カテゴリー別アーカイブ: ブレンデッド・ヴァッテッド – Blended&Vatted

J&B ウルティマ ブレンデッド・ウイスキー

究極のブレンデッド、その名前は伊達じゃありませんでした。

J&B Ultima (Blended Whisky, bottled in 1994, 43%)

香りは透明感のある穀物、洋梨、和梨、微かに白桃のようなニュアンスも、ニス、埃っぽいアンティーク家具、全体的に穏やかだがフルーツ感がしっかりしている。

思ったよりも芯のあるアタックから、トロリとしたメープルシロップ、サクランボ、洋梨、バナナシェーキなど多彩なフルーツ、軽めの樽感、穏やかに染み込むように消えるフィニッシュ

【Good/Very Good】

J&B ウルティマ。名前は聞いたことがありましたが飲んだことはありませんでした。合計128蒸留所(116蒸留所のモルトと12蒸留所のグレーン)で構成される「全部入り」。リリースは1994年とかなり昔になりますが、2000年代にはまだ普通に手に入ったように記憶しています。2010年頃にはさすがに見ることが無くなりました。今ではリユース市場でちらほら、といったところでしょうか。

ブレンデッドらしくまろやかで角が無い飲みやすさの一方で多彩なフルーツが感じられ、嫌味のなさと味わいの奥深さ、やや陶酔感もあるような飲んでいて満足感のある味わい。流石に「究極」の名を冠しているだけありますね。これだけたくさんの原酒を使って、しかしこれだけの美味しさを醸し出すのは一筋縄ではいかないはず。ブレンダーの手腕が問われるわけですが、見事な作品だと思います。

香味の方向性としては、いくらかバランタイン30年(1990年代ボトル)に似ているでしょうか。自分がそのあたりを飲んだ経験が多いから、というのもありますが、全体的に穏やかで磨き抜かれて仕上げられた宝石のような高級感のある味わいは共通項があるように思います。


それにしても、こんな企画、誰でも一度は思いつきはするものの、実際に実現してしまうなんていうのも凄い話ですね。リリースされた1994年は、スコッチウイスキーの「500周年記念」ということで、このようなある意味お祭り的なボトルが成立したのでしょう。

何ゆえ500周年かというと、1494年のスコットランド王室財務省文書のに記録にある 「ジェームズ4世の命により、修道士ジョン・コーに 8ボルの麦芽を与えてアクアヴィテをつくらしむ」という一文。ご存知の方も多いと思いますが、これがスコッチウイスキーの最古の記録となっており、起源であると考えられているからです。1994年はそこから500周年という節目だったというわけです。

そのジョン・コーが居た修道院というのがリンドーズ・アビー(Lindores Abbey)で、修道院自体は今は廃墟となっているのですが、2017に修道院のすぐ隣に蒸留所が稼働を始めました。

リンドーズアビー蒸留所の外観。外壁の岩は修道院廃墟のものや同産地のものを使用しておりクラシカルな印象が一層引き立つ。

2019年8月に実際に訪れてみましたが、周囲は大きな町などからも遠くのどかな牧草地帯。蒸留所の中には先程のジョン・コーも含めウイスキーと修道院にまつわる歴史に関する展示があります。この部分の見学だけでもかなりの時間を要するので、しっかりと見たい方は時間を長めに取っておくことをおすすめします。

ポットスチルとガラス越しに見えるリンドーズ・アビーの組み合わせはちょっとフォトジェニックで素晴らしい景色。外からもガラス越しのポットスチルは映える風景ですね。修道院の廃墟にも入ることができ、昔の名残を感じられたりと、とにかくいろいろな体験ができる場所になっていて楽しい場所でした。まだまだ新興の蒸留所ではありますが、訪れる価値は十分にある場所です。

まだ3年未満なのでウイスキーは飲めませんが、蒸留したニューポットの香りを試した限りでは、しっかりとフルーツや花の香りが乗っていて、嫌なニュアンスはほとんど無くスタンダードながら良いクオリティの原酒でした。2020年の12月で稼働から3年となるので、2021年には満を持してリンドーズアビーの「ウイスキー」がリリースされる予定です。スコッチの起源から再び生まれたウイスキー、期待して待ちましょう。


J&B ウルティマはモルト仲間のDrinker’s Loungeさんから小瓶でいただきました。ドリラジさん、ありがとうございました!

