月別アーカイブ: 2019年7月

トーモア14年 1998-2013 G&M for The Whisky Mercenary Cask#1586

キャラクターの強いトーモア、美味しいボトルでした。

Tormore 14yo 1998-2013 (G&M Exclusive for The Whisky Mercenary, Cask#1586, 50%)

香りは少し過熟気味の柑橘類、グァバ、ヌガー、炒めた玉ねぎ、茹でたキャベツ、パスタを茹でているような、奥にライチのニュアンス。

味わいはオレンジ、ハチミツ、アーモンドヌガー、後半にライチやグァバのニュアンスが少し、やや草っぽさと生木のエグみがあるが、柑橘と合わせて良いアクセントで消える。

【Good/Very Good】

The Whisky Mercenary というベルギーのボトラー向けにリリースされた G&M のトーモア、およそ15年の熟成です。

典型的なバーボンカスクの香味がベースなのですが、香りに独特の果物や野菜系のニュアンスがあるのと、味わいの後半にライチやグァバのような良いフルーツ感があり、面白いキャラクターを持っているボトルでした。どことなく、ベン・ネヴィスやリトルミルのような、南ハイランド周りのケミカル・トロピカルと共通するところがあるなと感じました。

G&MのExclusiveは、以前飲んだJIS向けのグレーバーギーなどもやはり良い出来で、シンプルなラベルであまり違いが見いだせないものの秀逸なボトルが多いな、と改めて感じさせられました。G&Mのストックの懐深さが感じられます。

それにしても、トーモアでこういう面白いボトルがあるとは。もうちょっと没個性的な、線の細い印象を持っていたため、キャラクターの強い味わいは少々意外でした。

カリラ 35年 1983-2018 ウィームス for Cask Club

円熟のカリラ。穏やかで心地よいスモーキーさが印象的でした。

Caol Ila 35yo 1983-2018 (Wemyss Malts “Smoky Nectar”, Hogshead, 46%)

香りは心地良いスモーク、やや穏やかなヨード、ミーティ、オイスターのような魚介、良い塩気のある海産物、ブーケガルニ、少し焦がしたバターのニュアンス。

味わいは柔らかくスモークチーズ、バタースコッチ、貝の旨味、やがてレザーのニュアンスが広がり、少し強めの樽の味、やや黒胡椒が効いたスパイシーなフィニッシュへと続く。

【Good/Very Good】

ウィームスが Cask Club というメンバー向けにリリースしたカリラの35年熟成。加水仕様だとは思いますが、211本とかなり少なめのボトリングは35年の間にかなりの量が天使に飲まれてしまったからでしょう。

内容としては、非常に良くまとまっていてひっかかりのないカリラ。極端にフルーティに寄ることもないですし、ピートやスモーキーさが強すぎることもない、それでいて塩気と魚介の旨味がしみじみ美味いボトルでした。長熟にしてはあまり樽が強すぎないのも好印象です。

カリラではこの手の味わいは割とスタンダードな範囲かとは思いますが、繊細で優美さを感じさせるやや線の細いような香味が、男前なパンチの効いたものが多い最近のアイラ・モルトとはかなり異なっていて、ああ、やっぱり良い熟成をさせるとこうなるんだな、と。久しぶりに長熟で熟成の良さを楽しむことができました。


こちらは、先日のベルギー旅行の際に現地のウイスキーラヴァーとの持ち寄り会で頂いたボトルです。海外での貴重な機会をセッティングしてくださり、またいろいろとサンプル交換などもさせていただきました。今後これらのテイスティングノートを載せていこうと思います。

Many Thanks for Olivier!!

[蒸留所訪問] ベルギー The Owl Distillery part2

前半では蒸留所ツアーの話をまとめました。後半はテイスティングした内容をまとめています。

まあ、先に正直に言ってしまいますと、どれもちょっと今ひとつであることは否めませんでした。

Belgian Owl Single Malt Spirit, 46%
香りに白い花、洋ナシ、少し海苔っぽさが強いか。骨太とは言い難く、やや線の細い印象があるが、加水46%によるものかもしれない。悪い要素は特に見当たらない。全体的にクリーンな原酒。


Belgian Owl Single Malt Whisky 36 months, 46%, First Fill Bourbon Cask
香りに白い花、まだ若さを感じる酸味ある穀物感、サワードゥ、ハチミツ、良いバーボン樽香。
味わいはハチミツ、遅れてサワードゥ、少しライチっぽい果実感、ミドルに乾いた土っぽさ、青ネギのニュアンス、穀物感と酸味が残るフィニッシュ。

