カテゴリー別アーカイブ: Bowmore – ボウモア

ボウモア 1995-2018 ウィームス “Nostalgic 70’s Flavor”

感動のボウモア、これが1990年代蒸留で生み出されたことが嬉しいです。

Bowmore 1995-2018 “Nostalgic 70’s Flavor” (Wemyss Malts, Hogshead 57.4%)

香りは白樺の樹皮、埃をかぶったアンティーク家具、セクシーなワキガ、ブーケガルニ、藁灰のニュアンス、複雑すぎてよくわからないフルーツの盛り合わせ。

味わいはやや強めの口当たり、リンゴと蜂蜜、ひと呼吸遅れてグァバ、マンゴスチン、パイナップルなどのトロピカルフルーツが爆発する、ミドルから強すぎないヨード、芯の強い麦の旨味、灰のニュアンス、フィニッシュに掛けてもトロピカル感が長く続き、微かに埃っぽさも合わさった複雑で心地よい余韻。

【Very Good/Excellent】

久々に、凄いボウモアに出会いました。

ウィームスの1995年蒸留のボウモア。加水が得意なウィームスですが、このボトルはカスクストレングスでのボトリングとなっています。

70年代フレーバーと銘打っていますが、この味わいのトロピカル感はむしろ60年代でしょう、という意見に納得。60年代後半~72年くらいまでの間のボウモアにあったような、トロピカル感、味わい深いピーティさ、しっかりとした麦感も。パフュームの気配は全くなく、素晴らしく美味しいボウモアでした。

90年代のボウモアにも、こういうのがあるんですよね。よくぞこれを探し出した、と。感動モノです。

1993年~2000年くらいまでの間の蒸留で、トロピカル感が結構出ているボトラーズのボトルは幾つかありましたし、オフィシャルからもテンペストの初期バッチなども良いフルーツ感が乗っていて美味しかったですが、ここまでのものは自分は飲んだことがありませんでした。

過去の味わいは失われてしまった……と思っていたら現代でもちゃんと存在していた。そのことがとても嬉しいですね。90年代の他の樽にも、もしかしたら同等のものがまだ眠っているかもしれませんし、2000年代もあるいは、と期待が膨らみます。そんなに簡単なものではないかもしれませんが、これからの未来のウイスキーにも確かな希望が持てる、そんなボトルでした。

こちらのボトルは台湾のボトラー アクア・ヴィテのアレン氏ご提供の一本。素晴らしいボウモア、ありがとうございました。

ボウモア 13年 2002-2015 クリエイティブ・ウイスキー10周年記念

ドライでシャープなボウモアでした。

Bowmore 13yo 2002-2015 (Creative Whisky “Exclusive Malts”, 55.6%)

香りはレモン、ツンとくる溶剤感、強めのアルコール感、ヨードはしっかりあるがやや控えめ、濡れた紙のニュアンス、クローブとナツメグのようなスパイス。

味わいはレモン、グレープフルーツの苦味、トースト、ヒリヒリとアルコールの刺激、機械油、グレープフルーツの苦味とアルコール感がひりつくフィニッシュ。

加水すると香りに熟したプラムのような酸味+甘みのフルーツ感が強くなり、味わいも同様にフルーツの甘さが取りやすくなるものの、依然としてフィニッシュにかけての苦味は強く主張する。

【Good】

クリエイティブ・ウイスキー社の10周年記念のボトルとして詰められたボウモア、13年熟成のボトルです。

全体的にモルトとしての甘さが控えめでドライ、ライトなボディにヨード感も控えめ、アルコール感とスパイス感が強く、全体的に若くてピチピチのボウモア、といった印象でした。2000年や2001年のボウモアではもう少しフルーツ感や麦感に振れてくれるものが多いイメージだったため、2002年だとこういう感じなのかな? とちょっと肩透かしをくらった気分です。この樽の特徴がそうだった、というだけかもしれませんが。最近あまりこのあたりのボウモアを飲めていないので経験不足ですね。

あるいは、良い樽はオフィシャルやもっと力の強いボトラーズが確保してしまっていて、あまり良い樽が出まわらないのでしょうか。最近のボウモアは、というかアイラモルト全般が、人気と需要の高さを背景に強気の値段になっているため、ボトラーズも苦労しているのでしょうか。もう少し落ち着いてくれると良いのですが……。

ボウモア 18年 Deep&Complex

飲みやすく、確かに複雑さある。上質なアイラモルト。

Bowmore 18yo Deep & Complex (OB, for Travel Retail, 43%)

香りは穏やかなピート、海を感じさせるソルティーさ、オートミールやポリッジ、少しレーズン、ダークチョコ、濡れたわら半紙のニュアンス。

味わいは優しい口当たりで、チョコレート、ビスケット、じわりと穏やかながらもタンニンの刺激、下支えするピート、返りにオレンジやマンダリンの柑橘ジャム、じんわりと広がる赤い果実と少しの煙とヨードを感じるフィニッシュ。

