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ボウモア 13年 2002-2015 クリエイティブ・ウイスキー10周年記念

ドライでシャープなボウモアでした。

Bowmore 13yo 2002-2015 (Creative Whisky “Exclusive Malts”, 55.6%)

香りはレモン、ツンとくる溶剤感、強めのアルコール感、ヨードはしっかりあるがやや控えめ、濡れた紙のニュアンス、クローブとナツメグのようなスパイス。

味わいはレモン、グレープフルーツの苦味、トースト、ヒリヒリとアルコールの刺激、機械油、グレープフルーツの苦味とアルコール感がひりつくフィニッシュ。

加水すると香りに熟したプラムのような酸味+甘みのフルーツ感が強くなり、味わいも同様にフルーツの甘さが取りやすくなるものの、依然としてフィニッシュにかけての苦味は強く主張する。

【Good】

クリエイティブ・ウイスキー社の10周年記念のボトルとして詰められたボウモア、13年熟成のボトルです。

全体的にモルトとしての甘さが控えめでドライ、ライトなボディにヨード感も控えめ、アルコール感とスパイス感が強く、全体的に若くてピチピチのボウモア、といった印象でした。2000年や2001年のボウモアではもう少しフルーツ感や麦感に振れてくれるものが多いイメージだったため、2002年だとこういう感じなのかな? とちょっと肩透かしをくらった気分です。この樽の特徴がそうだった、というだけかもしれませんが。最近あまりこのあたりのボウモアを飲めていないので経験不足ですね。

あるいは、良い樽はオフィシャルやもっと力の強いボトラーズが確保してしまっていて、あまり良い樽が出まわらないのでしょうか。最近のボウモアは、というかアイラモルト全般が、人気と需要の高さを背景に強気の値段になっているため、ボトラーズも苦労しているのでしょうか。もう少し落ち着いてくれると良いのですが……。

インペリアル 22年 1990-2013 マキロップチョイス Cask#11972

乳製品と草っぽさから農家をイメージするボトルでした。

Imperial 22yo 1990-2013 (Mackillop’s Choice, Cask#11972, 57.9%)

香りは熟成したチーズ、ポリッジ、オレンジ、クランベリー、やや薬草的なニュアンス。

味わいは強めの刺激を伴いながら、凝縮した麦の甘味、マーマレード、生クリームのようにややオイリー、ミドルからオリーブやマスタードのニュアンス、チーズがかったポリッジのような穀物と薬草のような苦味を伴うフィニッシュ。

【Good/Very Good】

マキロップチョイスからインペリアル、2013年に詰められたカスクストレングスのボトルです。

香味ともに乳製品っぽさが中心にあり、熟成したチーズにやや野暮ったい麦の風味、そして薬草のような草っぽいニュアンスがあるのが印象的でした。やや野暮ったい麦芽の香味あたりが、3回蒸留のインペリアルらしいところかな、という風に捉えました。

樽感はあまり強くなく、それよりはアルコールの強さからかなり刺激が来るため注意して飲まないとあっという間に舌がやられてしまいそうでした。加水をすると熟成したチーズ感が強まり旨味がよく感じられ、素性の良さは垣間見られました。

リトルミル 25年 1989-2015 ハートブラザーズ for North Sea Bottlers

トロピカル感の影に隠れ潜むアイツがいました。

Littlemill 25yo 1989-2015 (HART BROTHERS “Finest Collection” for North Sea Bottlers, First Sherry Butt, 52.1%)

香りはエキゾチックなフルーツ、ややケミカルさを伴うパイナップル、パパイヤのような青い果実感、ポリッシュされた家具、少し紙のニュアンス、時間経過でカカオが出てくる。

味わいはややおとなしいスタートで、マンゴスチン、パイナップル・ファイバー、ミドルから徐々に紙、濡れたダンボールが少しだけ顔を覗かせる、ジャム入り紅茶、少し木とカカオの苦さがあるが心地良い程度がフィニッシュに続く。

