カテゴリー別アーカイブ: 蒸留所訪問

[蒸留所訪問] ベルギー The Owl Distillery part2

前半では蒸留所ツアーの話をまとめました。後半はテイスティングした内容をまとめています。

まあ、先に正直に言ってしまいますと、どれもちょっと今ひとつであることは否めませんでした。

Belgian Owl Single Malt Spirit, 46%
香りに白い花、洋ナシ、少し海苔っぽさが強いか。骨太とは言い難く、やや線の細い印象があるが、加水46%によるものかもしれない。悪い要素は特に見当たらない。全体的にクリーンな原酒。


Belgian Owl Single Malt Whisky 36 months, 46%, First Fill Bourbon Cask
香りに白い花、まだ若さを感じる酸味ある穀物感、サワードゥ、ハチミツ、良いバーボン樽香。
味わいはハチミツ、遅れてサワードゥ、少しライチっぽい果実感、ミドルに乾いた土っぽさ、青ネギのニュアンス、穀物感と酸味が残るフィニッシュ。

そこそこ良い樽感があり、そこまで若さを感じさせない、ほど良い熟成感があるボトル。まだまだこれから本格的に熟成させれば、という気もするが、この後のテイスティングの結果としては、いまのところこのボトルが最もバランスが良い。飲みやすく飽きない作りではあるが、洗練さがない割にやや没個性的であり、評価が難しい。


Belgian Owl Single Malt Whisky 42 months, 46%, First Fill Bourbon Cask
36ヶ月と同系統の香りだが、ねっとりした植物油と糊っぽさがやや強く、セージやディルのような植物系で爽やかさとピリッとした酸味を感じさせる。
味わいもほぼ同系統だが、よりグラッパのようなニュアンス、洋ナシ、スイカ、薄めたハッカ油のようなオイリーさと草っぽさが残る。


Belgian Owl Single Malt Whisky 60 months, 46%, First Fill Bourbon Cask
香りはハチミツ、洋梨、おしろい、塩気とともに少し柑橘のニュアンス。
味わいは線が細く、オリーブオイル、オールスパイス、クローブ、レモンに塩気、ややオイル感が強いねっとりとした感覚が口に残る。

熟成感によるものか、少し重めのニュアンスが強くなってきておりややオイリー。塩気と柑橘のニュンスから、クライヌリッシュのような北ハイランド方面の香味を想起させられるような構成。単熟のハイランド・モルトと言われても違和感はないかもしれない。


全体的に、やはり地ウイスキー感というか洗練されていないというか、酸味のような部分やもっさりした部分が感じられる味わいがあります。ニューメイクの段階では結構クリーンですし白い花のような華やかさや洋梨のようなフルーツ感もありなかなか良いのですが、ちょっと線が細い感じがしました。

全体的な造りや思想は素晴らしいものがあるので、これで味が洗練されていけば文句なしのクラフトウイスキーといえると思います。が、今の段階では今ひとつ感が否めない、というのが正直な感想です。

スタートから15年ほど、現在のポットスチルになってからは5年ほど。ウイスキー造りは年に4ヶ月ほどの期間のみということもあり、まだまだ経験を蓄積していく段階だと思います。今後のクオリティアップに期待しましょう。

なにより、前半記事にまとめた通り、クラフト蒸留所としてのあり方は本当に素晴らしいものですので、ベルギーを訪れた際にはぜひ蒸留所を訪問してみてください。


のどかな場所にある、地元愛に溢れたウイスキー蒸留所でした。

[蒸留所訪問] ベルギー The Owl Distillery part1

先日、ベルギーを旅行してきました。

ベルギーといえばビールですので、主に巡ってきたのはビールの醸造所なのですが、ベルギーでもウイスキーが作られていると知って、できれば訪れてみたいと思っていました。

調べてみたところ蒸留所は7箇所あり、公開しているのは5箇所ほど。どれも気になったものの、多くはビール醸造所やジン&ジュネーヴァ蒸留所との併設の模様。その中で、日本でも手に入り、ビール醸造所との兼務ではないところが気になった The Owl Distillery を訪問してみました。

