月別アーカイブ: 2019年12月

2019年も暮れゆく時分です

2019年代最後の日となりました大晦日。写真の整理などを行いながらだとあれこれ思い出すものです。というわけで、少し今年を振り返ってみようかと。

まず、3年ぶりにスコットランドに行きました(8月)。目的は主に写真を撮ること、そして、今まで訪れていなかった蒸留所たちをまわってみること。巡るはややマイナー(失礼)な蒸留所ばかりで、どでも個性的、不思議な魅力を持つ場所ばかりでした。バルメナックとかグレンデヴェロンとかミルトンダフとか……。

ミルトンダフ蒸留所


他にも、各地をドライブしていると突然、知らない蒸留所が現れてくる、ということが何回かありました。GlenRinnes, Aberargie, Dalmunach…、大手が運営していたりクラフトだったりとそれぞれ設立の事情も作っているものも異なりますが、日本とも異なる蒸留所建設ブームの実際を目の当たりにした気分でした。

新興のグレンリネス蒸留所

旅行といえば、ベルギーにも行きました(7月)。単純な観光のつもりでしたが、ウイスキーで繋がりのある人を訪れることができ、少人数ながら現地で持ち寄り会が催され、自分も日本からボトルを持って行くという不思議な事態に。英語でのテイスティング・コメントは、なかなか思うような単語・表現が出てこない(酔っているから尚更)ため難しいものですが、同じウイスキーが好きというつながりに国境は無いな、と改めて感じさせられた瞬間でした。

そしてベルギーといえばビール。醸造所をいくつか訪れる機会にも恵まれ、本場の料理と共に味わいベルギービールはどれも格別の味わいでした。日本でも有名なトラピストビール、アビィビールの本場は自然に囲まれた美しい場所にあり、歴史を感じさせられる建物にはスコットランドの蒸留所とはまた違った重みが感じられました。

トラピスト・ビールをつくるオルヴァルの修道院

持ち寄り会といえば、何度かお声がけ頂いて色々な方と繋がれた一年だったなあ、と。WebやTwitterで時々お見かけしていた方々に実際に会うことができ、また時には拙ブログも見ていただいていたことがあったりと、細々とながらこのサイトを続けていて良かったな、と。旅行記とアイラや南投への行き方の記事などは未だに結構アクセスがあり、情報を集めている皆さんの一助となったのであれば幸いです。

さて来年は、もう2020年代に突入ですか。東京ではオリンピックが開催され、今までよりも更にジャパニーズ・ウイスキーが注目されるのでしょうか。とはいえ、その後は厳しい時代がやってくるであろうことから、社会としてもウイスキー業界としても、ひとつのターニング・ポイントになるのではないでしょうか。

2020年に何をしようか、ということはあまり考えていない現在ですが、ウイスキーとの付き合い方はあまり変わることは無いと思います。いろいろと思うところはある時機時分ではありますが、変わらずゆるゆると続けていければ嬉しいですね。

それでは、年の瀬も迫ってきた頃合い、皆さん体調と肝臓の使いすぎにはお気をつけて。良いお年を。

余市 シングルカスク10年 2009-2019 #411127

期待以上の素晴らしい余市、特別なひと樽を引き寄せた特別な力を感じました。

Yoichi Single Cask Malt Whisky 10yo 2009-2019 (OB, Cask#411127, 59%)

香りはレーズン、タンジェリン、清涼感のある木、爽やかなハーブ、栗のような甘さ、ローストしたナッツとチーズのようなオイリーさ。

味わいは芯の強いアタックから、強く煮出した紅茶、レーズン、イチジク、黒糖のような濃厚な甘さ、焼いたリンゴ、タンニンの収斂強め、濃いめのフルーツソースと心地良い黒胡椒やクローブのスパイシーさが長く続くフィニッシュ。

加水して時間を置くと、香りはクローブやシナモンがたっぷりと効いたリンゴのコンポート、酸味と甘味がバランス良く心地良い味わいになる。

【Very Good】

モルト仲間のくりりんさんが手掛けた余市の「マイウイスキーづくり」のボトル。ご存知の方も多いと思いますが、余市蒸留所でのウイスキー製造工程を2日間かけて体験でき、10年後、そのとき詰めた樽からボトリングしたウイスキーを購入できるという、よくよく考えてみたらとんでもなく素晴らしいプログラムです。もちろん、そう簡単に抽選には当たらないようですが……。

今から10年前にこのプログラムに参加されたということで、晴れて余市10年シングルカスクとしてボトリングされたこちら。先日の持ち寄り会でも少しだけ頂いたのですが、小瓶で頂いて改めてテイスティングさせて頂きました。

