カテゴリー別アーカイブ: Clynelish – クライヌリッシュ

クライヌリッシュ 12年 ゴードン&マクファイル バイカラー 57%

往年の銘ボトル、素晴らしい貫禄でした。

Clynelish 12yo (Gordon & MacPhail, bottled +/- late 1980s, 57%)

香りは完熟リンゴ、アプリコット、清涼感のある木の香り、微かに火薬のニュアンス、奥に過熟ぎみのフルーツのニュアンスも少し感じる。

味わいはしっかりとしたボディで、凝縮感のあるリンゴジャム、アプリコットジャム、分厚い麦感、アップルタルト、微かにパパイヤのニュアンス、白粉と和三盆、フィニッシュにかけてしっかりと締めるピートと独特のフルーツ感が長く残る。

【Very Good/Excellent】

G&Mのクライヌリッシュ、2色に塗り分けられたラベル、いわゆるバイカラーというやつですね。

昔からこのボトルの存在は知っていたのですが、見かけたとしても大抵が空き瓶だったり、また、注文するにはちょっとお値段が凄そう……と気になってしまったりもして、飲む機会がありませんでした。ここで運良く巡り会えたので、これを逃すと飲む機会無いかもしれない、と思って注文させて頂きました。

同一のラベルで加水とカスクストレングスの2種類があるようで、今回は後者の方を。またこの時はありませんでしたが、肩のところに 12 years old のラベルが付いたものがあり、そちらはかのエドワード・ジャッコーネ向けとのこと。いろいろと種類があったのですね。

さてその香味は上記の通りですが、素晴らしいのひと言。12年とは思えない複雑さで、分厚くしっかりとした麦の味わい、噛みごたえがあるジャムのような濃厚なフルーツ感、後半にかけてのピートとミネラルのニュアンスがうまくまとまっていて、想像を軽く超えてきました。なるほど、評価が高いのも納得。確かにこれは美味しい、美味しい、と語彙が少なくなってしまいながらもなんとかこの味をしっかりと憶えておこう、と思ったのでした。

面白いのは、香味のフルーツ感は基本的にはリンゴやアプリコットなどが主体なのですが、奥の方にただれた果実のようなニュアンスがあり、あれ、これはあのブローラ30年の……というように通じている部分があると思えたところ。両蒸留所では香味にそれほど関連性は無いはずではありますが、どことなくブローラのフルーツ感に近いところがあると思えたのは面白い部分でした。いずれにしても、香味の複雑さは単なる12年とは思えないな、という印象でした。

往年の素晴らしいモルトを現在でも飲めることに感謝です。

クライヌリッシュ 21年 1996-2018 シグナトリー Whisky Exchange向け

気合いの入ったイベント向けらしく、上質な仕上がりでした。

Clynelish 21yo 1996-2018 (Signatory Vintage for “Whisky Exchange Whisky Show”, Refill Sherry Butt, Cask#11390, 52.0%)

香りは紅茶、ジンジャーティー、生姜の砂糖漬け、ハチミツがけのトースト、ややワクシーなニュアンス、カモミールのようなハーブ感が奥に潜む。

味わいはぬるりとややオイリーな口当たりで、マーマレード、メープルシロップとパンケーキ、ミドルはほどよいタンニンの刺激と濃いめの紅茶、鼻抜けは甘さと柑橘のフレーバー、甘めのハーブティーが心地よく続くフィニッシュ。

【Good/Very Good】

ウイスキーエクスチェンジが執り行っている Whisky Show 向けに詰められた、シグナトリーヴィンテージシリーズのクライヌリッシュです。ラベルが紫色なのが、通常のものとは異なる特別感を出していますね。

TWE の Whisky Show は2009年から始まり2018年9月の会で10周年だったようです。毎年このイベント向けにいろいろなボトルが詰められているようですが、このときは(も?)相当な気合が入っていたのでしょうか。このクライヌリッシュもかなり特別感があり美味しかったです。

リフィルシェリー樽ということですが、通常のウイスキーの香りというよりはなんだか上質なコニャックのようで、ランシオっぽいニュアンスもあり心地良い。飲んでも、あまり度数の高さを感じさせない上質な口当たり、クライヌリッシュらしさを思わせるオイリーさもありつつ、紅茶やハーブティー感がちょうど良い塩梅で香り味も共に良いバランスを保っていました。

近年の良いクライヌリッシュの一例、という感じです。素晴らしいですね。

クライヌリッシュといえば、ウィームスの1997年蒸留のボトルもかなり良い印象がありましたが、味わいの方向性はかなり異なるのが興味深いところ。樽が違うからといえばそれまでかもしれませんが、原酒の風味も豊かだからこそではないかと考えています。蒸留所のスタイルだけではなく、これだけ香味の幅が広く、それでいてどれも美味しいというのは、造り手も選ぶ人も、それぞれがプロフェッショナルだからこそだと思いました。

