スコットランドからの帰路につく

昨日の朝は明らかに体調が悪かったが、良く寝たおかげもあってだいぶ持ち直した。朝食を食べ終えてから最後の写真のバックアップ。荷物は昨夜まとめておいたので、今朝は特に準備することもない。

チェックアウトのため、キーを返しに行く。昨日のチェックイン時はバーテンダーは女性ばかりだったが、この時間に居たのは初老の男性ばかりだった。「よく眠れたかい?」「今日はどこに行くんだ?」といったところから暫くお話して頂く。訛りが強くかなり聞き取りにくい英語だったが、それを言ったらこちらは酷い英語なのでお互いさま、というか申し訳ないくらい。ところどころ互いに会話が聞き取れないながらも、なんとか意思疎通が取れていくその過程もまた、スコットランド最後の日の思い出として記憶に残った。英語もっと上達したい。

空港へ車を返す前に、TESCOで最後のお土産などを買い物して、ガソリンを入れる。ガソリン代がかなり高かったのは仕方ないとして、そういえばニュースでもさんざん生活費危機という見出しでニュースをやっていた。主にエネルギー価格と、小麦などの穀物類の価格が焦点になっていた。エネルギー価格の問題は深刻なようで、プールなどの公共施設が軒並み閉鎖とか。予算が決まっているから赤字となる運営はできないらしい。他人事ではなく、日本でも近いうちに同じことが起きるだろう。

レンタカー返却は、拍子抜けするくらい何事もなく終わった。今年スコットランド旅行をされた方の体験談では、元々ついていたかなり細かい傷などでもあらぬ疑いをかけられる、という話だったので内心ビクビクしていたのだが。勿論、開始時に撮った車の映像などを準備していたし、最悪キズの代金などを払うことになっても、レンタル元の Rentalcars でフル・プロテクションに入っているので全額補償されるのは分かっていたのだけれど。

あとは航空会社にチェックインして終わり……のはずが、受付カウンターでなんだか不穏な空気が。「COVID-19のテストは?」「やっていない。3回ワクチン接種済みで必要ないから」というところから始まって、いろいろと質問責めに。とはいえ、こちらも準備してきていたのでやましい所はない。スマホのMySOSの画面を見せたりして、担当者には問題ないことを理解してもらったのだが、どうやらシステムが対応していないらしい。結局チーフが出てきて、問題ないという内容でシステムを上書きしたらしい。ちょっと焦ったが、無事にチケットを発券してもらいフライトへ。

待たされている間、同じようにチェックインをしている人たちを見ていたのだが、スマホで何かを見せたりしていたあたり、やはりCOVID-19の陰性証明のようなものが必要になるのが通常らしい。日本は9月下旬から3回ワクチン接種済みであれば免除されるようになったが、航空会社としては陰性証明が必須というのが設定されているのだろう。まだまだ過渡期で状況も良く変わるし、国際線ということもあって様々な国の情報を取り扱わないといけない。システムを運用する側としては大変だろう。

帰りのフライト、ドバイから成田へ向かう便で隣の方と少し会話。カナダから仕事でいらっしゃっているようで、名刺を頂けた。会社は存じ上げないが、Vice President という肩書きに驚く。とても穏やかな物腰の方だったのだが、なるほど、こういう役職の方だと言われれば納得。機内ではマスクをしていなかった方々も、着陸後に空港に入る前にはしっかりとマスクをしていた。

到着後、入国審査ゾーンの手前で空港職員(というかボランティアのような装い)の方々が立っている。日本への入国にあたっては、COVID-19の防疫措置も兼ねて「ファストトラック」の利用が推奨されている。スマートフォンでのアプリ名は MySOS。出国前に手続きをしておけば、入国時の審査がスムーズに行える、という触れ込みだった。もちろん自分も設定済みで、スマートフォンでMySOSは青い画面(質問票の提出とワクチン接種済み証明)となっている。

さてこれをどうするのか、と思っていたら、なんと職員の方々、レーンも何も無い普通の通路で旅行者それぞれに声をかけて画面を見せてもらっている。目視作業のみ?! とりあえず自分も画面を見せて、青画面の場合はそのまま入国ゲートへ進むようにとの説明と紙を受け取る。え、それだけ? と思っていたが、その後の入国ゲートではいつものパスポート&顔写真チェックの後、ゲート職員によるMySOSアプリの審査状態のチェックが行われた。アプリの審査完了画面にはQRコードが表示されるのだが、これを読み取って処理していたので、ここは電子的にシステム化されているらしい。審査はすぐに終わり、これで入国の処理は完了。