間違いなく、美味い余市です。

赤や紫を思わせるようなフルーツ感は濃厚で、さすがに60%近いカスクストレングスであるためアルコールの強さはあるものの、甘み、渋み、スパイシーさ、どれを取ってもネガティブさを感じず全てがポジティブに振れている。加水後のリンゴのコンポートを凝縮させたような味わいは、余市だからアップルブランデーのニュアンスでも取りこんでいるのでは、なんて思わずにはいられませんでした。

飲んでうっとりするような魅力をも備えているような余市で、これは凄いと思いました。

正直な話、最初はある程度懐疑的な気持ちでテイスティングに臨みました。10年ものの余市ならちょうど良いところにまとまってくることはあったとしても、シングルカスクはどうしても博打の要素が大きいもの。隣り合ったシスターカスクでさえ全然味わいが違うことだってあるくらいです。それが、どうですか。10年間を無事に過ごし、そして出てきた原酒がこんなにも素晴らしい味になっているとは。

いやー、本当に持ってますね、彼は。

これまで、余市をテイスティングする機会はあまり多くはありませんでしたが、間違いなくトップクラスの味わいでした。くりりんさん、改めましてありがとうございました!

グレンロッシー 21年 1997-2018 シグナトリー カスクストレングス・コレクション

サッパリと綺麗な造りのロッシーでした。

Glenlossie 21yo 1997-2018 (Signatory Vintage “Cask Strength Collection”, Hogshead Cask#1144, 55.1%)

香りは酸味のあるリンゴ、フルーツビネガー、塩ポリッジ、香ばしいトースト、ニスを塗った家具と革張りのニュアンス。

味わいはやや強めのアタックから、酸味強めのリンゴ、レモン、バタースコッチ、ピリリと強いアルコールの刺激、生っぽさが残るアーモンド、カスタードのような甘さが残るフィニッシュ。

加水するとリンゴ感は甘味が強めとなり、バターを思わせるオイリーさが出てくる。アルコールの刺激が抑えられ飲みやすく、コシは崩れない。

【Good/Very Good】

シグナトリーのカスクストレングスコレクションから、1997年蒸留のグレンロッシーです。

全体的にサッパリとしていて、適度な熟成具合で華やかなバーボン樽の良いところが出ています。ハイプルーフなのでそのままだと飲み疲れてしまいそうですが、加水しても崩れないでよく伸びるタイプのようで、自分好みの加水具合を探ることができるところも良いところ。ハイプルーフが好きな人、加水40%くらいがいい人、そのどちらにも対応できる懐の広いモルトだと思いました。

ちょっと不思議なのはアウトターンが105本と少ないところ。ホグスヘッド樽で21年とそこまで長い期間でもなく、またアルコール度数も高いことからエンジェルズシェアも普通のものと変わらなさそうなのですが。通常は200本程度は取れることから、他のどこか向けに原酒を分けたか、あるいは樽が破損して漏れてしまったとか。

いずれにしても、美味しいものがボトリングされていて嬉しいですね。こちらは持ち寄り会から小瓶で分けて頂きました。ありがとうございました!

グレンオード 2008-2019 オフィシャル ハンドボトリング

フレッシュ感あふれるオードでした。

Glen Ord 2008-2019 (OB “Hand Bottling”, Cask#308206, 54.8%)

香りは熟したリンゴ、洋ナシ、カスタードクリーム、クルミ、青い葉とヒノキを思わせる清涼感、微かにレモンシロップ、

味わいは少し刺激が強い、青りんご、ピスタチオのバクラヴァ、少し溶剤様、アルコール感と共にややオイリーなナッツ感、ほのかな甘みが続くフィニッシュ。

【Good/Very Good】

グレンオード蒸留所で樽から直接購入できるハンドボトリング。この手の蒸留所限定ボトルは、お土産としては最高です。ラベルが上下逆なのは購入した方の意図で、ということですが、他のボトルが並んでいる中で確かに一本だけ存在感がありました。

全体的に活きの良い若さがあり、フレッシュなところが魅力的なこのボトル。若すぎるニューポッティなフレーバーはありませんが、熟成すると出てくる重いフレーバーともまた無縁。少しオイリーな感じとずっしりとした甘さが美味しいモルトでした。

加水しても変に薄まらず、味の芯がしっかりと残るところが良いですね。

グレンオード蒸留所は自分も今年2019年の夏に訪問したので、そのときの風景を思い出しながら頂くことができました。2014年に拡張工事を終えた蒸留所は、ポットスチルが大量に並ぶ姿が外からも見ることができ圧巻でした。その中でも、一番古いポットスチルたちが並ぶところは趣があるものでしたが、後方の建物に鎮座する新しいポットスチルたちは、まさに原酒工場だな、という印象。とはいえ、こうして選ばれた樽はしっかりと美味しいものがあるわけで、樽で熟成させることの魅力は衰えることがありません。

グレンオードは、今年2019年のディアジオスペシャルリリースでも18年がラインナップされていてましたね。どうやらそちらも美味しいらしいと聞いているので、どこかで飲んでみたいと思います。

こちらも持ち寄り会でお持ち頂いた一本、ありがとうございました!

