カテゴリー別アーカイブ: 【Very Good】

グレンバーギ 21年 1995-2017 シグナトリー for 信濃屋

わかりやすくキャッチーなトロピカル感でした。

Glenburgie 21yo 1995-2017 (Signatory “The Un-Chillfiltered Collection” for Shinanoya,Hogshead Cask#6512, 54.6%)

香りはパイナップルや桃の缶詰シロップ、エキゾチックなスイーツ?、バニラ、少しシナモン、少し溶剤のニュアンス、木の生皮。

味わいはやや強めの刺激で、凝縮した甘さ、桃、パイナップルの缶詰、やはりシロップ感が強い、鼻抜けにはマンゴー、軽めの紅茶、ヒリヒリとアルコールの刺激を伴いながら、甘みと香木感を伴う長めの余韻が残る。

少量加水すると、香りに甘いフルーツヨーグルトと火薬のニュアンス。味にはオレンジのような柑橘が現れ、アルコールの刺激が抑えられ甘さも引き立つ。

【Very Good】

信濃屋さんが2019年末にリリースした、シグナトリーのアンチルフィルタード・コレクション、1995年のグレンバーギです。ボトリングは2017年3月ということですが、リリースは2年半ほど遅れての2019年末。このあたりは、諸々の事情がある模様ですが、それはさておいて。

キャラクターとしては、まずはなんといっても南国フルーツ感でしょう。わかりやすくキャッチーな甘さトロピッカルな果実の要素があります。ケミカルというよりは果汁3%くらいのジュースのイメージ、そこまで人工的なニュアンスはありません。トロリとした粘性を感じさせる部分もあって、缶詰のシロップのよう。

やや樽の味付けがメインで、ボディの分厚さがあるかと言われるとそこは普通レベルのようにも思いますが、総じてレベルが高い。あれこれ考えても良いですが、考え過ぎずにただ味わえば、これはかなりの満足感。おそらくは嫌いな人が少ないであろう果実感でしょう。

年々価格が高騰しつつどれも似たり寄ったりな味付けになりがちなこのご時世、これだけの品質のものを、売値としてはかなり良心的な値段で引っ張ってこれたというのが凄い。90年代半ばのモルト、ホグスヘッドとあるのでバーボン樽だと思いますが、バーボン樽の良いものがまだまだ眠っているのではないでしょうか。やや樽の強さが出やすいようなので、25年以上の長熟まで行く前に熟成のピークが来ているものが多い印象です。とはいえ、30年以上の熟成を経て初めて出てくるような味わいもあるので、選定する人にとっては難しいところ、でしょうか。

この手のバーボン・ホグスヘッドの味わいといえば、オーシャンズのタムデュを思い出しました。今回のバーギの方が南国感が強く、桃のニュアンスはやや控えめですが、どちらもキャッチーなフルーツ感があります。

また、グレンバーギといえば、以前に飲んだJIS向けのG&M1997バーギも、フィニッシュにかけてトロピカル感が出ていたこともあり、フルーティなフレーバーがよく出てくる蒸留所なのかもしれない、と感じています。そこまでメジャーではない蒸留所ではあるものの、バランタインの原酒として使われてきた実力は折り紙付き、というところでしょうか。今後も良いリリースがありそうな蒸溜所なので、こまめにチェックしていこうと思います。

余市 シングルカスク10年 2009-2019 #411127

期待以上の素晴らしい余市、特別なひと樽を引き寄せた特別な力を感じました。

Yoichi Single Cask Malt Whisky 10yo 2009-2019 (OB, Cask#411127, 59%)

香りはレーズン、タンジェリン、清涼感のある木、爽やかなハーブ、栗のような甘さ、ローストしたナッツとチーズのようなオイリーさ。

味わいは芯の強いアタックから、強く煮出した紅茶、レーズン、イチジク、黒糖のような濃厚な甘さ、焼いたリンゴ、タンニンの収斂強め、濃いめのフルーツソースと心地良い黒胡椒やクローブのスパイシーさが長く続くフィニッシュ。

加水して時間を置くと、香りはクローブやシナモンがたっぷりと効いたリンゴのコンポート、酸味と甘味がバランス良く心地良い味わいになる。

【Very Good】

モルト仲間のくりりんさんが手掛けた余市の「マイウイスキーづくり」のボトル。ご存知の方も多いと思いますが、余市蒸留所でのウイスキー製造工程を2日間かけて体験でき、10年後、そのとき詰めた樽からボトリングしたウイスキーを購入できるという、よくよく考えてみたらとんでもなく素晴らしいプログラムです。もちろん、そう簡単に抽選には当たらないようですが……。

