カテゴリー別アーカイブ: Laphroaig – ラフロイグ

ラフロイグ 6年 2011年蒸留 スリーリバーズ ダイナソー

若いのにしっかりと旨味が詰まったラフロイグでした。

Laphroaig 6yo 2011 (3Rivers “Dinosaur”, Refill Sherry Hogshead, 57.2%)

香りはフレッシュなレモンやオレンジ、酸味あるヨーグルト、バターと炭の燃えかす、しっかりとしたピートの香り。

味わいは粘性の高いテクスチャで、バタースコッチ、ハチミツがけのグレープフルーツ、オレンジピール、魚介類の燻製、ベーコンのニュアンス、力強いが旨味と甘味が程よく混じり合う、温かみのあるフィニッシュは長い。

【Good/Very Good】

スリーリバーズのダイナソーシリーズ、もはや何番目かは分からなくなってしまいましたが、アイラモルトのシリーズとして定番となってきた感があります。今回はその中でも6年熟成という短熟のラフロイグ。

グラスに注いだ瞬間から良く広がる香りは、柑橘の酸味とハチミツのような甘味、そしてピート感を伴うもので、若いアイラモルトらしさがしっかりと出ていました。そして口に含むと、確かにフレッシュでハツラツとしていて長い年月を感じさせるものではないものの、特段若くて嫌なニュアンスがあるかというとそんなこともなく、良く仕上がっているな、という印象でした。

特に、ねっとりとオイリーな口当たりということもあって、度数ほどのキツさがないのも面白いところ。魚介や豚肉の燻製のようなジューシィさ、ミーティさがあり、力強い旨味を持っている。若い原酒でも、それが逆に魅力として映る、そんな典型例のようでした。

ここ数年の原酒不足は凄まじいという話はあちこちで聞かれ、それは業界関係者の会話からだったり、情報サイトの記事だったりしますが、実際にリリースされるボトルの熟成年数とその値段を見ていれば明らかなことです。その結果、数年前には熟成年数の最低ラインと考えられていた(少なくとも自分の中ではそうでしたが、みなさんも同じでは?)10年にも満たないリリースが数多く見られるようになってきました。

一見ネガティブな印象ばかりを持ってしまうのですが、今回のように、逆に若いからこそ生まれる個性だったり面白さを持ったボトルも見つかるようになってきたことは、原酒不足という時代における、瓢箪から駒のような幸運なのではないかと思います。

1970年台や80年台頃のオフィシャルボトルにも5年や8年というボトルがいくつか見られるのですが、飲むと、若いのになんでこんなに仕上がっているんだ、という印象を持った記憶があります。もちろん、年数表記は最低ラインを記載しますから、5年とはいいつつも10年、15年のものも含まれている可能性はありますが、それでも若い原酒が使われていることも確かです。今、8年前後のシングルカスクでもしっかりとした個性を持ち飲みごたえと満足感のあるボトルなら、それこそ30年後くらいに飲んでみたら、面白いくらいに化けている、なんてこともあるかもしれませんね。

もちろん、そんな未来に救いを求めなくても、今飲んでもしっかり美味しいボトルでした。

こちらはM氏の隠れBarにて頂きました。ありがとうございました!

ウィリアムソン 12年 “Mag Mell” BARREL プライベートボトル#1

アイラモルトの中でも独特の香味、複雑さと共に面白い味わいです。

Williamson 12yo 2006-2019 “Mag Mell” (PB for BARREL, Bourbon Barrel, 54.4%)

香りは強めの塩素、クレゾール、グレープフルーツ、レモンバウム、燃やした藁、火薬のニュアンス、全体的にやや冷たい印象。
味わいはレモン飴、酸味強めのグレープフルーツ、藁灰、火薬とヨード、乾いた石灰に控えめながらフルーツ感、火薬と塩素の残り香が独特で良い。

【Good/Very Good】

ウィスキーメディアとしてここ最近では抜群の知名度と豊富なコンテンツを擁する BARREL。自分も良く拝見させて頂いております。そのBARRELのオーツカさんがリリースされたプライベートボトルの第一段が、このウィリアムソン(アイラ)の12年です。実際の中身はラ○○イグというお話。

最初テイスティングで塩素っぽいニュアンスが強めだったため、ラ○○イグよりもア○○ベッグっぽいな、という印象だったのも面白いところ。ボトルの開封からまだ時間が経っていないということもあり、やや硬い印象ではありましたが、30分ほど置いたあとはフルーツ感が強めになり、全体的に丸みを帯びてきました。

しかし依然として上記コメントのように塩素と火薬のニュアンスが強く、特にグラスの残り香が複雑で心地良い。トロピカルとかそういう方向ではないですが、香りが特徴的でずっとノージングばかりしていました。こういう面もモルトの面白さのひとつですね。

しっかりと味わいが開くには開封から30日程度は必要ということで、自分が飲んだタイミングではまだまだポテンシャルの片鱗のみでしたが、個性的で独特の魅力があるボトルだと感じました。

それにしても、プライベートボトルが出せるというのは凄い、というか羨ましいです。

ボトル名の Mag Mell は、ケルト神話の死後の楽園のことでしょうか。あらゆる歓喜が揃う楽園、そこには天上の音楽もあることでしょう。その指揮を取る美しい少女が、指揮棒で奏でたように描かれたロゴ、光の魔術とでも言うような絶妙な加減、それを締めるバックの黒、と素晴らしいデザイン。バックバーでも映えること間違いなしですね。

一般へのリリースも既にSold Outということで、オーツカさん、改めておめでとうございます & 持ち寄り頂きましてありがとうございました!