ティーリング 10年 蒸留所限定 ハンドボトリング

10年と短いながらも、アイリッシュらしさに溢れていました。

Teeling 10yo (OB “Hand Bottling”, Cask#22060)

香りは洋ナシ、チョコレート、ダークフルーツ、フルーツたっぷりのヨーグルト、コロンやムスクのニュアンス、近年系シェリーらしさ、微かにゴムが焼けた後の暖炉。

味わいは少し強めのアタックで、チョコレートの甘さ、イチジク、ドライアプリコット、奥にダークチョコレート、ミドルからアイリッシュらしいトロピカル感も見え隠れする、ビターチョコとキャラメルの甘さが重なったようなフィニッシュ。

【Good/Very Good】

アイルランドはティーリング蒸留所で購入できるハンドフィル。自分が行った時は2種類の樽が用意されていましたが、購入者のSさんが行かれた際も同様に短熟、長熟の2種類が用意されていたそうです。こちらは短熟の方、シェリー樽で10年熟成のものです。(Sさん、ありがとうございます!)

香りは基本的には近年系シェリーのそれですが、味わいが思ったよりもずっと綺麗めで端正。良いフルーツ感とチョコレート、アイリッシュらしいトロピカルフレーバーも感じられ、妙な引っ掛かりがほとんどない、全体的にレベルが高く美味しいアイリッシュでした。

先日ウイスキーフェスティバルで、ティーリングの白ワイン樽を使った10年熟成のものを飲んだのですが、そのときにも奥の方にしっかりとしたトロピカル感があり、なるほどアイリッシュらしいと思いました。今回のも10年ほどで同様の傾向。これはやはりティーリングの長熟なら、誰もが思い描くようなあのトロピカル感が出てくるのかもしれません。少なくとも、1990年前後だけに発生した特別なもの、というわけではないのかもしれませんね。

相変わらずアイリッシュのこのトロピカル感はどこからやってくるものなのかが不明なのですが、今後も同様のフレーバーが生き残ってくれるなら、アイリッシュ・ウイスキーの将来は明るいのではないかと思います。

なお、長熟のハンドフィルの方はやはりトロピカル全開だそうで。もしティーリング蒸留所に行かれた際には是非試してみてください。

クーリー 11年+16年 ケイデンヘッド・オープンデー Big Tasting 2019向け

アイルランドとスコットランド、旅するモルトのストーリー。

Cooley 1992 11yo(+16yo) (Cadenhead for Open Day “Big Tasting” 2019, Barrel, 53.4%)

香りはバタースコッチ、熟成したチーズ、あんぽ柿、グァバ、バンレイシ、グリーンノートとややもったりした甘さ、メンソールのニュアンス、

味わいはねっとりとした立ち上がりでグァバ、洋ナシ、ネクタリン、少しパッションフルーツ、やや強めの樽感とタンニンの収斂味、ドライながらもエキゾチックなフルーツ感が続くフィニッシュ。

少量加水するとドライな部分やエグみが抑えられ整う感じ。柑橘の甘みとパッションフルーツが主張してくる。

【Good/Very Good】

ケイデンヘッドの熟成庫ツアー、ウェアハウス・テイスティングでボトリングされた、アイリッシュ・ウイスキーのクーリーです。今年2019年5月に行われた、ケイデンヘッド・オープンデー向けのもの。

こちらも全開のポール・ジョンに負けず劣らず面白いボトル。表記上は11年となっていますが、1992年蒸留にしては年数が合いません。これはアイリッシュ・ウイスキーの定義によるものでしょう。アイリッシュ・ウイスキーを名乗るためには熟成について次の制約があります。

木製の樽において
(i) 国内の倉庫において3年以上、もしくは
(ii) 北アイルランド内の倉庫において当該期間、または
(iii) 国内および北アイルランド内の倉庫において合計3年以上の期間
熟成されたものとする。

このウイスキーは11年をアイルランドで、その後の16年をスコットランドで熟成したものとなります。その場合はアイルランドでの熟成年数のみを表記することで、アイリッシュ・ウイスキーとして存在することができる、という仕組み。

