カテゴリー別アーカイブ: 【Very Good】

余市 シングルカスク10年 2009-2019 #411127

期待以上の素晴らしい余市、特別なひと樽を引き寄せた特別な力を感じました。

Yoichi Single Cask Malt Whisky 10yo 2009-2019 (OB, Cask#411127, 59%)

香りはレーズン、タンジェリン、清涼感のある木、爽やかなハーブ、栗のような甘さ、ローストしたナッツとチーズのようなオイリーさ。

味わいは芯の強いアタックから、強く煮出した紅茶、レーズン、イチジク、黒糖のような濃厚な甘さ、焼いたリンゴ、タンニンの収斂強め、濃いめのフルーツソースと心地良い黒胡椒やクローブのスパイシーさが長く続くフィニッシュ。

加水して時間を置くと、香りはクローブやシナモンがたっぷりと効いたリンゴのコンポート、酸味と甘味がバランス良く心地良い味わいになる。

【Very Good】

モルト仲間のくりりんさんが手掛けた余市の「マイウイスキーづくり」のボトル。ご存知の方も多いと思いますが、余市蒸留所でのウイスキー製造工程を2日間かけて体験でき、10年後、そのとき詰めた樽からボトリングしたウイスキーを購入できるという、よくよく考えてみたらとんでもなく素晴らしいプログラムです。もちろん、そう簡単に抽選には当たらないようですが……。

今から10年前にこのプログラムに参加されたということで、晴れて余市10年シングルカスクとしてボトリングされたこちら。先日の持ち寄り会でも少しだけ頂いたのですが、小瓶で頂いて改めてテイスティングさせて頂きました。

間違いなく、美味い余市です。

赤や紫を思わせるようなフルーツ感は濃厚で、さすがに60%近いカスクストレングスであるためアルコールの強さはあるものの、甘み、渋み、スパイシーさ、どれを取ってもネガティブさを感じず全てがポジティブに振れている。加水後のリンゴのコンポートを凝縮させたような味わいは、余市だからアップルブランデーのニュアンスでも取りこんでいるのでは、なんて思わずにはいられませんでした。

飲んでうっとりするような魅力をも備えているような余市で、これは凄いと思いました。

正直な話、最初はある程度懐疑的な気持ちでテイスティングに臨みました。10年ものの余市ならちょうど良いところにまとまってくることはあったとしても、シングルカスクはどうしても博打の要素が大きいもの。隣り合ったシスターカスクでさえ全然味わいが違うことだってあるくらいです。それが、どうですか。10年間を無事に過ごし、そして出てきた原酒がこんなにも素晴らしい味になっているとは。

いやー、本当に持ってますね、彼は。

これまで、余市をテイスティングする機会はあまり多くはありませんでしたが、間違いなくトップクラスの味わいでした。くりりんさん、改めましてありがとうございました!

アードベッグ 「アードボッグ」 2013年アードベッグ・デー ボトル

以前の印象と異なり、とても美味しいアードベッグだったことに気付かされました。

Ardbeg Ardbog (OB bottled in 2013, 52.1%)

香りはイチジクのタルト、ダークチョコレート、スパイスたっぷりのチャイ、麦芽そのもののような穀物感、奥にクレゾールのような薬品、いぶしたベーコンのニュアンス。

味わいはやや優しい口当たりでラズベリージャム、チョコレート、みたらし餡のニュアンス、ミドルからしっかりとピート、粘土、ヒリヒリとスパイシー、フィニッシュにかけて薬品臭さとオレンジやベリー系のフルーツが残る。

【Very Good】

2013年のアードベッグ・デーに合わせてリリースされた、アードボッグです。

アードベッグ・デーは2012年が初でしたが、日本では特にイベントが打たれなかったので自分は知りませんでした。2013年にようやく日本でもアナウンスがあったためか、界隈ではいろいろな話を聞きましたし、このボトルも記憶にあります。ネーミングが覚えやすいですしね。

名前の由来はピート採掘元となっている湿地、Peatbogという場所。ピートを強く焚きつけるアードベッグらしさと同時に、これまでもアードベッグは様々なアイラの場所をボトルの名前に用いてきました。コリーヴレッカンやウーガダール、最近ではアン・オーやトリー・バンなど、それぞれのボトルがイメージする場所に合わせたネーミングを行ってきています。