日本人の帰国だから大した審査は無いということもあるけれど、ひと昔前に比べたら各段にスムーズになった。しかし、通路の職員方によるチェックは、不要とは言わないけれど、まさか目視による個別対応とは思わなかったので思わず苦笑。運用でなんとかカバーするという実に日本らしい側面が、帰国早々に見られるという状況。This is Japan。

急いで機を降りても、結局預入れ荷物がピックアップレーンに流れてくるまで時間がかかるので意味ないか……と思っていたら、運が良かったらしく5分も待たずに自分のスーツケースが現れる。今までで最速では。軽くチェックしてみても特に液漏れのような形跡も無く、そのまま税関を通って駅へ。無事に帰宅して荷物整理してその日は就寝。お疲れさまでした。

……と思ったら、夜中に目が覚めて、その後眠れない。ここでも時差ボケか!!

結局その後3日間ほどは、時差ボケの影響が残って睡眠が不規則になりましたとさ。

クライドサイド蒸溜所

帰りのフライトはグラスゴー国際空港からだったので、最終日前日はグラスゴー近郊に泊まろうと決めていた。フライトはちょうど昼頃。となると、最終日はどこかに出かけるような余裕はなく、宿から空港直行になるだろう。最終日にちょっとそこまでという予定を入れて、危うくフライトに間に合わなくなりそうだった初の海外旅行の衝撃が強すぎて、それ以来毎回、最後の日はほぼ何も予定を入れないようにしている。

ここ最近の蒸溜所建設ラッシュで、グラスゴー近郊にも蒸溜所が増えてきていた。その中でも面白そうだと思ったのが、クライドサイド蒸溜所。グラスゴーの街の本当に中心にあって、東京で言ったら浅草や蔵前あたりの隅田川沿いにあるようなイメージ。実際日本でも、秋葉原の常陸野ブルーイング東京蒸溜所や虎ノ門蒸溜所といったところが稼働しているので同じようなものか。

ついこの前までハイランドの方を走ってきたということもあって、混雑状況が雲泥の差な中心地。なかなか進まない道路にやきもきし、わかりにくい一方通行に難儀しながらなんとか時間前にたどり着く。到着してみると、一応駐車場はあるのもののそこまで数が多くはない。そして、訪問客の多くは徒歩で来ていた。やはりここは歩いてこれるような人を中心に考えているのかもしれない。こういう土地柄だったら、確かにその方が良さそうだ。

建物は、ガラス張りになっているスチルルームを新しく追加する形で、あとは昔のものを改修して造ったもの。こういうところは英国らしさが溢れている。クライド川のそばにあるからクライドサイド、というネーミングはとても分かりやすい。蒸溜所がある地域は、昔は荷揚げのためのドックヤードで様々な倉庫やクレーンなどが立ち並ぶ場所だった。その中には世界各地から輸入した酒の入った樽もあった。それらは、この付近一帯の倉庫の中に保管されていたり、そこで詰め替えられたりボトリングされたりしていたようだ。その後時代が変わって荷揚げ場では無くなっていったが、現代になってまた蒸溜所が建てられ、そこで蒸留された原酒の樽が同じようにこの場所で熟成している、という状況を考えると不思議なものだなあ、と思う。

ツアーの最初に、こういった歴史も含めた説明などがあり、他の伝統的な蒸溜所とは異なるイントロダクションが新鮮。内部はちょっとしたミュージアムのようなスペースもあり、オーナーである A.D.ラトレー のコレクション的な面もちらほら見え隠れ。ボトラーズが自社の蒸溜所を持つのはある種の悲願という話だが、そういった夢というかストーリーが詰まった蒸溜所になっている。

製造工程はよくある流れではあるものの、丁寧に説明してくれる。規模としては小~中規模の間くらい、といった印象。建物全体の中にコンパクトに収まっていて、動線などは良く考えられている現代的な蒸溜所だった。

ハイライトはやはり最後のスチルルーム。一面に張られたガラスの部屋に鎮座しているポットスチルは、外からの光を受けて綺麗に輝いている。外に見えるクライド川と街並みはとても素晴らしいビュースポットになっていた。

