月別アーカイブ: 2018年9月

ウィスキー写真作品展企画 への参加について

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先日ご紹介した、T.Ishiharaさん企画の ウィスキー写真作品展企画”Why do you like Whisk(e)y?”。

企画者のT.Ishiharaさんからオファーがあり、こちらの企画内で自分も写真展示の一部を担当させて頂くことになりました。

 

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ウィスキー写真作品展企画”Why do you like Whisk(e)y?”

 

 

3部構成で考えられている企画のうち、第一部「ウィスキーを取り巻く世界」のAppendix的な位置づけを考えています。

これまで、スコッチウイスキーが好きで、スコットランドには何回も足を運びました。理由としてはシンプルで、「その蒸留所がどんな場所にあるのか?」ということを知りたかったのです。同じスコットランドでもいろいろな味わいがあって、その違いはどこから生まれてくるんだろうか、というのが疑問でした。

そして、様々なスコットランドの風景に触れて写真や動画などを撮っていくうちに、今度はそれを伝えたくなってきました。蒸留所がどんな場所にあって、まわりの風景とか近くの町とか、そういう環境面全体をまるまる捉えて、もし自分みたいに興味がある人がいたら伝えたかった。自分が写真や動画を撮ってアップしているのは、改めて考えてみると、そんな単純な理由からでした。

今回の企画は自分の目的にも合致していますし、一度自分の写真を大きめのサイズで展示してみたいという思いもありましたので参加させて頂くこととなりました。2018年12月の展示に向けてこれから準備を進めてまいります。微力ながらお手伝いをさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

『ダフタウンの野獣』はいつから呼ばれているのか

ニューリリースの記事でモートラック蒸留所のボトルを見るたびに、「ダフタウンの野獣」というフレーズを思い出してしまったりします。いえ、そんな、笑ったりはしていないですよ。本当ですってば。

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すっかり定着した(ような気がする)「ダフタウンの野獣」ですが、ディアジオの「モートラックは古くから『ダフタウンの野獣』と呼ばれてきた」という説明、本当なのでしょうか?

今更ながら気になったので、グーグル先生の期間指定検索に掛けてみました。残念ながらこの機能は完璧ではないのですが、大まかな傾向はつかめるはずです。

1998/1/1-2005/1/1 で検索した結果

beast12件ヒットしましたが、どちらもフレーズが含まれているコメントは最近のもので、この期間に作成されたものではないようです。

2005/1/1-2010/1/1 で検索した結果

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少し結果は増えているものの、どのページも同様に2017年~2018年と最近のコメントだったり更新情報だったりで、この期間に作成されたものではない模様。
2010/1/1-2014/1/1 で検索した結果

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ヒット件数が増えてきました。おそらくはこの記事か、それに近い時期の記事が初出のように思われます。

Diageo to reinvent Mortlach with £30m investment
at Monday 02 December 2013

2013年にディアジオがモートラック蒸留所への投資計画を発表した際に、「モートラックは古くからウイスキーコニサーの間では『ダフタウンの野獣』と呼ばれてきました」「それは、驚くほど複雑でユニークな蒸留プロセスによるリッチでパワフルな酒質によるものです」という説明をしています。

そこから、2014年中ごろにモートラックがオフィシャルボトルの新ラインナップを発表し、宣伝していく上で「ダフタウンの野獣」というフレーズを多用するようになります。以降は商品説明の際にはこの文句が出てきます。

というわけで、一般向けにこの二つ名が出てくるようになったのは2014年から、ということになりそうです。それ以前にウイスキーコニサーやブレンダーの間で本当に呼ばれていたのかどうかは、業界の方々に聞いてみないとなんともいえないですね。

ちなみに、ukの図書館や新聞のアーカイブなども検索してみたのですが、やはりヒットはしませんでした……。

ざっと調べた限りではこの程度の結論しか出せませんでしたが、一方で、モートラックといえば確かに獣を思わせるようなミーティさ、獣脂のようなオイリーさをハウススタイルのフレーバーのひとつとしてとらえているところがあります。ベーコンのようなミーティなニュアンスは特徴的なので、特に印象に残っているボトルもありました。そういう意味では、あながちただの宣伝文句でもないのかもしれませんね。