そこそこ良い樽感があり、そこまで若さを感じさせない、ほど良い熟成感があるボトル。まだまだこれから本格的に熟成させれば、という気もするが、この後のテイスティングの結果としては、いまのところこのボトルが最もバランスが良い。飲みやすく飽きない作りではあるが、洗練さがない割にやや没個性的であり、評価が難しい。


Belgian Owl Single Malt Whisky 42 months, 46%, First Fill Bourbon Cask
36ヶ月と同系統の香りだが、ねっとりした植物油と糊っぽさがやや強く、セージやディルのような植物系で爽やかさとピリッとした酸味を感じさせる。
味わいもほぼ同系統だが、よりグラッパのようなニュアンス、洋ナシ、スイカ、薄めたハッカ油のようなオイリーさと草っぽさが残る。


Belgian Owl Single Malt Whisky 60 months, 46%, First Fill Bourbon Cask
香りはハチミツ、洋梨、おしろい、塩気とともに少し柑橘のニュアンス。
味わいは線が細く、オリーブオイル、オールスパイス、クローブ、レモンに塩気、ややオイル感が強いねっとりとした感覚が口に残る。

熟成感によるものか、少し重めのニュアンスが強くなってきておりややオイリー。塩気と柑橘のニュンスから、クライヌリッシュのような北ハイランド方面の香味を想起させられるような構成。単熟のハイランド・モルトと言われても違和感はないかもしれない。


全体的に、やはり地ウイスキー感というか洗練されていないというか、酸味のような部分やもっさりした部分が感じられる味わいがあります。ニューメイクの段階では結構クリーンですし白い花のような華やかさや洋梨のようなフルーツ感もありなかなか良いのですが、ちょっと線が細い感じがしました。

全体的な造りや思想は素晴らしいものがあるので、これで味が洗練されていけば文句なしのクラフトウイスキーといえると思います。が、今の段階では今ひとつ感が否めない、というのが正直な感想です。

スタートから15年ほど、現在のポットスチルになってからは5年ほど。ウイスキー造りは年に4ヶ月ほどの期間のみということもあり、まだまだ経験を蓄積していく段階だと思います。今後のクオリティアップに期待しましょう。

なにより、前半記事にまとめた通り、クラフト蒸留所としてのあり方は本当に素晴らしいものですので、ベルギーを訪れた際にはぜひ蒸留所を訪問してみてください。


のどかな場所にある、地元愛に溢れたウイスキー蒸留所でした。

[蒸留所訪問] ベルギー The Owl Distillery part1

先日、ベルギーを旅行してきました。

ベルギーといえばビールですので、主に巡ってきたのはビールの醸造所なのですが、ベルギーでもウイスキーが作られていると知って、できれば訪れてみたいと思っていました。

調べてみたところ蒸留所は7箇所あり、公開しているのは5箇所ほど。どれも気になったものの、多くはビール醸造所やジン&ジュネーヴァ蒸留所との併設の模様。その中で、日本でも手に入り、ビール醸造所との兼務ではないところが気になった The Owl Distillery を訪問してみました。

The Owl Distillery はベルギーの首都ブリュッセルと東の大都市リエージュの間にあり、リエージュに近い場所に位置します。公共交通を使ったアクセス方法としては、電車でVoroux駅に行き2km弱歩くか、リエージュ駅からバスを2本乗り継いでVOROUX-GOREUXバス停から500mほど歩くか、という2択になるでしょう。どちらも1時間に1本程度の本数しかないため、時刻表を事前に調べて行くのがベター。自分はリエージュからのアクセスとなりましたが、電車の方がわかりやすかったですし、歩くのも悪くないと思い電車を使いました。

ちなみに、ベルギーのウイスキー蒸留所の情報はこちらのサイトにまとめられていますので、参考になると思います。

Vorouxの村はずれまで歩いていくと、そこには広大な畑が広がっていました。麦畑の奥に見える建物、どうやらこれがOwl Distilleryらしい。

元は普通の農家の建物だったとのこと。パゴダを模した屋根が入り口に備え付けられていました。

受付に行くと、今回蒸留所の説明をしてくれるイザベラさんが出迎えてくださいました。最初にテイスティング・ルームに案内され、コーヒーをごちそうに。ここでは各種ウイスキーの試飲、ボトルやグッズの購入ができるようになっていました。綺麗でおしゃれな空間ですね。