The Owl Distillery はベルギーの首都ブリュッセルと東の大都市リエージュの間にあり、リエージュに近い場所に位置します。公共交通を使ったアクセス方法としては、電車でVoroux駅に行き2km弱歩くか、リエージュ駅からバスを2本乗り継いでVOROUX-GOREUXバス停から500mほど歩くか、という2択になるでしょう。どちらも1時間に1本程度の本数しかないため、時刻表を事前に調べて行くのがベター。自分はリエージュからのアクセスとなりましたが、電車の方がわかりやすかったですし、歩くのも悪くないと思い電車を使いました。

ちなみに、ベルギーのウイスキー蒸留所の情報はこちらのサイトにまとめられていますので、参考になると思います。

Vorouxの村はずれまで歩いていくと、そこには広大な畑が広がっていました。麦畑の奥に見える建物、どうやらこれがOwl Distilleryらしい。

元は普通の農家の建物だったとのこと。パゴダを模した屋根が入り口に備え付けられていました。

受付に行くと、今回蒸留所の説明をしてくれるイザベラさんが出迎えてくださいました。最初にテイスティング・ルームに案内され、コーヒーをごちそうに。ここでは各種ウイスキーの試飲、ボトルやグッズの購入ができるようになっていました。綺麗でおしゃれな空間ですね。

さて、蒸留所の説明をしていただくのですが、まずは軽く創立の歴史から。何か地元の特産品を、と考えた創立者のEtienne Bouillon氏が、ふたりの地元農家 Pierre Roberti氏と Christian Polis氏と手を組んでウイスキーを作ろうと始めたのが2003年頃。そこから設備を整え、最初はスイス製の小さなポットスチルで蒸留を行い、原酒を作り始めたのが2004年。初期のポットスチルの写真を見せてもらったのですが、ジン用と思われるような形状でかなり小型のものでした。

続いて話は原料となる大麦へ。地元のものにこだわるため、大麦もすべて地元産を使っているのだそう。訪問時に見えた麦畑がまさにその原料となるようで、付近の農家と提携して今では6名、当初の6ヘクタールの土地から77ヘクタールまで広がり、原料確保と安定供給を実現しているそうです。

蒸留所の眼前に広がる広い畑で原料の麦が作られる。ここは休養中の畑。麦は連続してつくると連作障害が起きるため輪作と休養を挟みながら育てる。

そう、ここまででも分かる通り、Owl Distillery は地元産のクラフトに強いこだわりをみせる蒸留所。ベルギーの法律では、蒸留さえベルギー国内で行っていれば他の工程は国外でも構わず、また最低3年の熟成期間義務も無いそうです。このため、他の蒸留所では国外産のモルトを使っていたりするそうですが、Owl Distilleryはすべて国内産にこだわり、最低3年の熟成をもって を名乗っています。原料となる大麦は地元産、モルティングこそアントワープ近郊の別会社にまかせていますが、その後の糖化/発酵/蒸留/熟成はすべてこの蒸留所内で行わている、まさに地ウイスキーとも言えるでしょう。

ちなみに、現在はノンピートのモルトのみを使っていますが、将来的にはベルギー産のピートを使ってピーテッド・ウイスキーをつくる計画がある模様。

最初に糖化槽。モルトミルは建物の外にあり、黒い部分を通って糖化層の中に入れられていきます。

発酵槽は4基。72時間発酵とやや長めで、温度一定に保つような管理はしておらず、最初の温度だけ決めていて後はすべて自然まかせ。このあたりは品質の安定という点ではどうだろうか、と思いましたが、そのブレも含めて自然のものと考えているようです。

そしてお待ちかねのポットスチル。2013年にこちらに運び込まれたポットスチルとスピリッツセーフは、なんとあのキャパドニック蒸留所のもの。なんとか交渉に成功したということですが、それが相当に難しいことであるのは想像に固くありません。スコッチウイスキーで使われたポットスチルがスコットランド国外に運び出された、ということだけでも驚くべきことだと思います。

ネックはほぼ水平で、比較的クリーンな酒質を狙っているようです。ミドルカットの割合などは毎回人が判断しているため明確な基準はありませんが、かなり狭い範囲だそう。フォアショッツとフェインツは次回の蒸留にまわして再利用される仕組みになっていました。

