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ベン・ネヴィス シングルグレーン 27年 1963-1991 ジェームズ・マッカーサー

非常に珍しいベン・ネヴィスのグレーン。歴史を感じる味わいでした。

Ben Nevis Single Grain 27yo 1963-1991 (James MacArchur “Fine Grain Selection”, 54%)

香りは針葉樹のような爽やかさ、バタークッキー、ピーナッツ、微かに溶剤、少しセロリのニュアンス。

味わいはややサッパリとした口当たりから、バニラとバター、デニッシュ、ホワイトクリームのクッキー、しっとりとホワイトペッパーの刺激、ニュートラルなトーンでさらり消えるドライなフィニッシュ。

【Good/Very Good】

ボトラーズのジェームズ・マッカーサーからリリースされていた、ベン・ネヴィスのグレーン、27年熟成。Fine Grain Selection とシリーズは聞いたことが無い……と思っていましたが、主に1960年代のカースブリッジやカレドニアン、ロッホサイド(!?) などが幾つかリリースされていたようです。

27年という熟成はグレーンでは比較的若い部類に入るのか、熟成感はやや控えめ。オイリーさによる厚みと同時に、清涼感を感じるさっぱりとした味わいが印象的。適度なボディで枯れ感はなくまだ活き活きとしている。かといって54%にしては刺激は少ない。このあたりは30年ほどになる瓶熟による影響があるのでしょうが、状態は良好で、まだまだしっかりと楽しめるボトルでした。


ところで、ベン・ネヴィスでグレーン? という方も多いかと思います。自分もそうでした。なので、ちょっと調べてみることに。

ベン・ネヴィス蒸留所は1825年にLong Jhon = ロング・ジョン氏が設立。その後1908年に一度閉鎖されます。1941年からベン・ネヴィス蒸留所のオーナーとなった Joseph Hobbs は、1955年にベン・ネヴィス蒸留所にコフィー・スチル(Coffey Still = カフェ式蒸留器) を導入、ベン・ネヴィス蒸留所はモルトとグレーン双方を蒸留する初の蒸留所となりました。

ベン・ネヴィス蒸留所ではないが、アイルランドはキルベガン蒸留所にあった昔のコフィー・スチル。

Joseph Hobbs は 1957年にロッホサイド蒸留所でもグレーンの蒸留器を導入しており、おそらくは戦後の復興と共に拡大するウイスキー需要に応えるため、という側面もあったのでしょう。

ベン・ネヴィス蒸留所は、その後1981年に Long Jhon Distillers に買収されるまでの26年間、あるいは1984年に蒸留所の設備整理が始まるまでの29年間、複数の情報があり定かではありませんが、その時点までモルト&グレーンの蒸留を続けることになります。その後1989年にニッカが買収し、現在もニッカ傘下で操業を続けているのは御存知の通りかと思います。

ベン・ネヴィス蒸留所のコフィー・スチルがどこに行ってしまったのかは定かではありませんが、ニッカがベン・ネヴィス蒸留所を手に入れたのが、コフィー・スチルを使っていたことがあったから、と言われても納得してしまいそうな繋がりです。実際には、ニッカは1963年に日本にやってきたコフィー・スチルを1969年に吸収しているため、連続式蒸留器を求めてベン・ネヴィスを手に入れたわけではないでしょうが。

いずれにしても、ベン・ネヴィスがグレーンを蒸留していた時期はかなり限定的で、今となってはかなり昔のものばかり。そもそも大半がブレンデッド用にまわされたようで、確認できたリリースはシグナトリーと今回のジェームズ・マッカーサーから1963年蒸留のものがそれぞれ一本ずつだけ。オフィシャルボトルも無く、相当希少な部類に入るでしょう。

2019年のベン・ネヴィス蒸留所のポットスチル・ルーム

蒸留所は、歴史の中で絶えず市場に合わせて変革を迫られ、ときに様々な需要に応えてきました。好況期もあれば不況期もあり、その中で消えていった蒸留所やなくなっていった設備があります。今回のベン・ネヴィスのグレーンは、そうした歴史のひとつが、時を越えて形として残った稀有な存在とも考えられます。美味しいかどうかはその人次第ですが、そういった歴史のひとつを飲んでいるのだと考えると、ちょっとした時間旅行のようなロマンを感じられるのではないでしょうか。

こちらのボトルは、秩父駅前の秩父令和商会さんで頂きました。マスターのグレーン好きの中にあって、ベン・ネヴィスはなかなか手に入らないであろうレアボトルでしたが、運良く縁を繋げることができ、今は秩父で開封されております。

ベン・ネヴィス以外にも様々なグレーンが揃っており、これだけのグレーンが飲み比べできるところもそうないのでは、というラインナップ。興味がある方は、ぜひお立ち寄りください。