このように都会的な面を見せる一方で、原料はローランドの大麦モルト、水はロッホ・ローモンド地方のロッホ・カトリーンと、地元産へのこだわりを持っている。発酵はスタンダードな酵母と72時間という保守的ともいえる内容。まだ試行錯誤中ということもあるけれども、あまり突飛なことをやるでもなく、淡々と良いものを作っていこうという堅実さが現れている。

最後の試飲は、まだウイスキーとは名乗れない半年程度の熟成のものを2種類+ニューメイク。後で飲んでみたが、ニューメイクは結構骨太な麦の味が印象的で、そこに柑橘系のフルーティーさもちゃんと乗っかっているような味わい。素直に美味しい。フルーティさが際立ったりはしていないが、王道的なスタイルで好印象。

バーボンバレルは、まだ樽感を乗っけただけのような薄めな味。これだけで判断するにはちょっと難しい。加水すると焦げ感のある香りが漂ってくるあたりが面白い。シェリー樽は少し溶剤系のニュアンスがあり、ベリー系のフルーツ感があるものの近年系シェリー樽でゴム感が少し目立つ。これもまだ善し悪しが判断できるほどではないものの、最近のものによくある傾向。つまり、ある程度の仕上がりの予想はできる範囲かなと思う一方で、王道なスコッチの造りでもある。

ツアー参加者はかなり若い人たちが多く、スコットランドでも若い人たちが積極的に蒸溜所に足を運んでいるのが分かる。若い人たちは都市部に住むことの方が多いだろうし、グラスゴー大学など幾つかの大学が近い地域ということもあるのだろう。ちょっと行ってみよう、という気になったらすぐに行ける場所。こういうのがあるのは大切だと思う。

ツアーを終えてしばらくすると、夕暮れになっていった。クライド川に反射する夕陽が赤みを帯びて、ポットスチルを照らしている。ここは時間的に最後のツアーがいいタイミングかもしれない。秋~冬なら、夕暮れと共にポットスチルが眺められそうだ。

バルブレア蒸溜所とプルトニー蒸溜所

昨晩はテインのB&Bに宿泊。朝食前を前にしてバルブレアへ向かう。

スコットランドにしては珍しいくらいの雲のない朝。日の出前の薄明かりの中で写真を撮っていると朝焼けになった。やはりこの時間帯はフォトジェニック。1時間もしない間に世界の表情がどんどん変わっていく。夢中になって撮っていたら、あっという間に時間が過ぎていた。

朝食は素晴らしかった。男性のオーナーだったが、元は料理人なのだろうか。盛り付けがおしゃれ。家全体の内装も統一感があって素敵だったのだが、そのセンスは朝食にも現れていた。出掛けに少し話をしたところ、去年改装を終えたところらしい。センスが良いのは本人か、はたまた提案してきた内装業者か。どちらにしても、やはり選んだオーナーのセンスが良いのだと思う。

宿を後にして、一路プルトニーへ。なんだかんだでテインからでも1.5時間かかる。やはり遠い。でも、行きの道中はとても良い天気に恵まれてドライブ日和。車もやや少なめで、素晴らしい景色を堪能できた。

スコットランドは、周りは高速道路でなくても平気で60マイル/h(96km/h)くらいで飛ばしているのだが、正直みんな速すぎる。スピード的には80km/hくらい出せば十分。それに、この景色を眺めながら走るには100km/hでは速すぎる。もっと楽しんだ方が良いと思うのだけど。なので、後ろに付かれたら適当なところで前に行かせてやって、マイペースにドライブを楽しむ。

10時半くらいにプルトニーに到着。表にいつもの船が描かれた看板がなかったのがちょっと不安になったが、普通に営業しているはずなので中に入る。実は、この旅が始まる前にプルトニーには事前にメールを送っておいた。「時間的にツアーには参加できなさそうなのだけれど、11/xxのあたりで休みの日はある? ハンドフィルはぜひ買いに行きたいと思っているので」と。それで返ってきた休業日を外して計画していたら、スコットランドに到着した初日に「急遽、xx日に社内研修を行うことになったので、それ以外の日で来てくれ」というメールが。おぃ、行こうとしていた日だったので危ないじゃないか。ちょっとしたニアミス案件だったのだが、なんとか事なきを得た。こんなこともあるので、事前に確認のメールをやりとしておくのが良いと思う。プルトニーは本当に遠いので。他の蒸溜所では普通こんなことしないのだけれど、プルトニーに行くときだけは確認している。

