MALTS.JP のリニューアルとキャンベルタウンの行方

ディアジオ(MHD:モエ ヘネシー ディアジオ)が運営するシングルモルトの情報サイト『MALTS.JP』がリニューアルしていました。

http://malts.jp/

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以前からディアジオが所有する蒸留所の紹介サイトとして機能してきており、シングルモルトの各地域を代表する「クラシック・モルツ」をプッシュするための蒸留所やボトルの紹介、ツアー情報などを発信してきていました。一方で、デザイン的には元々あった海外向けサイト(MALTS.COM)をそのまま日本語化したようなつくりで、手抜き感があったことは否めず、ユーザフレンドリーとは言い難いつくりだったと記憶しています。

今回のリニューアルでは、シンプルながら見やすくポップで明るい造りになっていてイメージがガラリと変更。前は黒が基調のサイトだったので、白主体の明るいサイトになって一気に華やかになりました。あまりごちゃごちゃと説明はせず、必要最低限の情報でシングルモルトを紹介しています。画像が多いのも、蒸留所や各ボトルのイメージのしやすさに繋がっていますね。

というわけでかなり良いリニューアルなんじゃないかな、と思っていたところでちょっと見慣れない言葉が……。

「シングルモルトスコッチ 6つの生産地」

スコッチの地域区分といえば、ローランド、ハイランド、スペイサイド、アイランズ、アイラ、そしてキャンベルタウンの6つですよね、と思って見ていると、

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キャンベルタウンは……どこへ消えた……。

 

なんと、キャンベルタウンという名前は存在せず、あるのは「Coastal Highland – ハイランド沿岸」のみ。地図をよくよく見てみると、キャンベルタウンはこのハイランド沿岸に含まれているようです。

なんと天下のディアジオさん、自分が蒸留所を持っていない地域となれば歴史的な区分も無視してしまうというわけですか……。

まあ確かにキャンベルタウンはごく狭い地域に限られますし、稼働している蒸留所も3つしかないので今ではかなりマイナー感が漂ってしまっていますが、歴史的にみれば一大産業地として30以上の蒸留所が稼働していた時期があり、そこから衰退してしまったという推移も含めて、やはり重要な地域だと思うのです。

そもそも、スコッチウイスキー協会(SWA)がキャンベルタウンという地域の重要性を説いて、スプリングバンクとグレンスコシアの2つだけだったところになんとか3つ目のグレンガイル蒸留所(キルケラン)をオープンさせたという話もあります。SWAによれば「各地域最低3つの蒸留所があることが望ましい」ということで、資本的にも安定していたスプリングバンク(J&A Mitchell)がグレンガイル復活に乗り出した、というのが十数年ほど前のお話。現在はグレンガイルも見事に軌道に乗り始めキルケラン12年のリリースを続けていますので、面目躍如といった感があります。

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キャンベルタウンの街並み。地方にしてはかなり大きく、都市機能が集中している。

天下のディアジオさんも、自分が蒸留所を持っていない地域を無視するのではなく、新しく蒸留所を建てるなり閉鎖蒸留所を復活させるなりで気概を見せてくれても良かったのではないかと思いますね。

 

ちなみに本家のMALTS.COMでは、ハイランドという大きな括りで扱われていますが、説明書きを見ると Coastal Highland や one foot on the islands といった記載があります。ハイランドという括りは大きすぎるといえば確かにそうなので、キャラクターを表現しようと思うとこういった記載になるのでしょう。

https://www.malts.com/en-row/our-whisky-collection/clynelish/clynelish-14-years-old/
https://www.malts.com/en-row/our-whisky-collection/oban/oban-14-years-old/

 

時代が変われば介錯も変わるものですし、歴史は強者によって造られるというのも往々にしてあることではありますが、なんだか歴史の改ざんをリアルタイムで見ている気がしてなんだかもやもやとした気分になるのでした。

 

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タリスカー 15年 1978-1993 ケイデンヘッド

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Talisker 15yo 1978-1993 (Cadenhead “Acthentic Collection” 56.4%)

香りはやや荒さを感じるオールドシェリー、プルーン、ドライフィグ、やや強めのシナモン、コリアンダー、微かに醤油のニュアンス。

味わいはやや粗野な口当たりの濃厚なオールドシェリー、少し硫黄感、シナモンケーキ、強めに煮出した紅茶、鼻抜けにプルーンなどの様々なフルーツ感が通り過ぎ、やや収斂味を伴いながらピートとスパイスが締めくくるフィニッシュ。

【Very Good】

90年代にケイデンヘッドがリリースしていたオーセンティックコレクション、通称グリーンケイデンのタリスカー15年です。同シリーズはプレーンな樽感と中熟程度の熟成から、クリアな麦感が主体のものが多い印象でしたが、このボトルは濃厚なシェリーカスクでした。