ラフロイグ 15年 2000年頃流通ボトル

少し落ち着いた、でもやはりラフロイグらしさを感じるボトルでした。

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Laphroaig 15yo (OB, +/- 2000, 43%)

香りはレモン、バニラクリーム、魚介出汁、スモークとピート、おしろい、微かに線香のような香り。

味わいは柔らかく和三盆の甘さ、レモン、いがらっぽさが残るパイナップル、はっきりとしたピート、後半からバニラの甘さとピートの強さが残るフィニッシュ。

【Good/Very Good】

ラフロイグの昔の15年ボトル。2000年頃に日本でも流通していたボトルですが、こちらのラベルにはイタリア表記があり、日本に入ってきたものとはちょっと異なるようです。

ピートと魚介系の旨味、レモンっぽさなどがラフロイグらしいところですが、パイナップルの皮に近い部分のいがらっぽさと、さらりとした甘さがちょっと印象的でした。ボトリングからかなり時間が経っているためか、やや落ち着いた印象を受けましたが、ヒネなど悪い要素は特に感じず、状態は良好だと思います。

2015年にリリースされた200周年記念のボトルと、記憶ですが比較をすると、こちらの方がややピートが落ち着いている印象です。経年の変化のせいでしょうか、パワフルさは少しなりを潜めているように思いました。

ラフロイグ 17年 1997-2016 オーストリアボトラー向け

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Laphroaig 18yo 1997-2016 (bottled for Austria, Cask#28, 51.6%)

香りはグレープフルーツ、少しグァバやパイナップルのニュアンス、カルダモン、後半にかけて火薬のような香りが良い、残り香には獣や牡蠣のオイル漬け。

味わいはグレープフルーツ、甘味が強めでアイラらしいヨードも感じる、ミドルにかけて少し暖みのある柑橘系、柔らかくて良い、柑橘の皮の苦味と魚介系の旨味がまとまった安定した旨さ。

【Very Good】

オーストリアのボトラー向けというラフロイグ1997。

1997年のラフロイグが良いのか、それともこのボトルが良いのか、このボトルは両方でしょう。ややラフロイグが苦手な自分でも、このボトルは美味しくてついつい口に運んでしました。

グレープフルーツを実からワタ、皮までの全体を味わっているかのような、甘さ、酸味、苦味の多彩な味わいが印象的。香りにある火薬っぽさや清涼感、そして旨味のあるオイルのニュアンスまで、複雑ですがバランスが取れていました。

ラフロイグは200周年記念の21年が旨味のあるバランスの良い味わいで好みでしたが、このボトルも同じ傾向、かつ度数がやや高めとあってパワフルさも兼ね備えていました。こういうラフロイグならいくらでも大歓迎です。

ラフロイグ 15年 2001-2016 エディションスピリッツ

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Laphroaig 15yo 2001-2016 (Edition Spirits “The First Edition”, Cask#12382, Refill Butt, 58.4%)

香りはこってりとした黒糖、おしゃれで華やかなブドウなどのフルーツの凝縮感、やや長熟ラムに通じるニュアンス、グレープフルーツ系の柑橘もありフルーツ感が多彩、奥にはしっかりとヨード、火薬、クローブ、黒胡椒などのスパイスのニュアンスが少し。

味わいは、アタックから香り同様の多彩なフルーツ感が広がる、黒糖と麦の中間的な甘み、やや強めの樽感、ミドルからの強すぎないピート感が好印象、スパイスとジャムをつけた紅茶のニュアンスが広がるフィニッシュが心地良い

【Very Good】

最近ちょこちょこと見かえるようになった “The First Edition” のこちらのロゴは、ボトラーズのエディションスピリッツから。

かなり濃厚なシェリーカスクのラフロイグで、上述の通りそのニュアンスがしっかりと出ています。華やかさに溢れ、ハイプルーフらしくパワフルさも兼ね備えた厚みのある味わい。口に含んだ瞬間から飲み込むんだ後の余韻まで、満足感がずっと続くモルトでした。分かりやすく、素直に美味しい、そんな感じです。

オフィシャルの21年ハーフボトルとは(あちらはバーボンカスクなので)異なる方向性ですが、どちらも同じように突き抜けて美味いボトルですね。残念ながら既に完売してしまっているようですが……。300本程度であれば、仕方がないかもしれません。

 

ところで、ラフロイグ蒸留所としては珍しいと思われるシェリーカスク。今年のスコットランド旅行で現地を訪れた際、ちょうど樽が本土から届いており搬入作業をしていました。話を訊くと、やはりバーボンカスクばかりだということです。

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ラフロイグ蒸留所、樽詰め前の一次保存庫内の様子。バーボンカスクが整然と並ぶ。

蒸留所のすぐ側にある熟成庫にも、基本的にはこれらのバーボンカスクばかりが並んでおり、シェリーカスクがどこにあるのかは正直見えませんでした。一方で、蒸留所内のいくつかの場所では既に役目を終えてオブジェとして並んでいるものの中にButtサイズの樽も置かれており、シェリーカスクが無いこともなさそうだ、という推測はできます。

オフィシャルの特別なボトル用、あるいは大手のボトラーズ向けに特別に払い出す用など、通常とは異なるルートで樽を手に入れてくるのかもしれません。色々な可能性はありますが、いずれにしてもシェリーカスクのラフロイグは貴重なものであることが伺えました。