マクネアーズ LUM REEK ピーテッド・ブレンデッドモルト 21年

程よいピート感、バランスの取れたブレンデッドです。

MacNair’s LUM REEK 21yo (Blended Malt by GlenAllachie Distillery, 48%)

香りはレモン、濡れた布巾、柑橘のワタ、乾いたピート、バター、ピーナッツのニュアンス。

味わいは柔らかめのアタックでオレンジ、苦味の強いグレープフルーツ、ミネラル感、軽めのピート、ミドルから濃い目の紅茶、カシューナッツ、オイリーでまったりとした甘さにピートが裏打ちするフィニッシュ。

【Good/Very Good】

グレンアラヒー蒸留所が、というよりはビリー・ウォーカー氏が手掛けるブレンデッド・モルトがこの銘柄。グレンアラヒーを主体に、アイラモルトを含む複数の蒸留所の原酒を使い、熟成はグレンアラヒー蒸留所の熟成庫で行っているそうです。

ピートは軽めで強すぎずやや乾いた感じが、アイラの潮気の強い感じとはちょっと異なる印象をもたらしています。全体的にややオイリーで柑橘系の味わいもありながら円熟味もありまろやか。度数の調整もあってか、非常に飲みやすい。シングルカスクはどうしても個性が尖りすぎてしまいがちですが、そんなときに飲むとほっと安心するような一本です。

ボトルの名前からは一見グレンアラヒー蒸留所とは思えませんでしたが、ピートを使ったブレンデッド・ウイスキーということで全くの別銘柄でのリリースにした、というのはツアーガイドさんの話。LUM REEK というのは古い言葉で「煙突の煙」を意味するのですが、これは「lang may yer lum reek」という長寿と繁栄を祈る意味が込められた乾杯の言葉からきているそうです。

肖像画が描かれているHarvey MacNairという人物は、ビクトリア朝時代(19世紀)にグラスゴーで蒸留とブレンドを行っていたそう。煙突の煙が充満した部屋でモルトを飲んだ時、ピートの煙がウイスキーに与える効果を発見したのだとか。本当かどうかはさておき、昔からピートを使ったモルトがあったこと、ピートの効果を解明し自身のウイスキーに取り入れた人物がいたことを気づかせてくれるボトルでした。ラベルの絵柄やPeatedの文字、そしてこのLUM REEKという名前で全体的にピーテッド・ウイスキーであることを表しているのですね。

バランタイン30年 1990年台流通ボトル

円熟した非常に良いバランス。飲む芸術品です。

Ballantine 30yo (OB, +/- 1990s, 750ml, 40%)

香りはべっこうあめ、カラメル、トフィ、熟したリンゴ、少し植物っぽさ、清涼感のあるハーブ、洋ナシ、どれもが主張しすぎず、円やか。

味わいはとても優しいタッチでリンゴとさくらんぼ、適度な濃さの紅茶、ミドルからしっかりした旨味の出汁、和三盆、木と樽の植物感と、控えめに広がる乾いたピート、少しミルクチョコレートのニュアンス、リンゴと紅茶の渋みが微かに残る軽やかなフィニッシュ。

【Very Good】

1990年代流通と思しきバランタイン30年です。使われている原酒は、逆算して1960年代。「腐っても60年代」というような言葉もあるくらい、スコットランドのモルトが非常に優れた味わいを誇っていた時代なわけでして、これが不味いわけがない、と思えてしまう代物です。もちろん、これ以前のものにはもっと素晴らしいものや味の方向性が少し異なるなどもありますが、自分がイメージするバランタインらしい味わいというとこのボトルにあるような香味が浮かんできます。

非常に多彩でスワリングするたびにころころ変わり拾うのが楽しく、しっとりとして落ち着いたバランタインらしいさすがの複雑さと円熟味。加水と経年ということもあり、やや線の細い繊細な趣ですが奥にはピートや程よい樽感も感じられ、全体として非常にバランスが良い。

やはりブレンドの巧さなのでしょう。匠が作り上げた往年の名作、飲む芸術品、といった感じです。

このボトルの楽しみ方としては、やはり「時間に思いを馳せる」というのが良いように思います。

原酒が作られてから今ここにたどり着くまでの長い長い時間。熟成期間の長さに加えて、瓶詰めされてからも30年ほどになろうかという膨大な時間。また、これを作り上げたブレンダーが研鑽してきたその時間。この時期ですと、マスターブレンダーはロバート・ヒックス氏でしょうか。彼の技を感じられるわけですね。

そういった特別感のあるバランタイン30年ですが、このボトルであれば、昨今のシングルモルトに比べればまだまだ手頃な価格で手に入るというのがありがたいですね。これだけの満足感を得られるかどうか怪しいボトルも多い中、オールドボトルでもそれなりに安定した品質のものが多いバランタイン30年。一本手元にあって損はないと思います。

