カテゴリー別アーカイブ: ウイスキー

クロスレビューサイト ”Tasters.jp” が公開されました

昨年から The Whisky Diver(TWD) というテイスティングのスキルアップを目的とした会に参加しておりまして、そのメンバで、我々飲み手が主体となって各ボトルのレビューを公開していくブログを立ち上げる運びとなりました。

こちらがそのサイト、Taster.jp です。

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Tasters.jp – お気に入りの美酒に出会える、レビューサイト

 

レビュー対象のお酒はウイスキーに限ってはいませんが、まずはTWDメンバのメインであるウイスキーを中心にレビューしています。今後、日本酒なども含めて多種多様な酒のレビューサイトとしていこうと計画中です。

 

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TWDでの一コマ. 各人の香味表現の比較など.

 

TWDの目的のひとつに「香味表現の認識を合わせる」というものがあります。

「あの人がいう○○は、自分の感じる○○と同じなのだろうか?」
「もしかしたら△△のことを言っているのではないか?」

ある程度テイスティングに慣れてきた方であれば、誰もが気にする部分ではないでしょうか。公式のテイスティング・ノートと比較する際にもよくあります。こういった差についてしっかりと議論をし、どういう表現が良いだろうか、認識が合っているだろうか、様々な角度から見ていこうと。

こういう飲み手主体の発信をさらに伸ばしていき、Web上で公開していくのがこの Taster.jp です。

 

 

タイムリーな話題としては、ちょうど発売となるニッカの「ブラックニッカ クロスオーバー」について、メンバでテイスティングをしています。皆さんの評価や香味表現とも比べてみていただけると面白いのではないでしょうか。

 

また個人的には、テイスティング以外でも写真を提供させて頂いております。ここに載せたものと被るものもあるかもしれませんが、そうではない写真などもありますので、お目汚し失礼ながら見てやって頂けると幸いです。

まだまだレビューサイトとしては小規模かもしれませんが、今後もっともっとコンテンツを拡充させていきますので、皆さんどうぞご覧になって下さい。

 

ミドルトン “ダー・ゲーラック” バッチ#01

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Midleton “Dair Ghaelach” Batch#01 (OB, “Virgin Irish Oak Collection”, Tree Number 03, 57.9%)

香りはややオイリーさを伴う麦、煮たリンゴ、プルーン、フレッシュな杉のような樹木の香り。

味わいは柔らかい穀物のフィーリング、タンジェリン、チェリー、ミドルからチクチクと刺激的なタンニン、赤い色をイメージさせるの樹木感、微かにパッションフルーツのニュアンス、スパイシーさが支配的なフィニッシュ。

【Good/Very Good】

ダー・ゲーラックという言葉は「アイリッシュ・オーク」という意味。15年から22年ほどのバーボン・バレル熟成の原酒を、その名が示す通りアイルランド原産のオークの樹だけを使った樽で1年ほどの後熟をさせています。ラベルには使った樹木の番号まで書かれており、単一の樹から作り上げてられたものであることを特徴にしています。このボトルは樹の番号が3番でしたが、他にも9番くらいまであるようです。

さて、その味はというと、ミドルトン・ベリーレアと同様の柔らかな麦感とフルーツ感で始まるものの、徐々にチクチクとしたやや荒々しいフィーリングが支配的になります。これがアイリッシュ・オークの個性でしょうか。どちらかというと新樽ということが影響しているようにも思えます。

日本にミズナラというジャパニーズ・オークがあるように、このダー・ゲーラックもまた独特の個性を持ったオーク樽。それぞれの土地を表現する要素のひとつになっていくのでしょうか。個人的には、もう少し刺々しさは控えめであって欲しいので、セカンドフィル以降のもので長い熟成をしたものが出てくるかどうか、といったところが楽しみです。

ちなみに Dair Ghaelach の読みは、ゲーラックとゲーロッホの中間のような発音でした。ツアーで案内してくれた方は「ゲーラッ」という感じの発音。最後の子音はほとんど発音しないようでした。アイルランドのゲール語も、様々な看板などで普通に見かけましたし、スコットランドの一部と同様に、普通に生活に根ざしている言葉なのだと思いました。

 

ミドルトン ベリーレア 2016ボトリング

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Midleton Very Rare 2016 (OB, ex-Bourbon Barrels, 40%)

香りは甘やかな麦、トースト、ローストしたナッツ、ほのかにリンゴ、メロン、奥に紙のニュアンス。

味わいは柔らかく広がる、穀物の甘さ、ややオイリー、リンゴと薄めたマーマレードのフルーツ感、バニラクリーム、フィニッシュにかけて穏やかなホワイトペッパーと少し南国系のフルーツフレーバーが残る。