さて、蒸留所の説明をしていただくのですが、まずは軽く創立の歴史から。何か地元の特産品を、と考えた創立者のEtienne Bouillon氏が、ふたりの地元農家 Pierre Roberti氏と Christian Polis氏と手を組んでウイスキーを作ろうと始めたのが2003年頃。そこから設備を整え、最初はスイス製の小さなポットスチルで蒸留を行い、原酒を作り始めたのが2004年。初期のポットスチルの写真を見せてもらったのですが、ジン用と思われるような形状でかなり小型のものでした。

続いて話は原料となる大麦へ。地元のものにこだわるため、大麦もすべて地元産を使っているのだそう。訪問時に見えた麦畑がまさにその原料となるようで、付近の農家と提携して今では6名、当初の6ヘクタールの土地から77ヘクタールまで広がり、原料確保と安定供給を実現しているそうです。

蒸留所の眼前に広がる広い畑で原料の麦が作られる。ここは休養中の畑。麦は連続してつくると連作障害が起きるため輪作と休養を挟みながら育てる。

そう、ここまででも分かる通り、Owl Distillery は地元産のクラフトに強いこだわりをみせる蒸留所。ベルギーの法律では、蒸留さえベルギー国内で行っていれば他の工程は国外でも構わず、また最低3年の熟成期間義務も無いそうです。このため、他の蒸留所では国外産のモルトを使っていたりするそうですが、Owl Distilleryはすべて国内産にこだわり、最低3年の熟成をもって を名乗っています。原料となる大麦は地元産、モルティングこそアントワープ近郊の別会社にまかせていますが、その後の糖化/発酵/蒸留/熟成はすべてこの蒸留所内で行わている、まさに地ウイスキーとも言えるでしょう。

ちなみに、現在はノンピートのモルトのみを使っていますが、将来的にはベルギー産のピートを使ってピーテッド・ウイスキーをつくる計画がある模様。

最初に糖化槽。モルトミルは建物の外にあり、黒い部分を通って糖化層の中に入れられていきます。

発酵槽は4基。72時間発酵とやや長めで、温度一定に保つような管理はしておらず、最初の温度だけ決めていて後はすべて自然まかせ。このあたりは品質の安定という点ではどうだろうか、と思いましたが、そのブレも含めて自然のものと考えているようです。

そしてお待ちかねのポットスチル。2013年にこちらに運び込まれたポットスチルとスピリッツセーフは、なんとあのキャパドニック蒸留所のもの。なんとか交渉に成功したということですが、それが相当に難しいことであるのは想像に固くありません。スコッチウイスキーで使われたポットスチルがスコットランド国外に運び出された、ということだけでも驚くべきことだと思います。

ネックはほぼ水平で、比較的クリーンな酒質を狙っているようです。ミドルカットの割合などは毎回人が判断しているため明確な基準はありませんが、かなり狭い範囲だそう。フォアショッツとフェインツは次回の蒸留にまわして再利用される仕組みになっていました。

ウェアハウスには現在800丁ほどの樽が。見ると8段のラック式で、下はコンクリート製となっていました。コンクリートが影響しているのか、それとも気候のせいなのかは不明ですが、ここでの熟成では徐々にアルコール度数が上がるようになっており、バレルエントリーの68%程度から10年以上の熟成で77%にまでなるそうです。バーボンの熟成と近いのでしょうか。ベルギーの天使はアルコールよりも水がお好きな模様。

樽はアメリカのヘブンヒル蒸留所から払い出されたバーボンカスクを使っていて、1st Fillで使った後はビール醸造所に渡しているそうです。この日の前にいくつかウイスキーカスク熟成のベルギービールを飲んでいたので、なるほどと納得。樽熟成ビール、なかなか面白い味でしたので一度試してみても良いかと思います。

ひと通りの説明をして頂いて感じたのは、これこそまさにクラフト蒸留所、というお手本のような造りを体現している、ということ。地元に対する愛というか、これこそが私達の農産物です、と自信を持って提示しているその姿は素晴らしいと思いました。それが唯一の正解、というわけではありませんが、やはりここまで一貫したものづくりの姿勢は、そうではないところに比べて美しく見えるものです。

この後テイスティングをしながらイザベラさんと話していて、ベルギー・ウイスキーの規定について教えて頂きました。代わりにジャパニーズ・ウイスキーの規定についてもいろいろとお聞かせして、一部のジャパニーズ・ウイスキーのからくりについてお話したところ、信じられない、といった感想でした。まあ、そうですよねぇ……。自分も本当に crazy だと思います。

そういうところと、この Owl Distillery を比べれば、どちらの造りが誠実かというのは明確でしょう。

さて、この後テイスティングに移ります。

タムデュー 21年 1997 オーシャンズ シリーズ

完熟ピーチ? いかがですか? 

