月別アーカイブ: 2019年9月

インペリアル 1996-2019 カーンモア BEQUEST

Imperial 1996-2019 (Càrn Mòr “BEQUEST”, Bourbon Barrel Cask#36, 48.7%)

香りは蜂蜜、レモンバウム、ミルキー、ワックスのニュアンス、少し濡れた紙のニュアンス。

味わいは凝縮された強さがあり、シリアル、カシューナッツ、蜂蜜とパンケーキ、ミドルから少しオリーブオイルのようにオイリー、繊維質な植物感、レモネードとオイリーさが残るフィニッシュ。

【Good/Very Good】

カーンモアのBEQUESTシリーズからインペリアル蒸留所。今年2019年のリリースです。48.7%とやや低めの度数でのボトリングですが、これは加水ではなく自然な度数落ちでしょうか。

そのためか、味わいはギュッと凝縮された口当たりで、アタックは刺々しくないのに強すぎないところが印象的。シリアルやパンケーキのような穀物系が中心でフルーティさに大きく振れないところが、いわゆるスペイサイドの味わいとは少し異なるように感じられました。ナッツや植物感もあるオリーブオイルのようなオイリーさも個性的。決して強すぎない個性ですが、良いバランスの中にこのくらいのアクセントがあるのが良いですね。


インペリアル蒸留所は1985年に一度閉鎖、1991年に再開するも1998年にまた閉鎖されてしまった蒸留所。今考えると悪くない味わいかなとも思うのですが、冬の時代には他の蒸留所が優先されたのでしょう。その後もこの蒸留所が再開されることはないまま今に至っています。

話は飛びますが8月のスコットランド旅行の折、グレンアラヒー蒸留所からダルユーイン蒸留所の前を通ってスペイ川を渡り、カーデュ蒸留所を目指していました。途中、ちょっと道を間違えて危うくなにがしかの敷地に入りそうに。ギリギリ入り口で止まれて良かったと思っていると、目の前に現れたのはガラス越しに見える立派なポットスチル。え? なにこの蒸留所? と思っていると、入り口には Dalmunach Distillery という文字が。

ダルムナック蒸留所はシーバスリーガル社が2013年に建てはじめ2015年から操業している新しい蒸留所なのですが、後から調べたところによると、実はこの敷地が以前インペリアル蒸留所が存在していた場所で、建物や中の設備は改装されて現在も操業中とのことでした。全くの偶然でしたが、まさかこんなところに蒸留所が、そしてまさかここがあのインペリアル蒸留所だったとは、というなんとも不思議な出会いがありました。

中には8基のポットスチルがあり、かなり大型の生産能力を持つ蒸留所。写真右手に控えていた熟成庫は昔のもののように見受けられましたが、製造設備は新しいものなので、味わいは全然別のものになっていることでしょう。インペリアルの名前は、おそらく諸々の権利関係で使えないからだと推測していますが、そのうちこのダルムナック蒸留所からも一般向けにシングルモルトがリリースされるのでしょうか。楽しみに待ちたいと思います。

ロイヤルブラックラ 1994-2017 G&M ジャパンインポート向け

やや珍味系のニュアンスもある不思議な味わいでした。

Royal Brackla 1994-2017 (G&M Exclusive for JIS, Cask#8082, 51.7%)

香りはキャラメル、プルーン、カカオ、アンティーク家具、少し鰹節のニュアンス。

味わいはややピリピリとしたタッチでブルーベリー、クローブ、ベリー系の酸味、微かに出汁醤油、ブラックペッパーなどのスパイシーなフィニッシュ。

【Good/Very Good】

ジャパンインポート向けのG&M Exclusiveからロイヤルブラックラ、およそ22年熟成のボトルです。

やや樽のパンチが効いた味わいで、シェリー樽のニュアンスが良く出ています。近年系シェリーらしい味わいですが、特に香りの奥から出てくる鰹節のようなニュアンスがちょっとおもしろい。魚介というよりは、枯れた感じにちょっとこってりした旨味を感じるようなところが鰹節のように感じられるのでしょうか。いずれにしても、王道の味わいからは少しだけ横道にそれているようなところが個性かな、と思いました。

ロイヤルブラックラ蒸留所は、スペイサイドの中心から西の方に車で1時間弱くらいでしょうか。農地が広がる場所にぽつんとひとつ、離れて建てられている蒸留所でした。例によって見学は不可なので外観のみですが、こう、麦畑の中に少しだけ木々が並んでいてその中にひっそりと隠るように……というのは、日本で言う田んぼの中に小さな神社があるような感覚とちょっと似ているところがあって面白いな、と。

ティーニニック 27年 1983-2011 ダンカンテイラー レアオールド

優しく染み込むような長熟の味わいでした。

Teaninich 27yo 1983-2011 (Duncan Taylor “Rare Auld”, Cask#6716, 45.9%)

香りはカスタード、ハチミツ、おしろい、杏のドライフルーツ、少し雑木や植物の茎のニュアンス。

味わいは優しい口当たりで落雁、たまごボーロ、プリン、ミドルからシナモン、樽感が結構あるスパイシー、ココナッツのニュアンスとホロホロと崩れる和菓子のような甘さのフィニッシュ。、

