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K.67 について

ウイスキー好きが送る、日々の酒の記録。 I am a Whisky Lover. Describe my alcoholic life. No whisky, No life.

キルホーマン マキヤーベイ 2019年ロット

近年成長著しいキルホーマン、スタンダードも美味しくなってきています。

Kilchoman Machir Bay (OB, bottled +/- 2019, 46%)

香りはバタースコッチ、ヨーグルトのような酸味、マスカット、燃えた木炭、パンチの効いたピート感、糊のニュアンス、微かに海藻のようなヨードのニュアンス。

味わいはややオイリーなアタックで、オイル漬けの魚介、マスカット、少しオレンジ、しっかりした麦の甘さと塩気、ボディはやや薄い、焦げた木炭や籾殻のようなニュアンスが続くフィニッシュ。

【Good/Very Good】

キルホーマンの定番商品のトップとして扱われていることから、キルホーマンを代表する味わいともいえるのがこのマキヤーベイ。毎回数十の樽を混ぜて作られるわけですが、樽の構成はバーボン樽が80%, シェリー樽が20%と、バーボン樽主体の味わい。そして50ppmという高めのピートがいかにもアイラモルトらしさを醸し出しています。

ちなみにシェリー樽が主体の味わいはサナイグが担当。シェリー樽100%となると今度はロッホゴルムがその役割となります。が、個人的にはアイラの短熟はバーボン樽が鉄板と考えていて、シェリー樽にはあまり合わないかな、という印象です。

とまあここまではお約束的な商品紹介。

さて、このマキヤーベイ、値段は税込み5000円程度ということでスタンダードボトルでしかも年数表記が無い短熟なものとしては結構お高めではあります。しかし、今回飲んでみてわかった通りかなりの完成度に加えて、そもそも生産量が多くはないクラフト的な製法であることを考えると、むしろよくこの値段で、とも考えられます。

ここ最近はアイラモルトは軒並み高騰。10年前は6000円程度だったラガヴーリン16年も、今では7000円では買えなくなってしまいましたし、スタンダードボトルでもじりじりと値段があがっている状況です。そんな中で今のマキヤーベイは、ラガヴーリン16年にもそこまで引けを取らないとも感じました。もちろん熟成感やボディの厚みといったキャラクターはかなり異なるのですが、個性的なアイラモルトとしてこの一本を選ぶ、というのも全然アリだな、と。

また、よくよく見てみると外箱がとても凝っていますね。中央のアイラ島やKilchomanのhは金色の箔押し、背景にうっすらと見える地図はエンボス加工。結構な高級感を演出している外箱は、まだまだマイナーな蒸留所としては訴求力もしっかりしていかなければ、というところをしっかりと抑えています。

そしてボトルの後ラベルにはNFCが付いていて、スマートフォンで読み取るとボトルの情報が表示されるという。こういう仕掛け、面白いですね。2次元コードを使った仕掛けは他にもあった気がしましたが、NFCというのは初めて見ました。こういった一連の体験を提供しているあたり、キルホーマンのブランディングはしっかりしているな、と感じられました。実際には農場脇のクラフト蒸留所なのですが、このボトルを通して見ると、とてもそうは思えませんね。

近年のキルホーマンは、本当に成長著しいというか、勢いに乗っているだけではなく着実な実力をつけているな、と思います。100%アイラシリーズやシングルカスクシリーズなどは経験値の高いモルト飲みにも評価されているものも多いことから、原酒の質が上がっていることは確実ですし、今回のマキヤーベイにしても、きっとヴァッティングの仕方が巧みなのでしょう。全ラインナップが着実に底上げされている印象で、今後も楽しみな蒸留所のひとつです。

スコッチウイスキー蒸留所の歴史視覚化 続編

先日のスコッチウイスキー蒸留所の歴史の視覚化を、もうひとつ作ってみました。

今度は、地図と年表をあわせたような視覚化です。

右上のスライダーを動かしたり再生したりすると、蒸留所の開業、閉鎖、再稼働の歴史が動いていくような仕掛けになっています。どの年代で蒸留所が増えていったor減っていったのかが分かるようなものにしてみました。

