話は蒸留所の周辺環境へ。蒸留所の敷地は、なんと湿地の真ん中に建てられている、というお話。地盤が弱いため、地下深くまで基礎を入れ、さらに発泡スチロールのようなものまで埋めてあるとか……? 建築関係には疎いのであまり理解できなかったけれど、周りをよく見てみると、確かに水場があり、葦のような植物が生い茂っていた。
後で周りを歩いてみたところ、細い川が蒸留所の周りをぐるりと巡っている。なんとも面白い場所に蒸留所を建てたものだ。
また、先述の霧の話も、海からの潮風を蒸留所まで運んでくれるということで、海のフレーバーが付く……かどうかはちょっとどうかな? と思いましたが、とにかく海に近い環境であることは確かです。
蒸留所を後にして、再び道の駅へ。2階のオイスターバーで試飲や食事をいただく。自分はドライバーのため残念ながら試飲はできなかったけど、厚岸産の牡蠣を楽しんだ。ここは特産の牡蠣が安く食べられる上に、アイラも含むシングルモルトが楽しめるようになっていて、食べ飲み楽しむためのメニューが充実している。ぜひおすすめしたい場所。
熟成庫で特別に教えていただいたのが、厚岸産のミズナラ材を使った樽で現在熟成されている原酒があるというお話。このミズナラ材、樹齢は100年を越えるもので4本の樹から4樽しか作れなかったらしい。かなりの高額だったのでは……と余計な詮索をしてしまう。
できればオール北海道産、そして最終体にはオール厚岸産でモルトを作りたい、という野望があるそう。一番ハードルが高いのは製麦(モルティング)になりそうですが、いずれその日が来ることを楽しみに待ちましょう。
今回の訪問では、厚岸蒸留所がどんなところにあるのか、いろいろと見聞きし、体感することができた。
厚岸を含む釧路から根室までの一帯にある湿地は、ラムサール条約で自然保護が図られている。環境が変わりにくいということは、かなり先の将来まで同じ環境で作り続けることができるということ。
また、厚岸には豊富な海産物があり、中でも牡蠣はウイスキーとのペアリングでは言うことなし。しかも厚岸の牡蠣は通年で楽しめる。汽水湖である厚岸湖とすぐ近くの湾の温度差を上手く使っていて、飼育場所の温度を低く保つことによってウイルスの発生も抑えているとか。ノロの心配もないのは嬉しい(100%ではないでしょうけど)。
昨今のブームでもてはやされているジャパニーズ・ウイスキーですが、正直、中には色モノも多い印象は否めません。しかし、厚岸には本気を感じる。本気で100年先を見据えている。そのための今を生み出している、と感じるのです。自然環境から人間の生活まで、そういった駒が揃っている。あとはそれをどう使うか次第でしょう。
厚岸の8年、10年、12年を比較テイスティングしながら、牡蠣や魚介の美味しい料理を頂く。そんな将来が待っているのかもしれません。