ノッカンドゥ 25年 1964-1989 エクストラ リザーブ

しみじみ美味い、いい具合の枯れた古酒感です。

Knockando 25yo 1964-1989 (OB, “Extra Reserve”, 750ml, 43%)

香りはもったりとしたポリッジ、綿あめの甘い香り、ローストしたナッツ、古い家具、微かに灰と焼けた薪のニュアンス。

味わいはさらりとした麦の甘さ、穏やかな酸味、少し出汁醤油、薄めたバルサミコ酢、熟成の厚みはそこそこ、まろやかで落ちついた、強すぎないフィニッシュ こういうのでいいのですよ、

【Good/Very Good】

オフィシャルのノッカンドゥ、1970年前後に似たようなラベルで継続的にリリースがあったボトルです。以前は短熟のトールボトルを頂きましたが、今回は長熟のデキャンタボトルです。

やはり落ち着いていて、ある意味枯れたようなしみじみタイプの味わいなのですが、このゆるさが良いですね。味わいにはそこそこシェリー樽のニュアンスも感じられ、熟成から来ると思われるオイリーさと合わさって幾分重層的な味わいが印象的。甘さに少し酸味が交じるところは、トールボトルと共通した味わいのように思われました。

ボトリングからおよそ30年。加水のボトルなのでそろそろ状態が気になってしまう頃合いではあるものの、ヒネなどは感じず、かなり良い状態でしょう。こういうのをスターターとして1日の締めくくりにモルトを楽しめたら、なんて贅沢な想像をしてしまいました。

余韻を愉しみたい、と思った夜のこと

ウイスキーの魅力のひとつに、その香りがあるのはみなさんも同意していただけることかと思います。

ときには液体がまだ残っている状態よりも、飲み終えてからがむしろ本番だったりもします。空のグラスに残るウイスキーの残り香は、5分10分程度では消えることはありません。むしろ、空気に触れることによりどんどん変化していき、その表情もコロコロと変わっていくらでも愉しめてしまいます。この余韻こそ、ウイスキー、特にシングルモルトにとっては大切な要素だと自分は考えています。

昨日、家で飲んでいたウイスキーの残り香を愉しみながら、ふと、とあるバーに行ったときのことを思い出しました。

1杯目を飲み終えたあと、準備運動が終わったような気分になりながらグラスの香りを感じていると、2杯目はどうしましょうか、と声を掛けられました。まだ次のことを考える頭になっていなかった自分は、すぐにバックバーに目を向けながら次の注文をお願いしました。

2杯目はリフィルシェリーのカスクストレングス。これも時間を掛けて愉しんだあと、良い香りが残っていたため暫くそのままにしておくつもりでしたが、2分と経たずに3杯目はどうしましょうか、との声が。うまく話をして引き伸ばせば良かったのですが、結局流れで次のものを頼むことになってしまい、2杯目の余韻を愉しむことができませんでした。

ウイスキーは残り香さえも愉しみたい

ウイスキーの話からは逸れますが、最近YoutubeでBGMを探し、流していることがあります。ジャズ系の音楽などはほとんど手持ちに無いので、夜にそういう気分になりたいときには重宝しています。が、どのBGM系コンテンツでもそうなのですが、1曲が終わるとすぐに次の曲がクロスフェードするように入ってきます。音楽が流れていない空白の時間は悪であるかのように、とにかく音を切らすことを避けるように。

自分には、これが非常に不満なのです。

複数の曲からなる音楽アルバムでは、曲間の空白時間 ―― ギャップがあるものが普通です。少なくとも昔は普通だったと思います。この空白時間は、前の曲が終わり、次の曲が始まるまでに頭の中を整えるためのもの、と考えています。前の曲の余韻を感じ、どういう曲だったかの印象をまとめる時間、考えるための余白。