ただ、ここに載っている蒸留所というのは現在まで名前が知れ渡っているものです。実際には、もっと多くの蒸留所が作られては消えていった歴史があります。特に19世紀には、蒸留所のライセンスを受けたものの3年ともたずに閉鎖していったもの、時には1年未満で閉鎖されたものが数多くあるようです。情報があったものだけでも、その数は200に届こうかというものでした。

スコットランドのウイスキーはその多くが密造酒からのスタート。18世紀には数多くの密造者がいました。1824年にグレンリベット蒸留所が初めて公式な蒸留所ライセンスを取得する前から蒸留所は存在していましたが、グレンリベットのライセンス授与の後もたくさんの蒸留所がライセンスを得て操業を始めた形跡がありました。ただ、そのなかでも現在まで名前が知られているようなものはほんの一握り。長い歴史の中では生まれては消えていった蒸留所がこんなにもあったのかと、改めて驚きました。

このVizにはその情報は含まれてはいませんが、今追いかけられる歴史というのは、ほんの上澄み部分でしかないのだな、ということに改めて気付かされました。

現在の蒸留所新興ブームもまた、未来のある時点から見たら、ほとんど情報が残らないものになってしまうのでしょうか。ちょっと不思議な気分です。

グレン・グラント 70年 1948-2018 G&M プライベートコレクション

最長熟のグレン・グラント。もはや言葉になりません。

Glen Grant 70yo 1948-2018 (Gordon & MacPhail “Private Collection”, First Fill Sherry Butt #2154, 48.6%)

香りは葉巻、アンティーク家具、ムスク、形容し難い甘やかな香り、セクシーなワキガ、徐々に爽やかな柑橘、熟したリンゴのようなフルーツ、丸みを感じさせる角のとれたピートスモーク。

味わいは羽根のような繊細なタッチから、熟したリンゴとレーズン、滋味深い麦の粥、しっとりとしたピートスモークに燻製した獣肉、微かにカルダモンとフェネグリークのスパイス感、飲み込んだ後からレーズンと葉巻の煙のような独特のニュアンスが長く残るフィニッシュ。

【????????】

上記のようにテイスティングコメントを書いていますが、正直、自分でもこの表現で良いのかどうか自信が持てません。いや、困りましたね、ホント。しばらくの間、「なんだかよくわからないけど、凄い」としか思えなかったのですが、なんとかいろいろな部分を探っていって言葉をひねり出してきた、といった感じです。実態はもっと渾然一体として様々な要素があって、どこを切り口とするかで感じ取れるものが全然変わってきそうな……(ちょっと何言ってるかわからない)


改めてスペックから見ていきましょう。ゴードン&マクファイル社の超高級レンジ、プライベート・コレクションから “THE OLDEST GLEN GRANT” という肩書きの通り、70年熟成のグレン・グラント。1948年蒸留の2018年ボトリング。樽はファーストフィルシェリーカスクとのことです。

プライベートコレクションのボトル参考画像 Image via Gordon&MacPhail

プライベート・コレクションには、他にも1956年のリンクウッドや、1943年のグレンリベットなどが名を連ねています。また他のハイエンドシリーズとして Generations シリーズがあり、1938年のモートラック、1940年のグレンリベットなどがこれまでにリリース。こんな超ド級なボトルたちがリリースできるのも、ボトラーズの第一人者ともいうべきG&Mだからこそといえるでしょう。

今回テイスティングしたのは、そのボトルの10mlのサンプル。おそらく不特定の(購入意欲がありそうな)顧客に配る用途でパッケージングされたものだと思われます。パンフレットには商品の説明がごく簡潔に。また、オマケとして(?) コニサーズ・チョイスの1988モートラックと1990ノースブリティッシュの30mlが付いていました。それにしても、このパッケージだけでも高級感が凄い。