ダンカンテイラー ブラックブル 10年 ラムカスクフィニッシュ

ラム樽とウイスキーは良い相棒同士だと思うのです。

BLACKBULL 10yo Finished in EX-RUM CASKS (Duncan Taylor, Blended Whisky, 50%)

香りは熟したリンゴにシナモン、カルダモン、まだ青みがかかっているパパイヤ、フルーツ感は多彩、少しセージのようなハーブ感、奥に乳酸菌飲料のニュアンス。

味わいは優しいタッチでシャキッとしたリンゴ、和三盆的なさらりとした甘さ、クローブとカルダモンを効かせたリンゴのコンポート、微かにパッションフルーツ、ホワイトペッパーとリンゴのニュアンスがサラリと終わるフィニッシュ。

【Good/Very Good】

ダンカンテイラーのブレンデッド・ウイスキーの銘柄のひとつで、なかなかに息の長いのがブラックブル。ラベルがちょっとイケてないためか人気が今ひとつという印象ですが、中身は割と良いことが多いあたりはさすがのダンカンテイラーといったところでしょうか。以前は30年や40年といったボトルがかなりリーズナブルな値段でリリースされていたのですが、最近はあまりそういったボトルは見かけなくなりました。

と思っていたところに、久しぶりに新しいブラックブルのボトルを見かけたので試してみたわけですが、これはなかなか良いブレンデッドです。ラムカスクはフィニッシュとして使われているようですが、南国系のフルーツのフレーバーや、やや青みがかったハーブや果物のニュアンスなど、ラムカスク由来と思しきフレーバーがいい具合にマッチしています。

メーカーコメントほどにはトロピカル感は無いな、という印象ではありますが、それなりにしっかりとした多彩なフルーツ感にひっかかりの無い飲みやすさはかなり好印象で、値段を考えればかなり良いコストパフォーマンスだと思います。

50%の割には飲みごたえが軽めなことと、もう少し味わいに深みがあれば……と思ってしまうのはないものねだりでしょうか。15年か20年熟成のラムカスクフィニッシュを是非、と思ってしまいました。

個人的に、ラムカスクというのはウイスキーの樽の中ではバーボン、シェリーに続いて相性が良い樽なのではないかという印象です。近年のシェリーカスクに比べたらラムカスクの方が上まわってきそうなくらい好みのものが多いです。一時期はOMCのラフロイグやオフィシャルのバルヴェニー、最近ではスプリングバンクがラムカスクのものをリリースしていて、どれもかなり良い味だったと記憶しています。アイルランドのティーリングも、ラムカスクのシングルカスクはかなり好印象でした。

あまり一般的ではないのは扱いが難しいからなのかもしれませんが、ラムカスクのリリースは今後も注目していきたいです。

ティモラス・ビースティ 21年 シェリーエディション ダグラスレイン

お手頃な中熟シェリーモルトです。

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Timorous Beastie 21yo Sherry Edition (Douglas Laing, Blended Malt Whisky, 46.8%)

香りはレーズン、バター、コーヒー豆、奥に焦げた木材のニュアンス、微かにナツメグ、ハーブのニュアンス。
味わいは優しめで近年系のシェリー樽感らしいレーズン、コーヒー、チョコレートムース、後味はややドライ、ハーブのニュアンスとブラックペッパー、レーズンのニュアンスが続くフィニッシュ。

【Good/Very Good】

ダグラスレインのブレンデッドモルト、ハイランド主体のティモラス・ビースティ 21年。このボトルはシェリー樽主体の構成で、グレンゴイン、ダルモア、グレンギリーの原酒が使われているそうです。

味わいとしては近年系のシェリー樽が支配的で、やや焦げ感を強く感じました。ゴムとまではいかないですが、ちょっと「いかにも」な味わいは海外のドリンカーには受けが良さそうです。

46.8%というとちょっと不思議な度数でおそらく加水されているようです。そのためか飲み口はかなり柔らかいですが、原酒のボディはなかなかに強いようで、飲みごたえがある味わいとなっていました。熟成感は十分にあるため、値段から考えてコスパはかなり良いでしょう。

シェリーカスクの20年ものが手頃な値段で手に入る、というのがメリットだと思います。

ティモラス・ビースティ 40年 ダグラスレイン

かわいい顔をして意外性のある刺客でした。

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Timorous Beastie 40yo (Douglas Laing, Blended Malt Whisky, 54.7%)

香りは洋ナシ、バタースコッチ、熟成感のあるチーズやバター、少しベーコン、奥にレーズンや微かに八角など多彩なニュアンス。
味わいはなかなかにパワフルでカスタードやクリームブリュレの甘さ、少しオレガノのようなハーブのニュアンスがあり複雑、奥にベリー系のフルーツと焦げた木材のニュアンスも続く。