自分は以前に音楽を作っていたことがありましたが、音楽アルバムを完成させる最後の段階では全体を通して聞き、ギャップの時間が適切かどうか、ミリ秒単位で調整を行ったものです。少しでも短かいと違和感あるんですよ。逆に長過ぎても、もちろん変に間延びします。これは、他の方のマスタリング(最終調整)に立ち会ったときにも似たように行っていましたし、音楽業界では一般的かつ大切なことだと思います。

一見すると何もないようで実は大切な役割を持っている。めいいっぱいに入れすぎない、余裕のようなものは、何においても一定の役割を持っていると、自分は考えます。余韻を愉しむための空白時間、メインのコンテンツが空白ではないからこそ、合間合間のちょっとした空白が意味を持つ。

ウイスキーも同じことだと考えています。

例えば今夜は3杯くらいでと考えたときに、どういう風に流れを組み立てるのか。スターター、力強いメイン、最後は少し落ち着かせようか、それとももっと力強いものに身を委ねようか。そういった流れを、意識的にしろ無意識的にしろ、考えている方は多いでしょう。それは先ほど述べた音楽アルバムの話と同じように、全体でひとつの作品となるような流れを作っているのと同じようなものです。そしてそこには、やはり曲間のような空白時間が、ある程度は必要だと思っています。

そのウイスキーが素晴らしいものであればあるほど、余韻は長いものが多く、それを愉しむ時間も十分に取りたい。

特に人気なバーなどでは、注文したウイスキーを飲み終えたのに20分も30分も長居するようなことは避けた方が良いでしょうし、実際そこまで長居したことはありません。ただ、できれば最後の1杯でも10分くらいは残り香を愉しませて欲しい、と思うのでした。

ノースブリティッシュ 30年 1988-2018 ダグラスレイン XOP

円やかさと熟成感はさすが。品のある飲みやすさでした。

North British 30yo 1988-2018 (Douglas Laing’s “XOP” Extra Old Paticular, Refill Barrel #DL12538, 50.7%)

香りは少し酸味のある穀物、バター、ハニーオーツのクッキー、ミルクココア、微かに溶剤のニュアンス。

味わいはとてもまろやかな口当たりから 、コクのある穀物感、洋ナシ、金平糖の甘さ、少し糊、カシューナッツのようなオイリーさと甘味が儚く消える。

時間が経つと香りに酸味が出てくるが、味わいにはオイリーさが強くなり不思議なバランスが感じられる。変化が早く、時間をかけて愉しむことで奥の深さが見えてくる。

【Good/Very Good】

ダグラスレインの最高級レンジ、XOPからノースブリティッシュのグレーン30年熟成です。

グレーンとしてはようやく中熟? な部類に入るようですが、とはいえ30年の熟成期間は伊達じゃない。とてもまろやかな口当たり、飲んでいて引っかかるところの無いスムースさ、長く続かずさらっと消えていく余韻など、飲みやすいところが良いところ。

とはいえ薄っぺらいわけでもなく、50%程度の度数相応に適度なボディと飲みごたえは残っており、ちょうどいいところに落ち着いている印象です。

モルトの30年は、昨今はかなり高額になり手が出しづらくなって来ましたが、グレーンなら30年もほどほどのお値段で手に入るところが嬉しいですね。単純に「時間を愛でる」という目的であれば、これもまたひとつの選択肢として入れても良いのでは、と思いました。突出したところは無いかもしれませんが、円熟した味わいを愉しむ手法としては「あり」ではないかと。

そういえば、ノースブリティッシュ蒸留所はどこにあるんだろう、というのが気になりました。モルトの蒸留所はそのほとんどが地図上で頭に入っていますが、グレーンの蒸留所となるとかなり怪しい……。数は少ないはずなのですが、どれも全くと言っていいほど知らないことだらけです。

調べてみたところ、エディンバラの中心からそこまで遠くない場所にあるのですか。これはちょっと驚きました。

エディンバラの駅からエディンバラ城へ向かう南西方向を、さらに5kmほど先に行った場所に位置するようです。中心街からならトラムの Murrayfield Stadium 駅が近くに通っているため、訪問するならこれで行くのが良さそうですね。とはいっても、巨大な工場で一般見学も受け付けていないような場所ですから、行ってみるのはよほどの物好きな方しか居なさそうですが……。ちょっと興味が出てきました。

