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スコットランド旅行における宿の種類 私的まとめ

モルト仲間のスコットランド旅行計画を一緒に見ていて、なんか分かりにくいというか、紛らわしいなと思ったのが宿に関する点。

Google Map などで地図を見ていると宿のアイコンが出てきますが、どんな感じの宿なのかイマイチよく分からない、という方もいらっしゃるかもしれません。というわけで改めてちょっとまとめてみたいと思います。スコットランド旅行が初めてという方の参考になれば、と。

まず宿の種類には、主に以下のものがあります。

  • Hotel – ホテル
  • Bed & Breakfast(B&B) – ベッド&ブレックファスト
  • Guesthouse – ゲストハウス
  • Inn – イン
  • Youth Hostel – ユースホステル
  • Cottage – コテージ

それぞれ説明してきましょう。簡単になので、この説明に収まるものもあればそうではないものもありますが、あくまで一般的な目安として。

Hotel – ホテル

日本でも見るようないわゆる高級なホテルから、割と気さくで小ぢんまりとしているものまで、いろいろランクがあります。日本のビジネスホテルのような近代的でシンプル、といったものはあまり見かけません。というのも、スコットランドの建物はほとんどが昔から(時には200年以上)改修しながら使われているので、近代的なビルなどが無いためです。

日本のように、すぐに壊して建て替えばかりやっている文化とは真逆ですね。もちろん地震が少なかったりと地理的なものもありますが、そもそも昔からのものを大切にする方針が建物にも及んでいるためです。

高級ホテルは主に大都市圏にありますが、地方にも昔の城や貴族の邸宅などを改装したものなどがあります、歴史ある建物に宿泊できる機会もなかなか無いので、歴史好きな方にはオススメ。人気ドラマのダウントン・アビーのような邸宅に泊まれたりもします。

値段が手頃なホテルの場合には、後述するB&Bとあまり差がないことが多いです。設備的な面では部屋が割と広かったり内装がやや高級だったり、シャワーだけではなくバスタブが付いていたりすることもありますが、大きくは違いません。泊まったことのあるホテルはどれも、部屋の天井が高いなーと思ったことはありますが……そのくらいでしょうか。

ホテルの一室。B&Bよりはやや広めで、天井が高かった。

Bed & Breakfast(B&B) – ベッド&ブレックファスト
Guesthouse – ゲストハウス
Inn – イン

この3つは概ね同じと考えて良いと思います。

B&Bはその名の通り、寝るための部屋と朝食を提供してくれる民宿のようなところ。家の中の一部を旅行者に貸し出しているようなスタイル。オーナー家族のプライベート部分とゲストのためのパブリック部分に分かれていることが多いですが、リビングルームをパブリックにしているB&Bもあり、オーナーやご家族と団らんを共にすることもできたりします。もちろんそうせずともOK。

B&Bのシングルルーム。ほぼベッドだけの部屋ですが、十分な快適さ。

朝食はたいていダイニングルームで、他のゲストとも一緒の空間になることが多いです。テーブルは別れていることもあれば、一緒のテーブルに相席することも。話したければ話してもいいし、無理に合わせる必要もありません。気軽にいられるのが良いところ。

朝食はダイニングルームで。テーブルで相席になることもあるし、ならないことも。

ゲストハウスはB&B以上ホテル未満、という説明を見ますが、自分の中ではB&Bと変わりません。

インは、そのほとんどが1階にパブのような食事処を設けているところ。2階以上が宿の部屋になっていて、それ以外はB&Bともほぼ同じです。1階部分が夜遅くまでやっているやっていることもあるため、少々うるさい場合も。

Youth Hostel – ユースホステル

日本のユースホステルと同じです。安いですが2段ベッドや部屋は共用。簡単な料理ならできるキッチンが付いていることが多いです。最近できたきれいな所、昔からの設備で古い所、千差万別です。とにかく値段が安く、1泊1500円くらい。

Cottage – コテージ

いわゆる別荘のようなタイプ。主に1週間単位での貸し出しが多く、家まるごとを借りれます。家具や家電も付いていますし、キッチンも一式、またリネンやバスタオルなども揃っています。(タオルは別料金のことも)

料金が高めに見えるのですが、多人数でも同一料金となるため、長期間同じ場所を拠点とするような場合にはおトク。オプションがいろいろとあり、光熱費は別で請求されたりということもあります。この辺りはそれぞれのルールを確認した方が良いでしょう。

