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キルホーマン 2012-2019 信濃屋向けシングルカスク ジャマイカラムフィニッシュ #406/2012

こちらのラムカスクのキルホーマンも良い仕上がりです。

Kilchoman 2012-2019 (OB for Shinanoya, Jamaican Rum Finish Single Cask #406/2012, 56.9%)

香りは塩素、麦芽、糖蜜、ミカンのような柑橘、潮気もあるヨードのニュアンス、少し藁灰、微かにセメダインのニュアンス。

味わいは度数よりは若干まろやかな口当たりから、糖蜜の甘さ、柑橘の酸味、すぐに塩素とヨードたっぷりのピート感、クリアな麦の甘さ、レモン果汁、微かにソーセージのような旨味成分、穀物の甘さに藁灰のピートが残るフィニッシュ。

【Good/Very Good】

昨年2020年の夏に信濃屋さんからリリースされた、キルホーマンのシングルカスク。先日のWhisk-e向けとほぼ同様のスペック。あちらのジャマイカラム樽を一度飲んで好印象だったので、信濃屋さんから同様の樽のリリースがあると聞いたときには絶対に買うと決めていました。味わいは期待通り、やはりラム樽のサラッとした甘さが付与されていて、元々のキルホーマンの味わいから少しリッチな仕上がりに。こちらのボトルも上々の味わい。

香味の構成は、これもほぼWhisk-e向けと同じ。若干コクやフレーバーに違いはあるものの、もはや好みの問題、比較してみないとわからないレベルかと。

ジャマイカラムカスクの比較テイスティング

このボトルがリリースされたのは2020年の夏。今回テイスティングしたのは買った直後に開封して半年ほど経ってから、つまり冬になった今なわけだが、リリース当時の意図としては、暑い夏にラム樽のフレーバーも香る陽気なボトルがマッチするのでは、というものだったのではないかと。実際、夏でも結構消費したし、ハイボールも何回か試してみたところ実に美味いやつだった。また夏に向けて気温が上がってきた頃、5月あたりになるとさらに美味く感じるようになっているのでは、と期待。

Whisk-e向けがすぐに売り切れた一方で、こちらのボトルは信濃屋さんでまだ入手可能という、ちょっと不思議な現象が起きているのだけれど、今年の夏に向けて、お手頃でしっかり美味いシングルカスクのキルホーマンを買っておくのも良いのでは。買うなら今のうちですよ。

信濃屋さんもしっかり良い樽引っ張ってきますね。ありがたい事です。年始からプライベートボトルの情報も出てきていますし、今後も楽しみです。

キルホーマン 2011-2019 Whisk-e向けシングルカスク ジャマイカラムフィニッシュ #140/2011

アイラモルトとラム樽、相性良いですね。

Kilchoman 2011-2019 (OB for Whisk-e, Jamaican Rum Finish Single Cask #140/2011, 56.2%)

香りは塩素、ハチミツ掛けのトースト、ミカンとレモンの柑橘フレーバー、ヨードのニュアンス、少し藁灰、青い草のニュアンス。

味わいは度数よりは若干まろやかな口当たりから、糖蜜の甘さがしっかりと主張、コクのある麦芽、柑橘の酸味、すぐに塩素とヨードたっぷりのピート感、微かにモルトビネガーのニュアンス、穀物の甘さにピート感がしっかりと残るフィニッシュ。

【Good/Very Good】

2019年にWhisk-eさんからリリースされた、キルホーマンのシングルカスク。およそ8年の熟成とまだ若い部類に入るはずだが、しっかりとした味わいの良いボトル。

キルホーマンは100%アイラシリーズを始めとして国内でも評価はかなり高まってきていて、素性の良さはもはや折り紙付きとも云えるだが、この樽に詰められた原酒もしっかりとした良いものであったことが伺える。そしてラム樽でのフィニッシュ。過去いろいろとラム樽のモルトを飲んできた経験からは相性の良さは抜群だと考えてたけれど、このキルホーマンも良い方向に作用している。ピートは若さをマスクして良い方向に作用さるけれど、さらにそこにサラッとした甘さが加わり、甘じょっぱくピーティな味わいに。言葉にすると一見変な感じだけれど、飲んでみると分かる旨さ。こういうアイラモルトが飲みたかったんですよ。

このボトルは、過去の持ち寄りの際に頂いたものでとても好印象だったので、思わずあちこち手を尽くして探してみたものの軒並み売り切れ。隠れた良いボトルという位置づけだったと思うのだが、分かる人は分かってるんだな、ということを痛感。運良く一本手に入れることができたのは本当にラッキー。

この後に信濃屋向けのラムカスクフィニッシュのボトルも出てくるけれども、こういうラム樽のキルホーマンで、18年くらいの熟成になったものも飲んでみたい。若さが抜けて熟成感が出てきたアイラモルトに、ラム樽の作用がどういうふうに効いてくるのか。きっと美味しいと思う。熟成庫にはまだラム樽のものも残っているとは思うのだけれど、いかんせんそれがシングルカスクとしてリリースされるのか、そして日本に入ってくるのか分かりませんがキルホーマンの今後の成長と共に楽しみに待ってみたい。

キルホーマン マキヤーベイ 2019年ロット

近年成長著しいキルホーマン、スタンダードも美味しくなってきています。

Kilchoman Machir Bay (OB, bottled +/- 2019, 46%)

香りはバタースコッチ、ヨーグルトのような酸味、マスカット、燃えた木炭、パンチの効いたピート感、糊のニュアンス、微かに海藻のようなヨードのニュアンス。

味わいはややオイリーなアタックで、オイル漬けの魚介、マスカット、少しオレンジ、しっかりした麦の甘さと塩気、ボディはやや薄い、焦げた木炭や籾殻のようなニュアンスが続くフィニッシュ。

