月別アーカイブ: 2015年12月

2015年のウイスキー界隈を振り返って

今年も世間のウイスキー界隈は賑わってきたように思えます。昨年のマッサンブームから引き続き、ジャパニーズモルトの人気ぶりが高まった中、世界的にもウイスキーのブームは盛り上がりを見せた歳だったのでは。スコッチは消費や輸出が横ばいかやや減少気味ではあったようですが、一方でバーボンやアメリカのクラフト・ディスティラリーなどは更なる盛り上がりを見せたように思えます。

一方で、原酒不足が深刻化しているニュースが散見され、ジャパニーズの大手も相次いで値上げ。9月には、ニッカがラインナップを整理し、余市や宮城峡の年数表記(Age Statement)つきを終売にするという、モルトラヴァーにとっては「ニッカショック」とも言える事態になりました。また、日本においては為替の影響もあり、またスコットランド現地での価格高騰の煽りもあってモルトは軒並み高騰。もはや手軽に買える20年オーバーなどは皆無ともいえる状況です。

個人的な見解としては、このまま価格が高止まりを続ければブームは一気に収束してまたウイスキー業界は不況になると考えています。確かにブームで一時的な裾野は広がったと思いますが、一般的な消費者はボトル1本に1万円も出したりはしません。5000円でも厳しいものです。そんなところへ、リリースされるスタンダードボトルが1万やら2万やらとなっている現状は、明らかに新規消費者には厳しい。一部の金持ちだけを相手にしているような業界になりたいのであれば構いませんが、それではジリ貧になってしまうのではないでしょうか。

似た傾向のニュースでは、軽井沢の1960年蒸留のボトルが香港のオークションで1200万円で落札され、それがNHKのトップニュースになるなど、希少性、価格的な側面がモルト業界のニュースでは強いように思えました。世間的にも露出が増えてきたためだとは思いますが、変なところばかりニュースになるのだな、といった印象です。

さて、個人的な経験については。今年も持ち寄り会などで様々なモルトを経験し、ご一緒させて頂いたモルト仲間には本当に感謝でした。特に大規模持ち寄り会や、普段飲んでいなかったブレンデッド・ウイスキーの会など、自分だけでは絶対に経験できないようなことも沢山ありました。

今年の自分のベスト・ウイスキーなどは敢えて載せませんが、(というか評価はこのブログにも載せていますので不要ですよね)大いに収穫のあった年でした。一方で未来はあまり明るくないように見えるのですが(笑) まあ来年は来年の風が吹くでしょう。楽しみ方は自分で開拓しないといけませんね。

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ロッホサイド 31年 1966-1998 サイレント・スティル

Lochside 31yo 1966-1998 (Signatory “Silent Stills” Cask#3910 57.7%)

香りはリンゴ、洋ナシ、微かにマンゴーのような南国のフルーツ感も。紅茶葉のニュアンス、少し溶剤のニュアンス、蜂蜜の甘い香り。

味わいは香り同様のフルーツ感に加えて透明感のある麦の味わい、さらっとした蜂蜜、後半にやや紅茶と清涼感のあるニュアンス、フィニッシュも蜂蜜漬けのフルーツ感が続く。

【Very Good】

シグナトリーのサイレント・スティルシリーズから、ロッホサイド1966 31年熟成です。1998年ボトリングということで、かなり昔のボトルですね。

多彩なフルーツ感が素晴らしい香りを演出していて、とても華やかです。蜂蜜のニュアンスもあり、そこにフルーツポンチがあるのかと思うような、そんな印象でした。味についてもさらっとくどくないフルーツのニュアンスが素晴らしいです。割とドライな方向で、ミドルからはスッと切れ上がるような印象を受けました。

ロッホサイドといえば1981が有名で、それらも結構フルーツ感が多彩で良いというイメージがありますが、この60年代のロッホサイドはそれ以上とも言えそうです。酒質の良さに加えて、ボトリングからの経過によってさらに円熟味が出てきた頃なのかもしれません。適度な熟成年数であることも重要でしょう。

軽く一杯頂いただけなので暫定的な評価ではありますが、VG/E 評価でも良いかな、と思えるくらいでした。もしもう一度飲める機会があるならば、しっかりとテイスティングしてみたいです。

ジェームス・マーティン 20年 1980年代流通品

JAMES MARTIN’S Fine&Rare 20yo (Rotate in 1980s? 75cl 43%)