ビジターセンターは、少しだけレイアウトが変わっていた。半年ほど前に変えたらしい。いちばんの目的であるハンドフィルをお願いする。購入前にいろいろと話していて何度も来ていることは理解していたようなので、「やり方は……もう全部分かってるみたいだね」という放任主義。蝋封も慣れたもんです。他にハンドフィルを買うような客は居なかったのでガイドさんものんびり。台帳に記入してボトルをゲット。この旅一番の任務完了。ここまで来るのに長かったので、ちょっと感動。

相変わらずビジターに対してホスピタリティの高い対応をしてくれるプルトニー。せっかくここまで来てくれたのだから、ということなのだろうか、どの人もとても丁寧で親切。次はいつになるか分からないけれど、またこの北の果てまで来たい。

クライヌリッシュ蒸溜所

クライヌリッシュに来るのも何回目だろう。前回はお隣ブローラの復活に向けて工事が行われている最中だった。

前回の訪問時、復活に向けて工事中のブローラ蒸溜所


あれから3年ほどが経って久しぶりに訪れてみる。アプローチの道から遠く蒸溜所の姿が見えてくるのだけれど、その時点で建物自体に大きく変わっている部分があった。あれはたぶんビジターセンターの改修の結果なのだろうな、と思って行ってみると予想通り。以前は無かった、建物から飛び出しているような構造体があり、ここがBarスペース兼ツアーのための重要な展示設備になっていた。

ツアーの開始場所はこのBarスペースだということで行ってみると、非常に高級感があってリラックスできる雰囲気。全体的に黄色が主体なのは、クライヌリッシュの味の特徴に蜂蜜のような甘さがあるから、ということらしい。表のストライディング・マンもなんだか粘性のある出で立ちだったけれど、蜂蜜がモチーフにされていたのか。

今回、クライヌリッシュもツアーを予約して行った。結構埋まっている日が多かったのだが、自分が参加した回では自分ともうひとりの2人のみだったので少し拍子抜け。毎回のツアーは10人程度が上限なので、少し大きめの団体やパーティが予定していれば埋まってしまうのかもしれない。

さて、ツアーの様子について書こうと思ったのだが……これが、写真と文章では説明できないようなツアー体験に大変身していた。とても面白いツアーになっているので、ここは是非実際に行って体験して欲しい。正直、これしか書けないのだけれど、きっと楽しめるツアー内容になっていると思う。今回はディアジオ系列のツアーに参加することが多かったけれど、その中でも一番変わった所じゃないかな。ツアーを行うガイドさんにも相当な知識と技量が求められそう。

まあとにかく一見の価値あり。

この日はスチルルームで工事を行っていたりもして、ポットスチルは間近では見れないかも、と思ったのだけれど、最終的にはうまく調整してもらえたようで。ガラス張りの向こうに広がるブローラの町と砂浜までを見渡しながら、手前に輝くポットスチルが鎮座している風景がとても素晴らしい風景だった。

最後のテイスティングは、やはり持ち帰り用のセットになっていた。通常の3種類にプラスして、ハンドフィルのサンプルももらえたりと、少人数だからかちょっとしたおまけもして頂けた。こういうのは時と場合によりそうだけれど。

ツアーはここまで。本当に1時間だったのか、と思うような濃密な時間だった。

その後、隣のブローラを見に行く。先ほどからキルンや煙突が見え隠れしていたので、復活した姿はどのようなものなのか、というのがずっと気になっていた。

敷地は鉄の柵で区切られていて、全体的に元の建物を流用しつつも外観の石などはすべて新しくなっていた。パゴダや煙突は、一度別の場所に移送されていたが、最終的に元の位置に戻されていた。つまり、全体的な見た目はそのままで中身は新築、ということになるみたい。内部の設備の配置などは、閉鎖中のことも分からないし、現状も見ていないので分からないけれど、新しい動線になるように変わっているのでは、と推測。

鉄の柵にあしらわれた BRORA の文字やヤマネコのシンボルが印象的。全体的に立派で威風堂々な姿になっていた。

と、写真を撮っていると、敷地内から従業員らしき方が出てきた。どうやら終業の時間で帰るところらしい。「写真撮ってるのかい?」と声をかけてくれたので少しお話。製造工程の管理をしているそう。200周年を経ての復活おめでとうございます、というと、先人たちへの感謝とともに「閉鎖前の評価を超える仕事をして、将来に繋げないとね」と話されていた。これから何年後かに、いずれ10年や12年ものとしてスタンダード品が出るのだと思うけれど、彼の仕事がその時に出てくるのかもしれない。そう思うと、将来が本当に楽しみ。