でも最近モートラック飲んでいないですね……。

 

モダンモルトウイスキーマーケット(MMWM)2018に参加してきました

9/7に行われたモダンモルトウイスキーマーケット(MMWM)2018に参加してきました。

同イベントに参加したのは確か2015年以来だったので、実に3年ぶりということになります。駅から近くアクセスしやすい、コンパクトながら出展数はなかなかのものだったり。当日は真夏の暑さもやや落ち着いて、そろそろウイスキーが美味しくなる季節を感じさせる陽気。様々な新商品などがあり、いろいろと試飲してきました。

全部は紹介できませんが、特に印象に残ったものを書いていきます。

オールド・プルトニー 12年~18年, Huddart

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まずはオールド・プルトニーの新ラインナップ。12年~18年、そしてハダート。自分のいちばん好きな蒸留所なのでこれは外せません。

12年は安定で現行とほぼ変わらない味わいです。安心しました。15年と18年は、それぞれ17年と21年の代わり……というわけにはいかないのが正直な感想。17年の味わいが引き継がれているのは18年です。21年の熟成感は流石に得られませんでした。2本ともややシェリー樽の効いた味わいで、プルトニーらしいオイリーさは健在。総じてハウススタイルと感じられる芯の部分は残していました。

気になるハダートはNASなので若さはあるものの、バタースコッチとトーストのような、こんがりとした甘さが印象的。ノンピート麦芽をピート樽で熟成させたという変化球は、なるほど確かに通常のピート麦芽のウイスキーとはちょっと違う方向です。ピーティというよりはスパイシーさが後味に乗ってくる感じ。なかなかおもしろい味わいでした。

リニューアルは2019年1月で、価格は未定。海外の価格を見ていると、おそらくは15年が10,000円、18年が15,000円程度になるのではないかと推測します。正直、価格的にはキビシイ。バランスが良いと思うのは15年なのですが、現行17年の方がやはり好みかつ値段的にもまだ低めなので、やはり今の17年を買っておいた方が良いのでは、と思ってしまいました。

一方で、実際にボトルを見て思ったのは「デザインが良い」ということ。ラベルが蒸留所限定のヴァリンチを彷彿とさせ、箱も高級感がある風合いで色づかいも気に入っています。中身は同じでこのデザインに置き換えてくれれば……というのはないものねだりですね。

カーンモア プルトニー 2007 シングルカスク

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プルトニーといえば、ボトラーズからのリリースですがカーンモアの2007年ものが美味しかったです。プルトニーらしいバター、噛みごたえのある柑橘ジャム、そして塩気が、カスクストレングスのフルボディでしっかりとキャラクターが立っています。もちろん若さも若干あるものの、それも味方につけたような良いカスクです。プルトニーというか北ハイランドの味わいが好きな方にはオススメ。

グレンアラヒー12年~25年

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グレンアラヒーの12年~25年。ビリー・ウォーカーらが蒸留所を買収してから、それまでいわゆる「原酒工場」だったアラヒーからもスタンダードラインナップがリリースされるようになりました。

12年と18年は、スタンダードではあるものの総じて味わいは良好です。スペイサイドらしい華やかさもあり、原酒工場とはいえ高品質なものを作っていたのだなと改めて気付かされます。そして25年はさすがの味わい。特に後味にやや陶酔感があり、お値段も良いのですが中身も良いものでした。

グレンアラヒーは今後、シングルカスクものが順次リリースされる予定とのこと。まさに以前のグレンドロナックやベンリアックのような戦略ですね。かなり良い樽が眠っているようで、そういったものに陽の目が当たるのは嬉しいものの、でも数年後に手放して後は知らん、というような気もしていてちょっと複雑です。