ベンネヴィス 21年 1997-2018 The Whisky Trail 台湾向けシングルカスク

程よくフルーツ、程よくスパイシーでした。

Ben Nevis 21yo 1997-2018 (Elixir Distillers “The WHISKY TRAIL” for Taiwan, Barrel Cask#104, 56.8%)

香りはケミカルさを伴うフルーツシロップ、パイナップル、パッションフルーツがわずかに、独特の薬草感、フルーツヨーグルト。

味わいは香り同様にトロピカルフルーツに独特の薬っぽさ、カスタード、火薬のニュアンス、ミドルから茹でた栗、樽感強くブラックペッパーとカカオのニュアンスが続くフィニッシュ。

加水でも大きく崩れることはなく、シナモンやカスタードのニュアンスが強くなりバランスが取れてくる。

【Good/Very Good】

The Whisky Exchange でおなじみエリクサー・ディスティラーがリリースした台湾向けのベン・ネヴィス21年。

香味ともに最近のベン・ネヴィスらしさがしっかりと感じられる構成で、いわゆるジェネリック・トロピカルといった感のフルーツと独特の薬草っぽさが混じり合って主張してくるタイプです。トロピカル満載! といったものではなく、あくまでフルーツ感の一部分がそのように感じられる程度で、全体としてはもう少しおとなし目というか、やっぱりベン・ネヴィスだよね、という印象。

加水で結構印象が変わってくるのと、グラスの残り香も複雑さがあって長く楽しめたので、どちらかというと香りに特徴があり面白いボトルです。近年、優等生で美味しいけれどもあまり個性が無くなってきている原酒も多い中にあっては、これくらいの個性があった方が印象に残りやすく楽しめるのではないかと思います。

近年、現地向けの10年などが割と高評価でこれからも良いものが出てくるのではと期待されているのですが、実際には原酒がかなり不足しているようで今後のリリースが不定期にならざるを得ない状況にあるという話も。ニッカが所有しているわけで、その原酒がどこに向かうかといえば主に日本のブレンデッドウイスキー、ということになるのでしょう。

先日、スコットランドを旅行してきたのですが、どこの蒸留所もここ数年で増築していたり生産量を増やしていたりと、本当に原酒確保に必死になっている状況。そのために犠牲になるものもきっと少なくないと思うのですが……。今後も良いシングルモルトが続いてくれるように祈ります。

ベンネヴィス蒸留所が佇むのは、その名の通りベンネヴィス山のお膝元。山頂は雲に隠れてしまうことが多い。

ベンネヴィス 22年 1996-2018 BB&R ロイヤルマイル・ウイスキー向け

独特のトロピカル感をまとったベンネヴィスでした。

Ben Nevis 22yo 1996-2018 (BB&R for Royal Mile Whiskies, Cask#1196, 53.8%)

香りはワクシー、ただれた果実、油絵の具、ピーナッツ、熟成したチーズ、たまごボーロ、バジルのニュアンス。

味わいは度数の割には落ち着いたアタックで、むせ返るようなココナッツミルク、完熟パパイヤ、パッションフルーツ、ミドルからフリスクの清涼感と甘さ、じりじりとホワイトペッパー、クミンのような香辛料、ホワイトペッパーとトロピカルフルーツが混ざり合うフィニッシュ。

【Very Good/Interesting】

スコットランドはエディンバラの酒店、ロイヤルマイルウイスキーがボトリングしたベンネヴィス。信濃屋バイヤーのA氏が、現地で勧められて購入したという一本をテイスティングさせて頂きました。

香りはややオイリーでナッツ類の香りの裏に、過熟気味の果実感が見え隠れする、ちょっと不思議なニュアンスを感じさせるものの印象的ではなかったのですが、口に含んでみると驚くようなココナッツ・フレーバー。続いてかなり濃厚な南国フルーツはかなりの好印象でした。エキゾチックな香辛料のフレーバーもあり、ココナッツ感とあわさって、まるで辛くないタイカレーを楽しんでいるような、面白い組み合わせでした。

ベンネヴィスの原酒は昔から何かと不思議なフレーバーを出すことが多い印象で、昔のボトルはその珍味系のニュアンスが好ましくないものが多かったのですが、ここ最近はそれが良い方向に振れているものが多いように思います。ボトラーズからもシングルカスクが数多くリリースされていて、樽の個性ゆえの博打要素も多いのですが、総じてレベルは高くなってきているように思いますし、他の蒸留所にはなかなか見られない個性もあります。

確かにこれは良いボトルですね。ロイヤルマイルが自信をもってリリースしたというのも納得できます。これが手頃な値段で手に入るなら、かなり欲しいと思わされる一本でした。

Aさん、貴重なボトルを試させて頂きましてありがとうございました。