ベン・ネヴィス シングルグレーン 27年 1963-1991 ジェームズ・マッカーサー

非常に珍しいベン・ネヴィスのグレーン。歴史を感じる味わいでした。

Ben Nevis Single Grain 27yo 1963-1991 (James MacArchur “Fine Grain Selection”, 54%)

香りは針葉樹のような爽やかさ、バタークッキー、ピーナッツ、微かに溶剤、少しセロリのニュアンス。

味わいはややサッパリとした口当たりから、バニラとバター、デニッシュ、ホワイトクリームのクッキー、しっとりとホワイトペッパーの刺激、ニュートラルなトーンでさらり消えるドライなフィニッシュ。

【Good/Very Good】

ボトラーズのジェームズ・マッカーサーからリリースされていた、ベン・ネヴィスのグレーン、27年熟成。Fine Grain Selection とシリーズは聞いたことが無い……と思っていましたが、主に1960年代のカースブリッジやカレドニアン、ロッホサイド(!?) などが幾つかリリースされていたようです。

27年という熟成はグレーンでは比較的若い部類に入るのか、熟成感はやや控えめ。オイリーさによる厚みと同時に、清涼感を感じるさっぱりとした味わいが印象的。適度なボディで枯れ感はなくまだ活き活きとしている。かといって54%にしては刺激は少ない。このあたりは30年ほどになる瓶熟による影響があるのでしょうが、状態は良好で、まだまだしっかりと楽しめるボトルでした。


ところで、ベン・ネヴィスでグレーン? という方も多いかと思います。自分もそうでした。なので、ちょっと調べてみることに。

ベン・ネヴィス蒸留所は1825年にLong Jhon = ロング・ジョン氏が設立。その後1908年に一度閉鎖されます。1941年からベン・ネヴィス蒸留所のオーナーとなった Joseph Hobbs は、1955年にベン・ネヴィス蒸留所にコフィー・スチル(Coffey Still = カフェ式蒸留器) を導入、ベン・ネヴィス蒸留所はモルトとグレーン双方を蒸留する初の蒸留所となりました。

ベン・ネヴィス蒸留所ではないが、アイルランドはキルベガン蒸留所にあった昔のコフィー・スチル。

Joseph Hobbs は 1957年にロッホサイド蒸留所でもグレーンの蒸留器を導入しており、おそらくは戦後の復興と共に拡大するウイスキー需要に応えるため、という側面もあったのでしょう。

ベン・ネヴィス蒸留所は、その後1981年に Long Jhon Distillers に買収されるまでの26年間、あるいは1984年に蒸留所の設備整理が始まるまでの29年間、複数の情報があり定かではありませんが、その時点までモルト&グレーンの蒸留を続けることになります。その後1989年にニッカが買収し、現在もニッカ傘下で操業を続けているのは御存知の通りかと思います。

ベン・ネヴィス蒸留所のコフィー・スチルがどこに行ってしまったのかは定かではありませんが、ニッカがベン・ネヴィス蒸留所を手に入れたのが、コフィー・スチルを使っていたことがあったから、と言われても納得してしまいそうな繋がりです。実際には、ニッカは1963年に日本にやってきたコフィー・スチルを1969年に吸収しているため、連続式蒸留器を求めてベン・ネヴィスを手に入れたわけではないでしょうが。

いずれにしても、ベン・ネヴィスがグレーンを蒸留していた時期はかなり限定的で、今となってはかなり昔のものばかり。そもそも大半がブレンデッド用にまわされたようで、確認できたリリースはシグナトリーと今回のジェームズ・マッカーサーから1963年蒸留のものがそれぞれ一本ずつだけ。オフィシャルボトルも無く、相当希少な部類に入るでしょう。