さて、このアードボッグ、バーボン・カスクで10年熟成させた原酒とマンサニージャ・シェリーのカスクで10年熟成させた原酒をバッティングしています。ややこってり系なシェリー由来の甘さと、しっかり効いたピートの組み合わせが非常に上手くまとまっていて、甘じょっぱいならぬ、甘ピーティな味わい。通常のアードベッグはピート感が強すぎたりすることもあって個人的にはやや苦手なところもあるのですが、このアードボッグは甘さがうまくピート感を緩和してくれているのか、個人的に丁度いい塩梅でした。

シェリー樽のニュアンスも近年系のゴム感や粒子感はほとんどなく、かなり良いものが使われている印象。やや若いニュアンスもありましたが奥の方に少し感じる程度で、逆にいいアクセントになっています。

リリース当初に試した際にはそこまで印象には残らなかったのですが、こうして改めて飲んでみるとまた違ってくるのがウイスキーの面白いところですね。もう6年も前のことになりますから、自分の味覚や嗜好が変化していたり、当時の環境として他にももっと良いものがあったりと、いろいろと状況が異なるということも理由としてはあるでしょう。今、このウイスキーを改めて飲めたことに感謝です。

スプリングバンク 21年 2019年リリース

素晴らしい存在感、多彩な香味のスプリングバンクです。

Springbank 21yo 2019 Release (OB, 45% Port and 55% Rum casks, 46%)

香りは完熟リンゴ、過熟気味の洋梨、カスタードクリーム、糖蜜、少しセクシーさも感じる汗っぽさ、湿った動物の革、石灰のニュアンス、仏壇とお香、微かにフルーツトマト。

味わいは度数以上にパワフル、洋梨のタルト、リンゴジャム、プーアール茶の渋み、ミドルから石灰や藁灰、染み込むピートがしっかりと主張する、ほんのりとした蜂蜜の甘さに、石灰とピートのニュアンスが長く支配的だが、意外にもサラッと軽く消えていくフィニッシュ。

【Very Good】

毎年リリースが恒例となってきた、スプリングバンクの21年。パッと見は毎回同じように見えますが、使用している原酒の樽構成が毎年違っており、今年2019年のリリースはポートカスクとラムカスクという構成です。

複数樽のヴァッティングだからか、香り味ともにとても複雑でとてもすべてを捉えきれません。グラスに注いだ瞬間からしっかりと香る完熟フルーツ、麦由来の甘さ、独特の石灰やミネラル感、そして湿っぽい獣のニュアンスなどなど、複雑さが高いレベルでバランスを保たれていて、飲んでいて楽しさと心地よさが感じられる。確かにこれは特別感のあるボトルですね。気合を入れて磨き上げられた芸術品、といったところでしょうか。

ここ最近のスプリングバンクは、ウイスキーブームに加えてうまくブランドを確立していることもあって、どのボトルも(スタンダードの10年でさえ)比較的高額なものが目立ちますが、こう、しっかりと良いものを作っているということを考えると、そのあたりも納得できてしまいます。

また、蒸留所を訪れた2016年に感じたことは、働いている人の中に20代と思しき人たちが多いこと。ベテラン勢とともに若い人たちがいろいろな作業を行っている光景を見て、次世代の育成にも力を入れているのではないかと思ったことが特に印象的でした。おそらく彼ら/彼女らの中から、次世代を担う造り手が生まれていくのでしょう。今後のスプリングバンクも、もっと素晴らしい原酒が作られていくのかもしれません。

こちらの小瓶は、今年7月のベルギー旅行にてサンプル交換という形で頂きました。向こうでは7月でも比較的涼しい気候なのでモルトを飲むにも支障はありませんが、日本ではかなりの暑さであまりモルト向きではないと思い、暫く取っておきました。、ようやく涼しくなってきて、しっかりとモルトに向き合える季節になってきましたね。

Thanks Oliver!!

グレンアラヒー 25年 オフィシャルボトル

流石の長熟ボトル、しっかりと美味しく陶酔感もありました。

GlenAllachie 25yo (OB bottled +/- 2019, 48%)

香りはレモングラス、ブーケガルニ、レザー、ポリッシュしたアンティーク家具、オランジェットのニュアンス、ヒノキのような清涼感。

味わいはまったりとした甘さ、濃厚でとろけるようなプリン、リッチ、ミドルから暖かみのある木炭、ハーブ感が少し、フィニッシュにかけてデコポンのような甘い柑橘とバターサンドのようなリッチさが続く。