こちらはコテージではありませんが、キッチンやリビングが自由に使えるタイプ。もちろんベッドルームもシャワールームも完備。アパートを借りているような気分でした。

その他:部屋のタイプについて

en-suite エンスイート というのをよく見かけますが、これは部屋に専用のシャワーとトイレが付いているタイプです。そうでない場合、どちらかあるいは両方が共有だったりすることがあります。やはり共有はちょっと落ち着かないことが多いため、値段がそこまで変わらないなら自分はエンスイートである方が良いかな、と。

私的旅行スタイル

自分は宿泊のほとんどをB&B、もしくはゲストハウスにしています。
ホテルにも泊まったことはありますが、あまり高級な場所には泊まったことはありません。

B&Bは事前に予約しておければそれに越したことはありませんが、当日でも飛び込みで泊まれることも多いです。目的地を決めずにいる旅程の場合には重宝します。道路沿いに看板が出ていて、Vacancies(空きあり)や No Vacancies(空き無し)という表示が出ていますので、Vacanciesを見かけたら立ち寄って泊まりたい旨を伝えます。泊まる前に部屋を見せてもらえるのが普通のため、念の為確認した方が良いでしょう。料金も確認し、納得すればそのまま宿泊させて頂く、といった流れ。料金が気に入らなければ断っても良いです。

たいていはコーヒー&ティーセットが付いています。ここではお菓子も用意されていました。

とはいえ、7,8月のピークシーズンや逆に1,2月あたりのオフシーズンすぎる季節だと、なかなかふらりと空きB&Bを見つけるのは難しいときもあります。そのため、予約サイトで前日に宿の予約をしておくのが無難ではあります。自分はBooking.comを良く使っています。予約しなくても、このあたりに宿がいろいろあるな、というアタリを付けておくために利用するのも良いでしょう。

B&Bに泊まる人、泊まらない人

宿にまつわる話の中にはちょっとした不思議も。蒸留所や観光地に行くと中国人や他のアジア人もよく見かけるのですが、宿で主に朝食時などに会ったことがほとんどないのを不思議に思っていたのです。彼らはどこに泊まっているのだろう、と。

そうした話をとあるBarのマスターにしたところ、「特に中国人は基本的に家族で旅行するので、コテージに泊まることが多いのでは」ということでした。確かに、中国の人は両親も含め家族4人~8人くらいで旅行をしていることが多かった印象があります。そうなるとB&Bに来るよりもコテージや、ツアーなら宿泊は大きめのホテルなどになるのでしょう。自分が泊まるB&Bなどはそもそも選択肢には挙がってこない、と。これには納得でした。

逆にB&Bにはどんな人が泊まるかというと、主にヨーロッパやアメリカからの夫婦、カップル、ソロツーリストが多い印象。年齢は幅広く、年配の方もいらっしゃれば若い人も。多くても1パーティ6人くらいまででしょうか。

B&Bに泊まろう

自分のオススメは、上記の通り良く泊まっているB&Bやゲストハウスです。値段が手頃というのもありますが、どの宿もオーナーの個性が出ていて面白く、そして皆さん優しい。何か困ったことがあれば助けてくれるし、オススメの観光スポットや食事処の相談にも乗ってくれる。朝食も、同じフルスコティッシュではあってもいろいろと細かいところで違いがあるものです。

温かいホスピタリティと、次の宿はどんなところだろうというちょっとしたワクワク感もあったりするところが気に入っていて、最初の旅行以来B&Bばかり巡ることに。まあ、ときどき微妙な宿もあったりもしますが、それもまた旅の思い出です。

手作りのジャムやヨーグルトなどが並ぶこともある朝食は、B&Bの楽しみのひとつ

というわけで、スコットランドの宿に関する情報というか、私的インプレッションでした。参考になれば幸いです。

2019年も暮れゆく時分です

2019年代最後の日となりました大晦日。写真の整理などを行いながらだとあれこれ思い出すものです。というわけで、少し今年を振り返ってみようかと。

まず、3年ぶりにスコットランドに行きました(8月)。目的は主に写真を撮ること、そして、今まで訪れていなかった蒸留所たちをまわってみること。巡るはややマイナー(失礼)な蒸留所ばかりで、どでも個性的、不思議な魅力を持つ場所ばかりでした。バルメナックとかグレンデヴェロンとかミルトンダフとか……。

