カテゴリー別アーカイブ: アイルランド旅行2017

アイルランドの蒸留所訪問を終えて

アイルランドの蒸留所訪問記をまとめてみましたが、いかがだったでしょうか。

それぞれの蒸留所やアイリッシュ・ウイスキーの歴史や、アイリッシュウイスキーの製造工程などの情報については、正直ネットでいくらでも調べられるので、本当に細かい内容はそちらをご参照。現地に行ってきた自分が、それ以外で何か伝えられるとしたら、蒸留所を取り巻く場所全体の雰囲気や空気やにおい、そういった風土のようなものだと考えています。

アイリッシュ・ウイスキーの凋落からもうすぐ100年という時間が経とうとしていて、その間に消えてしまった蒸留所がどこにあったのかは定かでないものが多いのですが、今現在稼働している蒸留所でいえばどれも町の中心に近い場所にありました。スコットランドの蒸留所は、逆に町の中心にあったものは廃れてしまい、少し町外れや郊外の辺鄙な場所にあるものの方が残っているように見受けられます。次々に閉鎖せざるをえなかったアイルランドでは、効率を考えたら町からアクセスしづらい場所のものは優先的に切ってしまうしかなかったのかもしれません。

現存する蒸留所はどこも「昔ながらの伝統的な」「歴史ある建物」といった要素を前に押し出して歴史の長さなどを強調していました。しかし、実際の製造にはそのような要素はかなり限定的で、どこの蒸留所も原酒工場のようなものでした。

表向きのビジターセンターやツアー案内の部分は、過去に使われていた蒸留所を利用してそのような趣を出しているものの、裏手にはどどーんと大きな原酒工場が構えている、というスタイルだったのがブッシュミルズとミドルトン。

キルベガンも同様ではあったものの、ここは今稼働しているポットスティルがかなり小規模だったため少し異なりました。ただし、キルベガン銘柄の原酒は実際にはクーリーで作られているため、キルベガンはあくまで名前だけを冠しているにすぎません。

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キルベガン蒸留所のポットスティルはフォーサイス製のかなり小規模なものだった。

 

そう、アイリッシュ・ウイスキーはこういうスタイルが多い。銘柄でいうとレッドブレストやカネマラにタラモア、ブレンデッドもたくさんありパディやターコネルといったようにかなり多いのですが、実際にその原酒を作っているのはクーリーとミドルトンの2つくらい。どうも表と裏の顔が違うように見えてしまうところが、アイリッシュ・ウイスキーの伝統というものに対してつきまとう「いかがわしさ」の元になっている気がします。(これは明らかに自分個人の印象なのですが)

 

少し毛色が違うティーリングに関しては、かなり伝統的なものに則ったポットスティルによる蒸留を行っているため期待できる印象。とはいえ、トロピカルフレーバーで一躍話題になった1990年前後の原酒は、クーリー蒸留所のものといわれているため、実際にダブリンで蒸留された原酒が美味しく育つかどうかはまた別の話、ということになります。

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ティーリング蒸留所の原酒はどのような味になるのだろうか

ティーリングの10年~13年程度のウイスキーについては幾つか試飲しましたが、独特のトロピカル感は奥にあるもののかなり弱い。一方で、現地でハンドボトリングできる25年の原酒は、やはりマンゴスチンやパッションフルーツのフレーバーが明らかでした。20年を超えてくるとあのトロピカル感が全面に出てくるのでしょうか? どうしても謎がつきまといます。

 

アイルランドの蒸留所でもうひとつ期待したいのが、各所にオープンし始めたクラフト蒸留所。グレンダロッホなど稼働から10年が経過しているようなところ、まさにここ数年でオープンしたところなど様々ですが、それぞれの個性が楽しめるようになるのに、あと10年くらいでしょうか。期待しておきたいところです。