【Good/Very Good】

North Sea Bottlers というベルギーのボトラー向けにリリースされた、ハートブラザーズのリトルミル25年。

ここ最近のリトルミルは、以前のように「らしいフレーバー = 濡れたダンボール」のニュアンスが強いものは影を潜め、少しケミカルさを伴うトロピカル・フルーツのフレーバーが出ているものが多いように感じます。このボトルもその系統のひとつですが、味わいの中にそれっぽいダンボールのニュアンスが隠れているのが分かり、ああリトルミルらしいな、と半ば安心するような、でもやっぱりちょっと嫌かもというような、面白い感覚を楽しむことができました。

ファーストフィルのシェリーバットという記載がありますが、シェリー樽らしい影響はかなり控えめで、後半に紅茶とカカオのニュアンスがある程度です。恐らくはオロロソやペドロヒメネスではない、フィノあたりのシェリー樽だったのではないかと推測します。これくらいのニュアンスならファーストフィルでも良いですね。

リトルミルも、蒸留所閉鎖から既に25年が経ち、残りの原酒もあまり多くは無いことでしょう。長熟の域に入り手頃な値段でのリリースが少なくなってきたため、今後はかなり希少価値が高くなってしまいそうです。とはいえ、これまでのリリースが多かったせいかセカンドユースの市場にはいろいろなボトルがありますので、そちらを狙うのもありでしょうか。独特の濡れたダンボール感の無いボトルは限られてそうですが……。

ちなみにこのボトルはベルギーの方々と一緒にテイスティングしたのですが、あちらでも Like a carboard という単語が出てきて、あーこのニュアンスはやっぱりダンボールだよね、と納得しました。日本と海外とでは香味の捉え方が異なることも良くあるのですが、少なくともこのダンボール感は共通だったようです。

ブレイヴァル 21年 1991-2013 Brachadair Cask#95120

スペイサイドらしさのある王道の味わいですが、少し草っぽいニュアンスが引っかかるところ。

Braeval 21yo 1991-2013 (Brachadair, Bourbon Barrel, Cask#95120, 53.1%)

香りはリンゴ、洋梨、ミルク、ハチミツ、新しい木の椅子、やや草っぽいニュアンスが強めに出ている。
味わいはやや強めのアタックで麦の甘さ、プラム、酸味強めのさくらんぼ、ミドルからバニラ、ハチミツ、ミント系のガム、フィニッシュにかけてハチミツとハーブが続く。

【Good/Very Good】

Brachadair という、ベルギーのボトラーが詰めたブレイヴァル。あまり大きくはないボトラーのようですが、個人的なコネクションなのか、様々な蒸留所のシングルカスクを詰めているようです。ヨーロッパ各国ではこういうインデペンデント・ボトラーがたくさんあるようで、各自のフィールドにあわせていろいろと樽を引っ張ってきているようですね。

香味はベーシックながらよくまとまっていて、リンゴや洋梨のような甘い香り、味は甘さと酸味がしっかりしていてくっきりとした輪郭を作っています。後半にやや強めの草っぽさが残るところが、優美さだけでは終わらない個性を発揮していましたが、ちょっとくどい味でもあったため、評価は分かれそうなところ。

ブレイヴァルというとかなりマイナー蒸留所で、オフィシャルボトルが無いためボトラーズ頼りになりますが、あまり経験がないためハウススタイルが良くわからないところです。実はスコットランドで最も標高が高い場所にある(標高の高さでは有名なダルウィニーが326mでブレイヴァルが350m)のですが、熟成はキースにあるシーバス系の集中熟成庫で行われているようで、あまり標高の高さを売りにしている話を聞いたことがありません。もっとも、ダルウィニーも熟成はディアジオの集中熟成庫がメインでしょうから、あまり変わらないと云えますが……。ダルウィニーは気象観測所を兼ねているため、そちらの話題が良く出てくるのでしょう。

というわけで少々パッとしないところのあるブレイヴァルですが、素性は良さそうなので他にもいろいろと試していきたいところです。