【Good/Very Good】

ダンカンテイラーのレア・オールド、この時期のこのラベル、久しぶりにお会いしました。自分が本格的にモルトにハマり始めたときに良くリリースされていたこのシリーズ、高級感のある佇まいがかなり好みで何本か買って楽しんでいました。(もっと買っておけば良かった)

ティーニニックというと、1972年のヴィンテージに人気がありますが、その次に1983といったところではないでしょうか。やや線の細い和菓子のような甘さと、奥にはしっかり個性的なシナモンのニュアンス、そしてココナッツミルクのような独特の甘やかさ。

さすがに長熟の域にさしかかり樽感が強くなってきていますが、ミドルから後半にかけて現れる胡椒のようなスパイシーさが全体を引き締めてくれています。良い味わいですね。


ティーニニック蒸留所は2017年に200周年を迎えていますが、基本的に原酒工場の扱いでシングルモルトもそこまで多くはリリースされていません。ディアジオ系列の中でもここは見学不可ですが、とりあえず見るだけ見てみようと思い立ち寄ってみました。

River Averonという、やや小さいながらも水量豊富な川が近くに流れていますが、仕込み水は川からではなく井戸水とされています。川の水は冷却などに使用されているのでしょうか。建物自体はこざっぱりとしていて、パゴダが無いこともあってやはり工場のよう。近所は工場と住宅が入り交じる、普通の田舎の町中といった場所です。僻地に建てられる蒸留所も多い中で、立地的には面白い位置づけでした。

カーデュ 蒸留所限定ボトル 2018年ボトリング

ワイン樽も使っているようですが、やや特徴に乏しいような…。

Cardhu Distillery Exclusive Bottling (OB, Bottled in 2018, 3 Cask Types Including 1st Fill Red Wine, 48.0%)

香りは落ち着いた麦感、洋ナシ、バニラ、少しスーッとするメンソール、サワーヨールグルト、溶剤のニュアンスが少し。

味わいはもったりした立ち上がりでポリッジ、やや生焼け感のあるホットケーキ、サクランボのニュアンス、ミドルから少し焦げたニュアンスがありビター、カカオニブのビター感があるがさらっと終わるフィニッシュ。

【Good】

カーデュ蒸留所でのみ売られている蒸留所限定ボトルです。3種類の樽で熟成された原酒のブレンドで、うちひとつはワイン樽のファーストフィルということが明記されています。

その香味はというと、目立つ若さは特にはないものの熟成感がさほどなく、プレーンな素の味わいといった感じ。ワイン樽のニュアンスもそこまで感じられず、実は樽の話は飲んだ後から知ったくらいで、情報のインプット無しだと全くワイン樽とは分かりませんでした。

やや生乾きっぽさが目立つ印象で、あまりリッチさが無いのが逆に印象的です。蒸留所限定のボトルとしては少々普通にすぎますし、カーデュらしさという点でもあまり感じられないので、どういう意図でこれをリリースしたのかがちょっと気になる所です。

カーデュ蒸留所を訪れるのも5年ぶりとなりましたが、蒸留所へのアプローチの道が少々変わっていて戸惑いました。ショップも少し改装したように思いましたが、ちょっと記憶が曖昧です。どこの蒸留所もここ数年で多少なりとも設備が変わっているようで、近年の蒸留所への投資状況が伺えました。

今回のサンプルは、現地でディアジオのパスポートを持っていったところご好意で頂けたもの。スタンダードツアーが無料になるこのパスは以前もご紹介しましたが、この日はツアー参加する時間がなかったので代わりに、といったものでした。蒸留所スタッフの方に感謝です。

ディーンストン 18年 オフィシャルボトル

サラッとしたシンプルな味わい。

Deanston 18yo (OB, bottled in 2019, 46.3%)

ボトル画像撮り忘れ。

香りは酸味を伴う麦感、ツンと来る溶剤、塩キャラメル、塩バターパン、爽やかさもある木樽の香り、ホコリっぽさもある家具のニュアンス。

味わいは柔らかいタッチでキャラメルソース、メロン、塩キャラメル、ミドルもやや平坦、植物感、フィニッシュもサラッと切れて短い、最後の鼻抜けにやや高貴さも見え隠れする木の樽のニュアンス。

【Good】

タッチは柔らかくそれなりに熟成を感じさせる造りではあるものの、やや平坦でフィニッシュも短めなため、あっさりとした印象を持ちました。麦感重視でフルーツ感はあまり強くないものの、メロンのようなニュアンスもあり、悪くない印象。最後の最後に、ちょっとだけ高貴な感じも漂わせていて、ものによってこのニュアンスが全面に出てきてくれるならかなり良いのだけれども……というちょっと惜しい気分です。

ディーンストン蒸留所は1966年操業開始と、まだ50年ほどの蒸留所ではありますが、建物自体は18~19世紀を中心に紡績業で使われていたものをそのまま流用しており、かなり歴史のあるものとなっています。時代の変遷とともに紡績業は畳まざるを得なかったのですが、代わりに地元の雇用確保に何かできないかと考えた結果の蒸留所、というちょっと変わった歴史を持っています。