また、復活させたキルベガンの蒸留設備も、2000L程度のポットスティルで形もややクラフト蒸留所チック。フォーサイス製ということでモノは良いと思われます。

ミドルトン蒸留所でも2年前からクラフト蒸留所の設備を稼働させています。まだかなり新しい3つのポットスティルは、2500L,1500L,1500Lという小規模。創始者ジェムソンがかつて様々なレシピを試したように、同規模のポットスティルで現代でも試行錯誤を繰り返していこうということらしいです。

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ミドルトン蒸留所のクラフト・ディスティラリー

 

これらの原酒がシングルモルト、シングルカスクで市場に出まわる可能性は未知数で、おそらく出てこないのではないかと悲観していますが、もし手に入るようになるのであれば楽しみではあります。もしかしたら、蒸留所限定のカスクということでボトリングもしくはテイスティングができるかもしれません。10年後くらいになるかもしれません、待つのは長いですね。

スコットランドとはまた違った趣があるアイルランドの蒸留所。数は多くないものの、各地に散らばる蒸留所はそれぞれに特徴があり、また近くに観光名所なども多いので、織り交ぜて旅程を考えると楽しいでしょう。今後のクラフト・ディスティラリーの蒸留所公開ぐあいによっては、それらも候補に上がってきます。将来の楽しみが残っている、という点では、やはりアイリッシュ・ウイスキーはこれからが本気を見せてくれるところなのかもしれません。

 

アイルランド蒸留所訪問 – ミドルトン蒸留所

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ミドルトン蒸留所のあるミドルトンの町は、アイルランドの南部にある第二の都市コークから車で30分弱。町自体もかなりの大きさがあり、大きな尖塔の教会も2つ、メインの通りは商店がたくさん立ち並んでいます。人でも多く賑わいがある町でした。

 

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町の中心にあるミドルトン蒸留所で、この旅のハイライトとも言うべきツアーに参加します。通常のツアーではなくひとつ上のをお願いしたところ、なんと自分ひとりだったのでマンツーマンで色々と教えて頂けました。

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アイルランド蒸留所訪問 – タラモア蒸留所

タラモアの町では蒸留所にほど近い場所に宿をとったにもかかわらず、時間の都合でツアーに参加することができませんでした。残念ながら外観などの感想のみお届けします。

 

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タラモア蒸留所は1829年創業、その後、ダニエル・エドモンド・ウィリアムス (Daniel Edmond Williams) に引き継がれ、彼の名から タラモア・デュー D.E.W. という有名な銘柄が生まれるまでに至りました。創業者ではないところが面白いところですが、蒸留所の近代化につとめ、自分の名を冠した銘柄を生み出すのは名誉を掛けた挑戦だったことと思います。なお、Dewは露の意味がありますが、蒸留所の目の前には運河が流れていて、朝には霧が立ち込めていました。なるほどこの景色ならば、と納得したところです。

タラモア蒸留所は2014年にウイスキーの蒸留を復活させる運びとなりました。ビジターセンターはその2年前ほどからオープン。こちらは昔の貯蔵庫を改造して作られており、グッズ販売とカフェが併設されていました。蒸留所本体はその後ろ側に控えていて、外からも外観だけは伺うことができましたが、キルンなども無く普通の町工場のようなものしか見えなかったため、知らないでいるとここに蒸留所があるとは思えないような印象でした。

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ビジターセンター内部。木をあしらった隠れ家のような内装。

タラモアの町はアイルランドでは中規模程度といったところで、メインストリートには店が立ち並びパブも多い場所でした。大きな教会がひとつあり、どこからでも見渡せるとともに時を告げる鐘が鳴り響く、ちょっとクラシックな町でした。

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ここはメインストリートではなく裏通りですが、パブが並んでいました。

蒸留所前のデッキにはベンチが並んでおり誰でも座ってくつろぐことができます。地元の学生たちが仲間同士でふらりとやってきて、ちょっと飲み物を片手におしゃべりしている、といった光景も何度か見かけました。大人だけでなくいろいろな人が訪れる場所として機能しているようです。