ミルトンダフ蒸留所


他にも、各地をドライブしていると突然、知らない蒸留所が現れてくる、ということが何回かありました。GlenRinnes, Aberargie, Dalmunach…、大手が運営していたりクラフトだったりとそれぞれ設立の事情も作っているものも異なりますが、日本とも異なる蒸留所建設ブームの実際を目の当たりにした気分でした。

新興のグレンリネス蒸留所

旅行といえば、ベルギーにも行きました(7月)。単純な観光のつもりでしたが、ウイスキーで繋がりのある人を訪れることができ、少人数ながら現地で持ち寄り会が催され、自分も日本からボトルを持って行くという不思議な事態に。英語でのテイスティング・コメントは、なかなか思うような単語・表現が出てこない(酔っているから尚更)ため難しいものですが、同じウイスキーが好きというつながりに国境は無いな、と改めて感じさせられた瞬間でした。

そしてベルギーといえばビール。醸造所をいくつか訪れる機会にも恵まれ、本場の料理と共に味わいベルギービールはどれも格別の味わいでした。日本でも有名なトラピストビール、アビィビールの本場は自然に囲まれた美しい場所にあり、歴史を感じさせられる建物にはスコットランドの蒸留所とはまた違った重みが感じられました。

トラピスト・ビールをつくるオルヴァルの修道院

持ち寄り会といえば、何度かお声がけ頂いて色々な方と繋がれた一年だったなあ、と。WebやTwitterで時々お見かけしていた方々に実際に会うことができ、また時には拙ブログも見ていただいていたことがあったりと、細々とながらこのサイトを続けていて良かったな、と。旅行記とアイラや南投への行き方の記事などは未だに結構アクセスがあり、情報を集めている皆さんの一助となったのであれば幸いです。

さて来年は、もう2020年代に突入ですか。東京ではオリンピックが開催され、今までよりも更にジャパニーズ・ウイスキーが注目されるのでしょうか。とはいえ、その後は厳しい時代がやってくるであろうことから、社会としてもウイスキー業界としても、ひとつのターニング・ポイントになるのではないでしょうか。

2020年に何をしようか、ということはあまり考えていない現在ですが、ウイスキーとの付き合い方はあまり変わることは無いと思います。いろいろと思うところはある時機時分ではありますが、変わらずゆるゆると続けていければ嬉しいですね。

それでは、年の瀬も迫ってきた頃合い、皆さん体調と肝臓の使いすぎにはお気をつけて。良いお年を。

ウイスキー1本に必要な大麦はどのくらいなのか、問題

ウイスキーの製造には、たくさんの大麦が必要となります。

どこかで見たようなこの言葉。もちろんその通りですし、実際に蒸留所に足を運ばれた方は、スタッフの説明や、大きな設備に入った麦ジュースや発酵中の液体を見てこれらを実感したこともあると思います。1回の仕込みで必要になる大麦の量は蒸留所によって異なりますが、小規模なところで1トンとか、大きなところでは10トンとか、そういうオーダーになってきます。

ところで、1トンの大麦からどれだけのアルコールを造ることができるのでしょう?
そこから熟成を経てボトリングされる数は?
もっというと、1トンの大麦ってどれくらいの面積から取れるのでしょう?

なかなかこのイメージが持てなかったため、ざっくりとですが計算をしてみました。

結論としては、ボトル1本 ≒ 2畳くらいのスペースの大麦 というお話です。


さて、それでは計算してみます。

まず1ヘクタールから収穫できる大麦の量を調べます。英国の政府機関のサイトから、2017年時点では 春大麦4.7トン/ha、冬大麦6.8トン/ha であることが分かります。

spring barley of 4.7 tonnes per hectare has resulted in the lower production. Winter barley yields were relatively unchanged from 2016 at 6.8 tonnes per hectare

https://www.daera-ni.gov.uk/news/estimates-crop-yields-and-production-2017

ここでは、ざっくりと5トン/haという計算にしましょう。

次に、1トンの大麦からどれくらいのアルコールが取れるのか。
これは大麦の品種の話題が出てくると良く語られている点です。Whisky Magazine の記事から大麦1トンにつき410~420Lのアルコールであることが分かります。