というわけで実際には27年の長熟アイリッシュ、という扱いで良いかと。その味わいは、支配的ではないもののアイリッシュらしいトロピカル感、そしてフルーツ感は果肉の甘みと皮部分の苦味が同居している感じ。甘さと同居するほろ苦さは、ライトピート麦芽を用いたというところに由来するものでしょうか。

熟成期間が長いこともあり、やや樽の強さが出ているところがありますが、ギリギリ嫌味にならないところだと思います。これ以上熟成させると完全に樽の味になりそうな気配があり、ボトリングの時期としては良く考えられているように感じました。

改めて思うのは、ケイデンヘッドの熟成庫には本当にいろいろな樽があるな、と。自分がボトリングしたものの中でも、ドロナックで樽詰めされたグレンリベットとかありましたし、確かモーレンジで10年ほど熟成させて戻ってきたスプリングバンクなどの話もあったり。スコットランド内であれば熟成年数は通常通り加算されていきますから、どこでどんな風に熟成されたかというのはボトルだけ見ていても分からないこともあるのだな、と思わされました。

単に一つの熟成庫で眠っている樽もあれば、あちこちの蒸留所を旅する樽もあり。どこでどんな風に過ごしたかによって、突然変異のようなシングルカスクが生まれることもあるのかもしれません。このあたりも熟成の神秘ですかね。

ポールジョン 7年 2011-2019 ケイデンヘッド ウェアハウステイスティング

独特のエキゾチックな刺激が詰まった一本でした。

Paul Jhon 7yo 2011-2019 (Cadenhead “Warehouse Tasting”, Refill Bourbon Hogshead, 56.7%)

香りは酸味のあるオレンジ、イチジク、ワックス、ココナッツミルク、少し溶剤、微かに焼けたゴムのニュアンス、バラなどの花屋。

味わいは刺々しいタッチで、オランジェット、カシューナッツ、カシア、クローブ、ベイリーフなどどことなくエキゾチックなニュアンス、ピリピリと強い黒胡椒の刺激、焦げた木片とともに強いアルコールの刺激が続くフィニッシュ。

加水すると、レモンとナッツ系のオイリーさ、やや苦味のある木材のニュアンスが主張するようになる。アルコールの刺激が穏やかな分、味わいを取りやすい加水の方がベター。

【Good, Interesting】

とりあえずこのボトルについては驚きの連続でした。

まずは、ケイデンヘッドがポールジョンの樽を持っていて、それがウェアハウス・テイスティングで出てくる、というのがまず凄い。
ケイデンヘッドのウェアハウス・テイスティングは、通常の蒸留所ツアーとは別に、文字通り熟成庫の中で様々な樽から直接テイスティング、そして気に入ればボトリングして購入できるというモルト・ラヴァーには刺さること間違いなしの特別ツアー。自分も2016年のスプリングバンク蒸留所の訪問時に試させて頂き、とても素晴らしい時間とボトルを手に入れることができました。(そのときの記事はこちらなど)

こちらのボトルをお持ちいただいたSさんとは今回初めてお会いしましたが、ウェアハウス・テイスティングでの様子などの話を、懐かしさと共にさせて頂きました。ありがとうございます。

そんなケイデンヘッドの特別ツアーで、選んでくるのがポール・ジョンというのが凄い(褒め言葉です)。

インド南西部のゴア地方にあるジョン蒸留所は、ゴア国際空港から50km弱と、熱帯モンスーン気候となる場所にある蒸留所。インド全体でウイスキーの消費量は多いようですが、この地にウイスキーの蒸留所があるのもポルトガルをはじめ西欧の影響を強く受けたゴア地方だからこそ、というべきでしょうか。

気温は年間を通して30度を超える時期が多く、また雨季があり高温多湿な気候。樽による熟成もかなり早く、それゆえにピーキーなウイスキーができやすい印象です。

このポールジョンのカスクストレングスも、かなりのピーキーな味わい。そして、どことなくその香味にスパイスをはじめとしたエキゾチックなニュアンスが感じられてしまうところがまた凄い。インド式のカレーを作っているときにホールスパイスを油で熱している時に出てくるような香り、カレーらしさともいうべきクミンではないのですが、クローブやベイリーフなどのニュアンスを感じてしまいました。ウイスキーなのにインドっぽい……。(実際インドなわけですが)

いやー、面白いです。これ。

ちょっと味は刺激が強く、自分には合わない部分もあったのですが、そんなことよりも。インドで蒸留されたウイスキーが、一度スコットランドのバイヤーに買われて熟成庫に保管され、日本から来たSさんがそれをボトルに詰めて持って帰ってきて、こうして自分たちの前に存在している。このことが自体がなんていうか奇跡的じゃないですか、面白いなあと思ったのでした。