月別アーカイブ: 2019年10月

ベンリネス 14年 1998-2015 G&M コニサーズ・チョイス

久しぶりのコニチョでした。

Benrinnes 14yo 1998-2015 (G&M “Connoisseurs Choice”, Refill Sherry Hogsheads , 46.0%)

香りはカスタードケーキ、キャラメル、ヌガー、金柑、木の皮、少し埃っぽい家具のニュアンス。

味わいは優しく流れるような口当たりで、蜂蜜漬けの輪切りレモン、きな粉餅のニュアンス、ミドルからは木の香り、穏やかながらドライでヒリつく、レモネードのような酸味と爽やかさが静かに消えるフィニッシュ。

【Good】

G&Mのコニサーズ・チョイスからベンリネス蒸留所です。コニチョ、久しぶりを飲むのは随分と久しぶりになってしまいました。

加水ということもあってか、あまり主張しすぎないモルト。全体的に優しく落ち着いている印象です。レモンや金柑の皮の部分のような、若干の苦味を伴うような柑橘系フレーバーに、やや生乾きの木の皮を思わせるウッディさ。さらりとした酸味が程よいベンリネスでした。

ベンリネス蒸留所。本当は背後にリネス山が見えるはずなのだが、あいにくの天気でそれは叶わず。

ベンリネス蒸留所は、スペイサイドのやや南西側にあるその名の通りベン・リネス(リネス山)の麓にあります。841mとスコットランドではなかなかの高さを誇る山で、その湧き水は質が高いことで昔から有名だったことから、山の周囲には蒸留所が多く存在します。現在ではベンリネス、グレンアラヒー、バルメナック、アルタナベーン、最近ではグレンリネスという新興蒸留所も出来ています。

良い酒造りは良い水から。基本中の基本ですが、だからこそ疎かにできないところ。各設備の冷却にも大量の水が必要になることから、ウイスキーの蒸留所は豊富な水源のそばであることが多いです。

アードベッグ 「アードボッグ」 2013年アードベッグ・デー ボトル

以前の印象と異なり、とても美味しいアードベッグだったことに気付かされました。

Ardbeg Ardbog (OB bottled in 2013, 52.1%)

香りはイチジクのタルト、ダークチョコレート、スパイスたっぷりのチャイ、麦芽そのもののような穀物感、奥にクレゾールのような薬品、いぶしたベーコンのニュアンス。

味わいはやや優しい口当たりでラズベリージャム、チョコレート、みたらし餡のニュアンス、ミドルからしっかりとピート、粘土、ヒリヒリとスパイシー、フィニッシュにかけて薬品臭さとオレンジやベリー系のフルーツが残る。

【Very Good】

2013年のアードベッグ・デーに合わせてリリースされた、アードボッグです。

アードベッグ・デーは2012年が初でしたが、日本では特にイベントが打たれなかったので自分は知りませんでした。2013年にようやく日本でもアナウンスがあったためか、界隈ではいろいろな話を聞きましたし、このボトルも記憶にあります。ネーミングが覚えやすいですしね。

名前の由来はピート採掘元となっている湿地、Peatbogという場所。ピートを強く焚きつけるアードベッグらしさと同時に、これまでもアードベッグは様々なアイラの場所をボトルの名前に用いてきました。コリーヴレッカンやウーガダール、最近ではアン・オーやトリー・バンなど、それぞれのボトルがイメージする場所に合わせたネーミングを行ってきています。

さて、このアードボッグ、バーボン・カスクで10年熟成させた原酒とマンサニージャ・シェリーのカスクで10年熟成させた原酒をバッティングしています。ややこってり系なシェリー由来の甘さと、しっかり効いたピートの組み合わせが非常に上手くまとまっていて、甘じょっぱいならぬ、甘ピーティな味わい。通常のアードベッグはピート感が強すぎたりすることもあって個人的にはやや苦手なところもあるのですが、このアードボッグは甘さがうまくピート感を緩和してくれているのか、個人的に丁度いい塩梅でした。

シェリー樽のニュアンスも近年系のゴム感や粒子感はほとんどなく、かなり良いものが使われている印象。やや若いニュアンスもありましたが奥の方に少し感じる程度で、逆にいいアクセントになっています。

リリース当初に試した際にはそこまで印象には残らなかったのですが、こうして改めて飲んでみるとまた違ってくるのがウイスキーの面白いところですね。もう6年も前のことになりますから、自分の味覚や嗜好が変化していたり、当時の環境として他にももっと良いものがあったりと、いろいろと状況が異なるということも理由としてはあるでしょう。今、このウイスキーを改めて飲めたことに感謝です。

