、奥に石灰とピート、微かにシロップ漬けの桃、みたらし醤油のニュアンス。

味わいは軽やか、バタースコッチ、ややクリーミィ、バニラ、ミドルからホワイトペッパー、ミントのようなハーブ感、軽い感じのピート、ミネラル感と柑橘に加えて微かな桃を感じるフィニッシュ。

【Good/Very Good】

2017年にラベルチェンジしたスプリングバンク。ラインナップは10,12,15,18年と従来と変わらなかったものの、ラベルがポップというか少々前から流行りのフラットデザインを取り入れたようなものに代わりました。「あんまり好きじゃない」「ダサい……」等のコメントがちらほら見受けられましたが、というか自分の所感ですが、まあそれはそれとして。実はその新ラベル10年がとても良い出来であるという話も良く聞こえてきていました。先日、友人と一緒に飲む機会があり、噂通り美味しかったところに近場で見つけたので1本買ってきてみました。

前振りが長くなりましたが、香味は若さもあるもののピート感しっかりで複雑性があり、フルーツのニュアンスも良く出ていて総じてバランスが良いまとまりに仕上がっています。46%という加水がちょうど良く作用しているのか、飲みやすさと飲みごたえが両立しているのも地味に良い。10年という熟成年数からはちょっと信じられないくらいの複雑さとバランスの良さです。スターター~中締めとしてちょうど良く、コスパの良さからオールマイティに使えるボトルと言えるでしょう。

ひと口飲んだときに感じたのは、キルケラン12年との親和性でした。ちょうど手元にあったため飲み比べてみると、フルーツのニュアンスやピート感、やや石灰っぽいミネラル感なども共通しているように思えます。このあたりは同じスプリングバンク(J&A ミッチェル社)が手がけているためかと思いますが、それにしても設備はまったくの別物なので、ここまで似てくるのも不思議は残ります。ヴァッティングの方向性が似ているのでしょうか。不思議ですね。

リリース当初は噂を聞きつけた愛好家がこぞって買ったためか手に入らない状態になっていましたが、最近はまた流通し始めているようです。一方で、生産量には限界があり日本市場は最近あまり重要視されていないためか輸入の割当量が少なく苦労されているような話もちらほら伺います。今後の傾向は分かりませんが、継続的に輸入されることを願いたいですね。

 

フェッターケアン 33年 1975 ザ・テイスター

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Fettercairn 33yo 1975 (Scotch Malt Sales “The TASTER”, Cask#2314, 58.5%)

香りはローストしたナッツ、バターと麦のブラウンルー、ヌガーやキャラメル、微かにカモミールティー、白い花を思わせるフローラル。

味わいはねっとりとしたオイリーさ、バタースコッチ、マジパン、シロップ漬けの洋ナシとドライアプリコット、ミドルから白胡椒と薄めの紅茶のニュアンス、余韻にかけてハーブティに代わり意外とキレが良くまとまるフィニッシュ。

【Very Good】

スコッチモルト販売のザ・テイスター シリーズからフェッターケアンです。

「フェッターケアンらしさ」ってこれだったよね、と思えるようなオイリーさとほっこりした麦感。ともすれば野暮ったい味わいになりそうですが、そういうわけでもなく洗練された味わい。飲みごたえもちょうど良く、バランスが整っている印象です。

ザ・テイスター はウイスキー業界で著名な方がチョイスしたシリーズ。今年もトミントール1996がリリースされるなど、かなり長期に渡り続いているシリーズですね。このボトルをチョイスしたカーステン・エールリヒ氏はウイスキーフェアの主催者ということで、流石の選定眼。良い原酒を引っ張ってこれるコネクションが、こうして日本向けに良いボトルをリリースして頂ける原動力になるわけで、モルト飲みとしては嬉しい限りです。

ザ・テイスター シリーズはシンプルさと独特のロゴがスタイリッシュなラベルが好みです。シリーズとして揃って並んでいたらさぞかし壮観でしょうね。味わいも素晴らしかったので、やはり買っていなかったことを後悔するのでした……。

響・白州の終売に日本のウイスキー産業の未来を考える

先週、大きな驚きとともに報じられた、サントリーの白州12年と響17年の販売休止。朝晩のニュースでもかなり大々的に取り上げられたので、ウイスキーファンだけではなく世間一般の方々まで知るところとなりました。

2015年にニッカが、余市と宮城峡の10年~20年を終売にしたときもニュースにはなりましたが、ここまで扱いが大きくなかったと記憶しています。ニュースでも流れたとは思いますが、今回のサントリーの件と比べるとかなり落ち着いていたように思います。

思うに、日本人にとってウイスキーとはサントリーのボトルのことなのでしょう。山崎、白州、そして響の名前は、ここ数年海外でも高い評価を受けているというウンチクも含めてそこそこ広く浸透しているのでないでしょうか。ニッカはどうしても知名度では今ひとつのようで、そのあたりの差が今回のニュースからも感じられます。