さて、焦点を香味に戻します。ファーストフィルのシェリーバットにしては塗りつぶされたような濃さはないのが印象的。味わいも、これだけ長い熟成なら樽をしゃぶっているようなものなのでは、と予想してしまいましたがそんなことはありませんでした。特に味には驚くほど甘い穀物のニュアンスがあり、でもいわゆる普通のモルトの味とはちょっと別の次元にいるような、いままでに味わったことのない感覚。香りの独特さともあいまって、「これは本当にウイスキーなのだろうか」という感想も出てきました。

そういえば、似たような感覚は40年以上の超長熟のコニャックやカルヴァドスを飲んだときにもあったような気がします。過度の熟成によって初めて出てくる香味成分なのかもしれません。

今回のサンプルは10mlと少なめなためか、グラスの中での変化がかなり早い印象でした。最初の10分ほどでもコロコロと表情が変わり、20分ほどすると酸化のためかベーコンや獣脂のような、オイリーなニュアンスが支配的になってきたため飲みきりました。30分以上かけてじっくりと開かせる必要があるかな、と思っていたのでこれはちょっと意外。もちろん、フルボトル、フルショットの場合はまた変わってくるのでしょうね。


ところでこのボトルについては、スペックを読み返してみると謎な部分があります。

アルコール度数48.6%というのはカスクストレングスらしいのですが、700mlのボトリング本数はトータルで210本となってます。ということは、樽の中には300リットル以上の原酒が残されていたことに。また、このサンプルのように正式ボトリングされないような原酒も少し残っているわけですし、もう少しばかり多い量があった、ということになります。

仮にエンジェルズシェアが少なめの1%だったとしても、70年も経てば250リットル弱しか残らない計算になります。70年間ずっとひとつの樽で過ごしてきた原酒のみで、その度数が48%もあり、かつ300リットル以上残っている、というのは相当に恵まれた樽なのかもしれませんが、本当にそんなことがあるのか? と少し疑問符が浮かぶのが正直なところ。

このあたりも通常の熟成とは異なる何か不思議なチカラが働いた樽なのかもしれません。通常の熟成庫ではなく長期熟成のための特別な場所に置かれていた、なんてこともあるかもしれませんね。そんな場所があるのかどうかも分かりませんが。やはり熟成のプロセスは謎が多い。

ちなみにこちらは別の機会にG&Mが配布していたパンフレットで、Generationsシリーズの1940年蒸留グレンリベット70年について書かれたもの。樽のサンプリング回数が時系列でまとめられていて、35年熟成の頃から超長期熟成用として扱われていた事がわかります。このあたりのタイミングで何か特別なケアが施されていたりするかもしれません。このあたりはG&M社の企業秘密、でしょうか。

ここ最近、ウイスキーの蒸留所はどんどんオープンな方向に進み、製造プロセスのかなり細かい部分まで公開しているのはみなさんもご承知の通り。ネット上を探せば様々な記事や動画があり、そんなところまで公開しちゃって大丈夫なのか、と心配になるほどです。

そんな中にあって、まだまだ謎が多いのが、樽の管理やその選定プロセスではないでしょうか。

  • どれだけの樽がどこに保管されているのか
  • 誰がどういう風にボトリングを決めるのか
  • 短熟でリリースするもの、長熟でリリースするものを決める要素

他にもたくさんの知りたいことがありますが、これらは当然に企業秘密なものばかりでしょう。なかなか訊いても教えて頂けないでしょうし、そのプロセスを実際に見れるのはごくわずかな業界関係者に限られます。それは、熟成などの自然的な神秘とは対極にある、隠された聖域ともいえそうです。

隠されていると逆に知りたくなってしまうのは、性分ですかね、これは。

なんてことをいろいろと考えさせられる、不思議なモルトでした。

こちらを頂いたのは秩父令和商会さんにて。なんの気なしに引いたくじ引きで当たってしまい、とんでもない機会を頂けたことに感謝です。ありがとうございました!