香りはカラメルの甘さ、松脂、獣脂、サツマイモから黒糖、こってりした穀物感、少しみたらし団子、柿、微かに古い家具のニュアンス。

味わいはアタックに少しパイナップル、スプライトのような炭酸飲料の風味、レモン、ライム、微かにピートのようなアーシーさがある、ミドルから穀物感、ややオイリーなみたらし感、切り立つエッジがシャープで少しピリピリ、ライトで切り上がり早いフィニッシュ。

【Good】

ジェームス・マーティン (ジェームス・マーチン) 社は、1878年から続くメーカーで、ブレンデッド・ウイスキーは20世紀初頭から始めたようです。あまり日本では有名ではない気がしますが、結構老舗なんですね。

このボトルは特級表記で、おそらく1980年代中頃の流通品ではないかと思われます。キーモルトはグレンマレイとグレンモーレンジでしょうか。逆算して60年代中頃。まだまだ酒質がパワフルだったころですね。

飲んだ瞬間に、

一瞬だけちょっと懐かしいようなフルーツ感がありました。何だったかと数秒悩んだのですが、駄菓子の粉ジュース、あれのパイナップル味。思い当たったときはちょっと笑ってしまいました。

しかしそのフルーツ感もあまり強くなく、ミドルからの穀物感が支配的で少しアンバランス、香りと味わいが一致しないのも珍しいです。

味は個性的で面白いのですが、香りが少し微妙なのが残念なところです。開封後の変化で良い方向に触れてくれることを期待します。

ブラインド・テイスティング from goblinさん 201512

ウイスキー仲間のゴブリンさんからブラインドのサンプルを頂きました。いつもありがとうございます。早速取り組ませて頂きました。

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【Blind Sample A from goblin-san 201512】

香りはとてもフルーティ、洋ナシ、イチジク、リンゴとセメダインの中間、徐々にワクシーさと植物感が出てくる。超長熟ではないが若さは無い。

味わいは透明感のある甘さにやや塩気、微かにアーシーさ、皮付きのリンゴ、麦感もしっかりだが儚い、刺激は少なく染みこむようなフィニッシュ。

【Good/Very Good】

とても落ち着いた、品のある味わい。香りは凄いフルーツ感にあふれていている一方で、味わいは透明感のある麦の甘さを中心とした、淡白で儚いところが印象的。

熟成感はさほど感じないが未熟感は欠片もない。全体的に刺激は控えめでアルコール度数は低いと感じた。

これが近年系とは思えない。凄い個性的だったりカスクストレングスとは思えないため、おそらく昔のオフィシャルスタンダードなボトルだと推測。

香りのとても多彩なフルーティさから絞った結果で以下のとおりと考えた。

【予想蒸留所】①スプリングバンク ②グレンドロナック ③候補あがらず
【蒸留年】1970年中頃
【熟成年数】15年程度
【度数】40%~43%
【その他】オフィシャルスタンダード品


さて、回答はというと、

スプリングバンク 8年 オーバルボトル 80年代流通 43%
Springbank 8yo Oval 1980s 443%

(画像は某Gさんのブログより引用させて頂きました)

スプリングバンクの昔のオフィシャルボトル、オーバルのビッグSでした。

香りがとても良かったため往年の良いボトルなのではと考えていたところに、「モルトの香水」というフレーズに思いついたのでスプリングバンクだろうと予想しました。バンクかドロナック12年のダンピーあたりだという予想での2択です。

熟成年数はお世辞にも合っているとは言えませんが、瓶内での経年変化と、昔のボトルはなぜか8年程度でも未熟感が無いあたりが予想しづらい原因だと思っています。昔のモルトはニューポッティなニュアンスが無いのが本当に、不思議なのですが、もしかしたら近年の若いモルトも30年くらい瓶内で寝かせればこういう風になるのでしょうか。

とても美味しいモルトでした。ゴブリンさん、ありがとうございました!

ロイヤルサルート 21年 1980年代流通

Royal Salute 21yo (Blended Whisky 1980s rotate)

香りは良いシェリーカスクのアロマ、ブドウ、バター、マンダリン、ミルキーなニュアンス、微かに汗くさい、ややもったりしたニュアンス。

味わいは染みこむ麦のコクと旨味、濃厚ではないがしっかりとしたブドウ果汁、デーツ、ミドルから舌にピリピリとしたスパイス感、タンニンの渋みとバタークッキーの香りを伴う余韻。

【Good/Very Good】

ブレンデッド・ウイスキーの中でも有名なロイヤルサルート 21年。このボトルは1980年代の流通品。構成原酒は主としてストラスアイラ蒸留所でしょう。

「古き良き」という枕詞がつきそうなシェリーのニュアンスが香り味ともにふんだんに感じられ、そこに麦のコクやバターのようなボディが支える構成です。ややもったりとしたバターのニュアンスがあり、この部分は好みが分かれそうなところですが、全体的にはブレンデッドらしくスムーズでほとんど引っかかりのない良質なウイスキーです。