例えば通常のアルコール収率は大麦1トンにつき410~420Lですが、マッシュの水温が少しずれただけで15〜20Lのアルコールを取り逃すことになります。

http://whiskymag.jp/wm153_mty/

また、こちらの一覧表は大麦品種ごとの収量をまとめたもの。こちらの内容とも合致しています。

Image via https://www.cobosocial.com/dossiers/the-golden-promise-of-whisky/

それでは製造工程です。幾つかの蒸留所の製造記事から「1トンのバッチからおよそ6000Lのもろみを造り、そこから蒸留をすると500Lのハート(原酒)ができる」とあります。

ハートの取り方も蒸留所によって異なりますが、アルコール度数が75%~60%だったり72%~60%だったり、だいたいそのあたり。ヘッドとテールも再利用で使いまわされるので、このあたりは正直どれくらいの割合なのか計算が難しいところです。

また、バレルエントリーは62.5%が一般的なので少し加水されることになりますが、ざっくりと計算して、

1トンの麦芽から 500L の原酒

としてしまいましょう。

そうなると、ホグスヘッド樽(250L)2樽分です。

この樽が20年熟成したとして、毎年2%ずつエンジェルズシェアで減ったとします。

300L分のウイスキーが出来上がります。

ボトル1本が700mlですので、カスクストレングスのボトル429本分のウイスキーが出来上がりました。

さて逆算します。

429本分のウイスキーを造るために必要だった麦芽が1トン

1ヘクタール当たり大麦5トンですから、1トンなら0.2ヘクタール。これはバスケットボールのコート5面分くらいです。

0.2ヘクタール / 429 = 1本あたり4.67平方メートル

畳1枚で1.82平方メートルですから、だいたい2.5畳ということになりました。


どうでしょう? 結構多いと思いますか?

自分はもっとたくさん必要かと思っていたので、イメージよりは少ないという印象でした。が、ボトル1本に詰まっている麦の量が畳2.5枚分ですから、それでも大変な量であることには代わりありません。

ちなみに、シングル1杯(35ml)の場合は、だいたい0.25平方メートル(50cm四方)ということに。 これもまた、多いのか少ないのか、ちょっと判断しづらい部分ではありますが、そういうサイズなんだ、ということが分かるとまた印象も異なってくるのではないでしょうか。

1杯は50cm四方の畑の大麦から

という計算をした後、キルホーマンのサイトで良い記事&写真を見つけました。

Image via KILCHOMAN

9.9ヘクタールから61トンの大麦が採れ、そして147樽が出来上がるとあります。

樽をバレルサイズ(180L)として同様の計算をしていくと、

10年熟成で ボトル1本 1.6畳分
20年熟成で ボトル1本 2.2畳分

という計算に。
少しブレがありますが。概ね合ってますかね。

キルホーマンは加水でのリリースが多いですから、ボトル1本あたりの大麦で考えるともうすこし少なくなるでしょう。とはいえ、畳1.5畳~2畳分くらいにはなりますから、このあたりが目安になると思います。

グレンフィディック蒸留所がビジターセンター50周年記念ボトルをリリース

グレンフィディック蒸留所が、自身のビジターセンター設立50周年を記念して、30年熟成のシングルカスクをリリースするそうです。

Image via Spirits Buisiness

Glenfiddich releases 30yo to mark visitor centre https://www.thespiritsbusiness.com/2019/07/glenfiddich-releases-30yo-to-mark-visitor-centre/

ビジターセンターの歴史については以前こちらで記事にまとめましたが、現在まで続くウイスキーツーリズムの走りとなったビジターセンター設立から50年、今なおスコットランドの蒸留所ツアーは人気上昇中で、スコットランド全体で世界中から年間200万人以上の訪問客が集まっています。

特にグレンフィディック蒸留所は敷地も大きく、ビジターセンターも充実していることから、大型バスでツアー客がたくさん来ているのが印象的でした。日本でも白州蒸留所や宮城峡蒸留所、余市蒸留所などは大型の駐車場があり、ツアー客も多い印象でしたが、グレンフィディックはさらに賑わっていたように記憶しています。

蒸留所での体験を重視する最近の傾向で、昔は一部だけだったハンドフィルも今では一般的になりましたし、小規模蒸留所も顧客に様々なアプローチをする一環として、蒸留所の門戸を開いていることが多くなりました。やはり実際にウイスキーが作られているところを見ると印象的で、その蒸留所のことをもっと知りたいと思ったり、あとでウイスキーを飲むときにも思い出しながら飲んだりと、本当に良い経験になります。