【Very Good】

グレンアラヒー蒸留所のコアレンジから、長熟の25年です。

以前に日本で試飲をした際にも「これは美味いな」と思ったのですが、今回改めて飲んでみてやはりしっかりとした美味さがあります。

香りは一瞬「んん??」と思うような、少しハーブや強めの樽感など独特のニュアンスが乗っていますが、徐々にオランジェットのような柑橘のニュアンスが広がってきて楽しい。味わいは長熟ならではの重みのある円熟さ、どっしりとしてまったり、ゆったりと楽しむのが正しいあり方といわんばかりの重みです。凝縮された味わいと、鼻抜けの陶酔感が心地いい。まさに時が磨き上げた宝石のようです。

まあ正直お値段もよろしいわけですが、それに見合った満足感をもたらしてくれると思います。うん、これは美味しいモルトです。

グレンアラヒー蒸留所には14棟の熟成庫があり、すべてあわせると1000万丁を超えるとか。本当にそんな数の樽があるのかと考えてしまいますが、熟成庫はひとつひとつがかなり巨大でそれが14棟ともなると、たしかにそういう数になるのだろうと納得。

その中から使えるものをピックアップしてひとつの商品として送り出すのも、考えることが多すぎてなかなか単純にはいかなさそうです。しかしこのボトルは本当によく出来ている。原酒の素晴らしさとともに、造り手の技を感じる一本でした。

バランタイン30年 1990年台流通ボトル

円熟した非常に良いバランス。飲む芸術品です。

Ballantine 30yo (OB, +/- 1990s, 750ml, 40%)

香りはべっこうあめ、カラメル、トフィ、熟したリンゴ、少し植物っぽさ、清涼感のあるハーブ、洋ナシ、どれもが主張しすぎず、円やか。

味わいはとても優しいタッチでリンゴとさくらんぼ、適度な濃さの紅茶、ミドルからしっかりした旨味の出汁、和三盆、木と樽の植物感と、控えめに広がる乾いたピート、少しミルクチョコレートのニュアンス、リンゴと紅茶の渋みが微かに残る軽やかなフィニッシュ。

【Very Good】

1990年代流通と思しきバランタイン30年です。使われている原酒は、逆算して1960年代。「腐っても60年代」というような言葉もあるくらい、スコットランドのモルトが非常に優れた味わいを誇っていた時代なわけでして、これが不味いわけがない、と思えてしまう代物です。もちろん、これ以前のものにはもっと素晴らしいものや味の方向性が少し異なるなどもありますが、自分がイメージするバランタインらしい味わいというとこのボトルにあるような香味が浮かんできます。

非常に多彩でスワリングするたびにころころ変わり拾うのが楽しく、しっとりとして落ち着いたバランタインらしいさすがの複雑さと円熟味。加水と経年ということもあり、やや線の細い繊細な趣ですが奥にはピートや程よい樽感も感じられ、全体として非常にバランスが良い。

やはりブレンドの巧さなのでしょう。匠が作り上げた往年の名作、飲む芸術品、といった感じです。

このボトルの楽しみ方としては、やはり「時間に思いを馳せる」というのが良いように思います。

原酒が作られてから今ここにたどり着くまでの長い長い時間。熟成期間の長さに加えて、瓶詰めされてからも30年ほどになろうかという膨大な時間。また、これを作り上げたブレンダーが研鑽してきたその時間。この時期ですと、マスターブレンダーはロバート・ヒックス氏でしょうか。彼の技を感じられるわけですね。

そういった特別感のあるバランタイン30年ですが、このボトルであれば、昨今のシングルモルトに比べればまだまだ手頃な価格で手に入るというのがありがたいですね。これだけの満足感を得られるかどうか怪しいボトルも多い中、オールドボトルでもそれなりに安定した品質のものが多いバランタイン30年。一本手元にあって損はないと思います。

グレンマレイ 15年 2000-2015 SMWS35.136

溌剌とした柑橘の酸味が心地いいモルトでした。

GlenMoray 15yo 2000-2015 (SMWS 35.136 “Genteel company”, 59.5%)

香りはミルク、バニラ、オレンジ、少し布っぽさ、ポリッシュ、ややワクシーなニュアンス。
味わいはとてもハッキリとしたハチミツ、レモン、ゆず、ミドルからホワイトペッパーと紅茶、フィニッシュにかけて白ブドウと紅茶が続く。

【Very Good】

SMWS-ソサエティの35番=グレンマレイの2000年蒸留、2015年詰め。近年のボトルです。

非常にエッジの立ったくっきりとした味わいが特徴的で、はちみつのような甘さと柑橘系の酸味のバランスがとても良いです。度数が高い割にはそこまで刺激的でもなく、フィニッシュにかけての紅茶感には上品さもあり、ボトル名の “Genteel” はなるほどこういうところか、と思わされました。

