月別アーカイブ: 2016年7月

グレンカダム 13年 1974-1988 インタートレード

DSC07849

GlenCadam 13yo 1974-1988 (GM Intertrade Import, 61.1%)

香りはナチュラルで強い、蜂蜜、バナナクリーム、プレーンで透明感のある甘味、乾いた木、ブナのような広葉樹のニュアンス。

味わいはプレーンな麦の旨さ、蜂蜜、バナナ、濃厚なクリームブリュレ、少し植物のニュアンス、ミネラル感とホワイトペッパーのような優しいスパイシーさが後を引くフィニッシュ。

【Good/Very Good】

GMのイタリアはインタートレード社向け、通称イントレのグレンカダム13年です。

ハイプルーフで13年という比較的若いボトルですが、ボトリングから30年近く経ったためか荒々しさは大分落ち着いており飲み口はかなり優しい方に入ると思いました。プレーンで中庸な麦の旨さが印象的で、バナナやややオイリーなクリームのニュアンスもあって、全体的にはまったりとした印象を受けました。

一方で、経年によるオールド感はさほど感じられず。この辺りはハイプルーフゆえか、保管状態が良かったためか。ラベルにも汚れなどは見られませんし、良い場所に置かれていたのではないかと思います。

シンプルながら美味い昔のボトルでした。持ち寄り頂いたGさん、いつも渋いチョイスをありがとうございます。

バルヴェニー TUN1401 バッチNo.4

DSC07857

Balvenie TUN 1401 Batch No.4 (OB 2012 bottled, 50.4%)

香りは高貴、アプリコットジャム、マーマレード、甘さの強いリンゴ、煮だした紅茶、おがくず、少し藁灰のニュアンス。

味わいはリンゴ、アプリコットジャム、遅れて黒糖、噛みごたえのある麦の旨味、少し松脂のニュアンス、鼻抜けにもアプリコットやマンダリンのフルーツ感、染みこむタンニンとフルーツ感満載のフィニッシュ。

【Very Good/Excellent】

免税店向けでリリースされていた、バルヴェニーのTUN 1401。全部で9種類のリリースがありましたが、そのうちのNo.4です。

シェリーカスク由来と思われるアプリコットやマーマレードのフルーツ感が、ノージングにも味わいにもしっかりと存在していて多彩で素晴らしく、紅茶のニュアンスもミドルでしっかりと引き締めてくれます。原酒の幅広さ故か、多層的な味の広がりはシングルカスクではなかなか出てこないものだと言えるでしょう。

芯はしっかりしていて骨太でフルボディ、でも様々な方向に広がりがあってとにかく懐の広い、そんなボトルでした。これは本当に美味しかったです。

免税店向け(トラベル・リテール)ボトルについては、WhiskyMagazineにも記事がありましたが、ここ10年ほどの市場拡大は目を瞠るものがあるようです。昔からそういったボトルは存在していたようですが、大半がブレンデッドだったのでしょう。しかしここにきてシングルモルトのブームから各蒸留所とも力を入れ、このTUN1401がリリースされていた2011~2012頃は免税店向けでも黄金期だったのかもしれません。TUN1401はどれも美味しいと聞いていますし、No.1~4あたりは特に美味しいということでした。(これまではNo.3だけ飲んだことがありました)

ここ最近は原酒不足からか、免税店でもNASばかりになってきた感もあり、通常の市場と同じような方向を歩んでしまっているのが残念ですが、まだまだ美味しい市場であるのでしょう。どこも専門の販売員で空港内を歩く人に勧めてまわっているのが良く目に入ります。

願わくば、こんなボトルがまた出てきて欲しいものですね。

持ち寄り頂いたKさん、ありがとうございました!

DSC07858

ティーニニック 23年 UDレアモルト

DSC07853

Teaninch 23yo 1973 (UD Rare Malts, 57.1%)

香りはプレーンな麦、シナモン、ハッカ、ミント、ホワイトペッパーのニュアンス、少し木のニュアンスが残る。

味わいはハイトーンな麦感、青リンゴ、レモン風味、べっこう飴、鼻抜けに香り同様のシナモンとハッカ、後半はピリピリとホワイトペッパーなどのスパイス感、少しツンツンした刺激的なフィニッシュ。

【Good/Very Good】

ほぼオフィシャルと考えても良い、UDレアモルトのティーニニック 1973年蒸留ボトル。

UDレアモルトというとこの味、というハイトーンでプレーンな麦のニュアンスは健在で、そこにティーニニックらしいシナモンなどの独特のスパイス感の爽やかなニュアンスが乗っています。流石にハイプルーフだからか、ピリピリと刺激的な要素もありますが、ボトリングからかなり経っていることもあり、そこまで強い刺激ではありませんでした。

ベタつかないプレーンさやハイトーンな味わいは夏向きともいえるモルトですね。

それにしても、UDレアモルトはどれも味の傾向が似ているのですが、これは本当に不思議なものです。複数樽をヴァッティングしていると思いますので、樽選びだけでは同じ傾向にはならないでしょう。となると、ヴァッティング後に原酒を留めておくマリッジ用の樽あるいはタンクのようなところが、このような味を出すための装置になっているのでは、などと想像しています。