このあたりのお話はツアーの最初に動画で紹介されているのですが、同じものがネット上に公開されている……はずと思って調べたんですが、無いですね。良い動画だったので是非見て頂きたかったのですが。

グラスゴーやエジンバラから日帰りで行けるギリギリの場所といった位置で、観光客もそれなりに多いようです。

グレンバーギー 19年 1998-2018 The Whisky Trail 台湾向けシングルカスク

中間にほんのりとしたグァバっぽさがあるバーギーです。

GlenBurgie 19yo 1998-2018 (Elixir Distillers “The WHISKY TRAIL” for Taiwan, Barrel Cask#900897, 58.3%)

香りは豊かな麦と穀物由来の甘さ、バニラ、イチヂク、アップルタルト、ややハーブのような青い草のニュアンス。

味わいはやや強めのアタックでコクのある甘み中心、綿飴、中間にグァバや完熟パパイヤなどのトロピカル感、イチヂクのタルト、少しハッカ、フィニッシュに掛けてはかなりビターな樽感が占める。

【Good/Very Good】

エリクサー・ディスティラーズの台湾向けグレンバーギー。

このシリーズは4種類のボトルがあるようで、いずれも花と鳥が描かれています。白を貴重とした中国的なイラストが美しいですね。エリクサー・ディスティラーズのリリースですと、日本向けとしてはドラゴンシリーズやウォリアーシリーズなどがありますね。中世ファンタジーの要素が強いというか、ちょっと厨ニ的だと思っているのは自分だけじゃないはず……。(でもそういうの、嫌いじゃないです)。

さて肝心の中身ですが、ここ最近飲んできたバーギーに似たところがあり、割と綺麗めのバーボン樽原酒のミドルにグァバっぽいトロピカル感が見え隠れするところが特徴的。少し樽が強めに出てきているのか、後半はピリピリとしてドライさがややキツめですが、全体としては飲みごたえがあり良いボトルです。度数が高いので、慣らしが終わった2杯目か、加水してゆるゆると楽しむのも悪くないでしょう。

ここでグレンバーギー蒸留所について手元の写真を探そうとしていて、軽くショック。訪問リストからすっかり抜けてしまっていて、今年2019年のスコットランド旅行の際にも近くを通ったのにスルーしてしまっていました。なぜ忘れていたのか……。

もちろん行っても見学ができるわけではない(ペルノ系列は基本どこもNG)のですが、外観だけでも見てこなければならなかったのに、失敗しました。いつかリベンジしなければ。

Thanks for Gen, Good Bottles!!

ベンネヴィス 21年 1997-2018 The Whisky Trail 台湾向けシングルカスク

程よくフルーツ、程よくスパイシーでした。

Ben Nevis 21yo 1997-2018 (Elixir Distillers “The WHISKY TRAIL” for Taiwan, Barrel Cask#104, 56.8%)

香りはケミカルさを伴うフルーツシロップ、パイナップル、パッションフルーツがわずかに、独特の薬草感、フルーツヨーグルト。

味わいは香り同様にトロピカルフルーツに独特の薬っぽさ、カスタード、火薬のニュアンス、ミドルから茹でた栗、樽感強くブラックペッパーとカカオのニュアンスが続くフィニッシュ。

加水でも大きく崩れることはなく、シナモンやカスタードのニュアンスが強くなりバランスが取れてくる。

【Good/Very Good】

The Whisky Exchange でおなじみエリクサー・ディスティラーがリリースした台湾向けのベン・ネヴィス21年。

香味ともに最近のベン・ネヴィスらしさがしっかりと感じられる構成で、いわゆるジェネリック・トロピカルといった感のフルーツと独特の薬草っぽさが混じり合って主張してくるタイプです。トロピカル満載! といったものではなく、あくまでフルーツ感の一部分がそのように感じられる程度で、全体としてはもう少しおとなし目というか、やっぱりベン・ネヴィスだよね、という印象。

加水で結構印象が変わってくるのと、グラスの残り香も複雑さがあって長く楽しめたので、どちらかというと香りに特徴があり面白いボトルです。近年、優等生で美味しいけれどもあまり個性が無くなってきている原酒も多い中にあっては、これくらいの個性があった方が印象に残りやすく楽しめるのではないかと思います。

近年、現地向けの10年などが割と高評価でこれからも良いものが出てくるのではと期待されているのですが、実際には原酒がかなり不足しているようで今後のリリースが不定期にならざるを得ない状況にあるという話も。ニッカが所有しているわけで、その原酒がどこに向かうかといえば主に日本のブレンデッドウイスキー、ということになるのでしょう。

先日、スコットランドを旅行してきたのですが、どこの蒸留所もここ数年で増築していたり生産量を増やしていたりと、本当に原酒確保に必死になっている状況。そのために犠牲になるものもきっと少なくないと思うのですが……。今後も良いシングルモルトが続いてくれるように祈ります。

ベンネヴィス蒸留所が佇むのは、その名の通りベンネヴィス山のお膝元。山頂は雲に隠れてしまうことが多い。