ウェアハウスには現在800丁ほどの樽が。見ると8段のラック式で、下はコンクリート製となっていました。コンクリートが影響しているのか、それとも気候のせいなのかは不明ですが、ここでの熟成では徐々にアルコール度数が上がるようになっており、バレルエントリーの68%程度から10年以上の熟成で77%にまでなるそうです。バーボンの熟成と近いのでしょうか。ベルギーの天使はアルコールよりも水がお好きな模様。

樽はアメリカのヘブンヒル蒸留所から払い出されたバーボンカスクを使っていて、1st Fillで使った後はビール醸造所に渡しているそうです。この日の前にいくつかウイスキーカスク熟成のベルギービールを飲んでいたので、なるほどと納得。樽熟成ビール、なかなか面白い味でしたので一度試してみても良いかと思います。

ひと通りの説明をして頂いて感じたのは、これこそまさにクラフト蒸留所、というお手本のような造りを体現している、ということ。地元に対する愛というか、これこそが私達の農産物です、と自信を持って提示しているその姿は素晴らしいと思いました。それが唯一の正解、というわけではありませんが、やはりここまで一貫したものづくりの姿勢は、そうではないところに比べて美しく見えるものです。

この後テイスティングをしながらイザベラさんと話していて、ベルギー・ウイスキーの規定について教えて頂きました。代わりにジャパニーズ・ウイスキーの規定についてもいろいろとお聞かせして、一部のジャパニーズ・ウイスキーのからくりについてお話したところ、信じられない、といった感想でした。まあ、そうですよねぇ……。自分も本当に crazy だと思います。

そういうところと、この Owl Distillery を比べれば、どちらの造りが誠実かというのは明確でしょう。

さて、この後テイスティングに移ります。

養命酒健康の森

信州マルス蒸留所の前になりますが、 養命酒健康の森に寄ってきました。

恐らく皆さんご存知と思われる、薬用養命酒。あの養命酒の生産工場は駒ケ岳の麓、信州マルス蒸留所から10kmほどとかなり近い場所にあります。最近、クラフトジンの「香の森」「香の雫」を発表した養命酒。(ジンの工程は見れませんが)工場見学も受け付けているということで、行ってみました。

中央アルプスを背景にしてならぶ建物は、敷地の1/3程度で、残り敷地はというとこのあたり一帯の森なのだそう。自然環境や水源も含めて養命酒を作るのにふさわしい場所として、1972年から駒ヶ根工場で生産しているそうです。

ツアーは事前予約しておきましょう。飛び入りだと空いていないことがあります。ツアー時間は60分+試飲20分ほど。養命酒の製造工程をざっくりとですが知ることができます。

養命酒に使われている生薬を実際に触ったり匂いを嗅いだりできるコーナー。どれもかなり独特の匂いがあり、確かにこれは薬として効き目がありそうだ、というのが伝わります。特に一番多く使われているという「クロモジ」は、枝を折ると爽やかな心地良い香りが。クローブやシナモンなどの定番とも言えるスパイスもありました。

ツアーの詳細は行ってみてのお楽しみということで省きますが、施設内はいろいろと面白い場所がありますし、天気が良ければ南アルプスと中央アルプスが一望できる好立地。散策もできる林や小川があり、簡単なハイキング気分も味わえる良い場所です。

さて、個人的に一番気になっていたクラフトジン「香の森」と「香の雫」。どちらもボタニカルに「クロモジ」を使っているのが養命酒らしい特徴。確かに、どことなく養命酒と似た香りがします。

「香の雫」はクロモジの小枝を中心に11種類のボタニカルを使用。37%というアルコール度数で少し飲みやすい方向を目指しているそうです。対して「香の森」はクロモジの太い枝や皮などを中心に18種類のボタニカルを使用していてアルコール度数47%。こちらはより本格的なジンを目指して作られているそう。

飲み比べてみると、香の雫の方がボタニカルの風味はやや控えめで優しく、味わいも丸みと甘さを感じやすい風味でした。香の森の方はガツンと効いたクロモジの清涼感と、その他にもやや苦そうな薬のようなボタニカルが特徴的。十分に美味しいですが、香の雫と比べると単体ではややキツい味わいかもしれないな、という印象でした。