クライヌリッシュとブローラ、こうしてふたつとも稼働している姿が見られたのは約40年ぶりということになるわけで、改めて時代の流れと潮流を感じた瞬間。この先の時代にもまたいろいろあるかと思うけれど、長く続いていって欲しい。

フィリッシュ・モニュメントへのハイキング

スコットランドの雄大な自然を前にすると、折角なので少しはその内側に入っていきたい気分になる。登山と呼べるような難易度の高いことは、時間も経験も足りていないのでやらないけれど、半日弱で済むようなハイキング・ウォーキングをひとつくらいはこなしてみたい。今回の旅行でもどこか良い場所は無いかと思っていた。

探していて見つけたのが、ダルモアやティーニニックからほど近い場所にあるフィリッシュ・モニュメントという場所。3kmほどで300mアップという距離の往復ルート。普通に歩く分には2時間もかからないくらいのコースということで、これはちょうど良さそう。

あとは天気だけなのだけれど、前日夜に見た予報ではかなり微妙なライン。

翌日は夜明け頃まで大雨、朝には止んできそうだが午前中は微妙なところ、そして午後にはサッパリと晴れるらしい。しかしこの日は14時からクライヌリッシュでツアーが入っているため登るなら午前中。

その次の日は午前中は良い天気みたいだけれど午後はまた雨になりそう。この日はプルトニーまで行って帰りはインヴァネスに戻りたいので、登るとなると午後になりそう。

蒸溜所訪問の予定を考え直すか、それとも訪問はそのままにするか。翌日午前中か、翌々日午後か……。だいぶ迷ったけれど、翌日午前中の快方に向かうスピードに賭けてみた。

朝はやはり雨が降っていたが、宿を出る9時頃にはほとんど小ぶり。そこから車で向かって到着が10時半。まだ結構雲はあるけれど、雨は完全に上がっていた。賭けに勝ったかな。12時半には帰ってくるつもりで登り始める。

登り口はヘザーや苔が広がる林の中。ルートがしっかりとできているので歩きやすい。落ち葉が堆積していて、道の上はふかふかの絨毯のよう。暫くは樹々を縫って進む小径の中を淡々と進んでいく。

そこから徐々に高度を上げていって、カラマツの林を抜けていくと左側の視界が開けてくる。斜面の縁に沿っていくようなルート。

木々がまばらになるにつれて霧の層も抜け、見通しが良くなる。徐々に見えてくる周囲の風景。これは良い景色。来るときに走ってきたA9やその先の湾が良く見える。

景色に見とれながら暫く登っていくと、頂上付近にあるというモニュメントの姿が。遠目には感じなかった大きさも、近づいていくと思ったよりもかなり大きい。そしてなんとも不思議な形。

古代遺跡なのかと思いきや、建てられたのは18世紀後半。そこまで古いものではなかった。しかし独特の形状はとても目をひく。

そしてなによりモニュメントの先に見える良い景色。完全に晴れて、遠くまで見渡せる。ティーニニック蒸溜所やダルモア蒸溜所もしっかりと見て取れる。紅葉で色づいた木々が、雨上がりの光に照らされてキラキラと輝いている。ちょうどいいタイミングで登って来れたらしい。一目千金とはこのことかもしれない。

帰りは往路とは異なるルートで戻り、予想通りの2時間コース。ちょうどいいウォーキングだった。これくらいのレベルのものなら、ハイキングもかなり楽しい。日本でもこれくらいのレベルの場所を探してみるのも良いかもしれない。

ちなみに、コース中にお会いした方は合計3人。夏場は分からないけれど、秋の平日ではこれくらいが普通だろうか。ほとんど人がいないので気を使うこともなく、静かな散策に没頭できるのはとても良い。スコットランドはハイキング・トレッキングのコースがあちこちで整備されているので、調べてみると本当に沢山の魅力的なコースがある。難易度もしっかり明記されているし、コース情報も事前にネットでダウンロードしておけば、オフラインなスマホひとつでも地図としてしっかり機能する。こういう間口の広さは本当に助かる。

適度な疲労とともに、軽い高揚感。蒸溜所巡りも良いけれど、自分自身を飽きさせないでいるにはこういうスパイスを少し取り入れると良いみたい。