2019年のベン・ネヴィス蒸留所のポットスチル・ルーム

蒸留所は、歴史の中で絶えず市場に合わせて変革を迫られ、ときに様々な需要に応えてきました。好況期もあれば不況期もあり、その中で消えていった蒸留所やなくなっていった設備があります。今回のベン・ネヴィスのグレーンは、そうした歴史のひとつが、時を越えて形として残った稀有な存在とも考えられます。美味しいかどうかはその人次第ですが、そういった歴史のひとつを飲んでいるのだと考えると、ちょっとした時間旅行のようなロマンを感じられるのではないでしょうか。

こちらのボトルは、秩父駅前の秩父令和商会さんで頂きました。マスターのグレーン好きの中にあって、ベン・ネヴィスはなかなか手に入らないであろうレアボトルでしたが、運良く縁を繋げることができ、今は秩父で開封されております。

ベン・ネヴィス以外にも様々なグレーンが揃っており、これだけのグレーンが飲み比べできるところもそうないのでは、というラインナップ。興味がある方は、ぜひお立ち寄りください。

オールドプルトニー 10年 2006-2019 シグナトリー for 信濃屋 WHISKY KID

非常にコスパに優れた、プルトニーらしさを味わえる一本です。

Old Pulteney 10yo 2008-2019 (Signatory for Shinanoya “CASK HAND PICKED by WHISKY KID”, 1st Fill Bourbon Barrel, Cask#800071, 60.4%)

香りは蜂蜜、塩飴、レモンバウム、アプリコットジャム、ハーブ系の植物のニュアンス、やや硬くミネラル感のある香り。

味わいは強いアタックで、濃厚な蜂蜜、レモン果汁、ハッカ、リコリス、少し焦げた木のニュアンス、強いアルコールの収斂味、ヒリヒリと強いフィニッシュには魚介系の旨味と肝のような苦味も微かに感じる。

加水すると、溶剤と微かにゴムっぽい香りが少し現れてくる。味わいは蜂蜜の甘みが取りやすくなるのと共に、リコリスのような苦味も持ち上がって甘じょっぱくほろ苦い、不思議なバランス。

【Good/Very Good】

信濃屋さんのプライベートボトル、シグナトリーのアンチルフィルタード・コレクションからプルトニーの10年熟成です。

Cask Hand Picked by WHISKY KID とあるように、このボトルは WHISKY KID ことバイヤーの秋元さんのチョイス。ラベルデザインも手がけられたということで、他とはちょっと違うシグナトリーらしい羽ペンがあしらわれたラベルは、シンプルながら品のあるクラシカルな佇まいでとても好みです。

さて、その中身はというと、熟成感は無いもののプルトニーらしさがしっかりと出ているボトルだな、という印象。らしさという点では、やはり一口目の蜂蜜と柑橘系の甘さ、続いてやってくる塩気。二口目からは複雑さがあり単に甘いだけじゃないところも面白いですね。まだ開けたてのため硬い印象がありますが、もう少しこなれてくるとボディの厚みが出てきたりしそうで、さらに良くなっていくであろう予感があります。

度数が高いため、自分の好みまで適度に加水するのが良さそうです。

比較的マイナーとも思えるプルトニー蒸留所の樽も、ここ最近はシングルモルトブームに乗ってなかなか手に入らないと聞きます。そうした時代背景と共に、気がつけば主戦場は2000年台後半から2010年台のものも。そんな中でも良いものを選ばなければいけない。しかも比較的価格を抑えながら。バイヤーの方々の苦労は計り知れません。たくさんのカスクサンプルの中から、様々な制約を考えた上での取りうるベストな樽を引き当てる、その結果が我々の前にボトリングされてくるわけです。

今回はプルトニーらしさをしっかりと持っていながら、税込み10000円弱というプライス。なかなか普通にはできることでは無いのは、最近のボトラーズの価格を見れば分かる通り、非常にコスパに優れた一本だと思います。