ティーニニックも含め、UDレアモルトで出てきた蒸留所はほとんど原酒工場のようなもので、シングルモルトに力を入れている蒸留所とは全くの別世界です。ある意味工業製品のように思えなくもないのですが、しかしやはり樽で熟成させ出来上がるボトルは、自然が育んだ素晴らしい世界を内包しているのだなあ、などと感慨にふけってしまいました。

 

アバフェルディ 25年 2003年ボトリング

DSC07848

Aberfeldy 25yo (OB +/- 2003 bottled, 700ml, 40%)

香りは蜂蜜、バニラ、レモンバーム、おしろい粉、少し干し草のニュアンス、微かに炭のニュアンス。

味わいは優しく流れるような蜂蜜、少し薄めのバニラクリーム、豊かな麦の味わい、鼻抜けに白い花を思わせるフローラル感、少し紅茶とややミネラル感のあるフィニッシュ。

【Good/Very Good】

アバフェルディのオフィシャルボトル25年、少し前の2003年頃に詰められたボトルです。

全体的に線が細いながらも良い熟成感と豊かな麦の甘さ、花のニュアンスが好印象です。そしてアバフェルディらしいとも言える流れるような蜂蜜は健在で、個人的にはこれがハウススタイルだろうと思えるニュアンスがしっかりと乗っていました。

2003年から逆算して1970年代後半の蒸留ということになりますが、ここ最近の12年や21年にも共通の味わいがあるところから考えると、ブレが少ない、良い品質をしっかりと守り続けている、ということなのでしょうね。

 

アバフェルディ蒸留所は、ブレンデッド・ウイスキー「デュワーズ」のキーモルト。結構な大資本で蒸留所はかなり大きい方に入ります。ビジターセンターは広々としていてツアーもかなり多くの回数がありますし、ビデオ上映ブースやカフェなども併設されていたりと、エンターテイメント性も追求しています。メインの街道からは少し外れますが、そういう立地などからイメージとしては白州蒸溜所に近いようにも思えました。味の方向は全然違いますけれども(笑)

こちらは持ち寄り会でのMさんのご持参、ありがとうございました!

ラガヴーリン16年 現行品と90年代流通ボトルの比較テイスティング

先日の持ち寄り会では様々なラガヴーリンが持ち寄られてプチ200周年記念会の様子だったのですが、知人がスタンダードの16年の現行ボトルと90年代流通ボトルを同時に持ってきてくれました。なかなか飲む機会がなかった旧ボトルのラガヴーリン、しかも現行との比較ができるとは貴重な経験です。

ちなみにボトルの違いはラベルの紋章の違いから分かります。

DSC07782

現行ボトルはワンポイントが三角形の帆船

 

 

DSC07780

旧ボトルはワンポイントが紋章

 

 

色合いの違い

DSC07779

簡単な比較になってしまい申し訳ないです。

あまり違いはありませんが、左の旧ボトルの方がやや色が濃くなっていました。

 

味の違い

飲み比べてみて結構違うな、という部分を書き出しみると、

  • 現行 : やや薄く若い、フレッシュな柑橘、荒々しさ、ピート感強め、色々と粗いがまとまりはある
  • 旧  : カラメル系の甘さ、松ヤニ、ミント、海苔、ピート感控えめ、麦の旨味、少し植物感

 

これは面白い比較結果となりました。

まず、核の部分である島もののピート感や麦の旨味、やや上品なニュアンスは共通しているのですが、そこから上に乗っかっている部分は随分と方向性が違うと思いました。

  • 現行 : フレッシュな柑橘と荒々しさ、ピート感強め
  • 旧  : カラメル系の甘さとオイリーさ、ピート感弱め

といった感じです。

 

特に面白かったのが、色合いの濃さから旧ボトルの方がシェリーカスクが多めなのかと思いましたが、どうも飲んでみるとこれはカラメルなのではないかということ。昔のものならばカラメル着色は当たり前のようにやっていたと思いますし、ラガヴーリンも例外ではなかったと推測しています。

勿論、旧ボトルの方が時間が経っていますから、経年による瓶内変化などもあるでしょう。ピート感の差異などはこの辺りが大きいような気もしています。詰めた当時の状態と現行を比較してみたいですが、さすがにそれは叶わぬ夢ですね。

 

どちらが美味いか?

で、どちらが美味いかというと、これはもうその人の好みの問題でしか無いと思います。個人的には現行品の方が、ラガヴーリンに求めている味に近いと思いました。旧ボトルの方がややオイリーさと甘さがくどく、海苔のようなニュアンスでのっぺりしている印象だったためです。

こうしてみると、旧ボトルだから絶対的に美味いかというと、一概にそうとは言い切れないところがありますね。現行のボトルもしっかりと美味しいということも再確認できましたし、現行ボトルを買って経年で瓶熟させてみるのも面白そうです。

 

ラガヴーリンの記念の年に貴重な比較ができました。Mさん、ありがとうございました!