今から10年前にこのプログラムに参加されたということで、晴れて余市10年シングルカスクとしてボトリングされたこちら。先日の持ち寄り会でも少しだけ頂いたのですが、小瓶で頂いて改めてテイスティングさせて頂きました。

間違いなく、美味い余市です。

赤や紫を思わせるようなフルーツ感は濃厚で、さすがに60%近いカスクストレングスであるためアルコールの強さはあるものの、甘み、渋み、スパイシーさ、どれを取ってもネガティブさを感じず全てがポジティブに振れている。加水後のリンゴのコンポートを凝縮させたような味わいは、余市だからアップルブランデーのニュアンスでも取りこんでいるのでは、なんて思わずにはいられませんでした。

飲んでうっとりするような魅力をも備えているような余市で、これは凄いと思いました。

正直な話、最初はある程度懐疑的な気持ちでテイスティングに臨みました。10年ものの余市ならちょうど良いところにまとまってくることはあったとしても、シングルカスクはどうしても博打の要素が大きいもの。隣り合ったシスターカスクでさえ全然味わいが違うことだってあるくらいです。それが、どうですか。10年間を無事に過ごし、そして出てきた原酒がこんなにも素晴らしい味になっているとは。

いやー、本当に持ってますね、彼は。

これまで、余市をテイスティングする機会はあまり多くはありませんでしたが、間違いなくトップクラスの味わいでした。くりりんさん、改めましてありがとうございました!

アードベッグ 「アードボッグ」 2013年アードベッグ・デー ボトル

以前の印象と異なり、とても美味しいアードベッグだったことに気付かされました。

Ardbeg Ardbog (OB bottled in 2013, 52.1%)

香りはイチジクのタルト、ダークチョコレート、スパイスたっぷりのチャイ、麦芽そのもののような穀物感、奥にクレゾールのような薬品、いぶしたベーコンのニュアンス。

味わいはやや優しい口当たりでラズベリージャム、チョコレート、みたらし餡のニュアンス、ミドルからしっかりとピート、粘土、ヒリヒリとスパイシー、フィニッシュにかけて薬品臭さとオレンジやベリー系のフルーツが残る。

【Very Good】

2013年のアードベッグ・デーに合わせてリリースされた、アードボッグです。

アードベッグ・デーは2012年が初でしたが、日本では特にイベントが打たれなかったので自分は知りませんでした。2013年にようやく日本でもアナウンスがあったためか、界隈ではいろいろな話を聞きましたし、このボトルも記憶にあります。ネーミングが覚えやすいですしね。

名前の由来はピート採掘元となっている湿地、Peatbogという場所。ピートを強く焚きつけるアードベッグらしさと同時に、これまでもアードベッグは様々なアイラの場所をボトルの名前に用いてきました。コリーヴレッカンやウーガダール、最近ではアン・オーやトリー・バンなど、それぞれのボトルがイメージする場所に合わせたネーミングを行ってきています。

さて、このアードボッグ、バーボン・カスクで10年熟成させた原酒とマンサニージャ・シェリーのカスクで10年熟成させた原酒をバッティングしています。ややこってり系なシェリー由来の甘さと、しっかり効いたピートの組み合わせが非常に上手くまとまっていて、甘じょっぱいならぬ、甘ピーティな味わい。通常のアードベッグはピート感が強すぎたりすることもあって個人的にはやや苦手なところもあるのですが、このアードボッグは甘さがうまくピート感を緩和してくれているのか、個人的に丁度いい塩梅でした。

シェリー樽のニュアンスも近年系のゴム感や粒子感はほとんどなく、かなり良いものが使われている印象。やや若いニュアンスもありましたが奥の方に少し感じる程度で、逆にいいアクセントになっています。

リリース当初に試した際にはそこまで印象には残らなかったのですが、こうして改めて飲んでみるとまた違ってくるのがウイスキーの面白いところですね。もう6年も前のことになりますから、自分の味覚や嗜好が変化していたり、当時の環境として他にももっと良いものがあったりと、いろいろと状況が異なるということも理由としてはあるでしょう。今、このウイスキーを改めて飲めたことに感謝です。

スプリングバンク 21年 2019年リリース

素晴らしい存在感、多彩な香味のスプリングバンクです。

Springbank 21yo 2019 Release (OB, 45% Port and 55% Rum casks, 46%)