ちなみに、昨年2019年にプルトニー蒸留所でハンドフィルしてきた2006年のプルトニー12年カスクも、値段はおよそ11000円です。年数が2年ほど違うなどはありますが、そのくらいの値段が蒸留所のスペシャルカスクの値付け、ということを考えると、このプルトニーのコスパの良さも分かるというものです。

蒸留所のハンドフィル、通称ヴァリンチの樽。タイミング次第だが、最近はやはり2000年台後半が主力らしい。

長熟ではなく、まだまだピチピチの若いプルトニーですが、それも含めて愉しめる一本だと思います。まだ店舗には少量残っているかも? ということで、気になった方はお求めになってみてはいかがでしょうか(宣伝)。

プルトニー好きとして、痺れるチョイスがグッとくるリリースでした。

ボトルの中のお酒が減る? ――熱膨張について

冬です。寒いです。こんなときはウイスキーを飲んで暖まりたいところです。

そういえば、と思い奥から開けていなかったボトルを取り出してみると、ひんやりと冷たい。暖房の効かない場所にあるウイスキーなら冷えていて当然です。この前の夏ころに買ったこのボトル、しげしげと眺めているとなんだか気になることが。

あれ、このウイスキー、減ってる……?
まさか、キャップとの間から蒸発していったとか?

こんなボトルなら、ほんの少しでも蒸発して欲しくない

はい、熱膨張ですね。

高校の物理で習ったはずのことですが、あまり良く憶えていないので、改めて考えてみました。

物体は温度が上昇すると体積が膨張する、というのが熱膨張。体積が増加する割合の体膨張率、長さが膨張する割合の線膨張率の2つがあり、どちらも温度が1℃ あるいは1K(ケルビン)上昇するに連れて膨らんだり長くなったりする割合があります。素材によってその割合は様々。金属は比較的膨張率が高いので、例えば鉄道のレールなどは隙間を開けておかないと、といった話は有名ですね。

さて、ウイスキーの場合は液体の体膨張率を考えてみます。

体膨張率についてはいろいろなサイトを見ても少々ばらつきがあるのですが、とりあえずこちらを参考にして、以下の通りとしました。

  • 水の膨張率(1℃) : 0.000210
  • アルコールの膨張率(1℃) : 0.001100

水よりもアルコールの方が膨張率が高いのですね。

そして、ウイスキーのボトルを以下のように考えます。ネック部分のサイズについては、手持ちのトール瓶を参考にした概算です。だいたい30mm~35mmが多いようですが、勿論極太なコルクのボトルなどもありますので、あくまで参考に。

  • アルコール度数 : 46.0 %
  • ボトル容量 : 700 ml
  • ネック部分の内径 : 35 mm
  • 夏の温度 : 30 ℃
  • 冬の温度 : 10 ℃

アルコール部分の膨張
0.001000 * 700 (ml) * 46 (% alc) * (30 – 10 (℃ 温度差) ) = 7.0840 (ml)

水部分の膨張
0.000210 * 700 (ml) * 50 (% alc) * (30 – 10 (℃ 温度差) ) = 1.5876 (ml)

合計 8.67 (ml)

この容量をネック部分の体積で考えると、
( 8.67 (ml) * 1000 ) / ( 35 (mm) * 35 (mm) * 3.1415 ) = 9.01 (mm)

ネック部分では 9.0 mm 程度は上下する、という計算になりました。
(計算あってますよね……? 間違っていたらご指摘お願いします。)

もちろん、度数が高くなればもっと上下します。50%のウイスキーなら 9.53 mm、60%のなら 10.83 mm です。

ネック部分がもっと狭ければさらに上下する量は大きくなります。30 mm なら 46% のウイスキーでも 12.27 mm です。1cm以上も上下するのですね。


今まで、なんとなく熱膨張のことは知っていても具体的にどれくらい増えるものなのかいまいちピンと来ていなかったのですが、これで概ねイメージが掴めました。

熱膨張によって増える体積を計算に入れないでギリギリまで詰めると、栓が押し上げられて勝手に抜けてしまったりします。このため、酒に限らず様々な品物で、容器に対して入れられる上限というのは定められています。