ブナハーブン 1987-2018 “An Antique Armchair” ウィームス カスククラブ向け

香りが独特のシェリー爆弾でした。

Bunnahabhain 1987-2018 “An Antique Armchair” (Wemyss Malts for Cask Club Release 2, Ex-Sherry Butt, 46%)

香りはイチゴシロップ、カボチャの皮、味醂と甘やかな醤油、ポリッシュしたアンティークテーブル、革張りの家具感が確かにある。
味わいは優しい味わいで枝付きレーズン、マーマレード、濃く煮出した紅茶、大量のクローブ、樽感強く炭のニュアンス、ニガヨモギ、カカオ80%のチョコレート、非常にビターだが濃厚プルーンの甘さも感じるフィニッシュ。

【Good/Very Good】

ウィームスから30年ほどの熟成となるブナハーブン、「アンティーク・アームチェア」と銘打たれたシェリーバット熟成のシングルカスク。ウィームス・カスククラブという、コミッティというかファンクラブのような位置づけでしょうか、そのクラブメンバー限定でリリースされたボトルです。

醤油とみりんのあわせ技のような独特の香りは、近年系のシェリー樽に30年という長期熟成の賜物でしょうか。しょっぱさではなく甘さを感じさせる香りに、どことなく古びたニュアンスが漂っていて、ああこのあたりがアンティークの家具っぽさかな、と納得。味には意外と醤油っぽさはありませんが、かなり強めの樽感を伴った近年系のシェリーが支配的。ドライでスパイシー、口の中の水分が持っていかれそうな感じです。

こういうのはヨーロッパというか、特にドイツあたりで人気が出そうな「シェリー爆弾」ですね。好きな人はとことん好きそうな内容ですが、自分からするとちょっとこれは行き過ぎているかな、と。ある意味、ターゲットの客層がどのあたりか、というのが明確になっている良い例かと思います。

スプリングバンク 21年 2019年リリース

素晴らしい存在感、多彩な香味のスプリングバンクです。

Springbank 21yo 2019 Release (OB, 45% Port and 55% Rum casks, 46%)

香りは完熟リンゴ、過熟気味の洋梨、カスタードクリーム、糖蜜、少しセクシーさも感じる汗っぽさ、湿った動物の革、石灰のニュアンス、仏壇とお香、微かにフルーツトマト。

味わいは度数以上にパワフル、洋梨のタルト、リンゴジャム、プーアール茶の渋み、ミドルから石灰や藁灰、染み込むピートがしっかりと主張する、ほんのりとした蜂蜜の甘さに、石灰とピートのニュアンスが長く支配的だが、意外にもサラッと軽く消えていくフィニッシュ。

【Very Good】

毎年リリースが恒例となってきた、スプリングバンクの21年。パッと見は毎回同じように見えますが、使用している原酒の樽構成が毎年違っており、今年2019年のリリースはポートカスクとラムカスクという構成です。

複数樽のヴァッティングだからか、香り味ともにとても複雑でとてもすべてを捉えきれません。グラスに注いだ瞬間からしっかりと香る完熟フルーツ、麦由来の甘さ、独特の石灰やミネラル感、そして湿っぽい獣のニュアンスなどなど、複雑さが高いレベルでバランスを保たれていて、飲んでいて楽しさと心地よさが感じられる。確かにこれは特別感のあるボトルですね。気合を入れて磨き上げられた芸術品、といったところでしょうか。

ここ最近のスプリングバンクは、ウイスキーブームに加えてうまくブランドを確立していることもあって、どのボトルも(スタンダードの10年でさえ)比較的高額なものが目立ちますが、こう、しっかりと良いものを作っているということを考えると、そのあたりも納得できてしまいます。

また、蒸留所を訪れた2016年に感じたことは、働いている人の中に20代と思しき人たちが多いこと。ベテラン勢とともに若い人たちがいろいろな作業を行っている光景を見て、次世代の育成にも力を入れているのではないかと思ったことが特に印象的でした。おそらく彼ら/彼女らの中から、次世代を担う造り手が生まれていくのでしょう。今後のスプリングバンクも、もっと素晴らしい原酒が作られていくのかもしれません。

こちらの小瓶は、今年7月のベルギー旅行にてサンプル交換という形で頂きました。向こうでは7月でも比較的涼しい気候なのでモルトを飲むにも支障はありませんが、日本ではかなりの暑さであまりモルト向きではないと思い、暫く取っておきました。、ようやく涼しくなってきて、しっかりとモルトに向き合える季節になってきましたね。

Thanks Oliver!!