Tamdhu 21yo 1997 (Whisk-e “The Oceans”, Hogshead, Cask#688016, 50.8%)

香りは熟したオレンジ、紅茶、ミルキー、少し桃、シナモンとクローブを漬けたハチミツ、微かにココナッツ。

味わいはやや粘性のある口当たりで、甘いハチミツ、スパイスを加えた紅茶、チャイ、ミドルは桃とドライフィグのようなフルーツ感に少しヘーゼルナッツのニュアンス、ホワイトペッパーやクローブ等のスパイスと紅茶感が心地いいフィニッシュ。

【Good/Very Good】

ウイスク・イーのシリーズのひとつであるオーシャンズ。いまいちどういうコンセプトなのかは分からないものの、このボトルが20本目という、かなりのリリースを重ねてきたシリーズです。

ラベルがあまり好みではないので今回もスルーかと思ったのですが、テイスティングコメントを見たところ「完熟ピーチのフレーバーが味わえる甘美な1本」などという気になる単語が散りばめられていて気になってしまい……。たいていこの手のコメントは盛ってるだろうと思いつつも、タムデューは結構良い印象があるので一本買ってみた次第です。

さて結果はというと上記のような香味。桃が全開かというとそうではないですが、全体的にリッチなフルーツ感に品の良い紅茶感が加わり、さらに程よくクリーミー。バーボン樽の良い熟成を経た原酒で、値段的にも控えめだったためか満足度の高い味わいでした。

口開け直後では桃感はほとんどなかったですが、少し開いてきたのか、やや粘性のある口当たりと共に桃のフレーバーがほんの少しですが強くなってきたように感じます。今後にも期待できそうな一本ですね。

タムデューはスペイサイドの中でもマイナー感は否めない所ですが、以前飲んだバッチストレングスは結構良い印象でした。以前リリースされていた、熟成年数の割に安かった25年なども、良い麦感や素直な甘さ、ややクリーミーなフレーバーが印象的で、好みに合ったものでした。

このボトルは、自分と同じようにテイスティングコメントで惹かれた方が多かったのか、かなりのスピードで売り切れていたように思いますが、また同じような系統のカスクが出て来るのでは、と期待しておきます。

グレンフィディック蒸留所がビジターセンター50周年記念ボトルをリリース

グレンフィディック蒸留所が、自身のビジターセンター設立50周年を記念して、30年熟成のシングルカスクをリリースするそうです。

Image via Spirits Buisiness

Glenfiddich releases 30yo to mark visitor centre https://www.thespiritsbusiness.com/2019/07/glenfiddich-releases-30yo-to-mark-visitor-centre/

ビジターセンターの歴史については以前こちらで記事にまとめましたが、現在まで続くウイスキーツーリズムの走りとなったビジターセンター設立から50年、今なおスコットランドの蒸留所ツアーは人気上昇中で、スコットランド全体で世界中から年間200万人以上の訪問客が集まっています。

特にグレンフィディック蒸留所は敷地も大きく、ビジターセンターも充実していることから、大型バスでツアー客がたくさん来ているのが印象的でした。日本でも白州蒸留所や宮城峡蒸留所、余市蒸留所などは大型の駐車場があり、ツアー客も多い印象でしたが、グレンフィディックはさらに賑わっていたように記憶しています。

蒸留所での体験を重視する最近の傾向で、昔は一部だけだったハンドフィルも今では一般的になりましたし、小規模蒸留所も顧客に様々なアプローチをする一環として、蒸留所の門戸を開いていることが多くなりました。やはり実際にウイスキーが作られているところを見ると印象的で、その蒸留所のことをもっと知りたいと思ったり、あとでウイスキーを飲むときにも思い出しながら飲んだりと、本当に良い経験になります。

最近は国内の蒸留所も多いので、ぜひいろいろな蒸留所に出かけて、実際に見て頂きたいと思います。自分もまだまだ行きたいところが多く、次はどうしようか、などと悩み中です。