【Good/Very Good】

ミドルトン・ベリーレアは、1984年に当時のマスターディスティラーだったバリー・クロケット氏が作り出した銘柄。氏はアメリカン・オークのバーボンバレルでの熟成にこだわりを持っていたようで、同銘柄はその樽のみで構成されているスモールバッチで製造されているものです。このため、毎年限定生産となっているようで、ラベルにはボトリング年が表記されています。

氏は2013年に引退となり、2014年からマスターディスティラーはブライアン・ネイション氏に代わりました。このため、2014年のボトルからは署名が変わっています。味の傾向はボトリング年であまり変化をさせないようにしていたそうですが、そこはやはりスモールバッチらしく、色合いから見ても若干の差があります。

さて、肝心の味はというと、全体的に軽めで麦芽由来の風味とコクが主張しすぎない。この軽さも3回蒸留によるためでしょうか。やや控えめながらもバナナやリンゴ、若干の紙っぽさとその奥にメロンや赤い南国系果実も薄く感じます。典型的なアイリッシュウイスキーという印象で、VeryRareという表記の割には個性的な要素があまり感じられないところが、少し肩透かしを食らうようにも感じますね。

なお、値段もそこそこする同シリーズですが、2013年ころまでの過去のリリースボトルが蒸留所でも売られていました。値段は同じだったはずなのですが、レアリティを考慮してか、ちょっとプレミアムが乗せられてしまっていたので、アイリッシュの過去リリースもスコッチと同様にどんどん高騰していくのでしょうか……。手に入れるなら今のうちかもしれません。

本日はワールド・ウイスキー・デー(World Whisky Day) です

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みなさん、ウイスキー飲んでますか?

突然ですが、本日、5/20はワールド・ウイスキー・デーです。2012年から始まった記念日ということでかなり新しい部類に入るのですが、なんだかんだでもう5回目。スコッチ業界まわりだと結構浸透してきたようで、海外のタイムラインなどを見ているといろいろなイベントが行われているようです。

そういえば、アイラ島のフェスもちょうどこの時期ですね。アードベッグ・デーやキャンベルタウン・オープンデーも同じくこの時期。なんでしょう、5月はスコットランドが盛り上がる時期なんでしょうか。長い冬が終わり暖かさが感じられるようになってきて、さらに陽の長さもあってゆったりとした夕暮れを過ごせる、たしかにうってつけかもしれませんね。

日本では、やや暑くなってきた今日などはビールの方が美味しかったりもしますが……。せっかくなのでここはハイボールで始めつつ、モルトを頂いたりしてみるのも良いのではないでしょうか。

自分も今日はモルトを一杯いってみようかと。

Slainte mhor

 

トマーティン 19年 1977-1997 ソサエティ 11.9

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Tomatin 19yo 1977-1997 (SMWS, Cask No. 11.9, 54.4%)

香りはカスタードクリーム、キャラメル、やや紙っぽいニュアンス、ヒノキかクスノキのような木香、少しメロンのようなフルーツ感があるが控えめ。

味わいは薄めのヘザーハニー、とかしたキャラメル、緑の草、青みのあるイチゴ、樹木のエグミのニュアンス、鼻抜けはケミカルなフルーツ感、風邪薬のシロップ、もっさりとしたリンゴのフレーバーとケミカル感が残るフィニッシュ。

【Good/Very Good】

ソサエティの11番はトマーティン。かなり昔のボトリングで、ソサエティのラベルもかなり古びた印象がありますね。ボトリング後20年が経過していますが、オールド香のようなものは特に感じませんでした。

 

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ボトルに書かれた一言コメントを見ると、なんと “Peaches, peaches…and more peaches”。ピーチ! ピーチ! ピーチ!! なんていうコメントが近年でもどこかで書かれていた記憶がありますが、20年前にも同じコメントがあったとは……(笑) 面白いですね。

しかしこのボトルからはあまり桃のニュアンスは取れませんでした。どちらかというとアタックに顕著な植物感の印象が強く、ミドルからのフルーツ感は植物感と混じってやや青いイチゴのようなニュアンスではないかと。人口甘味料的な、どことなく作為的な甘さは1976トマーティンにも通じるところがあると感じたものの、この1つ前に飲んだキンコー向け1976ベンリアック2ndに比べると、さらに桃やフルーツ感は薄めでした。

このあたりは、もしかしたらボトリング後の経年で飛んでしまったのかもしれません。もし本当に桃感満載ということであれば、昔からトマーティンにはその手のフレーバーが備わっていたということでしょうし、76ヴィンテージだけではないのでしょう。90年台トマーティンにも桃感がよく出ているものもあるということで、今後も76に匹敵するボトルが出てくるかもしれません。楽しみですね。

 

 

スペイモルト フロム マッカラン 1968-2009

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SPEYMALT from Macallan 1968 (G&M, Bottled in 2009, 43%)