やや強めかつ荒々しさを感じる昔のシェリーカスクで、ボトリング約25年という時間を経てもまだまだパワフルさは失われていません。恐らくリリース当初はもっとパワフルな味わいだったものと思われ、かなり飲み疲れするボトルだったのではないでしょうか。

そう考えると、今現在リリースされている濃厚ボトルも、時間が経ったときにどのように変化していくのかは楽しみなところではあります。もっとも、麦感やシェリー樽などの基本要素が異なるため、同じような変化は期待できないですが、もしかしたらとんでもなく化けるボトルがあったりするかもしれません。というような夢を掻き立てられるボトルでした。

 

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ロングモーン 1969 G&M カスクシリーズ

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Longmorn 1969 (G&M “CASK Series” for Japan, 62.9%)

香りはライチやパイナップルなどのとてもナチュラルで作為的でないトロピカルフルーツ感、バニラ、ハチミツ、セージやミントのハーブ感、少しシナモン、微かに青いバナナのニュアンス。

味わいはライチ、マンゴスチン、桃、ミドルから白胡椒の刺激、白ワインの様な爽やかさと青みがかかったニュアンスが奥行きを作る、シナモンやアニスのようなスパイス感を伴うトロピカルフルーツの幸福な余韻。

【Excellent】

有限会社ウイック経由で日本に入ってきたG&Mのロングモーン1969。

その香味は、目まぐるしく飛び込んでくるトロピカルフルーツを中心としたフルーツ感。完熟から青さの残るところまでの多彩さ、それを支える麦のボディ。60%オーバーとは思えないソフトな口当たり。ボディは分厚く、余韻にかけて広がるトロピカル感。アタックからリリースまですべてが素晴らしくまさに至福でした。

ただただ凄いとしか言いようがなくて、テイスティング・ノートの語彙が貧弱になってます。

こちらのボトルを飲んだのは初ですが、曰く状態にかなりばらつきがあるそうで、これは大当たりのボトルということでした。たしかに、往年のロングモーンに求める要素がすべて詰まっておりその上で良いバランスを保っている。モルトってこんな香味も持つのか、と改めて感動しました。

口開けでこの素晴らしさ。ですが、これから開いていくのではなく後は味が落ちていく一方、ということもあるようで、かなりピークが短い模様。このあたりのコンディションの把握も難しいですね。

先日アナウンスがあった通り、G&Mは今年2018年に数あるシリーズを整理して5種類に絞ることになっており、このCASKシリーズは終了してしまいます。かなり長い間続いていたシリーズであり、こういった素晴らしいボトルが多かった同シリーズが終了してしまうのはちょっと残念ですが、まあいたし方ありませんね。今このクラスのボトルをリリースするとなると、恐らくハイエンドの「ジェネレーションズ」に分類されるのでしょう。

割と手軽にこんなボトルを手にすることができた時代があったとは、ちょっと信じられませんね。

 

ブローラ 4thリリース 30年 1975-2005

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Brora 4th 30yo 1975-2005 (OB 4th Release, 56.3%)

香りは過熟気味のネクタリン、マンゴー、パッションフルーツ、チーズ、おしろい粉、湿った洞窟、ややくぐもったオイルのニュアンス。

味わいは香り同様のフルーツ感に熟成したチーズなどの乳製品の旨味とオイリーさ、濃厚なバター、少しハーブ様と樹木のニュアンスが鼻を通り抜ける、じっとりとしたピートとフルーツが長く続くフィニッシュ。

【Excellent, Interesting】

ディアジオのオフィシャルリリースの4thボトル。もう原酒が無い無いと言われながらも、昨年2017年までの16thまで毎年着実にリリースされ、その都度価格も着実に階段を上っていったというブローラ。思えば遠くへ来たものです……。

そんな貴重なブローラの初期リリース、70年代のボトルを飲む機会を頂きました。Tさん、ありがとうございます。

上記のテイスティング・ノートはグラスに注いでから1時間ほど経ったところでのものです。今回のボトルはその場での口開けで、直後はかなり閉じていたものの、15分くらい経つと期待する過熟フルーツが出てきて、30分ほどでそれが全開になってきました。かなり変化が著しく、表情をコロコロと変えていくので驚きでした。

そして、ブローラといえばやはりこの個性的なフルーツ感。独特の腐りかけのような危うさ、でも破綻していない、本当に不思議な魅力が詰まっています。麦なのか樽なのか、はたまた蒸留設備なのか。同時に飲んだ72クライヌリッシュにはこのような個性が見受けられないので、蒸留設備の違いとしか思い浮かばないのですが、それにしてもどういう違いなのか、まったくもって不明です。洗浄していない部分があってその影響、とかなのでしょうか。

呑むにあたっては小さめのコニャックグラスと、リーデル・ソムリエグラスのような大ぶりのグラスで試しましたが、これについては小さめの方が香味の発散具合がちょうどよくマッチしていました。大ぶりの方では少しぼやけてしまっている香味が、小さめのではシャープになって輪郭がはっきりしていて好印象。このあたりの比較もあまりできるものではないので、全てにおいて贅沢な時間でした。きっとこの先も忘れないでしょうね。