どれを選ぼうか、とても悩ましい3択

スコッチウイスキー蒸留所の歴史を視覚化してみました

ウイスキーの蒸留所のオーナーは、これまでにも頻繁に入れ替わりがありました。近年では特に大企業が数多くの蒸留所を所有するようになり、しかし一方で独立系資本やほぼ個人での操業などもまだまだ頑張っていて、二極化しているような印象を受けます。

現時点でならまだ良いですが、2,30年前のオフィシャルボトルはどの企業からリリースされていたのかがよく分からなかったので、ちょうど良い機会だと思い情報をまとめてみました。

使い方は見ていただければ分かるかと思いますが、オーナーが変わると色が変わったり、操業/閉鎖の状態で線のサイズが変わったりしています。また、左上のヘッダでソートしたり、右側のフィルタで絞り込んだり、データを選択すると現れるツールチップから同じオーナーを選んで表示したりもできます。あちこち触るといろいろ機能があります。

蒸留所の歴史をざっくりと俯瞰したり、同じ企業で繋がってる蒸留所同士を把握したり、とりあえず創業年いつだっけ、といったときに役にたつのでは、と。

当サイト上ではスクリプトが動作しないので、以下の画像から公開元のTableauのサイトに飛びます。

スマートフォンの場合はこちらの縦型の方が見やすいです。

が、基本的にはPCの画面でないと厳しいかな、と。マウスでhoverしたときのツールチップが無かったり、画面内で見れるデータの数が少ないため全体の俯瞰がしづらかったり。自分のスマートフォンで見て、なるべくまともになるように対応したつもりですが、機種によってはかなり見づらかったりするかもしれません。

おかしい点だったり、こんな機能もあると良いかも、といったことがあれば是非コメントなどで教えてください。

グレングラッサ 1973-1998 The Family Silver

地味ですが、滋味深いしみじみとしたシェリー感でした。

Glenglassaugh 1973-1998 (OB “The Family Silver”, 40%)

香りはトフィー、イチジク、レーズン、少し紙のニュアンス、革のジャケット、微かに米ぬかのニュアンス。

味わいは優しいタッチで、べっ甲飴、キャラメル、カカオ70%チョコレート、奥の方から酸味ある柑橘のフレーバー、ざらざらした粒子感のあるチョコレートが残るフィニッシュ。

【Good/Very Good】

1973年蒸留のグレングラッサ、およそ24年熟成という長熟にさしかかろうかというボトルです。

リフィル系と思われるシェリー樽の味わいが中心で、ボトリングは5000本ということなので複数樽のヴァッティングでしょう。それなりにシェリー樽が多い構成だったものと思われます。70年代前半という、往年の良いシェリー樽が使われていたギリギリの時代、といったところでしょうか。シェリー感は近年系のそれとは異なるニュアンスが感じられます。

40%加水ということもあって全体的に優しく柔らかい味わいですが、香りの奥の方にはちょっと独特のニュアンスもあり、優等生のふりしてるけど少しあか抜けない地の部分も見えてしまうようなところが、なんともグラッサらしいような、そんなところが面白いですね。

ところで、この The Family Silver というシリーズ、以前にもどこかで見たことがありボトラーズかと思いきや実はオフィシャルなのですね。Highland Distillers社が当時所有していた蒸留所のシングルモルトを、この The Family Silver シリーズでボトリングしリリースしていたのが1998年頃。Highland Distillers社は、その後1999年にエドリントングループに吸収されていきます。

扱いとしては、United Distillers(ディアジオ)のレアモルトシリーズと同じような位置づけでしょうか。シングルモルトが徐々に市場を拡大していったなかでのオフィシャルボトル、当時はまだまだ珍しかったことでしょうし、グレングラッサ蒸留所は既に生産停止中。あまりその名を知る人はいなかったのではないかと思われます。