どちらも結構違った味わいではあるので、2つ比べて試してみると面白いと思いますよ。

ツアーでの試飲はノンアルコールもありますし、お土産までもらえてしまって、しかも無料とは……。こんなに至れり尽くせりで良いのだろうか、と思ってしまう内容でした。天気が良ければ散策してみるのもいいですし、オープンテラス的なカフェでくつろぐこともできます。

ここはなかなかに良い観光スポットでした。駒ヶ根にお寄りの際はぜひ。

[蒸留所訪問] 信州マルス蒸留所

久しぶりに信州マルスウイスキー蒸留所に行ってきました。

前回来たのが2013年だったので、実に6年ぶりということに。そんなに前だったっけ、と思いつつも訪れてみると、なんと、工事中で入れない……? と焦りましたが、ショップ・見学ともにオープンしていました。

受付をすませ、セルフツアーという部分は特に変わっていませんでした。熟成庫と糖化・発酵・蒸留という工程はしっかりと見学できます。

発酵槽に、以前は無かった木製のタンクが3基ほど増えていました。また、ポットスチルは2014年に入れ替えたため、現在稼働中のものはまだまだ新しい銅の色を保っています。綺麗ですね。

2014年に役目を終えたポットスチルは、熟成庫の隣に飾ってありました。この色、貫禄ありますね。こういう燻し銀ならぬ「燻し銅」の色も良い。1960年から54年ほどの使用期間ということになりますが、実際には1992年から2009年までの19年間は休止しており、また以前は年中可動していたわけではないため、実際の稼働期間としてはそこまで長くなく、実際には半分の27年にも満たないくらいでは。このあたりは以前訪れた江井ヶ島蒸留所と似たようなものかもしれません。

工事は敷地内の様々な場所で行われていて、全体的にリニューアルと増築が図られるようです。今の建物もかなり古びた感じなので、ウイスキー・ブームの今、タイミングとしては悪くなさそうです。工事がすべて終わるのは来年2020年の秋ということで、これからしばらくはかかるようですが、その間もウイスキーの蒸留は続けられるようで、工場の稼働と改築と、うまくまわしていくのが大変そうです。

見学は、しばらくは特に変更無く実施できるようですが、工事の影響で休止期間が発生したりするかもしれませんので、見学を考えている方は信州マルス蒸留所のサイトをチェックしておくと良さそうです。

[蒸留所訪問] 静岡蒸留所 part2

ツアーでひと通りの説明を受けちょうど1時間、後は試飲タイムとなりました。

ここではニューメイクの2種類を試飲。前述した初留のポットスチル違いで、フォーサイス製、軽井沢製のそれぞれでどのような違いがあるかを試してみました。基本的にニューメイクなので方向性はほぼ同じ、まあ焼酎的なものなわけですが、その中でも違いがあります。

軽井沢製
香りにスモモやバラ、味は和三盆のような軽さのある甘味、白ブドウのようなフルーティさが印象的。

フォーサイス製
香りはミネラル感とバニラの甘さ、味はやや骨太で麦感が強い、少し雑味も感じるオイリーさが特徴的。

加水するとさらに違いが明確になり、前者はフルーツとバラ、後者はオイリーさとナッツのニュアンスが立ってきました。

正直に言うと、どちらもこんなに美味しいものだとは思っていなかったので、予想外というか想像以上にレベル高いな、というのが率直な感想でした。このレベルの原酒が安定して作れるのであれば、原酒の質としては全く問題はないでしょう。どちらも良いものでしたが、熟成したときに伸びしろがありそうなのは後者の方でしょうか。

あとは熟成がどういう風に進むか、というところですね。静岡は日本の中でもやや暖かい方に属しますが、一方で山間のこの土地は、マイナスにはならないまでも冬場はかなり冷えるようです。1日の中での気温差なども関係してくるでしょうが、どのくらいの年数の熟成が良いのか、これから検証していくしかないわけで、期待と不安が入り混じります。秩父の例を見ていると、10年まで行くと熟成が進みすぎるか、とも思いますが、土地によってかなり違うのも事実。こればかりはやってみないと分かりません。