最後に蒸留所の情報など。蒸留所は町中にあり専用の駐車場がありません。周囲には一般の駐車場がありますが、2時間1ユーロくらいのチケット式となっていましたので、事前にチケット式パーキングについて確認しておくと良いと思います。ツアーはいくつか種類がありますが、意外と人気らしく埋まりやすいので、事前に予約などを検討された方が良いでしょう。

 

アイルランド蒸留所訪問 – ブッシュミルズ蒸留所

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北アイルランドはイギリスの一部であるため、ブッシュミルズ蒸留所は正確にはアイリッシュ・ウイスキーではないのでは? とも思うのですが、一般的にはアイリッシュ・ウイスキーとして捉えられていますね。ただ面白かったのは、蒸留所のキャッチコピーに “We didn’t create just any Irish Whiskey. We created BUSHMILLS.” とあり、ちょっと意識してたりするのかな、なんて思いました。

蒸留所はとりあえずツアーに参加し内を見学。残念ながら写真禁止だったため内部の写真がありません。オーバンやタリスカーなどと同じディアジオの大手蒸留所ということで、やはり写真はNGでした……。(修正情報:2014年にホセ・クエルボがディアジオから買収していました。情報ありがとうございます。)

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アイルランド蒸留所訪問 – クーリー蒸留所

アイルランドはダブリン市内は混んでいるものの、環状のM50を超えて暫く走ればあまり混雑の無い道が現れます。空港でレンタカーを借りた後、一路北へ向かうこと1.5時間ほど。クーリー蒸留所があるクーリー半島は、アイルランドでは珍しい高い山の麓にありました。そして蒸留所の近くには、少し離れたところに集落はあるものの、周りにはほとんど何もないと言って良い場所でした。

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クーリー蒸留所外観。牧場ばかりの何もない場所にひっそりと佇む。

 

ジョン・ティーリング氏が、1987年にジャガイモからのアルコール製造をしていた工場をウイスキー蒸留所に改造。2基のポットスティルと連続式蒸留器があるようです。ポットスティルによる蒸留は、アイリッシュ伝統の未発芽大麦は使わない、スコットランドと同じ製法であるということです。所謂シングルポットスティル・ウイスキーではないのですね。

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アイルランド蒸留所訪問 – キルベガン蒸留所

首都ダブリンからは西に高速道路で1.5時間ほど。タラモア・デューで有名なタラモアの町から北に10kmの場所にあるキルベガンは、町というより村と言ってもいいくらいの小規模なコミュニティでした。メインの通りは200mほどしかなく、商店やパブなどもそれぞれ2件あるかないか、といったくらい。とはいえ、どこにいってもパブがあることはアイルランドらしい光景。

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キルベガン蒸留所は1757年創業と歴史ある蒸留所だったが1953年に閉鎖。これをジムビームが購入し復活させ、2007年から再稼働させたようです。ツアーに参加せずとも中はある程度見てまわれるようですが、肝心の部分はツアー参加者のみが案内されるので、やはり参加しておくのが良いですね。

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アイルランド蒸留所訪問 – ティーリング蒸留所

ダブリン市内へは、空港からバスで30分ほど。そのバスセントラルを中心としてダブリン市内には様々な観光スポットがあります。クライストチャーチ大聖堂、トリニティ・カレッジ、セントパトリック大聖堂、公園なんかも多い。少し離れるが、世界的に有名なギネスの醸造所も人気の観光スポットです。

そんな市内を散策しつつ、ティーリング蒸留所を探していました。ギネスから近いはずなのですが、なかなか見つからない。周囲はオフィス街も終わり、住宅街、そして倉庫街と続く。そんな一角に、すこし隠れるようにしてティーリング蒸留所が建っていました。

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ティーリング蒸留所は元々は現在の場所から少し離れたところに建てられていましたが、1890年に閉鎖。しかし2015年にジャック・ティーリング氏とアレックス・チャスコ氏、元々クーリー蒸留所の従業員だった二人がダブリンに蒸留所を復活させました。

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