ちなみに、2014年時点の統計によると、ウイスキーの国内シェアはサントリーが全体の43%、ニッカが25%、他の国産ウイスキーが19%、輸入ものが13%という比率。サントリーとニッカの差は確かにかなり開きがあるものの、思ったよりもサントリー独占というほどではありません。特にここ数年は「その他の国産」に含まれるクラフト蒸留所が健闘しており、今後数年はシェアを伸ばしていく傾向にあると考えられます。

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さて、日本ウイスキーの海外での高評価や原酒不足に伴う値上げ傾向もあって、ウイスキーは輸出量とともにボトル単価もぐんぐん上がっていっています。これはこれで良いこともあるのでしょうが、日本人が国産ウイスキーを買えない、という事態にもなりかねません。いうまでもなく、ここ20年ほどは経済も停滞し給料は上がらない可処分所得は増えない税金は高くなる etc etc… とにかく自由に使えるお金が大きく増えた、という感じはありませんよね。しかしウイスキーの価格は上がり、流通も少なくなって簡単には入手できない状況にあります。日本人が買うには高嶺の花になってしまうのでしょうか。

他のお酒の話になりますが、コニャックはその95%が輸出向けという状況で、主にアメリカと最近は中国の人気が高い。完全に海外向けの酒になっています。シェリーも生産量の80%はスペイン国外に出ていて、生産地であるアンダルシア地方以外ではメインのお酒ではない状況。日本のウイスキーについては手元に数字がないのですが、50%以上は輸出向けになっていると推測します。今後その方向性はどんどん加速し、90%程度が海外向けでしかもとんでもない高値になっているかもしれません(今でも充分高いと思いますが)。

ウイスキーに限らずですが、お酒というのは低価格にすると需要が減る、という不思議な特徴があります。高級品だからこそ保てる市場というのが存在するのですね。それは主に贈答品だったり、海外からのお土産だったりと、ちょっと特別な意味合いを含ませるという場合に、高級なお酒というのは必要にされるのです。かつてジョニ黒が10000円という高級品だった頃、それは確かに高級品だからこそ大事にされた時期がありました(もちろん今から考えても当時のボトルは間違いなく美味いですが)。税制が変わりスコッチが安くなった結果、高級品だからこその市場というのが消えてしまい、日本のウイスキー需要が大きく減退した原因のひとつとも云われています。

これらの歴史を踏まえて各メーカーも路線を考えているのであれば、日本の大手のウイスキーは今後安くなることは考えにくいですし、むしろどんどん高くなる一方でしょう。そしてそのほとんどが、好評な海外にまわされていくのではないでしょうか。そんな未来しか見えてきません。

今回のサントリーショックは、後から見ると日本ウイスキーの重要な転換点だった、という気がしています。

MALTS.JP のリニューアルとキャンベルタウンの行方

ディアジオ(MHD:モエ ヘネシー ディアジオ)が運営するシングルモルトの情報サイト『MALTS.JP』がリニューアルしていました。

http://malts.jp/

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以前からディアジオが所有する蒸留所の紹介サイトとして機能してきており、シングルモルトの各地域を代表する「クラシック・モルツ」をプッシュするための蒸留所やボトルの紹介、ツアー情報などを発信してきていました。一方で、デザイン的には元々あった海外向けサイト(MALTS.COM)をそのまま日本語化したようなつくりで、手抜き感があったことは否めず、ユーザフレンドリーとは言い難いつくりだったと記憶しています。

今回のリニューアルでは、シンプルながら見やすくポップで明るい造りになっていてイメージがガラリと変更。前は黒が基調のサイトだったので、白主体の明るいサイトになって一気に華やかになりました。あまりごちゃごちゃと説明はせず、必要最低限の情報でシングルモルトを紹介しています。画像が多いのも、蒸留所や各ボトルのイメージのしやすさに繋がっていますね。

というわけでかなり良いリニューアルなんじゃないかな、と思っていたところでちょっと見慣れない言葉が……。

「シングルモルトスコッチ 6つの生産地」

スコッチの地域区分といえば、ローランド、ハイランド、スペイサイド、アイランズ、アイラ、そしてキャンベルタウンの6つですよね、と思って見ていると、

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キャンベルタウンは……どこへ消えた……。

 

なんと、キャンベルタウンという名前は存在せず、あるのは「Coastal Highland – ハイランド沿岸」のみ。地図をよくよく見てみると、キャンベルタウンはこのハイランド沿岸に含まれているようです。

なんと天下のディアジオさん、自分が蒸留所を持っていない地域となれば歴史的な区分も無視してしまうというわけですか……。

まあ確かにキャンベルタウンはごく狭い地域に限られますし、稼働している蒸留所も3つしかないので今ではかなりマイナー感が漂ってしまっていますが、歴史的にみれば一大産業地として30以上の蒸留所が稼働していた時期があり、そこから衰退してしまったという推移も含めて、やはり重要な地域だと思うのです。

そもそも、スコッチウイスキー協会(SWA)がキャンベルタウンという地域の重要性を説いて、スプリングバンクとグレンスコシアの2つだけだったところになんとか3つ目のグレンガイル蒸留所(キルケラン)をオープンさせたという話もあります。SWAによれば「各地域最低3つの蒸留所があることが望ましい」ということで、資本的にも安定していたスプリングバンク(J&A Mitchell)がグレンガイル復活に乗り出した、というのが十数年ほど前のお話。現在はグレンガイルも見事に軌道に乗り始めキルケラン12年のリリースを続けていますので、面目躍如といった感があります。