もっとも、ウイスキーのボトルではネックの下限部分まで入っていれば規定の容量に達しているものがほとんどです。そこからネック部分までの上振れは、クレームが入らないようにするための保険か、熱膨張で上昇した分です。ショルダー部分まで掛かっていなければ、定められている容量を割っていないと考えて良いでしょう。ずんぐりしたボトルだとショルダーより下でも規定量だったりするのでなかなか判断が難しいですが。

ボトルによって若干ばらつきがあるものの、どれも規定量には達しているはず

ハンドフィルなどで、欲張ってギリギリまで入れるとしっぺ返しがあるので気をつけましょう、ということでしょうか。

というわけで少々気になった熱膨張のお話でした。

ラフロイグ 6年 2011年蒸留 スリーリバーズ ダイナソー

若いのにしっかりと旨味が詰まったラフロイグでした。

Laphroaig 6yo 2011 (3Rivers “Dinosaur”, Refill Sherry Hogshead, 57.2%)

香りはフレッシュなレモンやオレンジ、酸味あるヨーグルト、バターと炭の燃えかす、しっかりとしたピートの香り。

味わいは粘性の高いテクスチャで、バタースコッチ、ハチミツがけのグレープフルーツ、オレンジピール、魚介類の燻製、ベーコンのニュアンス、力強いが旨味と甘味が程よく混じり合う、温かみのあるフィニッシュは長い。

【Good/Very Good】

スリーリバーズのダイナソーシリーズ、もはや何番目かは分からなくなってしまいましたが、アイラモルトのシリーズとして定番となってきた感があります。今回はその中でも6年熟成という短熟のラフロイグ。

グラスに注いだ瞬間から良く広がる香りは、柑橘の酸味とハチミツのような甘味、そしてピート感を伴うもので、若いアイラモルトらしさがしっかりと出ていました。そして口に含むと、確かにフレッシュでハツラツとしていて長い年月を感じさせるものではないものの、特段若くて嫌なニュアンスがあるかというとそんなこともなく、良く仕上がっているな、という印象でした。

特に、ねっとりとオイリーな口当たりということもあって、度数ほどのキツさがないのも面白いところ。魚介や豚肉の燻製のようなジューシィさ、ミーティさがあり、力強い旨味を持っている。若い原酒でも、それが逆に魅力として映る、そんな典型例のようでした。

ここ数年の原酒不足は凄まじいという話はあちこちで聞かれ、それは業界関係者の会話からだったり、情報サイトの記事だったりしますが、実際にリリースされるボトルの熟成年数とその値段を見ていれば明らかなことです。その結果、数年前には熟成年数の最低ラインと考えられていた(少なくとも自分の中ではそうでしたが、みなさんも同じでは?)10年にも満たないリリースが数多く見られるようになってきました。

一見ネガティブな印象ばかりを持ってしまうのですが、今回のように、逆に若いからこそ生まれる個性だったり面白さを持ったボトルも見つかるようになってきたことは、原酒不足という時代における、瓢箪から駒のような幸運なのではないかと思います。

1970年台や80年台頃のオフィシャルボトルにも5年や8年というボトルがいくつか見られるのですが、飲むと、若いのになんでこんなに仕上がっているんだ、という印象を持った記憶があります。もちろん、年数表記は最低ラインを記載しますから、5年とはいいつつも10年、15年のものも含まれている可能性はありますが、それでも若い原酒が使われていることも確かです。今、8年前後のシングルカスクでもしっかりとした個性を持ち飲みごたえと満足感のあるボトルなら、それこそ30年後くらいに飲んでみたら、面白いくらいに化けている、なんてこともあるかもしれませんね。

もちろん、そんな未来に救いを求めなくても、今飲んでもしっかり美味しいボトルでした。

こちらはM氏の隠れBarにて頂きました。ありがとうございました!