現在のモルトではなかなか期待できない昔のシェリーカスクのニュアンスは、だんだん寒くなってきたこれからの季節にはとても合う。一杯目でゆるくスタートするにはもってこいのボトル。こういうのがひとつ常備されていると、なんというかホッとする感じでしょうか。

このボトルは、先日にくりりんさんが主催された「オールドブレンデッド会」でお持ち帰りボトルとして頂きました。様々なオールドブレンデッドを比較しながら試せる楽しめる、とても素晴らしい会でした。主催されたくりりんさん、大変お疲れ様でした。

さて、このボトルは陶器でできていますが、陶器ボトルは中身が染みこんでしまい揮発しやすいという特性があるそうで。その代わり、原酒が陶器に吸われているということもあり、別のウイスキーを入れておくと樽熟ではないですが後熟のような効果が期待できるようです。このボトルははいプルーフなシングルモルトではないため、そこまで支配的な効果は期待できませんが、シェリーのニュアンスなどの風味付けくらいにはなるのではないでしょうか。

ちょうど良さそうなのが、現行のエドラダワーかな、と思っています。良い意味で安っぽいコーヒーのようなシェリーっぽさが漂うエドラダワーに、ロイヤルサルートの風味は結構合いそうな気がしています。ちょうど手元に1本未開封のものがあるので、半分くらい入れて比較してみるのも面白いかもしれません。

普通に混ぜれば? という話もありますが……。まあひとつネタということで。

70年代流通品はもっとシェリーがどっしりらしいですので、呑んでみたいですね。オールドボトルまではわかるのですが、80年代と70年代で判別つかない……。

ホワイト&マッカイ 21年 1970年代流通品

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WHYTE & MACKAY’s 21yo (Rotate in 1970s? 75cl 43°GL 86Proof)

香りはオールド香、どっしりとしたシェリー由来のニュアンス、カモミールのようなハーブ、ウイキョウ、粘性とコクのありそうな麦感、ココア、樹木、微かにレザー感、残り香には火薬のニュアンス。

味わいは素晴らしくまろやかな滑り出し、カカオ、ローストしたナッツ、マーマレード、しっとりとしたパウンドケーキ、ミドルから少し清涼感、グレーン由来とおぼしき伸びしろのあるじんわりと暖かいフィニッシュ。

【Very Good】

ブレンデッド・ウイスキーとしては有名ですね。ホワイト&マッカイ 21年ものの、このボトルは1970年代後半~80年代頃の流通品と思われます。

ホワイト&マッカイといえば、(他のブレンデッド業者もやっているとは思いますが)ダブルマリッジ。モルト原酒を混ぜた後に樽で寝かせ、さらにグレーンを混ぜた後も樽で寝かせる。ウイスキー全体のまろやかさを追求した製法ですね。そのおかげか、このボトルもアタックがとてもスムーズでするりと入ってきます。そして広がる芳醇な味と香りに、思わず顔がほころんでしまいました。

良いシェリーカスク由来と思しき香りは、ほんのりと高貴なニュアンスも漂わせていて、特に香りが非常に良くスワリングしながら何度もノージングするのが楽しいです。ボディの迫力は流石に薄いですが、噛みごたえのあるような麦感やグレーンと思しき伸びの良さも感じられ、ただ加水した薄さだけではない原酒の力を感じました。

この辺りが昔のシェリーカスクらしい味わいなのかと思っているところと、先日のロイヤルサルートほど穀物感が無いのが良い点で、全体のまとまりなどから個人的にはかなりの高評価でした。これがお値段xxxx円とは……。

ホワイト&マッカイというと、キーモルトはダルモアとフェッターケアン、タリバーディンやトミントールといったところだと思いますが、この時代にも同じことが言えるのかはちょっと分かりません。これらの蒸留所を買収したのは60年代に入ってからということですので、蒸留した時代よりは後のようです。しかし順当に考えるのならば買収前からこれらの蒸留所をひいきにしていたのだと思います。

ボトル流通が1980年頃としても原酒は1960年以前、50年代もあるでしょう。ここまで来ると、流石に今とは異なる味わいの原酒なのだろうというのが良くわかります。

往年のモルトに思いを馳せながら、その片鱗をブレンデッドに見出すというのもまた面白いですね。

第2回 ウイスキー大持ち寄り会

モルト仲間のくりりんさんが主催された、ウイスキーの大持ち寄り会が先日行われました。

当日は80人を超える参加者がいらっしゃったということで、「大」とつけるに相応しい会となりました。またウイスキーだけではなく、コニャックなどのブランデー類、ラム、テキーラまであり、各人の嗜好と想いが良く出ているように思えました。これだけの会を取りまとめられた、くりりんさんはじめ有志の方々、本当にお疲れさまでした。