総括すると、静岡蒸留所の全体的な印象としては、静かな自然との共生、というのがテーマのように感じました。大きな道路も無くトラックなどもほとんど通らないような場所、自然に囲まれた環境、地元の木材を使い、自然の酵母菌が住み着きやすいように配慮した設計、そして蒸留に用いている薪。今どきは当たり前かもしれませんが、廃棄される煙や麦汁カスの循環にもしっかりと着目して取り組みがなされています。

ウイスキーづくりの環境としては、静かさという点ではなかなかこれ以上のものはないかもしれません。

蒸留所の目の前を流れる中河内川。蒸留所の水源は川ではなく井戸だが、水系は同じか。

これからが楽しみな静岡蒸留所ですが、2020年春には3年熟成ものの、いわゆる「ウイスキー」が出来上がる予定となっています。ファーストリリースがどのような味わいとなっているのか、待ち遠しいですね。そしてもちろん今後は5年熟成、10年熟成といったボトルがリリースされることを、今から楽しみにしています。

[蒸留所訪問] 静岡蒸留所 part1

2019年現在、日本のクラフト蒸留所は20を数えるほどになり、全国各地で新規の蒸留所が稼働し始めています。今回訪れた静岡蒸留所は、その中でもやや先駆け的な立ち位置といえるでしょう。秩父蒸留所はまさに先駆者ですが、「その次」として名乗りをあげた蒸留所の中のひとつ、という認識です。

実際に製品とするための蒸留がスタートしたのは2016年12月ですが、蒸留所建設の計画はかなり早く、2013年頃からスタート。建設計画が進む最中の2015年、軽井沢蒸留所が完全閉鎖となった際にその設備がオークションにかけられましたが、それを落札したのが静岡蒸留所の母体となっているガイアフロー。建設する蒸留所の計画に組み込まれる形となりました。

本格稼働から2年半ほど経っていたものの未だに訪問できていませんでしたが、この連休にようやく機会に恵まれました。現在は、基本的に平日のみ事前予約制で見学を受け付けています。

静岡駅からバスに乗って北の方へちょうど1時間という場所にある静岡蒸留所。途中、どんどん深くなる緑ときれいな川の流れに何度も目を惹きつけます。やがて見えてきた目的地も、深い山あいの川のほとり。少し開けた場所に、木目と黒のコントラストが美しい蒸留所が現れました。

建物としてはそこまで大きいわけではありませんが、周りに何もなく広々としているこの場所一帯すべてが蒸留所のように錯覚してしまいます。現在は蒸留設備もあるメインの建物と、2つの熟成庫があるのみです。

ツアーの内容はざっくりとした説明のみにとどめますが、スタッフの方が非常に丁寧に細かい内容まで説明してくれて、各設備の眼の前で実物を見ながらの説明となりました。さすがに設備に触ったりするのはご法度ですが、発酵槽を下から見たり、上から見ながら発酵している香りを体験できたり。

発酵槽はオレゴンパインが4基、杉が4基。発酵具合の違いを狙っているのだとか。

壁も床も塗装なしの杉材を用いて、自然の乳酸菌をなるべく取り入れようとする試み。

軽井沢蒸留所の設備のひとつだったポーテウスのモルトミル。実はこれが一番価値があったのでは、とも云われる掘り出し物。

フォーサイス製の初留と再留のポットスチル

ハイライトとなる蒸留工程では、世界で唯一という薪を使った直火加熱が目を引きます。ちょうど薪を追加するタイミングだったので、中を見ることができましたが、かなり離れていたにも関わらず吹き付ける熱風に顔を背けそうになるほど。

炉の目の前では500℃にもなり火の粉が降りかかるため、スタッフは耐熱の防護服と赤外線遮断のヘルメットを着けた上での作業が必須。これはかなりの危険作業です。ちょっとした不注意が事故に繋がりかねないため、気が抜けませんね。

ポットスチルは初留がフォーサイス製と軽井沢のものの2つ、再留がフォーサイス製1つで、それぞれをローテーションさせているようです。

貯蔵庫はラック式とダンネージ式がそれぞれ1つずつ。ここではラック式を見せていただきました。

長くなりましたので一旦ここまで。

[蒸留所訪問] 江井ヶ島酒造 ホワイトオーク蒸留所

山崎蒸留所に続いて、兵庫県明石にある、江井ヶ島酒造 ホワイトオーク蒸留所を訪問してきました。

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江井ヶ島酒造は江戸時代初期から400年近く続く日本酒蔵。酒の名所、灘の近く。ここでも良い水、良い米が取れ、昔から酒造りが盛んだったようです。その江井ヶ島酒造がウイスキーの製造免許を取得したのは1919年。来年で100年という区切りを迎えることになります。