キルホーマン 10年 シングルカスク 日本向けファーストリリース

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正直、今回のイベント中でいちばん意外な美味しさだったかもしれません。10年とは思えない複雑さ。後味に少しだけですがトロピカル感も乗っていたように思われ、ピート感ともあわさってとても多彩な香味を兼ね備えていました。50ppmのヘビーピート麦芽とのことですが、飲んだ印象はそこまで強くはありませんでしたね。

ほんの少しの試飲だけだったので、一度しっかりと飲んで判断してみたいボトルでした。

 

アンノック18年

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こちらも正直驚きの美味しさ。バーボン樽とシェリー樽のヴァッティングとのことですが、バランスが非常に良い。飲んでいて心地よい満足感があり、落ち着いてしみじみ飲める。18年よりもさらにハイレンジの22年や24年もありましたが、それよりも断然18年の方が好印象でした。
ひと通り試して思ったのは、近年のオフィシャルボトルは高級レンジに行くに従ってシェリー樽の比率を増やしているように思いますが、たいていはそれが行き過ぎていて、あまり好ましくない方向に振れてしまっているように思います。これは自分の好みであることは承知の上ですが、どうもバランスが良くないものが多いですね。それよりもミドルレンジの方が良いバランスに収まっている。バーボン樽の処理は凄い良くなってきたのですが、シェリー樽の方がそれに追いついていない感じでした。

イベント内容的にもボトラーズはやや少数派で、どちらかというと現行オフィシャルがメインのイベントでしたので、最近のトレンドを知ることができたので面白かったです。こうして見てみると、オフィシャルの少し上のグレードには安定した良いものがしっかりと存在している、ということが分かります。ラインナップの整理やラベルチェンジなどとあわせてブレンドも変えてきているのでしょうか。全体的な品質は底上げがされてきているようにも思えました。

[日本酒] 栄光富士 サバイバル 2018 episode:2

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[日本酒] 栄光富士 サバイバル 2018 episode:2 純米大吟醸 無濾過生原酒

  • くっきりはっきりとした甘さと酸のキレで華やかさがある
  • 嫌なところがまったくなく、かといって水のような味の薄さもない骨太さ
  • 芳醇さ、爽快感、飲みごたえのある日本酒ならこれ

昨年、いろいろなところで話題になった栄光冨士のサバイバルが、今年もリリースされました。昨年飲んだときにはその旨さ、華やかさに驚きましたが、今年もそれと同じくらいのインパクトがあります。この手の味わいが好みの方はぜひ試してもらいたいですね。

栄光富士は今年が創業240周年ということでとんでもない老舗なわけですが、ここ最近の日本酒研究はかなりのもの、というかちょっと信じられないレベルで研究されているようで、その膨大なトライ&エラーの結果がこうして製品に凝縮されているわけです。他にも様々なボトルがあり、正直追いかけるのが大変なのですが、どれを飲んでも美味しいのが凄いですね。

ちなみにサバイバルという名称は、原料である米の銘柄「玉苗」のストーリーから。現在では100を超える山形県の酒米ですが、玉苗はその4番目というかなり昔の世代にあたります。その玉苗のポテンシャルを引き出し、日本酒の酒米バトルロイヤルな現代でも現役として生き抜いている、その姿がまさにサバイバルなのです。

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[日本酒] 黒牛 純米酒 中取り 無濾過生原酒

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[日本酒] 黒牛 純米酒 中取り 無濾過生原酒 山田錦100%

  • えっ、これ純米酒?
  • 綺麗なつくり、ほのかに吟醸香も感じる、コクとボディの強さもなかなかのもの
  • いろいろなシチュエーションで楽しめる、燗もいけそう

純米酒とはいえ、その仕上がりは純米吟醸と変わらない出来栄え。一方で、中取りの生原酒ということもあってか、アルコール度数もかなり高くボディの分厚さは相当なもの。このあたりは磨きすぎた酒には出せないでしょう。どっしり強い、まさに横綱級の黒い牛、というイメージでした。