フルーティ、派手ではないけれども華やか、飲みごたえもあるし加水してもあまり崩れないのでゆるゆると飲んでも楽しい。2000年の蒸留でこれはかなりの当たりなのでは。どうやら値段もかなり抑えめだったようで、これは良い買い物をされたと思います。こういうのは自分で試飲してみないと分からないですね。

こちらは持ち寄り会でのNさんご持参のボトル。貴重なボトルをありがとうございました。

ジャックダニエル シングルバレル “バレルプルーフ”

度数の高さに驚きますが、非常にポテンシャルの高い原酒です。

Jack Daniel’s Single Barrel “Barrel Proof” (OB, Barrel No.18-7014, 134.9Proof/67.45%)

香りは新品の木製家具、あるいは樽そのものの香り 甘いメープルシロップ、ローストしたクルミ、少しセメダインのような溶剤、ドライチェリーやフィグのフルーツ感、チョコレート、香木系のふくよかな香り、かすかにおしろいのよう、非常に多彩。

味わいは非常に強烈なアタック、ピリピリと焼き付くよう、遅れて桃、ドライフィグのはっきりとしたフルーツ感、ミドルからはナッツの皮の部分の収斂味、強く煮出した紅茶、メープルシロップの甘さと強い紅茶のタンニンが残るフィニッシュ。

加水すると香りは溶剤とフルーツ感、濡れた土のようなアーシーさが引き立ち、味わいはバニラアイスの甘さと白桃のようなフルーティさが目立つ。多めの加水ではチョコレートと紅茶感がうまくまとまる。加水の幅が広く、好みが出てくるスポットを見つけるのも楽しい。

【Very Good】

久しぶりのアメリカン・ウイスキーです。こちらのボトルは、昨年12月の写真展の際にイシハラさんが持ち込んでいた一本。参加された方は、試飲された方も多かったのではないでしょうか(そこそこ減ってました)。

特筆すべきはやはりその度数の高さ。65%を超えるウイスキーというのは初めて呑みました。スコットランドではほとんどありえない度数ですね。原酒のバレルエントリーが62.5%なので、5%近くも度数が上がったことになります。

アメリカン・ウイスキーは、ご存知の方も多いと思いますが、樽の保管は高さがあるラック式がほとんどです。スコットランドは伝統的にダンネージ式が多いですが、その場合はせいぜい4段程度。一方のラック式は10段以上になることがザラで、高いものだと8階建てくらいのビルに相当します。地面に近いものと上のものでは温度環境が大きく異なり、上の方はかなり暑い環境に晒されることになります。

ジャックダニエルの熟成庫が立ち並ぶ様子。ビル7~8階建て程度か。

暑さ以外にもその他諸々の要因はありますが、今回のようにバレルエントリー時よりも度数が上がることもあるわけです。相当過酷な環境のように思えますね……。

さてそんなハイプルーフなこちらのシングルバレルですが、その香味はかなり上質のもので、樽選定に込められた気合いを感じさせるものでした。ストレートではさすがに度数が高すぎて、味もへったくれもなくなってしまうので加水することが前提になりますが、通常のウイスキーと同程度の50%~45%程度まで加水すると、様々なフレーバーを伴った甘さと香木感がコロコロと変化して、飲んでいて非常に楽しいです。

加水は、少し時期は過ぎてしまいましたが、一番寒かった2月頃にはお湯割りが非常に美味しかったのも印象的でした。湯気とともに立ち上るウイスキー・フレーバーには、バニラやハイカカオチョコレートのような香味があり、香りだけでかなりの時間を愉しむことができました。大ぶりで香りが溜まりやすいグラスで愉しむのが良かったです。

というわけで、かなり美味しいジャックダニエルでした。シングルカスクなので、これと同じ味わいを得ることは難しいかもしれませんが、他のシングル・バレルも、もしかしたらこれと同等かそれ以上に美味しいかもしれません。シングルカスクものは当然樽の個性が出るため味わいが安定しない懸念がつきまといますが、その個性をこそ愉しむものともいえます。蒸留所のセレクションを信頼するのも一興でしょう。

なお現在の公式ページを見ると “Barrel Strength” となっており、少しラインナップが変化しているようですが、基本的には同じでしょうか。アメリカン・ウイスキーとしては高級クラスに分類されそうですが、最近のスコッチと比べるとまだまだ良心的な価格とも考えられるあたり、モノの値段の考え方って難しいなあと思ったりするのでした。