陶器ボトルによるフィニッシュ実験

手元にあるグレンファークラス1968の陶器ボトルが空きました。

濃厚シェリー樽の味わいのため寒くならないと飲まないボトルだったので、開栓から随分と時間がかかってしまいましたが、ようやくです。ラベルは糊付けが弱かったためか剥がれてしまいました。以前のテイスティングノートはこちら

独特の存在感があるボトルですのでこのまま飾っておいても良いのですが、その前にひとつ、やることがあります。これと同じボトルを使ったとある実験を、かつて実践していた方がいらっしゃいます。というか皆さんご存知のあの方なのですが、この陶器ボトルが空いた暁には是非やってみようと思っていました。

中身が揮発しやすいというデメリットを持つ陶器ボトルですが、状態が良いボトルであれば、その染み込んだ原液を後詰めしたものにも還元できるのではないか、という推測。陶器ボトルで、1960年代のシェリー樽という今では失われてしまったとも言える原酒が入っていたもの、ハイプルーフのカスクストレングス。なるほど確かにこのボトルはうってつけ、というわけですね。

現行のファークラスを買ってくるのもどうかと思い、替え玉に選んだのは以前紹介したマイブレンデッドMMA。今まで自分が飲んできたモルトのブレンデッドで、更にこの陶器ボトルのポテンシャルを吸い尽くしてやろうという魂胆です。ちなみに適当なブレンドではあるもののなかなか悪くない味わいで、バーボン樽原酒が主体、ほんのりと華やかさはありつつも少しピートの効いたハイランド・タイプといった感じ。アルコール度数は、感覚的には48~50%程度です。

このモルトを500ml程度、陶器ボトルの方へ。蓋をしてしっかりパラフィルムを巻いてやり、少し揺すってやったあとは放置です。このまま1ヶ月ほどで、さてどうなるか、ちょっと楽しみな実験です。

クラガンモア 15年 蒸溜所限定 150周年記念ボトル

特別感と素朴さが同居した記念ボトルです。

Cragganmore 15yo (OB, 150th Anniversary, Double Matured in American Oak, 48.8%)

香りは酸味のあるベリー、ブラックカラント、マーマレード、バニラエッセンス、焦げた木片、苔玉、獣の革のニュアンス。

味わいは心地よい強さのバニラアイス、強い甘味のマーマレード、煮出した紅茶、カシューナッツ、紅茶のタンニンにピリピリとしたホワイトペッパー、マーマレードが続くフィニッシュ。

【Good/Very Good】

今年2019年に操業から150周年となるクラガンモア蒸留所。その記念となる蒸留所限定のボトルがこちら。

全体的に綺麗めの味わい。素朴で強く主張しすぎないけれども、落ち着いた華やかさがあるような、ちょっと気品のあるような。48.8%というやや高めの加水もあって飲みごたえもあります。

色合いや香味の最初の印象はバーボン樽とシェリー樽を80:20で混ぜたような印象でしたが、ラベルにも書かれている Double Matured in American Oak という、ヘビーチャーしたバーボン樽による二段熟成がこのボトルのキャラクターを形作っているようです。カシスのような酸味のあるベリー感と煮出した紅茶のような香味成分はこのあたりから来ているのでしょう。普通のバーボン樽とはひと味違うところが面白いですね。

クラガンモアというとディアジオ系列の中ではスペイサイド地域の代表となっているわけですが、スペイサイドと言っても蒸留所ごとにそのキャラクターはかなり異なるわけで、なかなかひとくくりで語ることはできないように思います。とはいえ、典型的なイメージの花や果物のような華やかさと、野暮ったさのない綺麗めの洗練されたイメージは、ある程度当てはまっていると思います。王道的な味わいですが、それだけに飽きが来ないで飲み続けられるというもの。本ボトルも、特別感はあるもののあえて過美にならない程度の味付けで、2杯3杯と付き合っていける、そんな佇まいです。

クラガンモア全景。意外とこじんまりとしている。

クラガンモア蒸留所はスペイサイドという括りでもかなり西の端に近い場所にあります。中心地のエルギンやロセス、クライゲラキなどの町からもそれなりに距離があるため、意外と人気が少ないところ。ビジターセンターも最小限で、あまり垢抜けていないところが味わいにもあるような素朴さを体現しているかのようです。