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キャンベルタウンの街並み。地方にしてはかなり大きく、都市機能が集中している。

天下のディアジオさんも、自分が蒸留所を持っていない地域を無視するのではなく、新しく蒸留所を建てるなり閉鎖蒸留所を復活させるなりで気概を見せてくれても良かったのではないかと思いますね。

 

ちなみに本家のMALTS.COMでは、ハイランドという大きな括りで扱われていますが、説明書きを見ると Coastal Highland や one foot on the islands といった記載があります。ハイランドという括りは大きすぎるといえば確かにそうなので、キャラクターを表現しようと思うとこういった記載になるのでしょう。

https://www.malts.com/en-row/our-whisky-collection/clynelish/clynelish-14-years-old/
https://www.malts.com/en-row/our-whisky-collection/oban/oban-14-years-old/

 

時代が変われば介錯も変わるものですし、歴史は強者によって造られるというのも往々にしてあることではありますが、なんだか歴史の改ざんをリアルタイムで見ている気がしてなんだかもやもやとした気分になるのでした。

 

タリスカー 15年 1978-1993 ケイデンヘッド

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Talisker 15yo 1978-1993 (Cadenhead “Acthentic Collection” 56.4%)

香りはやや荒さを感じるオールドシェリー、プルーン、ドライフィグ、やや強めのシナモン、コリアンダー、微かに醤油のニュアンス。

味わいはやや粗野な口当たりの濃厚なオールドシェリー、少し硫黄感、シナモンケーキ、強めに煮出した紅茶、鼻抜けにプルーンなどの様々なフルーツ感が通り過ぎ、やや収斂味を伴いながらピートとスパイスが締めくくるフィニッシュ。

【Very Good】

90年代にケイデンヘッドがリリースしていたオーセンティックコレクション、通称グリーンケイデンのタリスカー15年です。同シリーズはプレーンな樽感と中熟程度の熟成から、クリアな麦感が主体のものが多い印象でしたが、このボトルは濃厚なシェリーカスクでした。

やや強めかつ荒々しさを感じる昔のシェリーカスクで、ボトリング約25年という時間を経てもまだまだパワフルさは失われていません。恐らくリリース当初はもっとパワフルな味わいだったものと思われ、かなり飲み疲れするボトルだったのではないでしょうか。

そう考えると、今現在リリースされている濃厚ボトルも、時間が経ったときにどのように変化していくのかは楽しみなところではあります。もっとも、麦感やシェリー樽などの基本要素が異なるため、同じような変化は期待できないですが、もしかしたらとんでもなく化けるボトルがあったりするかもしれません。というような夢を掻き立てられるボトルでした。

 

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ロングモーン 1969 G&M カスクシリーズ

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Longmorn 1969 (G&M “CASK Series” for Japan, 62.9%)

香りはライチやパイナップルなどのとてもナチュラルで作為的でないトロピカルフルーツ感、バニラ、ハチミツ、セージやミントのハーブ感、少しシナモン、微かに青いバナナのニュアンス。

味わいはライチ、マンゴスチン、桃、ミドルから白胡椒の刺激、白ワインの様な爽やかさと青みがかかったニュアンスが奥行きを作る、シナモンやアニスのようなスパイス感を伴うトロピカルフルーツの幸福な余韻。

【Excellent】

有限会社ウイック経由で日本に入ってきたG&Mのロングモーン1969。

その香味は、目まぐるしく飛び込んでくるトロピカルフルーツを中心としたフルーツ感。完熟から青さの残るところまでの多彩さ、それを支える麦のボディ。60%オーバーとは思えないソフトな口当たり。ボディは分厚く、余韻にかけて広がるトロピカル感。アタックからリリースまですべてが素晴らしくまさに至福でした。

ただただ凄いとしか言いようがなくて、テイスティング・ノートの語彙が貧弱になってます。

こちらのボトルを飲んだのは初ですが、曰く状態にかなりばらつきがあるそうで、これは大当たりのボトルということでした。たしかに、往年のロングモーンに求める要素がすべて詰まっておりその上で良いバランスを保っている。モルトってこんな香味も持つのか、と改めて感動しました。

口開けでこの素晴らしさ。ですが、これから開いていくのではなく後は味が落ちていく一方、ということもあるようで、かなりピークが短い模様。このあたりのコンディションの把握も難しいですね。

先日アナウンスがあった通り、G&Mは今年2018年に数あるシリーズを整理して5種類に絞ることになっており、このCASKシリーズは終了してしまいます。かなり長い間続いていたシリーズであり、こういった素晴らしいボトルが多かった同シリーズが終了してしまうのはちょっと残念ですが、まあいたし方ありませんね。今このクラスのボトルをリリースするとなると、恐らくハイエンドの「ジェネレーションズ」に分類されるのでしょう。

割と手軽にこんなボトルを手にすることができた時代があったとは、ちょっと信じられませんね。