とはいえ、自前で蒸留を始めるのは後になってから。それまでは海外の原酒を調達、ブレンドを行い販売していたそうです。現在のウイスキー蒸留器が収まったのが1984年とのことで、およそ34年が経っていることになります。

銘柄としては「ホワイトオークウイスキー」を使ってきており、「あかし」という名前を使い始めたのはここ10年ほどだそう。確かに、以前はホワイトオークという名前のウイスキーがあったな、酒屋ではそこそこ流通しているのか、よく見たな、というイメージがありました。現在は「あかし」という名前が定着している印象があります。

 

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という情報を教えて頂きながら、ウイスキー蒸留所の前にまずは日本酒蔵から案内して頂きました。

酒蔵の構内は、驚くほど広い……。日本酒蔵は大小の差がかなりある(小さいと本当に普通の家くらいのサイズ)のですが、ここはひとつの町かと思うくらい。といったらちょっと大げさかもしれませんが、移動は基本的に自転車というのも頷けます。道幅も広く、フォークリフトも楽々動ける広さでした。

当日はちょうど今年の日本酒の仕込みが始まろうという時期で、まずは米の精米や洗いを行っているところでした。本醸造などが年内に作られていき、年明け頃から吟醸造りの仕込みが始まるようです。今年の出来はどうでしょうね。こちらも気になるところです。

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酒蔵のすぐ裏手は瀬戸内海が広がり、島々や明石海峡大橋が一望できました。ボウモアなどとも肩を並べるくらい海に近いです。もしかしたら熟成中に潮気が付いたり……しないですかね。

 

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さて、続いてメインディッシュであるウイスキー関連。ホワイトオーク蒸留所の内部へ。主要設備は二階部分にあるのですが、ワンルームの中に粉砕機、ウォッシュバック、マッシュタン、そして2器のポットスチルがすべてまとまっていました。サイズ感からか、キルケランのグレンガイル蒸留所を思い出しました。あそこも同じくらいの大きさだったかな、と。

内部はやや黄色がかったアイボリー色で統一されていて、ポットスチルの鈍色がよく目立つ。シンプルながら良い雰囲気でした。

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このポットスチル、1984年から使用されているものですが、その前に何に使われていたのかは定かでないそうです。焼酎でしょうかね?

あまり稼働率は高くなかったため、実際に使った期間は7年少々とのことですが、このポットスチル、なんと今年で役目を終えるそうです。今年の蒸留は11月初週、つまりこの訪問時に仕込んでいた麦を蒸留するところで最後になるのでした。なんか不思議なタイミングでの訪問となりました。

実際にはまだまだ使用可能ではあるものの、設備投資の一環で更改に。来年からは新ポットスチル。形状は同じですが、果たしてその香味は同じか変わるか……。どうなるか気になりますね。

 

工場内の見学を一通り終えてからいろいろとお話を伺いました。昨今のジャパニーズウイスキーのブームを受けて、「あかし」もかなり人気があるようです。しかし、何でもかんでも売れれば良いというわけではなく、江井ヶ島酒造ではその透明性を重視していました。

日本では3年未満の熟成でもウイスキーを名乗れますが、そこは品質を重視して最低3年の熟成期間を置いています。スタンダード品の「あかし」には海外から輸入した原酒も使用しており、商品説明にはその旨を記載。すべて、本場のスコットランドに倣った表記方法です。

また、実は「ジャパニーズウイスキー」の表記はどこにもない。海外の原酒を使用しているものをジャパニーズ・ウイスキーを名乗るつもりはない、ということです。

こういう品質重視のスタイルを、失礼ながらあまり目立たなかった時代からずっと続けていたのは、ひとえに職人たちの矜持でしょう。

来年からの新生ホワイトオーク蒸留所がその原酒をリリースするのは2022年から、ということになります。しばらく時間が掛かりますが、楽しみに待ちましょう。

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