【Good/Very Good】

キルホーマンの定番商品のトップとして扱われていることから、キルホーマンを代表する味わいともいえるのがこのマキヤーベイ。毎回数十の樽を混ぜて作られるわけですが、樽の構成はバーボン樽が80%, シェリー樽が20%と、バーボン樽主体の味わい。そして50ppmという高めのピートがいかにもアイラモルトらしさを醸し出しています。

ちなみにシェリー樽が主体の味わいはサナイグが担当。シェリー樽100%となると今度はロッホゴルムがその役割となります。が、個人的にはアイラの短熟はバーボン樽が鉄板と考えていて、シェリー樽にはあまり合わないかな、という印象です。

とまあここまではお約束的な商品紹介。

さて、このマキヤーベイ、値段は税込み5000円程度ということでスタンダードボトルでしかも年数表記が無い短熟なものとしては結構お高めではあります。しかし、今回飲んでみてわかった通りかなりの完成度に加えて、そもそも生産量が多くはないクラフト的な製法であることを考えると、むしろよくこの値段で、とも考えられます。

ここ最近はアイラモルトは軒並み高騰。10年前は6000円程度だったラガヴーリン16年も、今では7000円では買えなくなってしまいましたし、スタンダードボトルでもじりじりと値段があがっている状況です。そんな中で今のマキヤーベイは、ラガヴーリン16年にもそこまで引けを取らないとも感じました。もちろん熟成感やボディの厚みといったキャラクターはかなり異なるのですが、個性的なアイラモルトとしてこの一本を選ぶ、というのも全然アリだな、と。

また、よくよく見てみると外箱がとても凝っていますね。中央のアイラ島やKilchomanのhは金色の箔押し、背景にうっすらと見える地図はエンボス加工。結構な高級感を演出している外箱は、まだまだマイナーな蒸留所としては訴求力もしっかりしていかなければ、というところをしっかりと抑えています。

そしてボトルの後ラベルにはNFCが付いていて、スマートフォンで読み取るとボトルの情報が表示されるという。こういう仕掛け、面白いですね。2次元コードを使った仕掛けは他にもあった気がしましたが、NFCというのは初めて見ました。こういった一連の体験を提供しているあたり、キルホーマンのブランディングはしっかりしているな、と感じられました。実際には農場脇のクラフト蒸留所なのですが、このボトルを通して見ると、とてもそうは思えませんね。

近年のキルホーマンは、本当に成長著しいというか、勢いに乗っているだけではなく着実な実力をつけているな、と思います。100%アイラシリーズやシングルカスクシリーズなどは経験値の高いモルト飲みにも評価されているものも多いことから、原酒の質が上がっていることは確実ですし、今回のマキヤーベイにしても、きっとヴァッティングの仕方が巧みなのでしょう。全ラインナップが着実に底上げされている印象で、今後も楽しみな蒸留所のひとつです。

キルホーマン 100%アイラ 2019年リリース 9thエディション

力強い麦の味、しっかりと仕上がったキルホーマンです。

Kilchoman 100% Islay 9th Edition (OB, bottled in 2019, 50%)

香りはフレッシュなグレープフルーツ、少しマスカット、バタースコッチ、ピーティさはあるが強すぎない、少し藁灰のニュアンス。

味わいはややオイリーな口当たりからバタースコッチ、皮付きのグレープフルーツ、軽めのスモークネスとピート、ミドルから麦の甘みと旨味がしっかり、スモークチーズのニュアンス、柑橘とピートが合わさり複雑さをもったフィニッシュ。

【Good/Very Good】

キルホーマンの100%アイラシリーズ、2019年で第9版までやってきました。

知り合いの間でなかなかに美味しいという触れ込みだったため試してみましたが、確かに良い味を出しています。キルホーマンもついにここまできたか! という感じ。

バーボン樽熟成の良いフルーツ感に強すぎないピートとスモーキーさが加わりいい塩梅に仕上がっている印象。少しだけ若さを感じるニュアンスもあるものの、それは嫌な方向に振れておらず個性的な味づくりのひとつとして貢献しています。麦の旨さが甘みとともに感じられ、ああ、ウイスキーってやっぱり大麦の酒なんだな、と感じさせてくれるところが良いですね。

飛び抜けてフルーツが感じられたり、目のさめるようなピーティさがあったりするわけではありませんが、堅実でバランスの良い、そしてなによりアイラ島のモルトらしさをしっかりと感じさせてくれる、そんなボトルでした。


100%アイラシリーズについてはもはや説明不要かとは思いますが、麦の栽培から製麦、蒸溜、熟成、そして瓶詰まで全工程をアイラ島で行ったシングルモルト。キルホーマンは元々農場だった設備を買取って蒸留所にしたわけですが、計画をしっかりと実行に移して、しかも高いレベルにまで持っていっていったことは本当に素晴らしいことだと思います。

蒸留所自体は非常に小さいですが、周りの農場では大麦を栽培したりと敷地自体はかなり広め。

フロアモルティングもそこまで広いわけではないですが、主に100%アイラ向けになるのでしょう、自工場内で製麦を行っていました。

キルホーマン蒸留所は、2010年に初めて訪れたときには結構閑散としていてあまり認知されていない感じでしたが、2016年に訪れた際にはビジターもかなり多くなっていて、しっかりとアイラ・モルトの一員として認められている感がありました。アイラの他の蒸留所に比べればまだまだ歴史の浅い蒸留所なわけですが、ここまで質が高まってきたのであれば、もはや同じ土俵でしょう。

10thはどのように仕上げてくるのでしょうね。来年の楽しみがひとつ増えました。