【Very Good】

ダグラスレインといえば、さまざまなブレンデッド・モルトのシリーズをリリースしていて、ハイランド中心のこのティモラス・ビースティ以外にも、アイラ系列のビッグピート、スペイサイド中心のスカリーワグ、アイランズ主体のロックオイスターがあります。様々な原酒を幅広く取り扱うダグラスレインだからこそできるラインナップですね。

香りは柔らかく芳醇で、うっとりするような熟成感。若いニュアンスがまったくないウイスキーとはこういうものだ、というお手本のような香りです。飲んでみるとかなりパワフルで枯れた感じが全くせず、様々な原酒が使われているてあろう多彩な香味が特徴的。バーボン樽が主体ですが、奥の方にはシェリー樽を思わせるレーズンのニュアンスもあり、複数樽のヴァッティングらしい特徴が感じられます。

このティモラス・ビースティ40年はグレンゴイン、ダルモア、グレンギリー、ブレア・アソールといわれていて、ダルモアあたりがのシェリー感を担っているのかな、というような推測。カスクストレングスでボトリングが1080本ということなので、40年という超熟を考えると4樽だけではなくもう2,3樽混ざっているのではないでしょうか。

いずれにしても、熟成したモルトの良い部分がしっかりと出ていて素晴らしいウイスキーでした。

このシリーズはラベルでちょっと損をしているというか、ちょっと緩すぎるラベルは正統派ではないため、オーセンティックな空間では不釣り合いに感じられてしまいます。進んで手が出るタイプではない、という印象があります。ちょっと勿体ないですね。見た目よりも中身重視、という方にはストライクでしょう。

サントリー プレステージ25年 ブレンデッド・ウイスキー

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Suntory PRESTIGE 25yo (Suntory Blendend Whisky, 43%, 750ml)

香りは、チョコレート、プルーン、アンティーク家具、強めの樽感と削りたての樹木、白檀のような高貴さも感じられる、微かにスモモのような酸味、ワックスやなめし側のようなニュアンスを奥に感じる。

味わいは少し強めのアタックだが、すぐにまったりとしたローストナッツのオイリーさ、熟成感を伴う深い味わい、カカオ、プルーン、少しバター、ミドルは樽感が強くピリピリとブラックペッパーの刺激、フィニッシュにかけてはまたオイリーさがあり、ほんのりとシトラス系フレーバーも合わさる。重層的でやや高貴さも感じるリッチなブレンデッドウイスキー。

【Very Good】

サントリーが1989年に創業90周年としてリリースしたブレンデッドウイスキーです。

素性については検索していただくといろいろと情報が手に入りますが、使われている原酒は1960年代の山崎に、グレーンは本当にこれどこから持ってきたのでしょうね。輸入したものでしょうか。またモルトの一部もこうした輸入原酒を使用している可能性もあり、良質なシェリーカスク原酒はもしやあの蒸溜所が……? なんて謎も楽しめます。

近年ものとは異なる昔のシェリーカスクの香りが閉じ込められていて、グラスに注いだ瞬間に部屋中に香りが広がっていきます。飲む前から期待が高まる。カガミクリスタル製の特別ボトルも高級さを感じさせます。というかとてつもなく重い。ボトル底部のガラスの厚みを見れば当然ではありますが……。

味もシェリーカスク主体で、熟成感を感じるまろやかさが広がりますが、樽の影響がかなり強めに出ている原酒があるようでやや強めの刺激も。そして、このあたりはブレンデッドらしさなのか、少しボディが弱く中間の膨らみはもう一歩欲しいような、そんな印象を残します。ちょっと欲張りすぎますが。

どちらかというと香り優先ですね。友人曰く「サントリーのAge UnKnownに通じる」と評していた香りは本当に素晴らしいです。

ともすると(近年系とは異なるとはいえ)どっかんシェリーになりがちなところですが、加水とブレンドによってほどほどのバランスにまとめあげられているように感じます。これがカスクストレングスだったら、かなりピーキーな味わいで日本人一般にはあまり受け入れられなかったのではないかと。海外には受けそうではありますが。サントリー響にも通じる、繊細さを保ったブレンド技術の為せる技を感じます。

今回のボトルは、ちょっとした記念に良いものを開けようと取り出しました。最初は硬かったのですが開封後2ヶ月ほど経ってそこそこ開いてきたようです。これから暑くなる季節にはちょっと向きませんが、冬になる頃にはしっかりと開いてきて美味しく感じられるのではないかな、と期待しています。