香りは完熟リンゴ、過熟気味の洋梨、カスタードクリーム、糖蜜、少しセクシーさも感じる汗っぽさ、湿った動物の革、石灰のニュアンス、仏壇とお香、微かにフルーツトマト。

味わいは度数以上にパワフル、洋梨のタルト、リンゴジャム、プーアール茶の渋み、ミドルから石灰や藁灰、染み込むピートがしっかりと主張する、ほんのりとした蜂蜜の甘さに、石灰とピートのニュアンスが長く支配的だが、意外にもサラッと軽く消えていくフィニッシュ。

【Very Good】

毎年リリースが恒例となってきた、スプリングバンクの21年。パッと見は毎回同じように見えますが、使用している原酒の樽構成が毎年違っており、今年2019年のリリースはポートカスクとラムカスクという構成です。

複数樽のヴァッティングだからか、香り味ともにとても複雑でとてもすべてを捉えきれません。グラスに注いだ瞬間からしっかりと香る完熟フルーツ、麦由来の甘さ、独特の石灰やミネラル感、そして湿っぽい獣のニュアンスなどなど、複雑さが高いレベルでバランスを保たれていて、飲んでいて楽しさと心地よさが感じられる。確かにこれは特別感のあるボトルですね。気合を入れて磨き上げられた芸術品、といったところでしょうか。

ここ最近のスプリングバンクは、ウイスキーブームに加えてうまくブランドを確立していることもあって、どのボトルも(スタンダードの10年でさえ)比較的高額なものが目立ちますが、こう、しっかりと良いものを作っているということを考えると、そのあたりも納得できてしまいます。

また、蒸留所を訪れた2016年に感じたことは、働いている人の中に20代と思しき人たちが多いこと。ベテラン勢とともに若い人たちがいろいろな作業を行っている光景を見て、次世代の育成にも力を入れているのではないかと思ったことが特に印象的でした。おそらく彼ら/彼女らの中から、次世代を担う造り手が生まれていくのでしょう。今後のスプリングバンクも、もっと素晴らしい原酒が作られていくのかもしれません。

こちらの小瓶は、今年7月のベルギー旅行にてサンプル交換という形で頂きました。向こうでは7月でも比較的涼しい気候なのでモルトを飲むにも支障はありませんが、日本ではかなりの暑さであまりモルト向きではないと思い、暫く取っておきました。、ようやく涼しくなってきて、しっかりとモルトに向き合える季節になってきましたね。

Thanks Oliver!!

グレンアラヒー 25年 オフィシャルボトル

流石の長熟ボトル、しっかりと美味しく陶酔感もありました。

GlenAllachie 25yo (OB bottled +/- 2019, 48%)

香りはレモングラス、ブーケガルニ、レザー、ポリッシュしたアンティーク家具、オランジェットのニュアンス、ヒノキのような清涼感。

味わいはまったりとした甘さ、濃厚でとろけるようなプリン、リッチ、ミドルから暖かみのある木炭、ハーブ感が少し、フィニッシュにかけてデコポンのような甘い柑橘とバターサンドのようなリッチさが続く。

【Very Good】

グレンアラヒー蒸留所のコアレンジから、長熟の25年です。

以前に日本で試飲をした際にも「これは美味いな」と思ったのですが、今回改めて飲んでみてやはりしっかりとした美味さがあります。

香りは一瞬「んん??」と思うような、少しハーブや強めの樽感など独特のニュアンスが乗っていますが、徐々にオランジェットのような柑橘のニュアンスが広がってきて楽しい。味わいは長熟ならではの重みのある円熟さ、どっしりとしてまったり、ゆったりと楽しむのが正しいあり方といわんばかりの重みです。凝縮された味わいと、鼻抜けの陶酔感が心地いい。まさに時が磨き上げた宝石のようです。

まあ正直お値段もよろしいわけですが、それに見合った満足感をもたらしてくれると思います。うん、これは美味しいモルトです。

グレンアラヒー蒸留所には14棟の熟成庫があり、すべてあわせると1000万丁を超えるとか。本当にそんな数の樽があるのかと考えてしまいますが、熟成庫はひとつひとつがかなり巨大でそれが14棟ともなると、たしかにそういう数になるのだろうと納得。

その中から使えるものをピックアップしてひとつの商品として送り出すのも、考えることが多すぎてなかなか単純にはいかなさそうです。しかしこのボトルは本当によく出来ている。原酒の素晴らしさとともに、造り手の技を感じる一本でした。