クライヌリッシュ 32年 1972-2005 エイコーン

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Clynelish 32yo 1972-2005 (ACORN “Natural Malt Selection”, 53.5%)

香りは優しい麦感、ハチミツとカスタード、アーモンドの香ばしさとオイリーさ、削ったばかりのヒノキのような木材香、オレンジとバナナのフルーツ感。

味わいはしっとりとした口当たりでカスタードやスポンジケーキ、良く熟したオレンジ、バナナチップ、マジパン、クリーミーなオイリーさ、ローストしたナッツと落ち着いたフルーティさが鼻抜けからフィニッシュまで長く続く。

【Very Good】

日本の古参ボトラー、エイコーンがリリースしていたクライヌリッシュ。1972年といえばクライヌリッシュの鉄板ヴィンテージ。ボトリング後の時間経過からか、かなり落ち着いていて優しいニュアンスが全体的に支配しており、53%という度数の割にはするすると飲めてしまう仕上がりになっていました。

しっかりとした麦感とオイリーなニュアンス、そしてフルーツ感が良いバランスで混在していて、奇をてらわない素の美味しさといった感じです。バーボンカスクのお手本のような方向性、それでいてこの複雑さは、90年代のバーボン樽のボトルだとちょっと思いつきません。90年代の30年オーバーはまだまだこれからなので。もしかしたらこのようなボトルにもお目にかかれるかもしれませんが、昨今のリリースを見ているとかなりの高額となってしまい手が出せそうにないような雰囲気があります。

今のうちにバーなど飲める場所で飲んでおいた方が良いかもしれませんね。

パラフィルムは水分を通さないのか? 実験

パラフィルム、ご存知ですか? 使っていますか?

元々は理工系の実験室などで使われているもので、伸びやすく防水、無臭ということから、ウイスキー愛好家やバーのストックなどではボトルの保管の際にネック周りをこれでぐるぐると巻いてやるというのをよく見かけます。

かくいう自分も、どこかのブログか情報サイトなどでその存在を知ってからかれこれ7,8年前ほど使っています。あまり頻繁に付け替えたりしないこともありますが、この一箱だけでまだ使い切れていないので、コスパは悪くないと思います。

さて、今まで使い続けてきた割には非常に今更な話ではあるのですが、パラフィルムって本当に効果あるのでしょうか?

これまでずっと巻いたウイスキーのボトルを見てきて、揮発したりとかそういうのは今のところほとんど感じないのですが、そもそも本当に効果があるのかのデータとかを見たことがなかったのです。「まあみんな効果あると仰ってますし」とは思っていたものの、なんとなく疑問符が消えることがありませんでした。

なら試してみれば良かったんですね。

というわけで、非常に簡単にではありますが実験をしてみることにしました。

 

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パラフィルムとボトルを準備します。

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ボトルのネック部分まで水を入れます。ちょっとバラついていますが、まあ誤差の範囲ということで。
ウイスキーじゃなくて水なのか、というご意見もあるかと思いますが、ウイスキーの成分は基本的に半分以上が水なわけです(100-ABVですね)。また、アルコール分子は水分子よりも大きいですし、香味成分についても同様ですので、水分が抜けなければアルコール分子も抜けないでしょう。

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パラフィルムを切り出して

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ボトル口にこれで封をします。

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右側の2本は一重、左側の2本は二重にしました。普通パラフィルムを巻くときは二重三重にぐるぐると巻きますので、その違いがあるかどうかも見れればベターかと思いまして。

これらを、1セットを温度が上がりやすい日向へ、もう1セットをあまり日の差さない場所に配置しました。これでしばらく様子を見て、水分量が変化するかどうかをチェックしてみたいと思います。

できれば目に見えて変化が現れてくれると助かるのですが。かなり時間がかかるかもしれませんので、気長に待ってみましょう。

 

[日本酒] まんさくの花 純米吟醸 美郷 生原酒

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まんさくの花 純米吟醸 美郷 生原酒

  • フレッシュかつ鮮烈、きれいな造り、ほのかなメロンなどのフルーツフレーバー
  • 不要な味はなく、足りない味もないと感じる、純米吟醸のひとつの到達点
  • 食事とは合わせず、単品で素のままの酒を味わうことをおすすめしたい

本当に美味しい純米吟醸って、こういうのを指すのかもしれません。決して派手すぎないけれども華がある。シンプルな旨さを追求しているように思えます。ラベルもいいですね。日の丸、まんさくの花、そして水。アイコニックでシンプルなデザインも、味わいのイメージに一役買っています。

美郷は4月に生原酒が、9月にひやおろしがリリースされるようです。今この生原酒を低音保存しておいて、9月に両方を比較してみるというのも面白そうですね。冷蔵庫が狭くなってしまって大変ですが。