自分は昨年も参加しましたが、今回は特に20~24歳の若手が増えてきたように思えます。自分から見ても結構な歳の差が出てきてしまったわけですが、若い人たちには上の人に遠慮すること無く、どんどん自分たちの嗜好を広げていってもらいたいですね。勿論、ルールとマナーは守った上で、ですけれども。お互いに尊重しあって輪を広げて行けたら良いですね。

今回の会での自分のゴールは、とにかくいろんな人と話すことでした。おかげさまで初めての方や今までは2,3回お見かけしただけの方とも様々な会話ができました。ウイスキーのボトルそのものの話もそうですし、自分が知らない分野や時代の話を聞けるのも本当に楽しいです。ただウイスキーが好きという繋がりだけで、こんなに大きなネットワークになるんだなあと、改めて考えるとすごいことです。

一方で、スタッフの方々のお手伝いを積極的に買って出ていれば、もっと役に立てたのではないかと反省。後から考えれば考えるほど、スタッフの方々の労力は大変なものだったのだと思い至りました。次回もしくは似たような会があれば、力添えできるように動こうと思います。

さて、以下は特に気にいったり気になったりしたボトルの紹介です。

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Old Pulteney 1989-2015 Light Peated 46%

プルトニー好きとしては紹介しないわけにはいかないですね。1989ビンテージで軽くピートを炊き込んでいるそうです。あまりピート感は強くなく、余韻に僅かに乗ってくる程度ですが、その分フィニッシュの複雑さは増していました。ボディまではいわゆるバーボンのプルトニー味なので、あまり冒険はしていない感じです。年数的には長めなのですが、意外と熟成感は強くなく、そこそこフレッシュさも残っていました。

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カティーサーク12年、1970年代流通品
これは最近呑んでみたいと思っていたボトルだったので、この機会に呑めてよかったです。ボディはかなり軽いですが、香りに出てくる良いシェリー感やしみじみと乗ってくるピートは往年のモルトの味わいを想起させる内容です。あまり気取らずに家呑みでくつろぐのにちょうど良さそうです。

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白州 蒸留所30周年記念 43%
シェリーカスクなのですが、意外と荒々しくパワフルなシェリー感でした。最初カスクストレングスかと思ったほどで、度数を見て本当に驚きました。周りも同じような印象だったらしく、おそらく原酒そのままではかなりエグい味わいだったのではないかと推測されるものでした。加水によってまとまりが出てきているようで、良い判断だったと思います。

隣は台湾の南投蒸留所のウイスキー。最近、カヴァランとともにMalt Maniacs では話題騒然らしいですが、今回は呑むタイミングを逸してしまいました。

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ラフロイグ15年 200周年記念
今年がバイセンテナリーだというのに、全く呑む機会がなかったボトル。年末にようやく呑むことができました。意外とピート感もボディも強くないと感じたのは、既にこの時かなり酔っていたからかもしれませんが、ラフロイグはもっと消毒液っぽいイメージがあったので、割とフルーティなこのボトルは良い意味で裏切られました。ラフはあまり呑まないのですが、最近の傾向はこういう方向なのでしょうか。

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Scotch Malt Whisky Society 124.1
ソサエティの124番は宮城峡、そのファーストボトルで1988年蒸留とのことです。
香りからもうこれでもかと魅惑的なフレーバー。おそらくはミズナラ樽なのではないかと推測される、伽羅や白檀のようないわゆるオリエンタルな香木感。香りだけでしばらく楽しめました。そしてバナナ、レモン、ヘザーハニー、 残り香に火薬のようなニュアンス。これらが驚くほど嫌味の無い、でもパワフルかつ個性的。なんとも言えない味わいには思わず笑ってしまうほどでした。本当にこのボトルは凄かった!

ソサエティのファーストボトルというこで、関係者も相当に力を入れたのではないかというお話でした。ニッカにミズナラ樽があったのかどうかは定かではないですが、この香りはどう考えてもミズナラ以外には無いと思います。昔はサントリーと樽の融通もあったのでしょうか。もしくはニッカ独自で本当にごく少量作っていたのか……。謎はつきませんが、不明なあたりもまた魅力的に映りました。

こういった持ち寄り会は本当に楽しいですね。自分が普段触れないようなウイスキーも多く、それに対しての会話も楽しい。ありがとうございました!!