クライヌリッシュ 1997-2017 ウィームス Continental Platter

ちょっと珍しい味わいのあるクライヌリッシュですが、いろいろな旨味にあふれていて美味しいボトルです。

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Clynelish 1997-2017 “Continental Platter” (Wemyss Malts, Hogshead, 46%)

香りはリンゴ、バニラとハニートースト、少しパイナップル、塩気を感じるレモン、燻製用の木材、奥からメンソールなどハッカ系のニュアンス。

味わいはやや程よいアタックで梅、レモンジャムとバニラクリーム、甘みと塩気が同居する、ミドルは塩気と旨味、少しの根菜感、フィニッシュにかけて強めの塩気と燻煙、少しのペッパーが後をひく。

【Good/Very Good】

ウィームスのクライヌリッシュ、近年では当たり年と言われている1997年蒸留のものです。

全体的にはっきりくっきりとした明瞭な味わい。強めの塩気とバニラ感は北ハイランドらしく、クライヌリッシュらしいともいえます。

ミドルに塩気と野菜のようなニュアンスの旨味があり、これが漬物のような感じを醸し出していて美味い。ちょっと珍味系のニュアンスにもとれますが、決して嫌な味ではなくむしろこの旨味はもう1杯追加したくなるような、そういうタイプでした。

ボトル名の Continental Platter というのはワンプレート料理のことだとは思いますが、その上に載っているものは定義が曖昧でどういうものを指すのかが絞りきれませんでした。海産物ならシーフード・プラッターと書くと思いますので、この場合はハムやベーコンなどシャルキュトリー主体のプレートでしょうか。燻製っぽさが漂っていたので、ベーコンのような感じとか。そういえば上の漬物感もいぶりがっこに近いかも。

ウィームスは加水が得意というイメージがあって、このボトルも46%という加水ボトルですが、飲み疲れず物足りなさもない、非常に心地いい飲みごたえでした。

 

クライヌリッシュ 32年 1972-2005 エイコーン

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Clynelish 32yo 1972-2005 (ACORN “Natural Malt Selection”, 53.5%)

香りは優しい麦感、ハチミツとカスタード、アーモンドの香ばしさとオイリーさ、削ったばかりのヒノキのような木材香、オレンジとバナナのフルーツ感。

味わいはしっとりとした口当たりでカスタードやスポンジケーキ、良く熟したオレンジ、バナナチップ、マジパン、クリーミーなオイリーさ、ローストしたナッツと落ち着いたフルーティさが鼻抜けからフィニッシュまで長く続く。

【Very Good】

日本の古参ボトラー、エイコーンがリリースしていたクライヌリッシュ。1972年といえばクライヌリッシュの鉄板ヴィンテージ。ボトリング後の時間経過からか、かなり落ち着いていて優しいニュアンスが全体的に支配しており、53%という度数の割にはするすると飲めてしまう仕上がりになっていました。

しっかりとした麦感とオイリーなニュアンス、そしてフルーツ感が良いバランスで混在していて、奇をてらわない素の美味しさといった感じです。バーボンカスクのお手本のような方向性、それでいてこの複雑さは、90年代のバーボン樽のボトルだとちょっと思いつきません。90年代の30年オーバーはまだまだこれからなので。もしかしたらこのようなボトルにもお目にかかれるかもしれませんが、昨今のリリースを見ているとかなりの高額となってしまい手が出せそうにないような雰囲気があります。

今のうちにバーなど飲める場所で飲んでおいた方が良いかもしれませんね。

クライネリッシュ 蒸留所限定ボトル

Clynelish “Natural Cask Strength” (DB Available only at the Distillery 57.3%)

香りは爽やかなリンゴ、薄めの蜂蜜レモン、少しワクシーなニュアンス、奥に桃缶、ツンと来るアルコール感は若さを思わせるが、華やかさもあり良い香り立ち。

味わいは蜜柑、流れるような蜂蜜と同時にそれを塗ったトーストのよう。軽めの生クリーム。ミドルはからオイリーだがペッパー様のスパイスも感じる。鼻抜けにはアルコール感が強いがミントのようなハーブ感。甘めのバターミルクのキャンディのようなフィニッシュ。

【Good/Very Good】

2012年のスコットランド旅行の際に、クライネリッシュ蒸留所で購入した蒸留所限定ボトル。佇まいは普通のオフィシャルボトルですが、年数表記が無く「蒸留所限定」の表記のみとなっています。

香り、味わい共に若々しさがふんだんに出ていますが、あまりニューポッティなニュアンスは強くなく、普通に美味しいオフィシャルボトルです。恐らく12年~15年程度の原酒をヴァッティングしたものだと思われます。フルーティさが結構出ているのと同時に、ワクシーなニュアンスも感じさせ、クライネリッシュらしさを感じることができます。

ハイプルーフでかなり飲み疲れるタイプですが、若い原酒でも蒸留所の将来が楽しみになるボトルです。