最近は国内の蒸留所も多いので、ぜひいろいろな蒸留所に出かけて、実際に見て頂きたいと思います。自分もまだまだ行きたいところが多く、次はどうしようか、などと悩み中です。

ユーロスターがアルコールの持ち込みを制限するように規約を変更

イギリスとフランスを結ぶ特急列車ユーロスターで、規約に変更があり、アルコールの持ち込みが制限されるようになった、と報じられています。

BBC News – Eurostar defends alcohol limits on trains

https://www.bbc.com/news/business-48742530

持ち込み可能なアルコールは「ワインのボトル1本か缶ビールが4本まで」のみで、ウイスキーなどのスピリッツ類は禁止。許可されたもの以外を持ち込みたい場合は、別途荷物運搬のオプションに申し込まないといけないようですが、最低でも30£からという、決して安くない値段になっています。

「快適な旅を維持するため」という名目だそうですが、これはあまりに厳しいと言わざるを得ません。ユーロスター以外の路線では軒並み認められているアルコール類が、英仏間だけがボトルネックとなって移動できないということになりますから、旅行客はもちろんのこと、お酒を扱うビジネスをされている方には大打撃でしょう。

日本からイギリスへ直接フライトで発着する分にはユーロスターのお世話になることはありませんが、ユーロスターを利用するような旅程を考えていらっしゃるモルトラヴァーな方々がいらっしゃいましたら、ウイスキーの運搬方法にはお気をつけください。

グレンフィディック、ラベル商標で敗北

“GlenField” というブレンデッドウイスキーを販売しているインドのVivek Anasaneという会社が、イギリスに進出するにあたって商標を申請したところ、”GlenFiddich” のWilliam Grant&Sonsが反対した、という争議がありました。

名前もラベルのデザインも酷似しているため、消費者が誤認する、という主張でしたが、イギリス知的財産庁が出した結論は、混同はしないだろう、というものでFiddich側が敗北という形になりました。

これと似たような話は恐らくこれまで幾度となく繰り返されてきたのでしょうが、未だに無くならないものですね。古くはどの蒸留所も Glenlivet を名乗ったりですとか、最近でいうとドイツのウイスキーである “Glen Buchenbach” に対して、Glen という名前を使わないように求めた争議があり、これはスコッチウイスキー協会が勝利していました。

一般的な用語である Glen に制限を求めるのは難しいとは思うものの、個人的には、やはりそこはスコットランドに由来するものでないならパクりと言われても仕方ないのでは、と感じてしまいます。

今後も法的に似たような騒動が起きるのは間違いなさそうですので、スコッチウイスキー協会あたりが地理的表示(GI)保護制度の一環として、Glen の使用制限を設けるような動きがあってもおかしくないかな、なんて思います。


ちなみに騒動の中心となっている Glen は「谷」や「山の狭い渓谷」というような意味であるのはご存知かと思いますが、きっと多くの日本人が思い描くような谷とはかなりイメージが違います。

グレンリベット蒸留所遠景。なだらかな丘の合間に鎮座している。周囲は牧草地が続く。

スコットランドの自然は日本ほど急峻な地形ではなく、山も平地もかなりのんびりした隆起です。そのため、山の合間である谷についても、せいぜい窪地というか丘と丘の間のようなものだったり。

グレンファークラス蒸留所。こちらも谷間というにはずいぶんとなだらかだが、確かに谷のような位置にある。

多分、日本の地形が山多すぎ谷深すぎ、なんでしょうけれどもね。ちょっとしたギャップも面白いものです。

パティソン事件

ウイスキーの歴史を紐解けば、そこには良いも悪いも含めて様々な歴史が存在するものですが、スキャンダルの中でも特に酷いものがいくつかあります。今回はそのなかのひとつ、19世紀末に起きた「パティソン事件」についてまとめてみたいと思います。

パティソン事件とは

直接的には、Pattisons Whisky – パティソン・ウイスキー という銘柄のブレンデッドウイスキーを販売していたパティソン社が倒産し、芋づる式にウイスキー関連の会社が10社ほど、加えて多くの小規模会社が倒産していった、という事件です。

倒産の原因は様々な要素が絡むものの、パティソン社の不正会計とウイスキー業界のブームの終焉によってパティソン社が倒産となり、その結果、ウイスキー需要を長期間冷え込ませてしまう冬の時代の先鞭となった、というところがこの事件の肝となる部分かと思います。

それでは、パティソンの歴史を少し見てみましょう。


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