香りはオレンジ、パイナップル、レーズンなど多彩なフルーツ感、クローブ、ナッツ、素朴なビスケット、ココアパウダー、アーモンドチョコのニュアンス。

味わいは酸味が強めのレモン、グレープフルーツなどの柑橘類、カスタードクリーム、レモンケーキ、ミドルからオークらしい収斂味、鼻抜けにクローブとカルダモンなどのスパイス、柑橘の酸味と木の皮のニュアンスが残るフィニッシュ。

【Good/Very Good】

GMがリリースするマッカラン。その1968ヴィンテージという、ちょっと経験が無い世界でしたが、飲んだ第一印象は「随分と酸味があるな」というものでした。

マッカランといえばやはりシェリーカスクで、しかもこのあたりの年代であれば心地よいレーズンやチョコレートのようなシェリーカスクの味わいを想像したのですが、実際には上記の通り。先入観で「こんな味がするはずだ」という思い込みを、良い意味で裏切られました。

G&Mのこのボトルもシングルカスクではないと思われますが、味わい的にはシェリーカスクではなくバーボンカスク主体のヴァッティングでしょうか。シェリーカスクにこだわるマッカランではありますが、バーボンカスクを使っていないわけではありませんし、そのなかでもかなりの量がG&Mにはあったということでしょう。

継続的にリリースされているスペイモルト・フロム・マッカランですが、味わいに統一性はあるのでしょうか。あまり飲んだことのないシリーズなので、ちょっと気になってきました。マッカランとしてではなく、先入観無く飲めばいろいろと発見があるのかもしれません。

ウイスキーの技術進歩と伝統と 

技術の進歩は最先端の分野だけではなく、一次産業や二次産業の伝統的な部分にもその効果が波及していくもの。酒造りの現場にも、情報産業の技術が応用されていくのは現代としては既に当たり前、でしょうか。

この記事を見て、そんな印象がよぎりました。

もろみの品温を管理する「IoT酒造品温モニタリングシステム」 from @IT

こちらはウイスキーではなく日本酒の分野の話ですが、酒造りに重要な温度管理にIoTを利用しようというもの。大手ではこういったコンピュータによる管理手法は既にとられていることと思いますが、昨今はやりのIoTを用いた、従来よりも小まわりの利くシステムは、やや規模の小さめな酒蔵にも恩恵を与えていくことになるでしょう。いやはや、酒造りも進歩が激しいですね。

 

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ウイスキー造りの現場でも、大手系列などでは随分昔からコンピュータによる管理が主流となっていて、蒸留所の全行程のオペレーションが2名でもできるという状態になっています(実際には何かあったときのバックアップということで1名でも実行可能だそう)。これらのシステムは、さすがにやや旧式なこともあるでしょうからクラウドやIoTへの対応はまだかもしれませんが、コンピュータ制御による安定化は大量生産と均質なクオリティを容易にしてきました。

その結果でしょうか、90年ころからのヴィンテージではどの蒸留所も全体的にレベルが上がっていて、以前よりもあからさまな外れやオフフレーバー満載のものは少なくなったように思えます。80年代がいろいろと酷すぎた、ともいえるかもしれませんが……。

 

でも、本当にこれで良かったのでしょうか? 確かに全体的に品質は上がり、どの蒸留所も美味しいモルトが出て来るようになりました。でも何となく、どこの蒸留所も似たような味わいになってきていませんか? 優等生的に美味しいようには思いますが、ハウススタイルと言われるような個性は、なりを潜めてきてはいませんか? 自分にはどうもそんな感覚があります。

 

現場でウイスキーを作っている方々の中にも、そのようなことを思っている人がいるのでしょう。ここ最近、旧来の作り方に戻してきている蒸留所があります。麦を古代種のベア・バーレイに変えたり、フロアモルティング100%にしたり、といったようにです。

これらにどんな効果があるかといえば、ベア・バーレイはデンプン質が少なくアルコール収量が低い、逆に言えば雑味が多くなる。フロアモルティングは、モルトスターでの製造に比べれば発芽がどうしても不均一で、絶対的な安定度でいえばかなり落ちるでしょう。

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スプリングバンク蒸留所のフロアモルティング。通常ラインナップのボトルでは、これらのモルトはごく一部のみ使われている模様。

 

先日紹介されていた、1947年の蒸留所の様子を収めた動画。1:30頃にフロアモルティングの様子が映っています。これだけの量を均等にモルティングするなんて、とても無理ではないでしょうか。

 

こうした不安定、不均質なものが、逆に個性的だったり芯の太い味わいになるのではないでしょうか。コンピュータ管理された均質なものは、どうしても突き抜ける要素が少ないように思えるのです。

もちろん、必要なところには様々なコンピュータの恩恵を使うべきだと思います。が、どうしても効率を犠牲にした部分が必要になるとも思うのです。将来、複雑さを残したモルトがどれだけ味わえるのかを考えると、古典的なやりかたを伝統という形でうまく残していって欲しいですね。