良い意味でジャパニーズらしくない、富士御殿場のモルト。
Fuji-Gotemba 10yo 2000-2010 (Single Cask Whisky, Cask#M000794, 49%)
香りは白ブドウ、リンゴ、マスカット、良いフルーツ感、ハチミツ、少し紅茶や火薬の残り香、微かにキャベツのような野菜と溶剤のニュアンス。
味わいはやや硬さもある口当たりで、白ぶどう、リンゴ、それも芯に近い少し苦味、やや強めの樽感、ミドルから溶剤、ハーブ類、サラッとした和三盆と少し溶剤系の香りが残るフィニッシュ。
【Good/Very Good】
キリンの富士御殿場蒸留所というと、通常の銘柄としては「富士山麓」ほぼ一択、どちらかというとモルトよりも質の高いグレーンを推している印象もあり、他のジャパニーズウイスキーとも一線を画している印象があります。基本的にモルトとグレーンを混ぜたブレンデッド・ウイスキーがリリースの主体ということで、あまりシングルモルト、シングルカスクなどのリリースは聞かないのですが、過去には蒸留所限定でこれらのリリースが度々あったようです。(現在は原酒不足の影響もありほぼ無いかと……最近行ってないですが。)
こちらは先月のウイスキー写真展の際に、T.Ishiharaさんが提供していたボトルです。あの場でもなかなかの人気だったようですが、自分も頂いてみると、確かにこれは美味いシングルカスクです。
典型的なバーボン樽の要素ではあるものの、総じてバランス良くまとまっていて、香りも味も嫌なところを感じさせない、優等生的な仕上がり。香りのハチミツと、チャーによるものか火薬ようなニュアンスが心地良い。
飲んでも華やかさがあり、ブラインドで出されたらきっとスペイサイドの中熟、例えばオルトモアの20年くらいのボトルとか答えそうです。
ネットで情報を拾っているとかなり幅広いラインナップがあったようで、その香味もまた幅広く良いものから微妙なものまで、まさにシングルカスクらしい博打的個性的な香味にあふれていたようです。どちらかというと蒸留所限定のグレーンの方が安定して美味しいボトルが多かったようなので、なおさらモルトを選ぶ理由が少なかったりもするのですが、どちらにしても今となっては夢の跡、といった話ですね。