【Good/Very Good】

ボウモアが2017年にラベルチェンジをした際、通常の18年と前後してこの Deep&Complex という18年ものが主に免税店向けにリリースされました。その後、多くの酒商の流通ルートにのって来たため、あまりこれが免税店限定という感じではなくなりましたが、一応限定ものだったりします。

やや低めの加水ボトルということもありますが、ピートの強さもあまり感じない飲みやすいタイプ。しかしながら、ピートとシェリー樽の味わいがうまくミックスされていて、確かに複雑さもある。ピート&シェリー樽のニュアンスがこれほどお手軽に味わえるのはなかなかないかもしれません。

シェリー樽はオロロソとペドロヒメネスの2種類を混ぜているそうで、個人的にはやや甘めでペドロ・ヒメネスのニュアンスが少し強めな味わいだと感じました。一方でミドルからのタンニンの刺激はややオロロソっぽさを感じ、あれこれ香味を考えながら拾い上げる練習にはもってこい、というイメージ。

通常のボウモア18年もほぼ同系統の味わいであるため、あとはお好み次第といったところですが、どちらかというとDeep&Complexの方が少しお値段高めなことが多いので、ちょっとポジション的に困ってしまいそうな残念な子……。

とはいえ、普通に美味しいです。冬場のアイラモルトならこういうのが良いですね。

ボウモア 12年 ダンピーボトル 1980年代流通品

アイラ・ピートともまた違った独特の香味が特徴的でした。

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Bowmore 12yo (OB, 1980s Dumpy bottle, 43%, 75cl)

香りはクレゾール、古い家具、湿った布、オレンジ、オレンジの皮、奥にはこなれた麦感。

味わいはゆっくりとした立ち上がりでしみじみとした麦感、じっとりとしたピート、チョコレートパフ、ミドルから焦がした麦、カスタード、タールのニュアンスが広がり、麦のコクとともにしみじみ消えていく。

【Good/Very Good】

ボウモアの黒ダンピー12年。1980年代~1990年頃の流通ボトルです。

この時期のボトルなら、逆算するとちょうどボウモアがパフューム香を発揮し始める頃だと思うのですが、なぜか出てこないんですよね。ロット差なのか、パフューム香を備えている同ボトルもあるようですが、基本的には無いという。

ラベルチェンジしてこの後に出てくるシルクプリントのものは、もうパフューム香バリバリで、その手のものが好きな方にはご褒美レベルだと思いますが、自分には合いませんでした……。自分が最初に飲みはじめた頃は、ボウモア12年もそのパフュームから脱した頃で、思えばそこで変なボトルに当たらなくて良かったとしみじみ思います。

さて、香味ともにかなりの時間経過によるこなれた感じと、やや強めのオールド感が出てきています。印象的だったのが塩素やクレゾールのようなニュアンス。1970年代のアードベッグにも通じるようなニュアンスですが、あちらはもっとひんやりとした印象があるので、それに比べるとキャラクターはまた異なるという。似ているようなそうでもないような、面白いところです。

割と当たり外れが多いボトルのようですが、このボトルは劣化によるネガティブな要素はほとんど感じませんでした。

貴重なボトルをありがとうございました。

ボウモア 19年 1998-2017 アイラフェス2017年向け

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Bowmore 19yo 1998-2017 (OB, THE FEIS ILE COLLECTION 2017, First Fill Sherry Puncheon, Cask#57, 54.3%)

香りはボウモアらしいヨード、マーマレード、レーズン、酸味のあるブドウ、ハチミツ、除光液のような少し溶剤系のニュアンス、パフュームとは異なるが花のようないい香り。

味わいはなめらかな滑り出しでネクタリン、桃に黒ブドウ、フルーツ感強め、オイリーで粘性がある、ミドルから鉛筆、木くず、はっきりと支えるヨード感、鼻抜けに香りの花のようなニュアンスが心地よく抜ける、リッチなフルーツ感と木くずのニュアンスが残るフィニッシュ。

【Good/Very Good】

今年5月のアイラフェスでは、ボウモアからは2種類の限定ボトルがリリースされたそうです。ひとつはこちらのボトル、もうひとつは11年熟成のものでした。

フルーツ感が多彩で、香りも飲んでも素直に美味しいと思えるボウモアです。近年のボウモアは安定して良い物があると思う一方で、シェリーカスクのものはちょっと苦味やエンピツ感などがひっかかりを生んでしまうものが多かった印象なのですが、このボトルは滑らかな口当たりでほぼ引っかかる部分が無く、特別に良い樽を選んだのだろうな、ということが想像できます。

ファーストフィルのシェリーカスクでここまで滑らかな仕上がりというのは、一体何をしたんだろうかと疑ってしまうくらい不思議な出来栄えなのですが、最近のシェリーカスクのマネジメント技術がかなり向上してきた結果なのだろうと感じています。シェリーカスクの未来は明るいように思いますね。

樽が効きすぎているといえばその通りで、ボウモアのスタイルがしっかりと感じられるかどうかという点には確かに疑問は残るものの、総じて満足感の高いボトルでした。こんなボトルが手軽に変えたら言うことはないのですけれど、やはり特別なものは特別、ということですね。

貴重なボトルを経験させて頂きました。ありがとうございました!