このボトルを買おうかどうかと思案しているところに、若いスタッフのお兄さんが特別にちょっとだけ試飲をさせてくれました。味の印象も良く、名前だけの記念ボトルじゃなさそうだと分かり購入させて頂きました。他にも色々と気の利く人で、クラガンモア蒸留所の自分内の好感度がアップした日でした。

J&B ウルティマ ブレンデッド・ウイスキー

究極のブレンデッド、その名前は伊達じゃありませんでした。

J&B Ultima (Blended Whisky, bottled in 1994, 43%)

香りは透明感のある穀物、洋梨、和梨、微かに白桃のようなニュアンスも、ニス、埃っぽいアンティーク家具、全体的に穏やかだがフルーツ感がしっかりしている。

思ったよりも芯のあるアタックから、トロリとしたメープルシロップ、サクランボ、洋梨、バナナシェーキなど多彩なフルーツ、軽めの樽感、穏やかに染み込むように消えるフィニッシュ

【Good/Very Good】

J&B ウルティマ。名前は聞いたことがありましたが飲んだことはありませんでした。合計128蒸留所(116蒸留所のモルトと12蒸留所のグレーン)で構成される「全部入り」。リリースは1994年とかなり昔になりますが、2000年代にはまだ普通に手に入ったように記憶しています。2010年頃にはさすがに見ることが無くなりました。今ではリユース市場でちらほら、といったところでしょうか。

ブレンデッドらしくまろやかで角が無い飲みやすさの一方で多彩なフルーツが感じられ、嫌味のなさと味わいの奥深さ、やや陶酔感もあるような飲んでいて満足感のある味わい。流石に「究極」の名を冠しているだけありますね。これだけたくさんの原酒を使って、しかしこれだけの美味しさを醸し出すのは一筋縄ではいかないはず。ブレンダーの手腕が問われるわけですが、見事な作品だと思います。

香味の方向性としては、いくらかバランタイン30年(1990年代ボトル)に似ているでしょうか。自分がそのあたりを飲んだ経験が多いから、というのもありますが、全体的に穏やかで磨き抜かれて仕上げられた宝石のような高級感のある味わいは共通項があるように思います。


それにしても、こんな企画、誰でも一度は思いつきはするものの、実際に実現してしまうなんていうのも凄い話ですね。リリースされた1994年は、スコッチウイスキーの「500周年記念」ということで、このようなある意味お祭り的なボトルが成立したのでしょう。

何ゆえ500周年かというと、1494年のスコットランド王室財務省文書のに記録にある 「ジェームズ4世の命により、修道士ジョン・コーに 8ボルの麦芽を与えてアクアヴィテをつくらしむ」という一文。ご存知の方も多いと思いますが、これがスコッチウイスキーの最古の記録となっており、起源であると考えられているからです。1994年はそこから500周年という節目だったというわけです。

そのジョン・コーが居た修道院というのがリンドーズ・アビー(Lindores Abbey)で、修道院自体は今は廃墟となっているのですが、2017に修道院のすぐ隣に蒸留所が稼働を始めました。

リンドーズアビー蒸留所の外観。外壁の岩は修道院廃墟のものや同産地のものを使用しておりクラシカルな印象が一層引き立つ。

2019年8月に実際に訪れてみましたが、周囲は大きな町などからも遠くのどかな牧草地帯。蒸留所の中には先程のジョン・コーも含めウイスキーと修道院にまつわる歴史に関する展示があります。この部分の見学だけでもかなりの時間を要するので、しっかりと見たい方は時間を長めに取っておくことをおすすめします。

ポットスチルとガラス越しに見えるリンドーズ・アビーの組み合わせはちょっとフォトジェニックで素晴らしい景色。外からもガラス越しのポットスチルは映える風景ですね。修道院の廃墟にも入ることができ、昔の名残を感じられたりと、とにかくいろいろな体験ができる場所になっていて楽しい場所でした。まだまだ新興の蒸留所ではありますが、訪れる価値は十分にある場所です。

まだ3年未満なのでウイスキーは飲めませんが、蒸留したニューポットの香りを試した限りでは、しっかりとフルーツや花の香りが乗っていて、嫌なニュアンスはほとんど無くスタンダードながら良いクオリティの原酒でした。2020年の12月で稼働から3年となるので、2021年には満を持してリンドーズアビーの「ウイスキー」がリリースされる予定です。スコッチの起源から再び生まれたウイスキー、期待して待ちましょう。


J&B ウルティマはモルト仲間のDrinker’s Loungeさんから小瓶でいただきました。ドリラジさん、ありがとうございました!